どちらを選ぶ?? 2Dと3D


フォーカス!MRI検査

当院の腰椎MRI検査は、ミエログラフィー・T1強調画像とT2強調画像の矢状断・水平断を撮像しています。コントラストの異なった撮像条件を2方向から観察することにり、局在診断・質的診断を容易に可能とします。

左下肢痛の症例を以下に示します。T2強調画像の矢状断で脊柱のアライメント・椎体の信号・椎間板の突出を、水平断で脊柱管がどの程度狭窄しているか観察します。

最近のトレンド

ルーチン撮影の水平断(2D撮像でスライス厚5mm)で椎間板の膨隆による硬膜嚢の狭窄は指摘できますが、当院の整形外科医から依頼されるティーツー キューブ「T2 CUBE」という追加撮像シーケンスがあります。(※椎体を専門とする先生からのオーダーで、オプション検査として運用しております)
これは3D撮像シーケンスです。詳細は割愛しますが、簡単に言うと、画像の「ぼけ」をより抑えられるような撮像方法です。

従来撮像では2Dで3~5mmスライス厚のデータ収集を行うため、撮像方向のみ観察可能でしたが、「T2 CUBE」は1mmのアイソトロピックボクセルによるデータ収集※であるため、CT画像のように撮像後のデータを任意の断面に再構成して取得することができます。
※アイソトロピックボクセルデータ収集
3D画像作成時の使用データがX軸、Y軸、Z軸の各方向ともほぼ同じサイズの立方体として得られること

先ほどの左下肢痛症例で「T2 CUBE」を撮影すると、矢状断で撮影後、水平断および冠状断へ再構成が可能となります。

技術がどんどん進歩

腰椎はもともと生理的湾曲の強い箇所なので、「T2 CUBE」で撮像することで、任意の断面に再構成が可能となり、診断するうえでも非常に多くの情報が得られます。これらの技術は、高性能な撮像コイル・MRI装置のハード面・ソフト面の進化によってもたらされたものであり、MRI検査を受ける患者さんに対しても、非常に有益な情報を提供できます。
ただし、やはり分解能においては2D撮像の方が良好です。さらに3Dは撮像時間が長い(4分30秒程)ため、痛みが強く体勢保持が難しい場合は2D撮影(2分30秒程)の方が適していることもあります。
この他、疑う症例によってT2脂肪抑制画像、拡散強調画像など撮影することもあります。それぞれの症例をしっかりと診断、読影できるように、そして、個々の患者さんごとに様々な撮像シーケンスを駆使してMRI検査を行っております。今度ともよろしくお願い致します。

造影剤なしで冠動脈をみる フィエスタFIESTAとは?


造影剤なし!冠動脈MRA

当院では冠動脈疾患が疑われる患者さんにCTにて造影剤を用いた冠動脈撮影(冠動脈CTA)を実施しています。しかし、冠動脈CTAは造影剤を使う為、腎機能が悪い方や造影剤アレルギーをお持ちの方に検査することができません。そこで造影剤を用いずに冠動脈を描出する“冠動脈MRA”がMRIでは可能です。さらに冠動脈CTAで評価が難しいとされる石灰化部も、“冠動脈MRA”では石灰化を除いて血管の評価が可能なため有効とされております。

テクニックは3つ

MRIで冠動脈を撮影するために必要となるテクニックは大きく3つあります。
・心電図同期
・呼吸同期
・高速信号収集
今回は3つ目の「高速信号収集」についてご紹介させていただきます。

“フィエスタFIESTA”が血流を描出

冠動脈MRAは常に流れている血液(撮影対象が動いている状態)を高信号で描出する為に、データ収集時間を短くする必要があります。一般的なT1強調画像やT2強調画像の撮影方法では、信号収集にかかる時間が長いため、流れている血液から信号を得ることができません。そこで“FIESTA”という撮影方法を用います。“FIESTA”は信号収集時間が極端に短いため、血流を高信号で描出することができます。T1強調画像、T2強調画像とは異なるコントラスト画像となります。

MRIでは本来、データ収集時間を短くしようとすると収集できる信号が減るため、画像の劣化を招いてしまいます。しかし“FIESTA”では、画像コントラストに影響を及ぼす通常では用いられない信号も含めた多くの信号を収集するので、一般的なT1強調画像やT2強調画像のようなコントラストにならない代わりに、短時間にも関わらず広い範囲を高画質で撮影できます。この撮影方法により良好な冠動脈の撮影が可能となります。

Case Study

狭心症の除外目的で冠動脈CTAを撮影したところ、石灰化部の評価ができなかったため、冠動脈MRAを撮影することになった症例です。左冠動脈(LAD)の走行に沿って再構成した画像を以下に示します

緊急性が高くない冠動脈検査はほとんどCTで行われております。MRIの依頼があるのは腎機能等の理由で造影剤が使用できない患者さんの場合です。どの検査も一長一短なのでCTと比較して、
・解像度が劣る(分枝の評価は難しい)
・撮影時間が長い(45分ほど)
・心電図と呼吸両方の撮影タイミングが必要(同期が合わないと撮影不可の場合もあり)
以上のような短所もあります。しかし造影剤が使えない患者さんにとって唯一ともいえる冠動脈の描出法なので、依頼があった際はより一層の責任感を持って検査に望んでおります。患者さん、先生に貢献できるように今後とも研鑽を積み続け、より良い画像をお届けしていきたいと思います。

MRI検査を安全に実施するために


今回は当院がMRI検査を安全におこなうために、日々行っていることを紹介したいと思います。
MRI検査をするときに最も気を付けなくてはいけない事、それは“本当にその患者さんをMRI室に入れて検査して良いのか”ということです。MRI室に金属は持ち込めません。しかし、患者さん自身の体内にいろいろな医療デバイスが入っていることがあります。当院の場合、1.5T(テスラ)と3.0Tの2台MRI装置があるため特に注意が必要です。

 

MRIは強力な磁石と電磁波の力を利用して身体の臓器や血管を撮影します。
MRIの磁石の強さはT(テスラ)で表し、数が大きいほど磁力が強くなります。したがって、1.5Tより3.0Tがより大きな磁力です。
この磁力が体内金属への及ぼす作用は
①吸引力・回転力
②発熱
があり、磁力が強いほど作用も大きくなるため体内金属の種類によって1.5T装置のみ検査可能か、3.0T装置でも検査を行えるのか確認が必要となります。

便利なサイト見つけました!

医療デバイスそれぞれの添付文章が全て揃っていれば、そこからMRIに関する情報を探し出せば良いですが、時間と労力がとてもかかります。そこで、文字を入力しただけですぐに検索してくれるインターネットを使用しない手はありません。しかしインターネット検索はとても手軽な一方、情報が多すぎてこれもまた大変な場合が正直あります。
何かもっと手軽に、そしてすぐに分かる検索サイトはないものかと思っていたところ、技師長が情報を持ってきてくれました。非常に便利なので先生の病院でもし困っていたら使ってみてください。
そのサイトは、メディエ株式会社が運営しているmedie(Medical Disporsable Equipment)医療材料データベースです。「本当にこういうの、探していたんだよね」と言いたくなるサイトです。この中にある、「医療機器のMR適合性検索システム」。非常に優れものです。この会社は、もともと医療材料のデータベースを役立つ分類ごとにまとめて編集し、お客様に提供していた会社のようです。このMRI適合検索システムのおかげで、翌日のプリチェックと安全確認をスムーズに行うことができています。MRI検査を安全に効率よく行うためにもこの検索システムは非常に重宝しております。

また、MRI検査の安全面での疑問などはMRI SAFETY FOURUMもおすすめです。MRI検査時における様々な疑問に対して解決してくれます。日々更新されているので、こちらのサイトもおすすめです。
便利なものは共有した方が良いなと思い、今回はこのようなサイトを紹介させて頂きました。安全な医療を提供する上で、また良い情報がありましたらこの場を使って紹介していきたいと思います。

MRI担当 平野

軟部腫瘍のMRI検査


軟部腫瘍の画像診断では、腫瘍の存在診断に始まり、良悪性の鑑別や組織の推定、腫瘍の進展範囲の把握などが行われています。
現在、多くの画像モダリティ(超音波、単純X線撮影、CT、MRIなど)がある中で、組織コントラストに優れ、任意の断面を撮像可能であり、軟部腫瘍に対しての質的診断、広がり診断に優れているMRI検査は極めて重要であり、当院でも月に数例は必ずオーダーされています。
病変部位や腫瘍形態が様々であるため、軟部腫瘍は撮像する技師の腕の見せ所でもあります。

勝負は検査の前から!!

検査前に病変部位を確認し撮像範囲を決めます。
MRI検査の撮像時間は他のモダリティと比べて長く、どの撮像部位でも20~30分はかかる検査であり、患者さんは撮影中、可能な限り動いてはいけません。なかなか大変な検査ですが、われわれ技師はなるべく早く検査を終えてあげたいと考えています。
そこで事前に依頼医からの情報やカルテを確認し、さらに検査前に患者さんと部位の確認をしています。より多くの情報を得ることで、患者さんの撮影体位、撮像コイルの選択がスムーズに決まり、円滑に検査を進めることができます。

病変部位にマーカーと言う、いわゆる目印となるものを貼り付けるのも必須です。これは、MRI画像で基本となる、T1強調画像とT2強調画像で共に高信号を示すもので、撮影時・読影時の目印になるものです。

手指、手関節、肘関節にある軟部腫瘍に対しては、基本的にうつぶせで寝てもらいます。病変部にマーカーを貼り付け、撮影したい範囲がしっかり入るようコイルを選択しています。
動かないように固定することが大事です。病変部を圧迫し過ぎないように注意します。

コントラストを制する!!撮像シーケンス

T1強調画像とT2強調画像、T2脂肪抑制画像を基本とし、より脂肪を疑う場合はT1脂肪抑制画像、出血病変やヘモジデリン沈着の検出にはT2スター強調画像、また腫瘍の良悪性の鑑別の助けとなる拡散強調画像も撮像しています。

脂肪腫疑いの1例
T1強調画像、T2強調画像ともに高信号で、境界明瞭、辺縁平滑な腫瘤を認めます。
T1脂肪抑制画像にて内部の信号低下あり、一部隔壁構造も伴っているのが分かります。
明らかな充実成分や、拡散強調画像で高信号となるような、拡散制限を伴う部位は無いということで、今回の検査では脂肪腫が疑われました。

 

-頸動脈プラークイメージ-


MRIに携わっていると、めまいやしびれといった症状の患者さんを撮影した際に頸動脈狭窄を発見することがあります。頸動脈が狭窄するとTIA(一過性脳虚血発作)を引き起こすだけでなく、形成されたプラーク(変性、肥厚した血管の膜)が剥がれることで脳梗塞を発症すると知られています。
その為、プラークがどのような性状であるか評価することがその後の治療に重要となってきます。そこで今回は当院で行われているMRIの頸動脈プラークイメージについてご紹介します。

プラークの種類と見え方

頸動脈プラークには以下に示すように2つタイプがあります。
プラークイメージは保存的に狭窄部を観察する場合はもちろん、CEA(頸動脈内膜剥離術)やCAS(頸動脈ステント留置術)といった血行再建術による治療を考えた場合に必要となる狭窄の位置やプラークの性状を評価する際にも有効です。

プラークの種類による見え方の違い

当院のプラークイメージの特徴

当院で撮像しているプラークイメージは3つあります。

① 3D TOF MRA (3D TOF法による非造影血流画像)

血液を高信号で描出。狭窄部位を探すために用いられます。また、プラークの被膜の厚みも観察できます。画像処理でMIP画像も作成可能です。

② 3D Cube T1WI FS (3D CHESS法による脂肪抑制T1強調画像)

血管は黒、不安定なプラークは白で描出し、安定したプラークは灰~黒で描出します。
3Dで細かく撮影しているため画像処理によって様々な断面が作成可能です。

③ LAVA FLEX (3D Dixon法による脂肪抑制T1強調画像)

②とコントラストはほぼ同じですが、Dixon法と呼ばれる局所磁場不均一に強い方法を用いるため肺野が近接している腕頭動脈、鎖骨下動脈のプラークを評価するのに有効です。

以上のように、MRIでは病態に合わせて撮影方法を選択する事によって、よりわかりやすい画像を得る事ができます。その為、検査中は得られた画像を注意深く観察し、より良い画像が取得できるように努力しています。

水を味方に!? MR ハイドログラフィ


MRIは撮影パラメータを操作する事でT1強調画像、T2強調画像といったさまざまなコントラストの画像を得ることが可能です。さらに撮影法を工夫する事で造影剤を使わず血管を描出するMRAなどのような特殊な画像も得ることができます。
今回ご紹介するのはその中の一つ MR ハイドログラフィ という方法です。

MR ハイドログラフィとは?

T2強調画像は水を高信号で描出しますが、撮影時に水をより強く高信号にすることで周囲の組織を抑制しつつ水のみが画像化されます。これがMR ハイドログラフィです。
当院でも様々な部位でこの撮影を行っています。いくつかご紹介していきます。

MRCP(MR cholangiopancreatography:MR胆道膵管撮像法)

胆汁、膵液を対象とした手法です。胆嚢、胆管、膵管を描出します。
当院では細かいスライスと厚いスライスの2種類を撮影することで局所の観察と全体像の把握を行なっています。
腹部の撮影のため息止めが必要となりますが、上手く息が止まらない場合は自由呼吸下でも撮影可能です。
胆石や胆嚢炎、総胆管結石膵がん、胆道がん、胆のうがんなどの疾患で活躍する撮影です。結石の部分は通常類円形の欠損像として描出されます。手術前に胆管膵管の走行を把握するのに役立ちます。

MRU(MR urography:MR尿路撮像法)

尿路の全体を描出する手法です。
経静脈性腎盂造影(DIP)でも尿路を撮影できますが、MRUでは造影剤を使わず検査可能です。尿管結石や尿路腫瘍などで拡張された尿管の描出と閉塞部の同定に役立ちます。
また、連続的に撮影をすることで尿の流れを観察することもできます。

MR ミエログラフィ(MR脊髄撮像法)

脳脊髄液を対象とした手法です。脊柱管内の脊髄を描出します。
X線でもミエログラフィがありますが、MRIでは造影剤を使用せず侵襲性なく検査可能です。
椎間板突出などで脊髄が圧排されているところが欠損像として観察できます。
息止め不要で10秒程度で撮影が可能です。

MRC(MR cisternography:MR脳層撮像法)

こちらも脳脊髄液を利用した手法です。微細な脳血管や脳神経を脊髄液の中に陰影像として描出します。
スライス厚をとても薄く(0.8mm)撮影するため脳神経由来の腫瘍を見つける場合や、血管が神経を圧迫していないかを観察する際に有用です。撮影後に白黒反転する事で血管と神経を白く描出することも可能です。

MRIの少し特殊な画像についてご紹介させていただきました。
この様にMRIは工夫によって様々な撮影が可能となります。より良い画像を提供するためにこれからも励みたいと思います。

フェイクイメージ を撃退せよ!


アーチファクトとは…

虚像、障害陰影とも言われ、画像に映り込んでしまうにせ偽の信号を指します。特にMRIのアーチファクトは多くの種類があり異常所見ではない部位でも異常のように見えてしまう場合があるため、よく理解し適切に抑制することが必須です。
今回のニュースレターではMRIで見られる代表的なアーチファクトを紹介します。

折り返しアーチファクト

撮影する範囲の外側にある対象物が撮影範囲内に映り込む現象で、位相エンコード方向※に現れます(図1)。本来画像の外にある対象物が映り込むことは診断にも影響することがあるため、抑制する必要があります。抑制方法はいくつかありますが、それぞれの方法にメリット・デメリットがあるので検査や患者さんの状況ごとに適切な方法を選択しています。

モーションアーチファクト

様々な動きによるアーチファクトです。動脈、静脈の拍動や呼吸の動きによるものや、患者さんの体動によって生じるものがあります。腹部検査では呼吸によるアーチファクトがしばしばみられます(図2)。検査中の不意の動きなども考慮し、私たち技師は目的部位をしっかり固定し、患者さんに動かないでいただくことの重要性を説明してから検査をしています。

磁化率アーチファクト

磁化率アーチファクトとは、組織と空気、組織と金属といったように磁化率の異なる境界に生じるアーチファクトです。(磁化率とは物質の磁化の難度を表すもので、磁石にくっつきやすいものほど強い。)磁化率の違いがMRI装置内で磁場の歪みを生み、画像の歪みの原因になります。その例で多いのが、義歯(図3)、入れ歯やアイシャドー、金属クリップなどです。 検査の前に取り外すことの出来るものはすべて外していただいていますが、取り外せない物については同部の周囲が広範囲に歪みを生じ評価が難しくなります。

厄介なアーチファクトも上手く利用すると、とても力強い味方になってくれます。そんな症例を紹介します。

微小出血検出(磁化率アーチファクトを利用)

T2*強調画像は磁場の不均一性に敏感であるグラジエントエコー法で撮像したMRI画像の一種です。頭蓋内の微小出血はCT画像には映りませんが、T2*強調画像で磁化率アーチファクトにより画像に現れます。

その他にも、ケミカルシフトアーチファクト、N/2アーチファクト、打ち切りアーチファクト、ジッパーアーチファクト、マジックアングルアーチファクト、クロストークアーチファクトなどなど、たくさんのアーチファクトがあります。MRI担当技師は、ドクターが求めている画像を出来るだけキレイに撮像すべく、日々これら厄介なアーチファクトと戦って仕事をしています。

MR Elastography(エラストグラフィ)とは


本邦では近年、生活習慣病が急速に増加しています。それに伴い、NAFLD(non-alcoholic fatty liver disease,非アルコール性脂肪肝)が注目されています。本邦におけるNAFLD患者は1000万人にのぼると推定されています。NAFLD患者のうち、20%(200万人)はNASH(non-alcoholic steatohepatitis,非アルコール性脂肪肝炎)であるといわれています。NASHは一見単なる脂肪肝と鑑別できませんが、ウイルス性肝炎と同様に慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌と進行する予後不良の疾患です。

従って、NAFLDからNASHを抽出することが臨床上極めて重要な問題となります。様々な臨床指標からの抽出が試みられていますが、最終的には肝組織における炎症とその結果としての線維化の有無を評価することになります。従来その評価には生検が施行されていましたが、NASHの患者200万人を抽出するために潜在患者であるNAFLD患者全員に侵襲的な生検を施行するのは非現実的です。そこでNASH患者を拾い上げるための非侵襲的な検査として

MR Elastography(エラストグラフィ)

が近年注目されています。今回そのMR Elastography (以下MRE)について解説させていただきます。

肝臓をゆらす!?

MRE とは肝の線維化を非侵襲的、簡易的に診断するためのMRIの撮影方法の1つです。
通常の肝臓の撮影と異なるの点は、パッシブドライバー(下図)という装置を使用し、外部から肝臓に振動を与え、波を発生させる点です。その波が返ってくるスピードから肝臓の固さを知ることができます

どうやってゆらすの?

撮影のポジショニングを簡単に説明します。
剣状突起からやや右側(肝臓の位置)にパッシブドライバーを配置し上からバンドで固定します。その上にボディコイルを置き、コイルがずれないようにさらに上から固定します。
撮影時間は他のルーチン撮像を含めて約30分程度です。
撮影の後半でパッシブドライバーが振動して、発生した波を解析します。振動は強いですが、痛みはありません。

具体的にMRE撮像から得られる画像は
・ Wave image
・ Elastography
の2つです。実際の画像と読み方を次に示します。

MR Elastography(エラストグラフィ)画像の見方

Wave image 波の伝わり方
Elastography 物質の硬さ(相対値)
MRElastgraphyでは、Wave imageが波の伝わり方を、Elastographyが物質の硬さ(相対値)を示します。さらにElastographyはcolor map、Glay scaleの二種類で表示しています。

MREの撮像ルーチンでは肝線維化の評価のみならず以下のような評価も含まれています。撮像時間は30分程度で終了します。MREルーチンでは造影は行っていません。

・肝繊維化診断:病理の線維化指標に対応したF0-F4で表現
・肝の脂肪沈着の量:%表示されます。
・肝の鉄沈着の量:NAFLDからNASH移行の原因の一つ
・非造影のMRIによる肝SOLの評価
など

この技術は肝線維化を侵襲性なく行えることが最大のメリットです。もちろん通常の肝臓の撮影も同時に行えるので、様々な肝疾患の診断に役立ちます。肝生検の結果とも高い割合で一致しているという報告※もあり、期待が高まっていくと思われます。

※参考文献:肝臓MR Elastographyについて―MRIで硬さを測る― 池波 聰 アールティ No.56 January 2013

 

これぞ!高級マットレス!?


最近はご高齢の方が検査する機会が増え、円背の患者さんも1日に何人もMRI撮影にいらっしゃいます。
当然、円背しているとまっすぐ寝ることは出来ず、なおかつ頭部は顎が上がった状態になります。(このポジショニングだと頭部MRIや頭部血管の撮影に悪い影響を及ぼしてしまうことがあります。)

さらに、曲がった背中が常に寝台にあたるため検査中は痛みが続き、動いてしまうことで検査が上手くいかないこともあります。そこで、当院では 円背姿勢の患者さんに対してMRI用スパインマットレスというのを使用しておりますので、ご紹介したいと思います。

MRI用スパインマットレス
円背姿勢の方が平らな寝台に横たわる際には、頭頂が下がり顎が上がった状態になります。
そこでスパインマットレスを用いると、患者さんの足が自然に上がり、頭部位置が下がり顎を引いた状態に近づけることが出来ます。長時間の検査でも、円背患者さんにとって無理のない体勢を維持し、検査を円滑に進める事ができます。

さらに、臀部から脊柱部にかけて、左右からの傾斜を設け安定したホールド感をもたらす新タイプのスパインマットレスが追加されました。背骨があたる中心部はクッションを抜き圧力を分散することにより、背骨のマット底打ちによる痛みを大幅に軽減できる形状です。実際に患者さんには非常に好評を得ています。CT検査で使っている施設もあるようです。MRI検査は他の検査に比べて、検査にかかる時間が長いですのでこのような患者さんが少しでも楽になるような補助具は必要ですね。

造影剤を使用しないで血管撮影!! 〜下肢動脈編〜


MRIで造影剤を使わずに頭部血管を描出できることは以前に他の技師から紹介させていただきました。実は他の部位の血管も造影剤を使わず描出可能です。今回はその一つである下肢動脈の検査についてご紹介させていただきます。

下肢動脈でも造影剤なし!

まずは撮影の手順を紹介します。
①検査着に着替えてもらい、MRI室に入ります。
②検査は仰向けで行います。足先まで覆うようにコイルを配置し、指にはセンサーを装着します。良い画像を得るために足は動かさないように患者さんにご協力いただきます。
③センサーにより心電同期させ拡張期と収縮期の画像を撮像します。
2つの画像から動脈がよく描出される画像が得られます。(下記で詳しく説明します。)
④下腿部・大腿部・骨盤部の3部位に分けて撮影し、最後に合成します。

動脈だけを画像にするには…

動脈は収縮期において血流が速いため信号が抜け描出されず、拡張期では血流速度が緩やかになるため高信号を示します。
静脈は心周期に依存することなく血流速度が遅いため、どのタイミングでも高信号に描出されます。
よって、拡張期から収縮期の画像を差分することで動脈画像となります。

CT  vs  MRI

造影剤を使用したCT画像と比較してみました。
例えば下肢痛でASOを疑った場合、エコー検査やABI測定などの生理検査で下肢血流低下を判定してから造影CTを撮影します。
CT画像の結果次第でEVT治療(カテーテル治療)の適応などを判断しますが、このCT画像(左)のように石灰化が多いと血管の狭窄部位の同定は困難です。
このような場合に、MRI撮影を行うと(右)石灰化部分の評価が可能となります。

今回紹介した撮影方法で造影剤を使用せずに石灰化の影響を受けず下肢動脈の評価が行えます。さらにMRIでの撮影なので被ばくがありません。たくさんのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
まずは検査時間です。約30~40分と長時間の検査となります。その間は動かないでいただく必要がある為、患者さんの状態次第では検査不適応となってしまう場合もあります。さらに、不整脈がある場合には画像の収集がうまくできずきれいな動脈像が得られないこともあります。
メリット、デメリットが共にありますが、そんな中でもMRIによる検査が選択されているケースには腎機能不良や若年者、石灰化が多く評価困難な症例が挙げられます。
やはり造影剤を使うことなく行えることが最大のメリットなので、これからも様々なケースを経験し生かしていくことでこの検査に適応できる方を増やしていきたいと思います。

石井泰貴