血管撮影装置更新しました


Azurion7(オランダのフィリップス社製最新装置)を導入し、2023年の10月より稼働を開始しました。

C-アームが2つ搭載されているバイプレーンシステムであり、一度の造影で2方向から同時に撮影可能な構成となっています。画像構成のキモとなるフラットパネルは、20インチと15インチの2種類のサイズで、広い視野が必要となる頭部領域や腹部領域、深い角度付けを必要とする循環器領域の両方に対応が可能となります。

操作性も申し分なく、ベッドサイドに位置するタッチパネルを用い、術者が清潔下で様々な操作をすることが可能です。スマホ感覚で画像の拡大ができ、3D画像を動かして観察することもできます。

アプリケーションも豊富に搭載されており、なかでも脳動脈瘤の血流解析ができる「Aneurysm Flow」は最新の技術です。脳動脈瘤のどの壁に力が加わっているのか、また治療前後で血流がどのように変化したかを可視化できるため、治療方針の一助となります

導入から数か月たち画質の調整や担当技師の研修が落ち着いた段階であり、装置を使いこなすところまでは到達していないのが現状ですが、装置のスペックを最大限に引き出せるよう努力していく所存です。

血管撮影担当 北畠(太)

今月の症例(2024.6掲載)


症例1 70代 女性 背部痛:図1
症例2 30代 男性 心窩部痛 嘔吐:図2
症例3 70代 男性 嘔吐:図3
下記の画像から想定される構造物はなんでしょうか?

 

解答と解説

解答
症例1:魚骨 症例2:餅 症例3:椎茸

解説

・症例1 図1では胸部上部食道内に扁平な線状の高吸収構造が描出されています(図1黄色矢印)。事前に鯛のあら汁を食べたとの食事歴があり、内視鏡検査で食道内に魚骨が見つかり摘出されました(図4)。


・症例2 図2では胃の幽門部から十二指腸球部付近に高吸収構造が認められます(図2橙色矢印)。1月の症例であり、食事歴や高吸収な構造であることから餅による軽微な通過障害が存在したものと推測されます。この症例は経過観察で改善しました。
・症例3 図3aではらせん状の低吸収構造が食道内に認められます(赤矢印)。図3b,cではともに中心部に低吸収域を伴う円形から楕円形の構造を認め、内視鏡検査では椎茸が摘出されました(図5)。食事の際に椎茸を丸呑みしたようです。

消化管異物の多くは自然排泄され、消化管穿孔など合併症確率は1%以下とされています1)
症例1の魚骨や義歯など食道異物は穿孔や縦隔膿瘍、臓器損傷となる可能性があり、内視鏡で摘出する必要があります。穿孔を起こす異物は欧米では鶏骨や爪楊枝が多いとされますが、日本では食生活を反映し魚骨が最も多いとされます2)。その他の誤嚥物はPTPシートや義歯が多いとされ、食道内に留まることが多いようです。魚骨の種類は鯛が最も多く、鮭とヒラスがそれに続きますが総数が少なく参考程度の報告です3)。穿孔部位は報告により様々で結腸に多いとされます4)
症例2、3の餅やキノコなどの食餌性イレウスは全イレウスの中で0.3-4.0%と比較的稀とされます5)。食餌性イレウスの原因としてはこんにゃく類(30%),海藻類(10%),餅(5%),種子,キノコなど報告されています6)
餅は消化に良いと認識されがちですが、餅米のデンプンはアミロペクチンという熱水にも溶解しない成分で構成されており、低温で硬くなり粘着性が増す特性があります。
丸呑みされた餅であっても高温で変形しやすければ幽門輪を通過し、小腸内で温度低下、硬化した際に通過障害となる機序が存在するようです7)。今回の症例2では胃の幽門部から十二指腸球部付近に餅が位置しており比較的低温の餅の可能性があります。さらに餅の場合は時期も重要であり、1月に症例が集中します。

症例3の椎茸に関しては食物線維が豊富で消化困難かつ水分により腸管や食道内で膨張するため十分な咀嚼が必要であるとされます8)
画像所見は症例1の魚骨はカルシウム成分を反映して高吸収の線状構造として描出されます。CT検査では魚骨の90%が描出され、術前診断に有用とされます3)
症例2の餅も均一な高吸収構造として描出され、CT値は145HU前後とされています9)。今回症例でも高吸収であり、餅による通過障害の診断にはCT検査が非常に有用となります。
症例3の椎茸ですが原型を留めていればらせん状の低吸収構造として描出されるものの、角度によっては典型像とならないため術前診断は困難な事が多いとされます10)。今回症例では食道内構造が図3a水平断像でらせん状に見え、摘出後の椎茸と対比すると傘や軸のような構造も認められます(図6)。しかしながら事前情報(食事歴など)が無い場合には診断は困難となります。また、当院では腸管内にキノコ様構造が描出されているものの自然軽快した症例も存在します(図7)。過去の報告では消化管内の5cm以上の椎茸は手術治療を必要とする可能性が高いようです10)

症例のポイント
① 魚骨や餅など高吸収物質ではCT検査が術前診断に有用
② 低吸収な食餌性通過障害では異物の種類の同定は困難
③ 典型的な形態を呈した場合は術前診断できることもある
④ 食事歴や時期など臨床情報が重要

消化管の食餌性通過障害の3症例でした。

【参考文献】
1) Perelman H, Journal Abdomen Surgery. 1962; 4:51-53. 2) 石橋ら, 日本外科学会雑誌. 1961; 62:489-509.
3) 及川ら, 日本腹部救急医学会雑誌. 2007; 27:441-446. 4) 松井ら, 日本臨床外科学会雑誌. 1986; 47:955-961.
5) 小金沢滋, 日本臨床外科学会雑誌. 1968; 29:61-70. 6) 石橋ら, 京都医師会雑誌. 2010; 57:55-58.
7) 野村ら, 仙台市立病院医学会雑誌. 2018; 38:3-8
8) Gerber P, Schweizerische Medizinische Wochenschrift. 1989; 119:1479-1481.
9) 岡ら, 日本消化器外科学会雑誌. 2013; 110:1804-1813.
10) 永岡ら, 日本腹部救急医学会雑誌. 2017; 37:1039-1042.

核医学装置が 更新されました!


2010年3月よりおよそ14年間稼働していました「Infinia」は2月17日をもってその役目を終えました。設備改修を伴う1か月ほどの更新工事を経て3月13日より新規核医学診断装置「NM/CT 850」が稼働開始となりましたので、新装置「NM/CT 850」の特徴をご紹介します。

1 新コリメータとSwift Scan

新コリメータ「LEHRS(Low Energy High Resolution Sensivity)」は、従来コリメータの分解能の良さを保持したまま、感度が大幅にアップします。さらにSwift Scanというアプリケーションも付帯されます。これにより、検出器が移動する際のデータ収集も可能となりWhole Body収集(全身像撮影)、SPECT収集(断層撮影)ともに最大25%の収集時間短縮が実現します。

2 新しい解析ソフトウェア/アプリケーションの搭載

新たな解析ソフトウェア/アプリケーションを導入します。代表的なものを幾つかピックアップしてご紹介します。

<DAT Quant(ダット クオント)>
ドーパミントランスポーター・イメージング(DATスキャン)にて視覚的評価、自動ROI解析、ノーマルデータベースとの比較を行います。線条体への集積については左右の尾状核、被殻と分けて評価を行います。従来のDAT Viewに加わることで、より詳細な評価が可能となります。

<Q Metrix(キュー メトリックス)>
SPECT SUV(SUV : Standard Uptake Value)の使用で診断に定量的評価が加味されます。

<Q Lung(キュー ラング)>
肺機能の定量評価を自動区域分け機能でより正確に、簡便に行えます。

<DOSIMETRY TOOLKIT(ドジメトリー ツールキット)>
経時的に取得した画像から、目的臓器毎の放射性医薬品の滞留時間を算出します。昨今の放射線内用療法でも注目されています。

3 短時間収集を可能とする様々なテクノロジー

操作性が簡便で、多軸同時駆動により素早くガントリー(検出部)が稼働し、ポジショニングの短縮が達成されます。前装置より引き継がれたEvolution(分解能とノイズを改善する画像処理,従来はSPECTのみ適応)は適応が拡大され、画質を維持しつつ収集時間の大幅な短縮が可能となります。

4 操作性と再現性の向上

複数同じ部位を撮影する際の位置決めの再現性が向上、撮影手技を変更追加するときの操作の切り替えのスピードが格段に向上しました。

5 吸収補正用CT搭載型SPECT装置

NM/CT 850にはCT管球が搭載されています。吸収補正を目的とするため、使用する管電流は30mAで低線量であり低被ばくです(診断用CTは数百mA)。SPECT画像における集積部位の位置情報取得および集積程度の評価精度向上が達成されます。前述2で挙げました「新しい解析ソフトウェア/アプリケーションの搭載」にも応用されています。なお、新装置NM/CT 850で得られましたCT画像を一般的な診断画像として供出することや画像診断をすることはありませんのでご承知おき願います。SPECTとCTのFusion画像につきましては診断用CTで撮影された画像を用いて作成させていただきます。

核医学担当 荒田

今月の症例


症例
10代 女性
発熱、咳嗽あり肺炎の診断で抗生剤加療されていたが解熱せず。
既往:特記事項なし
下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?


解説と解答

解説

10代女性の肺結核の症例です。発熱が続き、抗生剤投与でも改善せず当院に紹介受診となりました。周囲に明らかな結核感染者はおらず、感染経路は不明です。胸部単純写真で右上肺野に浸潤影がみられ、両側肺に結節影もあり初診時は肺炎が疑われました(図1)。
1ヶ月後、浸潤影は淡くなっているものの症状改善しないためCT検査が施行されています(図2,3)。CT検査では右上葉肺尖部付近に不整な空洞状構造(図4a 橙色矢印)が認められ、周囲や中葉、舌区、両側下葉にコンパクトな粒状構造が散見されます(図4a 黄枠)。分布や所見から典型的な二次結核と考えます。
CT検査所見と合わせて単純写真の所見を解説します。右上肺野の浸潤影に囲まれた部分が空洞を示唆する所見です(図5a,b 黄枠、黄矢印)。さらに、微小な結節影が散見されます(図5a,c 橙色矢印)。単純写真で右肺尖部の空洞構造や結節影を指摘出来るかが今回症例での重要なポイントとなります。空洞性病変は気道末梢の結核病変の乾酪壊死により液状化が起こり、癒合することで形成されます1)。その過程で乾酪壊死した成分が気管支を充填し樹枝状構造と周囲のつぼみ状の構造が形成されます。CT検査では末梢肺の細やかな分枝状構造として見られ、tree-in-bud appearanceと表現されます1)(図6)。治療後では空洞構造は残存しているものの周囲の浸潤影や粒状構造は改善が見られました(図7)。

解答:肺結核

症例のポイント

①両側上肺野主体の空洞構造や粒状影 (胸部単純写真)
②持続する咳嗽、発熱
③周囲の結核感染者の存在
④CT検査での空洞構造の確認、コンパクトな粒状構造、tree-in-bud appearance

結核は一般的な病気ですが想定されていない場合は診断に苦慮することもあります。胸部単純写真の所見が重要となる症例でした。

【参考文献】
1)高橋雅士, 新 胸部画像診断の勘ドコロ, 第3版, メディカルビュー社, 2014年, 結核と非結核性抗酸菌症における画像診断のABC: 160-166.

 

今月の症例


問題:70代 男性
主訴:右鼻腔から鼻出血があり評価目的に当院受診
下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

図1 単純CT検査 水平断像
a:蝶形骨洞レベル, b:aより頭側, c:bより頭側、d:cより頭側

 

 

 

 

図2 造影CT検査 水平断像
a:蝶形骨洞レベル, b:aより頭側, c:bより頭側、d:cより頭側

 

 

 

 

図3 造影CT検査

 

 

 

図4 MRI検査
a:T1 weighted imaging (WI) 矢状断像 蝶形骨洞レベル, b:T2WI 矢状断像 蝶形骨洞レベル,

c:T1WI 矢状断像 下垂体後葉レベル,d:造影後T1WI 冠状断像
海綿静脈洞レベル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図5 T1WIダイナミック造影下垂体MRI検査 冠状断像

 

 

 

 

 

 

 

 

 


解答 下垂体腺腫 (macroadenoma) 

解説

70代男性の鼻出血の症例です。当初は蝶形骨洞の腫瘤性病変が疑われCT検査、MRI検査が施行されましたが形態や進展形式から下垂体病変が疑われました。手術の結果、下垂体腺腫(プロラクチン産生性)と診断されました。

図6 正常下垂体 MRI検査での構造評価

a:T1WI 矢状断像
b:T1WI 冠状断像
c:T1WI 水平断像

 

 

 

 

 

 

 

画像所見の解説です。まずはMRI検査で正常下垂体の構造をお示しします(図6a)。下垂体はおおまかに前葉と後葉、下垂体柄からなります。
下垂体前葉(図6a赤色)は腺性下垂体の大部分を占め、一部下垂体柄を構成します。T1WIでは通常は中等度信号で造影後では強く造影されます1)
下垂体後葉は視床下部の神経末端により構成され、T1WIでは高信号として描出されます(図6a,c白矢印)。これは後葉ホルモンであるバゾプレシンの濃度に相関するとされ、高信号が消失した場合は中枢性尿崩症など異常が疑われます1)
下垂体柄(図6a,b黄色矢印)は下垂体後葉と連続する漏斗茎からなる構造です。径は4mm以下とされ、T1WIでは脳実質と同程度、造影後は下垂体後葉と同じく早期から造影効果が見られます1)
海綿静脈洞部(図6b橙色)は下垂体を取り囲み、複数の静脈路や内頸動脈(図6b青矢印)、脳神経が存在しています。下方には蝶形骨洞が存在しており、下垂体病変の進展を評価する上で重要な部位となります。

今回の症例は蝶形骨洞から鞍上部に連続する腫瘤性病変です(図7a,d)。内部の造影効果は比較的均一で左海綿静脈洞に進展して見えます(図7b,c橙矢印)。蝶形骨洞の悪性病変による浸潤、あるいは下垂体病変が疑われMRI検査が施行されました。

図7 造影CT検査 腫瘍の部位と進展

a:水平断像 蝶形骨洞レベル b:aより頭側,
c:冠状断像 鞍上部レベル  d:矢状断像 鞍上部レベル

 

 

 

 

MRI検査では病変はTWIで脳実質と等信号、T2WIでは内部に一部高信号域が見られます(図8b橙色矢印)。下垂体柄は右側に偏位しており(図8c黄矢印)、正常下垂体を右側に圧排する下垂体病変が示唆されます。MRI検査でも左海綿静脈洞部に進展が疑われました(図8d赤矢印)。また、ダイナミック造影MRI検査では比較的均一な漸増性の強い濃染が見られます(図5)。

図 8 MRI検査 腫瘍部位と進展

a:T1WI 矢状断像 蝶形骨洞レベル  b:T2WI 矢状断像 蝶形骨洞レベル,
c:造影後T1WI 冠状断像 下垂体柄レベル d:造影後T1WI 冠状断像 海綿静脈洞レベル

 

 

 

下垂体腺腫(macroadenoma)は脳腫瘍の10-20%を占める比較的高頻度の疾患です。ホルモンを分泌する機能性腺腫と分泌しない非機能性腺腫に分かれています。1cm未満の腺腫をmicroadenoma、1cm以上の腺腫はmacroadenomaと分類しています1)。また、今回症例のように副鼻腔や上咽頭に進展するものは下垂体腺腫の0.8%程度であり、鼻出血や鼻閉などを初発として耳鼻咽喉科を受診する例も見られます2)

画像所見はT1WIで正常下垂体と比較して等信号から低信号、T2WIでは変性や出血、梗塞などで症例により様々な信号を呈します。

下垂体腺腫は造影検査で全体的によく造影されます。microadenomaは微小な病変ですが、正常下垂体よりも造影ピークが遅れます。そのため、ダイナミック造影MRI検査では造影剤投与後1-2分に正常下垂体より低信号となることで検出することが可能です1)

一方macroadenomaは信号や造影効果は上記に準じますが、存在診断に加えて周囲への広がりや正常下垂体の位置の同定が重要となります。
今回症例の図9aでは正常下垂体後葉が右側に偏位していることが分かります。また、図9bでは下垂体柄も右側に偏位しており前葉は不明瞭ながら、正常下垂体が右側に偏位して存在することを示唆しています。
図9cでは左内頸動脈周囲に造影効果を伴う腫瘤性病変の進展が見られます。腫瘍が内頸動脈を取り囲む比率(2/3以上を取り囲むなど) 1)や外側接線を越えていること3)などが浸潤を示唆するとされ、全切除できる可能性が低くなります。今回症例では腫瘍が左内頸動脈を取り囲む範囲は半周程度となります。
手術所見では正常下垂体は右側に存在しており、内頸動脈周囲への強い浸潤なく腫瘍も全摘出できました。画像所見から得られる情報と合致していました。

図9 正常下垂体の位置と下垂体病変の進展
a:T1WI 水平断像, b:造影後T1WI 冠状断像, c:造影後T1WI 冠状断像 bより腹側

 

 

 

 

症例のポイント

① 鞍上部から蝶形骨洞に進展する腫瘤では下垂体病変も考慮される

② 鼻出血を主訴とする場合もある

③ ダイナミック造影検査で漸増性の濃染(正常下垂体よりは造影ピークは遅い)

④ macroadenomaでは正常下垂体の同定と周囲進展が重要

鼻出血を主訴とした下垂体腺腫(macroadenoma)の1例でした。

【参考文献】
三木幸雄, 佐藤典子 編, 下垂体の画像診断, メジカルビュー社, 2017
細川誠二. 耳鼻咽喉科・頭頚部外科. 2011; 83:233-236
Knosp E, et al. Neurosurgery. 1993; 33:610-618

胃がんX線検診における胃前壁撮影 ~精度向上のために~


当院の胃X線検査では、NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構が推奨する基準撮影法を基に撮影を行っております。今回は、下図の6番・7番の『胃体中部から幽門部の前壁撮影』について紹介させていただきます。

基準撮影法を基にした当院での撮影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

被検者に寝台へ腹臥位となってもらい、逆傾斜をかけて頭低位とするため肩当てを使用し、安全性に留意して撮影をしています。その際、体中部から体下部前壁の粘膜面を広く描出するため、腹臥位となる被検者の心窩部に圧迫用フトンを挿入してから逆傾斜をかけて撮影をします。
また、胃の形(鈎状胃・下垂胃・横胃・牛角胃・瀑状胃)や体格によって圧迫用フトンの大きさ・厚みや挿入位置を変えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このように前壁撮影する際に、適正に圧迫用フトンを使用することは描出能を向上させることができ、精度向上にも繋がります。
しかしながら、胃の形や体型により圧迫用フトンを使用しても描出が難しい場合もあるため、様々な工夫が必要となります。
普段の努力を大切にしながら研鑽を重ねていき、精度の高い検診を目指したいです。

小曽根

核医学検査室で「放射線を測る」とは??


過去3回に渉って「心筋SPECTブルズアイ」を紹介してきました。今回は閑話休題として、核医学設備での「放射線を測る」がテーマです。

核医学検査室では、 ① 検査目的  ② 放射線医薬品管理目的  ③ 放射線安全管理目的  の大きく3種類の目的で放射線を測ります。

① 検査目的

核医学検査は放射性医薬品を体内に投与し、体内から放出される放射線をガンマカメラ(写真1)で“どの部位”から“どの程度”放出しているか測定します。体内への投与量をあらかじめ測定することで、放射性医薬品の集積率を知ることができます。

例えば甲状腺ヨード接種率の検査では、患者さんに投与する前の放射性医薬品(ヨードカプセル)をガンマカメラで測定します(写真2)。この測定結果をもとに甲状腺へのヨード集積量の割合を求めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

② 放射性医薬品管理目的

検査に使用する放射性医薬品(シリンジ製剤・カプセル・バイアルから分注するものなど)の放射線量を測定する目的でドーズキャリブレータ(写真3)を使用します。

 

 

 

 

③ 放射線安全管理目的

放射性同位元素の使用は、関連法令等で厳しく管理することが求められています。核医学検査設備では排気、排水系統に関する管理、または汚染防止の対策等講じなければなりません。

A 空気中RI濃度の測定(排気系統含む)

核医学検査室内3箇所(入口,体外計測室,準備室:写真4)、排気設備1か所(写真5)にエリアモニタが設置され、24時間常時空気中のRI濃度を測定しています(写真6)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B 排水設備の測定

中央監視盤にて貯留槽の監視、希釈槽での濃度測定を行います。(写真7)

 

 

 

 

 

C 表面汚染に対する測定

放射性医薬品が床にこぼれたり、人体や衣類に付着の恐れがある場合に行う測定です。床に汚染等があった場合はサーベイメータ(写真8)を用いて汚染箇所を同定します。人体や着衣に表面汚染のある場合は汚染検査室内のハンドフットクロスモニタ(写真9)にて手足、衣類の汚染がないか確認します。

 

 

 

 

 

 

その他にも放射線内用療法にて、治療用放射性ヨードを内服した患者さんの退出基準線量測定(電離箱式サーベイメータ測定)も行っています。核医学室には多数の放射線測定機器があり、診療業務と保安管理を同時に進めながら安全管理を構築していくことが日々求められています。
核医学専門認定技師/放射線内用療法安全取扱担当者 荒田

頭部血管CT撮影の実際


CT検査は短時間に素早く検査できることからあらゆる部位について撮影が行われています。今回はたくさんある撮影部位の中でも、撮影が難しい頭部血管造影CT検査の実際についてご紹介します。

スピード注入が重要!

頭部血管造影CT検査の対象で、代表的なのは脳動脈瘤になります。頭部の血管は脳動脈瘤の好発部位である脳動脈輪でも数ミリと細いです。また、脳血管の周りは脳組織が近接しています。脳組織もCT画像上白っぽく写るので、造影剤を入れた脳血管をさらに白く写さないと視認性が悪くなります。そのため濃い造影剤を速いスピードで注入しています。
早く注入するためには工夫が必要です。右腕の血管に太めの留置針を指します。ここがこの検査の重要なポイントのひとつです。左腕だと左の静脈から心臓に至るまで距離がありますが、右だと距離が短くなることなどから造影剤の高速注入に有効であるとされています。実際に左腕からで失敗したことも経験しています。針に関しては、造影剤はネバネバしていますので、太い針を用いないと勢いよく注入することができない為20Gの留置針を用いています。

タイミングを逃すな!

撮影のタイミングも重要です。脳は造影剤が動脈からすぐに静脈へと流れていきます。動脈も静脈も両方が写ってしまうと観察しにくい画像となってしまいます。その為、造影剤が脳の動脈に到達したら速やかに撮影開始する必要があります。
くも膜下出血症例の場合はさらに難しくなります。出血によって脳が腫れ、造影剤が頭の血管に入りにくい状態となるからです。これにより撮影タイミングの判断が難しくなります。さらに、くも膜下出血自体が淡く白く写るので、その淡い白色の中に存在する造影剤の白色を観察する必要があり、いつも以上に造影剤の高速注入と撮影タイミングの決定がシビアになります。また、患者さんの状態も悪いことが多く、動きにも注意して撮影する必要があります。
以上、頭部血管造影CT検査の実際についてご紹介しました。

CT担当 保田福技師長

今月の症例 


問題:40代 女性
主訴:左母趾の爪部疼痛あり当院に紹介受診
下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

図1 足部単純写真
a:単純写真 正面像,
b:単純写真 斜位像

 

 

 

 

 

 

 

図2 足部MRI検査
a:T2強調像 矢状断像,
b:T1強調像 矢状断像,
c:Short tau inversion recovery:
STIR像 矢状断像,
d:脂肪抑制T1強調像 矢状断像

 

 

 

 

 

 

 

 

図3 足部MRI検査
a:T2強調像 水平断像,
b:STIR像 水平断像,
c:Diffusion weighted imaging (DWI) 水平断像,
d:Apparent diffusion coefficient map (ADC map) 水平断像

 

 

 

 

 

 

 

 

図4 足部MRI検査 a:T2強調像 矢状断像, b:T2強調像 水平断像,
c:STIR像 矢状断像, d:STIR像 水平断像

 

 

 

 

 

 

 

 

 


解答 グロムス腫瘍

解説

40代女性、左母趾爪部痛が持続するため当院に紹介受診となりました。肉眼では爪部の病変の同定が困難であり、検査所見や臨床症状からグロムス腫瘍が疑われました。手術が施行され、グロムス腫瘍の診断となっています。
単純写真(図1)では明らかな所見は指摘できませんでした。
足部MRI検査では母趾爪部直下に結節構造が描出されています(図2、3橙矢印)。T2強調像では高信号(図2a)、T1強調像では低信号(図2b)、STIR像では高信号(図2c)で脂肪抑制T1強調像では皮下組織とほぼ等信号(図2d)です。また、DWIで高信号(図3c)、ADC map(図3d)では軽度低信号が見られ、漿液性の嚢胞病変ではありません。超音波検査で内部血流が見られ、MRI検査所見とあわせてグロムス腫瘍が疑われました。
グロムス腫瘍はグロムス体に類似した平滑筋様細胞の組織からなる間葉系腫瘍で基本的には良性腫瘍です。グロムス体とは血管周囲に存在する微小な動静脈シャントのことで温度調整機能を有し、指趾、鼻などの真皮や爪下に多く存在します。グロムス腫瘍の頻度は2%以下と稀で比較的若年女性に多く、爪下に発生するものは圧倒的に女性が多いとされます1)
グロムス腫瘍の画像所見はMRI検査ではT2強調像で強い高信号、T1強調像で低信号、造影検査で強い造影効果を呈する事が特徴です。今回症例では造影検査のかわりに超音波検査で内部血流が確認されています。単純写真やCT検査では腫瘍と隣接する骨に侵食像を呈することが知られています2)

当院の右環指末節骨に生じたグロムス腫瘍(図5a緑矢印)の症例では、単純写真で末節骨が圧排(図5b黄色矢印)、腫瘍による骨侵食像(図5c白点線)が見られました。健側では同所見は見られません(図5c)。
鑑別は爪下ガングリオンで、内部の造影効果が見られない場合はガングリオンと診断されます。
治療は切除です。根治のためには完全切除が必要であり、術前のMRI検査や超音波検査での位置や範囲の評価が重要となります3)

 

図5 右環指末節骨に接するグロムス腫瘍による骨の侵食像

a:STIR像 冠状断像, b:患側末節骨 単純写真,
c:患側末節骨(腫瘍シェーマ) 単純写真, d:健側末節骨 単純写真,

 

 

 

 

 

 

症例のポイント

症例のポイント

① 持続する爪部痛(特に女性)

② T2強調像で高信号、T1強調像で低信号な結節構造

③ 造影検査や超音波検査で内部血流を確認する

④ 腫瘍に隣接する骨の侵食像が見られることがある

⑤ 根治には完全切除が必要であり画像検査での位置や範囲の把握が重要となる

 

足趾に生じたグロムス腫瘍の1例でした。

【参考文献】

1) 福田 国彦 編, 軟部腫瘤の画像診断-よくみる疾患から稀な疾患まで- 画像診断増刊号, 秀潤社, 2016;36:s154-155

2) Kira M, et al. RadiogGraphics. 2014; 34:1954-1967

3) Baek HJ, et al. RadiogGraphics. 2010; 30:1621-1636

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心臓MRI検査のご紹介


心臓MRI検査には、虚血性心疾患や心筋疾患の心形態及び心機能評価や心筋viabilityなどの評価を行う心臓MRI(Cardiovascular MRI : CMRI)検査と、冠動脈の形態評価を行う冠動脈MR Angiography(MRA)があります。
心臓検査の場合、心電図同期を行って撮影するため検査時間も多少異なりますが、CMRIは50~60分くらい、冠動脈MRAは20~30分くらいかかります。また不整脈があると、もう少し検査時間が延長します。
今回はCMRI検査、実際どんな内容を撮影しているのか順に紹介します。

1.Localaizer(ロカライザー)

撮影断面を決めるための位置決め画像です。
横断・冠状断・矢状断の3方向撮影します。

 

 

2.Fiesta(フィエスタ)

心筋のシネ撮影です。心臓の形態と機能評価が可能です。
4方向(2chamber・short axial・4chamber・3chamber)撮影します。

 

 

 

 

3.脂肪抑制T2

心筋の炎症や浮腫を評価する撮影です。
3方向(short axial・2chamber・4chamber)撮影します。

 

 

 

 

4.T1 mapping(T1マッピング)

心筋のT1値(T1緩和時間)を定量的に測定する撮影法です。心筋ダメージを定量的に評価できるため、梗塞、肥大型心筋症、心筋炎、アミロイドーシスなどの検出に有効であると言われています。

 

 

 

5.Gd造影(パーフュージョン)

以前は負荷心筋パーフュージョンも行っていましたが、現在は安静時のみのパーフュージョンを行っています。造影剤のfirst passの動態撮影で心筋血流分布を評価します。

 

 

 

6.Early enhance T1(早期造影)

パーフュージョン撮影後、早期ガドリニウム造影を撮影することで、微小循環閉塞(MO)を診断目的とするため撮影します。

 

 

 

 

7.Delayed enhance (遅延造影)

心筋梗塞急性期の心筋壊死や、心筋梗塞慢性期や心筋症の線維化病変を高信号に描出する撮影法です。3方向(short axial・2chamber・4chamber)
撮影します。

 

 

 

心臓の検査は、心拍や呼吸、磁化率変化の影響を非常に受けやすいため、アーチファクトの影響も考慮しなくてはいけません。そのため、多断面撮影することで異常所見の見逃しがないようにしています。1回の息止めは10秒前後ですが、すべての撮影が終わると50分くらいかかってしまいます。長時間の検査はきついですが、検査前には患者さんにきちんと説明し、理解してもらってから検査するようにしています。患者さんの協力なくして、十分な画像は撮影できないと思っているので、検査前の数分間のコミュニケーションを大切にしています。

MR担当 平野