症例(腹部CT)


Case  80歳.女性.

上腹部痛、食欲不振

下記画像から考えられる疾患は?

 

 


解答と解説

下図A~D:口側小腸(赤矢印)が肛門側小腸(青矢印)に嵌入し、図Aでは標的様構造を示しており、内部に血管構造と脂肪組織が確認できます。嵌入した口側小腸の先端には脂肪腫と考えられる境界明瞭で辺縁平滑な脂肪濃度を示す腫瘤(緑矢印)を認めます。嵌入が始まる箇所より口側の小腸(黄矢印)は拡張しています。脂肪腫を先進部とする小腸重積が考えられます。図E~F:腹腔鏡下小腸切除術が施行され、小腸の中央部にみられた腫瘤は、病理組織で脂肪腫と診断されました。図Fは腫瘍の割面を示しています。
腸重積では、腸管が遠位もしくは近位の腸管内に折りたたむように嵌入します。最もよくみられる症状は、腹痛、嘔気・嘔吐です。腸重積をきたす原因としては腫瘍が最多であり、成人腸重積の約65%でみられます。蠕動に乗って先進部が遠位側に移動するために、近位側腸管が遠位側腸管の内側に引き込まれるようにして入り込むのが一般的です。CTでは、標的様構造の内部に脂肪組織と血管が巻き込まれる所見を確認することが重要です。小腸重積に限って言えば、原因として良性病変が最も多く、脂肪腫、GISTなどの腫瘍、非腫瘍性ポリープ、Meckel憩室、炎症性疾患、外傷などがあげられますが、悪性病変の場合は、腺癌、悪性GIST、転移、悪性黒色腫、リンパ腫などがあげられます。そのため、腸重積では重積先進部に特に注意する必要があります。治療としては、原則手術が必要です。

解答

脂肪腫を先進部とする小腸重積

参考文献)

・ 山下康行:わかる!役立つ!消化管の画像診断.秀潤社
・ Choi SH, Han JK, Kim SH, et al: Intussusception in adults: from stomach to rectum. AJR 2004;183:691-698
・ Warshauer DM, Lee JK. Adult intussusception detected at CT or MR imaging: clinical-imaging correlation. Radiology 1999;212:853-860