今月の症例 (「R@H」2018年1月号掲載)


問題:81歳、男性。腹痛、嘔吐、下痢あり 。

下の画像から想定される疾患はなんでしょうか?



解答:腸重積

A:横行結腸に拡張した腸管を認め、その内部には周囲に血管(→)と脂肪組織(→)を伴った上行結腸(→)が陥入しています。壁の造影効果は保たれており、明らかな虚血を疑う所見は指摘できません。
B,C:陥入した腸管の先進部には、不均一に造影効果を示す腫瘤が認められます(○)。

腸重積は腸管の肛門側に口側の腸管が入り込んで嵌頓した状態を言い、腸管および腸間膜が絞扼し血行障害が起こり、絞扼性腸閉塞から腸管壊死となるリスクがあるため、早期の診断、加療が重要となる疾患です。小児の発症が一般的で成人発症はまれな疾患です。小児では好発部位は回腸で、多くは原因不明ですが、少数例でMeckel憩室やポリープなどの器質的要因が認められることがあります。成人では消化管腫瘍(癌、粘膜下腫瘍、悪性腫瘍、ポリープなど)が腸管の蠕動運動によって肛門側へ引き込まれることが原因となっていることが多く、嵌入部位は様々です。小児の場合には症状と触診によって診断がついてしまうことが多いですが、成人の場合、症状は非特異的で、他の急性腹症との臨床的な鑑別は困難であることが多いです。画像診断に関しては超音波検査では重複した腸管が横断面で的のように見えるtarget sign、長軸方向で腎臓のように見えるpseudo-kidney signが知られています。CTでは超音波検査と同様に、重複した腸管が層状構造として描出され、嵌入部に腸間膜の血管や脂肪が認められます。小児では注腸造影や高圧浣腸による非観血的整復法で整復されることが多いですが、成人では腫瘍が原因となっていることが多く、開腹手術が原則であるため、重積先進部に注意する必要があります。本症例でも開腹手術が施行され、病理で横行結腸癌と診断されています。(文:放射線科医師 大森)

【参考文献】
・わかる!役立つ!消化管の画像診断 秀潤社
・すぐ役立つ救急のCT・MRI など 秀潤社 など