症例(CT、SECT) 2020.6月号掲載


症例:70歳代 男性

主訴:夜間外出や歩行障害、自宅を間違える、失禁などの行動が目立つようになり当院に受診。
認知機能評価のため脳血流シンチグラフィと頭部CT検査が施行された。

下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

 

図1:99mTc-ECD 脳血流シンチグラフィSPECT像 
a:水平断像, b:冠状断像,
c:矢状断像, d:正常参考例
図2:頭部CT検査 
a:水平断像,
b:冠状断像

 


解答・解説

本症例は正常圧水頭症に典型的な認知機能低下、歩行障害、失禁の症状を呈していました。

まずは図3、4でCT検査から正常圧水頭症の所見を説明します。
図3はCT検査水平断像ですが、図3aで側脳室がやや開いて見えます(矢印)。図3bでは側脳室前角と頭蓋内腔の測定部位を示しており、それぞれ4.58,12.81cmでした。側脳室前角幅/頭蓋内腔幅>0.3であれば正常圧水頭症の可能性があり、この値はEvans indexと定義されています。本症例のEvans index は0.356であり、0.3以上となっています。
図4の冠状断像では脳梁角も正常圧水頭症を評価しうる値です。具体的には90°以下であれば正常圧水頭症であり、本症例は81°で基準を満たしています。加えて、頭頂部の脳溝がやや狭小化しています。
最後に脳血流シンチグラフィですが、脳内集積の機序を簡単に説明致します。
脳血流シンチグラフィは脂溶性の放射性薬品が血液脳関門を通過して血中から脳組織内に取り込まれます。取り込まれた後は長時間組織に留まり、その分布は局所脳血流量と相関します。
今回検査では図1b冠状断像での頭頂部の扁平な集積が正常圧水頭症のポイントとなります。具体的には図5a矢印で示した部分であり、図5bでは頭頂部の脳溝の狭小化(矢印)が見られます。脳溝の狭小化を呈する理由としては水頭症によってシルビウス裂が開大し、頭頂葉や前頭葉が見かけ上頭側方向に圧排されることにより生じます。脳血流シンチグラフィでの集積があたかもカッパの皿の様に見えるため、CAPPAH(Convexity APPArent Hyperperfusion)サインとも呼ばれています。圧排された頭頂葉や前頭葉の血流が見かけ上で増加しているため、このような集積になるとされています。
本症例は髄液のタップテストにより症状が改善致しました。

図3: 頭部CT検査 水平断像 : Evans index測定
図4:頭部CT検査 冠状断像:脳梁角測定

診断のポイントとしては
症状:認知機能低下、歩行障害、失禁
Evans indexと脳梁角
脳血流シンチグラフィでのCAPPAHサイン
症状、画像所見でから診断に至った正常圧水頭症の1例を紹介いたしました。

図5:SPECT像とCT検査の対比とCAPPAHサインa:SPECT冠状断像, b:CT冠状断像, c:カッパ

【参考文献】徳田 隆彦. 髄液の産生・吸収障害と特発性正常圧水頭症の新しい画像診断臨床神経学 2014; 54:1193-1196

症例(腹部CT)


Case  80歳.女性.

上腹部痛、食欲不振

下記画像から考えられる疾患は?

 

 


解答と解説

下図A~D:口側小腸(赤矢印)が肛門側小腸(青矢印)に嵌入し、図Aでは標的様構造を示しており、内部に血管構造と脂肪組織が確認できます。嵌入した口側小腸の先端には脂肪腫と考えられる境界明瞭で辺縁平滑な脂肪濃度を示す腫瘤(緑矢印)を認めます。嵌入が始まる箇所より口側の小腸(黄矢印)は拡張しています。脂肪腫を先進部とする小腸重積が考えられます。図E~F:腹腔鏡下小腸切除術が施行され、小腸の中央部にみられた腫瘤は、病理組織で脂肪腫と診断されました。図Fは腫瘍の割面を示しています。
腸重積では、腸管が遠位もしくは近位の腸管内に折りたたむように嵌入します。最もよくみられる症状は、腹痛、嘔気・嘔吐です。腸重積をきたす原因としては腫瘍が最多であり、成人腸重積の約65%でみられます。蠕動に乗って先進部が遠位側に移動するために、近位側腸管が遠位側腸管の内側に引き込まれるようにして入り込むのが一般的です。CTでは、標的様構造の内部に脂肪組織と血管が巻き込まれる所見を確認することが重要です。小腸重積に限って言えば、原因として良性病変が最も多く、脂肪腫、GISTなどの腫瘍、非腫瘍性ポリープ、Meckel憩室、炎症性疾患、外傷などがあげられますが、悪性病変の場合は、腺癌、悪性GIST、転移、悪性黒色腫、リンパ腫などがあげられます。そのため、腸重積では重積先進部に特に注意する必要があります。治療としては、原則手術が必要です。

解答

脂肪腫を先進部とする小腸重積

参考文献)

・ 山下康行:わかる!役立つ!消化管の画像診断.秀潤社
・ Choi SH, Han JK, Kim SH, et al: Intussusception in adults: from stomach to rectum. AJR 2004;183:691-698
・ Warshauer DM, Lee JK. Adult intussusception detected at CT or MR imaging: clinical-imaging correlation. Radiology 1999;212:853-860

 

症例


問題: 63歳、女性。2年前から左手掌部に腫瘤を認めていた。
最近になり腫れが大きくなったため、MRI精査。

a:T1強調像, b:T2強調像, c:T2*強調像, d:脂肪抑制T2強調像,
e:拡散強調像, f:ADC map

 

解答と解説

T2強調像(左図):中心部はやや低信号(腫瘍細胞や線維成分が多いAntoni A領域;黄矢印)、辺縁部は高信号(粘液状基質に富むAntoni B領域;赤矢印)を示しています。
T2*強調像(右図):中央部では出血後変化を反映して低信号を示しています(緑矢印)。
左手掌第2から第3指の浅指および深指屈筋腱の間に境界明瞭で辺縁平滑な腫瘍を認めます。T1強調像では全体が低信号、T2強調像では中心部がやや低信号で辺縁部が高信号を示し、辺縁は被膜と思われる低信号で囲まれています。T2*強調像では中央部の低信号が目立っており、出血後の変化が疑われます。拡散強調像で高信号ですが、ADC mapでは高信号と中等度の信号が混在した信号となっています。神経鞘腫が疑われ、手術を希望されたため、腫瘍摘出術を施行し、病理組織診断でも神経鞘腫の診断となりました。

神経鞘腫は、比較的大きな神経の神経鞘内に発生し、神経外膜からなる被膜を持ちます。20から50歳代に多いとされ、頭頚部、四肢屈側、後縦隔、後腹膜、下肢に好発します。組織学的には細胞成分の多いAntoni A領域と、粘液状基質に富むAntoni B領域が様々な割合で混在し、内部には出血や嚢胞変性を含むことが多いです。MRIでは、これらを反映した所見となります。つまり、腫瘍細胞あるいは線維組織が密に見られる部分がT2強調像で低信号となり、一方粘液変性が強く腫瘍細胞の乏しい部分はT2強調像で高信号となります。このT2強調像で辺縁が高信号で、中心が低信号を示す像はtarget appearanceと言われており、神経鞘腫でみられる所見ですが、神経線維腫でもみられるため、明確な区別は難しいとされています。鑑別方法として、神経が腫瘍の辺縁にあるか中心にあるかで鑑別できるとされており、前者であれば神経鞘腫、後者であれば神経線維腫という報告もありますが、神経の同定自体が困難なことも多く、明確な鑑別点とはならないようです。鑑別診断として、悪性末梢神経鞘腫瘍があげられますが、特異的な画像所見はないため、鑑別困難なことが多いです。経過中に急速な増大を認めた場合は、悪性末梢神経鞘腫瘍を疑う根拠となります。

参考文献)
・上谷雅孝:骨軟部疾患の画像診断第2版.秀潤社
・福田国彦:軟部腫瘤の画像診断.秀潤社

解答:神経鞘腫(Schwannoma)

症例(Rad@Home2019年1月号掲載分)


問題: 50歳代、女性。心窩部痛で救急外来受診。



回答

胃アニサキス症(gastric anisakiasis)

 

 

 

 

 

 

胃体部で浮腫性壁肥厚を認めます(左上図、右上図:黄矢印)。周囲脂肪織濃度上昇を伴っています(左下図:赤矢印)。上部消化管内視鏡検査では、胃壁に付着したアニサキス虫体がみられ、鉗子を用いて除去しました(右下図)。

アニサキス症は、アニサキス亜科のAnisakis simplex、Pseudoterranova decipiensの幼虫が寄生したサンマ・サケ・スルメイカなどの生鮮魚介類を生食することによりおこる内臓幼虫移行症です1)2)。ほとんどは体外へ排出されますが、体外へ排出されず、胃・腸管壁などに穿入することで急性腹症を呈します3)

胃アニサキス症の症状としては、生鮮魚類を生食後、3~4時間後の夜中に心窩部痛が見られることが多いです。本症例では、前日にサバ、イカを摂取し、当日の朝心窩部痛で起床したというエピソードがありました。CT所見は、胃壁粘膜下浮腫(100%)、胃周囲の脂肪織濃度上昇(95%)、腹水(75%)、十二指腸拡張(70%)が特徴です4)。胃アニサキス症におけるCTの役割は類似した症状を呈する他疾患の除外が目的で、アニサキス症の臨床診断でもCTを行うと30%は膵炎や胆嚢炎などの他の疾患であったと言われています4)。鑑別としては、急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)があげられますが、画像診断で鑑別は困難です。治療は、内視鏡的に虫体を除去します。

参考文献)
1)北村彰英、後藤司、長田啓嗣ら.アニサキスと思われる腸管線虫症の2手術例について.南大阪医学.1997;45(1):14-27.
2)吉川正英、松村雅彦、山尾純一ら.回虫症・アニサキス症・旋尾線虫症.GI Res.2006;14(4):357-63.
3)下國達志、青木貴徳、大黒聖二ら.消化管外アニサキス症による絞扼性イレウスの1例.日本臨床外科学会雑誌.2008;69(6):1373-7.
4)Shibata E, et al. CT findings of gastric and intestinal anisakiasis. Abdominal Imaging, 39:257-261, 2014.

 

症例(Rad@Home2018年11月号掲載分)


問題:46歳、男性 .

採血でFree T3 8.37pg/mL、Free T4 2.38ng/mL、TSH<0.004μU/ml。

下記のa.~e.のうち、最も考えられる疾患は何でしょうか?

a. Plummer病
b. Basedow病
c. 慢性甲状腺炎(橋本病)
d. 亜急性甲状腺炎
e. 甲状腺癌

解説と回答

◆甲状腺シンチグラフィについて
①臨床的意義
超音波検査の発達に伴い、甲状腺の形態や腫瘍の有無を判断することは少なくなり、むしろ甲状腺摂取率が重要です。
②使用する放射性医薬品
123I、131I、99mTc-pertechnetate(99mTcO4ー)で、99mTcO4ー(半減期約6時間)が最も多く用いられます。99mTcO4ーの摂取は甲状腺機能と比例し、ヨウ素の摂取制限は不要です。投与量74~185MBqを静注後、30分後に撮像します。ヨードイオン(Iー)と同様に1価の陰イオンであり、甲状腺に取り込まれますが、有機化されないため再び血中に放出されます。この原理を用いて摂取率の測定を行います。また、抗甲状腺薬の治療効果の判定にも有用です。当院での99mTcO4ーの甲状腺摂取率の正常値は、30分値で0.4~2.5%としています。

a. Plummer病は、自律性機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroid nodule;AFTN)において甲状腺ホルモンが過剰に産生分泌される病態です。結節状の集積がみられる一方で、正常甲状腺部分をほとんど、または全く描出しません(下図A)。
b. Basedow病では、甲状腺腫大と摂取率の亢進が特徴です(下図B)。
c. 慢性甲状腺炎(橋本病)では、病期により様々な像を示します。びまん性腫大、RI分布の不均一、進展例では軽度~高度の不規則な欠損像が認められます。
d. 亜急性甲状腺炎では、シンチグラフィでは全く描出しないことが多いです。無痛性甲状腺炎でも同様に摂取率が低いです。
e. 甲状腺癌では、腫瘍が存在する部位に一致して辺縁不規則な欠損像を示します。

解答d. 亜急性甲状腺炎

参考文献)
・核医学ノート 金原出版
・核医学検査ガイドブック プリメド社 など

症例(Rad@Home2018年9月号掲載分)


問題:56歳、女性.健診の胸部単純写真で異常陰影指摘.
A:単純写真、B:単純CT(縦隔条件)、C, D:単純CT(肺野条件)
(BとCは同じスライス面で、DはBおよびCの25mm頭側)

下の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

 

解答:気管支閉鎖症

単純写真(図A)では、右上肺野に棍棒状の陰影(赤矢印)を認め、右肺尖部の透過性が亢進しています。単純CT(図B, 図C)では、右肺上葉に粘液栓と考えられる樹枝状の高吸収域を認め(赤矢印)、末梢の右肺尖部の透過性が亢進しています(図D)。仮想内視鏡で観察(図E→Hの順で右B1亜区域気管支を中枢側から末梢側へ追跡)すると、粘液栓で閉鎖している気管支の起始部が認められ(緑矢印)、これを末梢側へ追跡しても気管支が閉鎖しているために内腔の観察ができない(黄矢印)ことがわかります。

比較的稀な先天奇形で、通常は1つの区域~亜区域気管支の限局的な先天的閉塞・狭窄がみられます1)。左肺上葉の後区域枝(B1+2)が最多で、右上葉や中葉がこれに続きます2)。成因として、1)気管支に複数の気管支芽増殖細胞の島があり、それの一部が結合されないとする説、2)胎児期に気管支壁の動脈虚血により2次的に狭窄・閉塞が起こるとする説が考えられています3)。今回のケースのように無症状で発見されることが多いですが、咳、繰り返す肺炎、呼吸苦などを呈することがあります。
画像所見のポイントは、球状・樹枝状の粘液栓が気道内に認められ、閉塞部位を特定することです。また、末梢の肺胞ではKohn孔が開存しているため、粘液栓周囲の肺実質は過膨張をきたし、肺野の透過性が亢進します4)。本症例はこれらの所見が認められ、典型例と考えられます。Thin-slice CTで気管支閉塞が描出できれば、必ずしも病理学的診断は必要ありません4)。

放射線科医師 淺田

参考文献
1) Ward S, Morcos SK: Congenital bronchial atresia; presentation of three cases and a pictorial review. Clin Radiol 54: 144-148, 1999.
2) 村田喜代史,上田 剛,村山貞之:胸部のCT 第3版,p.715-716, 2011.
3) Fraser Rs, Muller NL, Colman N, et al: Fraser and Pare’s diagnosis of diseases of the chest. 4th ed, WB Saunders, Philadelphia, 1999.
4) 佐々木智章,高橋康二:気道と肺の正常変異および先天異常.画像診断 35: 315-327, 2015.

今月の症例(2018年7月Rad@Home掲載分)


問題:79歳、男性。2,3日前から臍部から右側腹部にかけての痛み。 WBC11,200/μl、CRP6.5mg/dl。 造影CT横断像(BはAの1スライス尾側、CはBの1スライス尾側)

下の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

回答

魚骨による小腸穿孔、腹腔内膿瘍形成

小腸の壁内から壁外に貫通する、線状の高吸収を呈する構造物を認めます(赤矢印)。小腸壁外において、その構造物の周囲にはリング状造影効果を有する液体貯留がみられます(青矢印)。魚骨による小腸穿孔、膿瘍形成が考えられます。問診で鯛飯を食べていたことが判明しました。緊急開腹となり、術中所見で右季肋部の小腸から魚骨の露出がみられました。小腸部分切除術を行い、術後は経過良好でした。摘出標本には魚骨がみられます(黄矢印)。

本邦で消化管穿孔の原因で最も多い異物は魚骨と報告されています。魚骨による穿孔部位は肛門が多く、次いで回腸、横行結腸、食道の順で、十二指腸や胃はまれとされています。誤飲された魚骨は、大部分は合併症なく排泄され臨床上問題となることは少ないですが、まれに消化管穿孔・穿通をきたし、腹膜炎、腹腔内膿瘍を発症することがあります。魚骨誤飲したという本人の覚えがないことも多く、診断にあたっては魚類の摂取を含めた食餌内容の詳細な問診が重要です。画像診断が中心となり、CTにおいて高吸収の線状ないし弧状陰影の同定が重要です。今回のケースのように、小腸壁外に穿通した魚骨周囲に膿瘍が同時に認められることもあります。治療は、穿孔部位、症状、経過、病態などに応じて保存的治療、内視鏡摘出、外科的摘出のいずれかが選択されます。

参考文献
・葉喜久雄,井上 聡,渡辺靖夫 他:術前に診断しえた魚骨による回腸穿孔の1治験.過去10年間の魚骨による消化管穿孔271例の分析.日消外会誌2001;34:1640-1644
・高原秀典,多代尚広,永吉直樹 他:魚骨の胃穿孔により腹腔内膿瘍をきたした1例.日輪外会誌 73: 1668-1673, 2012
・山下康行:わかる!役立つ!消化管の画像診断.秀潤社,p.225, 2015
・堀川義文:救急医の立場から.画像診断 27: 286-294, 2007

放射線科医師 淺田

今月の症例(2018年5月Rad@Home掲載分)


問題:68歳、女性。3週間ほど前から時々咳や痰がらみあった。既往歴に喘息あり。WBC9900/µL(Lympho15.6%,Mono4.3%,Eosino36.4%,Baso0.2%)

解答と解説

A単純写真:両上肺野に非区域性に広がるコンソリデーションを認めます。
B胸部CT:両肺上葉に非区域性にコンソリデーションとスリガラス影を認めます。

慢性好酸球性肺炎は、主に好酸球からなる炎症性浸潤により肺胞腔内が広範囲に充填されることを特徴とする病態です。好酸球性肺炎として最も多くみられる病型で、2週間以上の経過をとるものを言います。一般に中年の女性で、喘息などのアレルギー疾患がもともとあることが多く、本症例のようにほとんどの場合BAL液や末梢血で好酸球数が増加しています。しばしば、発熱や体重減少と倦怠感を伴うことがありますが、致命的な呼吸障害をきたすことは稀です。
画像的には単純X線写真では、末梢優位の非区域性に広がるコンソリデーションを特徴とします。この所見は、末梢側が比較的保たれる肺胞性肺水腫の単純X線写真との比較から“the photographic negative of pulmonary edema pattern’’と言われます。CTにおける典型的所見は、上中肺野の末梢優位に広がる両側性ないし片側性のコンソリデーションとすりガラス影で、無治療で遷延した症例や吸収過程においては、胸膜に平行な線状・板状影が見られます。特発性器質化肺炎と画像所見が類似しますが、小葉間隔壁の肥厚は慢性好酸球性肺炎の方が見られ、結節や病変の気道周囲分布は特発性器質化肺炎に見られます。
治療としては、ステロイドが非常に良く効きます。中等度のステロイドを数ヶ月使用しますが、中止すると、しばしば再燃します。
【参考文献】・肺HRCT  原書4版 丸善出版
・肺感染症のすべてー臨床、病理、画像を学ぶー  画像診断 Vol.36 No.3 2016
・画像からせまる呼吸器感染症          画像診断 Vol.33 No.12 2013

解答:慢性好酸球性肺炎

今月の症例(R@H 2018年3月号掲載)


問題: 80歳、女性。トイレから戻り布団に入ろうとしたら、突然両肩に激痛が走った。左肩の痛みが継続するため救急要請。
下の画像から想定される疾患はなんでしょうか?



解答:脊椎硬膜外血腫

A,B 脊柱管内左背側に凸レンズ上の高濃度像が認められており、新鮮な硬膜外血腫と考えます。
脊椎硬膜外血腫は原因・誘因が明らかでない特発性のほか、背部外傷、凝固異常(抗血小板薬や抗凝固薬の使用など)、外科手術後、出血傾向のある患者に脊椎・硬膜外麻酔をした後、血管異常(動静脈奇形)などに関連して生じますが、約半数は原因不明です。本症例も特発性でした。特発性脊椎硬膜外血腫は、脊柱管占拠性病変の約1%を占める比較的稀な疾患です。年齢は15~20歳と60~70歳代の二峰性のピークがあり、男女比は1.4:1 でやや男性に多いとされています。
本症例のもっとも特徴ある症状は、血腫部位から後頚部~肩や肩甲骨~上腕に放散する突然の激痛であり、血腫の拡大、伸展とともに数時間以内に運動障害、感覚障害、膀胱直腸障害などが生じ、発症から平均3時間程度で症状が完成すると言われていますが、実際には疼痛や麻痺の程度や分布は様々です。
治療については、症状が軽微な例や改善傾向にある例は保存的治療、症状が重篤な例や悪化傾向にある例では外科的治療を行うといった報告のものが多いですが、具体的な神経症状の重症度や神経症状が改善するかどうかを見極めるために必要な経過観察の時間については未だコンセンサスが得られていないのが現状です。
CTでは、急性期の脊椎硬膜外血腫は髄液よりも高吸収を呈する紡錘状・三日月状の硬膜外占拠性病変として描出されますが、病変が小さいため、積極的に疑って脊柱管内をチェックしなければ、しばしば見逃される疾患です。脊椎MRがより有用とされていますが、血腫の信号は時期により異なるため、発症時期と併せた読影が必要とされます。(文:放射線科医師 大森)

【参考文献】
・わかる!役立つ!消化管の画像診断 秀潤社
・すぐ役立つ救急のCT・MRI など 秀潤社 など

今月の症例 (「R@H」2018年1月号掲載)


問題:81歳、男性。腹痛、嘔吐、下痢あり 。

下の画像から想定される疾患はなんでしょうか?



解答:腸重積

A:横行結腸に拡張した腸管を認め、その内部には周囲に血管(→)と脂肪組織(→)を伴った上行結腸(→)が陥入しています。壁の造影効果は保たれており、明らかな虚血を疑う所見は指摘できません。
B,C:陥入した腸管の先進部には、不均一に造影効果を示す腫瘤が認められます(○)。

腸重積は腸管の肛門側に口側の腸管が入り込んで嵌頓した状態を言い、腸管および腸間膜が絞扼し血行障害が起こり、絞扼性腸閉塞から腸管壊死となるリスクがあるため、早期の診断、加療が重要となる疾患です。小児の発症が一般的で成人発症はまれな疾患です。小児では好発部位は回腸で、多くは原因不明ですが、少数例でMeckel憩室やポリープなどの器質的要因が認められることがあります。成人では消化管腫瘍(癌、粘膜下腫瘍、悪性腫瘍、ポリープなど)が腸管の蠕動運動によって肛門側へ引き込まれることが原因となっていることが多く、嵌入部位は様々です。小児の場合には症状と触診によって診断がついてしまうことが多いですが、成人の場合、症状は非特異的で、他の急性腹症との臨床的な鑑別は困難であることが多いです。画像診断に関しては超音波検査では重複した腸管が横断面で的のように見えるtarget sign、長軸方向で腎臓のように見えるpseudo-kidney signが知られています。CTでは超音波検査と同様に、重複した腸管が層状構造として描出され、嵌入部に腸間膜の血管や脂肪が認められます。小児では注腸造影や高圧浣腸による非観血的整復法で整復されることが多いですが、成人では腫瘍が原因となっていることが多く、開腹手術が原則であるため、重積先進部に注意する必要があります。本症例でも開腹手術が施行され、病理で横行結腸癌と診断されています。(文:放射線科医師 大森)

【参考文献】
・わかる!役立つ!消化管の画像診断 秀潤社
・すぐ役立つ救急のCT・MRI など 秀潤社 など