外傷による肩関節の撮影で注意している点


今回は交通事故、その他の外傷による肩甲骨の撮影法と注意している点について書かせて頂きます。
私自身の学習を含めはじめに肩関節の構成から説明します。肩関節は肩甲骨・上腕骨・鎖骨からなり、肩甲骨関節窩に上腕骨頭が入り込み肩甲骨肩峰と鎖骨外側とで肩鎖関節を作っています。
外傷での正面撮影は範囲を広くして肩全体を撮影します。各部位に大きな骨折がないか、脱臼していないかをまず確認するためです。

外傷撮影こそ腕の見せどころ!

次に正面撮影で分かりにくい部位を斜位撮影にて観察します。斜位像では正面像より上腕骨の骨折線をはっきり描写できる事がよくあります。また、この時に上部肋骨の骨折が判明する場合もあるので斜位像は欠かせません。
患者さんはストレッチャーにて搬送されてくる場合が多いので立位で撮影が出来ません。その場合斜位撮影は臥位のまま患者さん自身に体を斜めにしてもらうので痛みで体動があると画像にブレが生じ、再撮を行うことがあります。

小さな骨折線も見逃しません!

肩関節の中でも肩甲骨の撮影は難しいと思ってます。肩甲骨は薄いため小さな骨折線は分かりづらく烏口突起の骨折線は上腕骨頭と重なり、また肩峰は鎖骨と肩鎖関節をなしているため一枚の画像に全ての骨折線を描写する事は出来ません。そのため、肩関節を撮影するには正面像・斜位像・軸位像(スカプラY像)の3方向がそれぞれ重要となります。右の画像は自転車で転倒された方の画像でスカプラY像で骨折線がはっきりと描写されてます。

今後も、先生の診断に役立つ画像を提供していきたいと思っております。
青木

見えない傷を見つけ出せ! 防護衣の管理について


当院では約120枚のプロテクター(X線防護衣)を所有し、一般撮影室・透視室・血管撮影室・CT室・手術室・救急室など様々な場所で使用しています。今回はこのプロテクターについてのお話です。

見えない傷ありませんか??

プロテクターの構造をご存知でしょうか。
遮へい元素(鉛やその他の元素)を高比率配合している“遮へいシート”を“保護シート”が覆う構造になっています。
“遮へいシート”は“保護シート”より物理的に弱い傾向にあるため、遮へいシートに損傷が生じても保護シートには問題がなく外観から損傷が分からない場合があります。
そのため、120枚すべてのプロテクターに対し1枚ずつ1年に2回、透視装置を用いてチェックを行います 。

大切に長持ちさせましょう

メーカーは専用のハンガー、スタンド等に掛けて保管することを推奨しています。時おりご丁寧に畳んで置いてあるのを見かけますが、折り曲げ状態での長時間放置は内部の“遮へいシート”が傷むのでいけません。

当院では使用する皆さんが掛けて保管してくれているので買い替えは1年に2~3枚です。
思いがけない傷が見つかるかもしれません、定期的な点検をお勧めします。

レントゲン撮影のいま・むかし 内耳道の撮影方法


今回は内耳道の撮影法の昔と現在についてお話をさせて頂きます。
私が放射線技師になった頃(30なん年前)はまだCTがSingle Scanで1枚の撮影時間が4秒もかかり画像再構成時間が17秒、それに加えて一人の患者さんを撮影するために数回の休止時間(Cooling Time)が必要なため耳鼻科領域の撮影には適していませんでした。そのため内耳道の撮影はエックス線撮影に頼らざるをえませんでした。
その撮影法がステンバース法です。

内耳道撮影が必要とされる主な症例は耳鳴り、感音難聴、顔面神経麻痺です。撮影所見としては内耳道肉腫、内耳道の骨折、狭窄です。内耳道の左右差が2mm以上超えると拡大と認められ腫瘍の有無を疑うそうです。
私が技師になりたての時に耳鼻科の先生から、“一側性の感音難聴は両側の内耳道の比較が必要なため左右が明瞭に比較できる写真を撮影してもらいたい”と言われた事があります。
患者さんの頭の形・年齢により撮影体位が維持出来るかの判断が必要で、私には苦手な撮影法でした。

しかし、現在ではCTの発展に伴い容易に内耳道の撮影が短時間で明瞭に撮影でき(撮影だけだと約15秒)、ステンバース法の撮影も少なくなってきました。これからも先生のオーダーにかなう画像を提供したいと考えてます。

一般撮影担当 青木

歯科撮影用装置が新しくなりました!


この度パノラマX線装置更新に伴い、セファロ撮影も可能な
Veraview epocs(べラビュー エポックス) 2D Series (モリタ製作所)
を導入いたしました。

セファログラム(頭部エックス線規格写真)とは…
一定の規格をもって撮影されたエックス線写真ことで、一定の規格とは、
1)頭部固定装置(イヤーロッド)を外耳孔に入れ指示器を眼窩下点に位置させて頭部を固定する
2)被写体とエックス線管の焦点との距離(通常150cm)および、被写体とフィルムとの距離(通常15cm)が一定である
3)中心エックス線が一定の場所を(側面像では左右のイヤーロッドの中心軸を、正面像では左右のイヤーロッドの中央で正中矢状面を)通過する
というものです。
一定の規格により撮影されることから、再現性の高いエックス線像が得られる、実体の大きさを容易に計算できる、というメリットがあり、経時的な比較・検討が可能であるため矯正治療の評価において多用されます。

一般撮影・被曝管理主任 森 直彦

リードレスペースメーカーについて


2017年より日本でもリードレスペースメーカーが保険適応になりました。

リードレスペースメーカーはカプセル型で、小さなフックで心室壁に固定し心室に電気信号を送ります。
従来のペースメーカーとは異なりジェネレーターを入れるポケットを作らなくてすむため、感染のリスクや患者さんの痛みを軽減できます。またリードもありませんのでリードの断線による動作不具合もありません。留置後は条件付きではありますがMRIの撮影も可能です。

当院でも先日1症例目のリードレスペースメーカーを施行しました。
大腿静脈を穿刺しシースを右心室まで到達させ、先端から造影し留置する場所を確認します。その後デバイスをシース先端から出して心室壁に固定されるか確認し、デバイスを切り離します。従来のペースメーカーの手技時間は2~3時間要していましたが、1症例目でも1時間程で手技を終了することができました。

リードレスペースメーカーの電池寿命は10年程といわれていますが、その頃には体外に取り出すことはできないので、電池寿命が近づいたタイミングでもう1個留置することになります。

今はまだリードレスペースメーカーの適応は限られてはいますが、今後様々な不整脈に対応できるリードレスペースメーカーが登場してくると思います。患者さんにとっても病院にとってもメリットのあるデバイスですのでさらなる発展に期待したいところです。

血管撮影・インターベンション認定技師 北畠 太郎

病棟撮影に欠かせない“リス”


初めまして昨年4月に新しく入りました五十嵐佳佑と申します。現在は大学院生をしながら非常勤として働いており、研究と病院での業務を両立させなければならないため非常に忙しいですが充実した毎日です。さて、この頃では初めてのポータブル撮影を経験したのですが、その時に気になったのがグリッドの存在です。胸部や腹部撮影の際に持っていくグリッドですが、先生はどんなものかご存知ですか?

グリッドとは
大別してリスホルムブレンデとブッキーブレンデの2種類があります。ここではポータブル撮影で使うリスホルムブレンデに焦点を当てて話をします。

グリッドの役割
X線写真の画質の低下を抑える役割をしています。画質低下の原因の一つが「散乱線」の存在です。通常X線写真は管球からまっすぐ放出された「一次X線」によって画像化されます。しかし、放出されたX線は人体に入射するとその一部がランダムに散乱します。このランダムに散乱したX線を「散乱線」と言い、画質を低下させる原因となります。そこでグリッドの出番です。グリッドは中に格子状の金属が入っており、「一次X線」のみを透過させ「散乱線」を除去することができます。

弱点
グリッドは一次X線が管球からまっすぐに放出されることを前提として金属の格子が配列されています。そのためX線がグリッドに対して斜入するとそれらも散乱線と同様に除去してしまいます。すると画像に大きな悪影響を与えてしまうため、グリッドを使う場合はX線をグリッドの格子に対してまっすぐに入射しなければなりません。

終りに
今まで撮影室で撮る場合には殆どグリッドを気にすることはありませんでした。それは、基本的な撮影法に則っていればグリッドに斜入する心配がないためです。しかしポータブルでは管球の位置を手動で合わせる上に柔らかいベッドにカセッテ及びグリッドを置かなければならないため、すこし気を抜くとすぐに斜入してしまいます。このようなことからグリッドのことを気にするようになり、今回の記事にしました。これを読んで先生にもよりグリッドについて知って頂ければ幸いです。

鼻骨エックス線撮影について


今回は鼻骨撮影についてお話させて頂きます。
鼻骨骨折は転倒、交通事故、スポーツ外傷などが主因です。主に整形外科と耳鼻咽喉科から撮影依頼が出されます。
鼻骨は前頭骨鼻縁と上顎骨前頭突起に接し、前方へ突出した薄い骨で、上縁は狭く厚く、下方は広く薄く前方に反っています。
撮影はウォーターズ撮影と側面撮影の2方向です。

ウォーターズ撮影

ウォーターズ撮影は鼻骨の軸像が前頭部に投影され、その辺縁及び内側が明瞭に識別され鼻中隔の変形が明瞭です。
撮影法は腹臥位で顎を前方に突き出し矢状面と鼻骨とが共に診察台に垂直になるようにさせます。X線中心は鼻根部を通り垂直の位置前方10度に入射します。
側面撮影

側面撮影は外傷による骨折、変形を明瞭にします。左右の上顎骨前縁を一致させる事により鼻骨の突出状態が最大となり鼻根部から鼻尖まで軟部組織も合わせて観察できます。
撮影法は仰向けでX線中心は鼻根部に垂直に入射します。
また、患者さんの状態により体位を変えて撮影する場合もあります。
軸位撮影法として交合型があります、座位で頭を固定して交合型フイルムを浅く口内に挿入し軽く噛ませ水平に保持させます。鼻根部に向けて頭部方向より垂直に入射します。あまり画像が明瞭でないのとX線CTで撮影依頼が出る様になり当院では25年前に廃止になりました。これからも私たち放射線技師は先生に最適な画像を提供させて頂きたいと思っております。

マニアック?なレントゲン撮影用の小道具を御紹介します ー散乱線除去用グリッドー


私達、放射線技師は先生により良い画像を提供するため日々撮影に努力しております。今回は、良い画像を撮影するために撮影の際使用している道具を一つ紹介させて頂きます。画像の評価に一番影響を与えるのは二次的に発生する散乱線です。X線を体に照射すると体内で散乱線が発生します。この散乱線が画像のコントラストを低下させる原因になります (図1)。よって良い画像にするためには、この散乱線がフイルム(カッセテ)に到達する前に除去しなければなりません。そのために作られたフィルターがグリッドであります。

 構造は鉛とアルミを数ミリ間隔で配置してます。X線管から放射されたX線(一次X線と呼ぶ)は放射状の軌道で放出されますが、散乱線は体と一次X線との相互作用によりランダムな軌道を描きます。このランダムな軌道を取った散乱線をグリッドの間隙(鉛)が吸収することにより散乱線を除去します。(図2)

 形はカセッテと同じ四角形で大きさはさまざまですが50㎝×30㎝などで厚さは数ミリ程度です。フイルムと患者さんの間に配置します。(図3)

画像に影響を与える散乱線は体部の厚さが10~15㎝以上の時と言われていますのでグリッドを使用する撮影部位としては頭部・胸部・腹部・脊髄・肩・大腿骨などです。比較的、厚みが薄い手関節・指などには使用しません。ただし、グリッドは散乱線を除去してくれるのですが必要なX線も一部吸収してしまうため照射線量を増やさなければなりません。
今後も先生に良い画像を提供するため一生懸命努力していきたいと思います。

*この記事はR@H2014年に掲載した内容を再編集したものになります。

妊婦さんのレントゲン撮影法


当院では10年前に産婦人科が閉鎖されましたが、環境が整い昨年の6月に再開しました。新B棟の二階に産科病棟も入り病室はまるでホテルのようです。(ちょっと大げさ?)

さて、出産が始まれば放射線技術科としても準備をしなければならないことがあります。それはX線骨盤計測法です。産科が閉鎖される以前は撮影していましたが、新人技師も入り撮影経験のない技師も増えましたのでベテラン技師も含めて再度勉強しなおすことにしました。産科にかかわりのない先生にはあまり馴染みのない撮影とは思いますが今回のテーマにさせてください。

X線骨盤計測法とは…

CPD(児頭骨盤不均衡)の恐れ(児頭が母体骨盤より大きいため児頭と母体骨盤の間の大きさに不均衡が生じて、陣痛があるにもかかわらず児頭が骨盤入口部に固定せず分娩が進行しない状態)のある妊婦さんの撮影です。
難産によって起こる母児への危険・障害を回避し最も安全な分娩様式を事前に選択する目的に行われ、産科における重要な検査の一つです。一般的には38週以降とされています。
X線によって骨盤の大きさと同時に児頭の大きさを計測するものでグースマン法(骨盤側面撮影法)とマルチウス法(骨盤入口撮影法)を同時に行うのが一般的です。
次に当院での撮影方法を紹介します。

月に数件しかないこの撮影は、正確性が重要な撮影であるとともに被験者が妊婦であるため被爆をできるだけ抑え、計測可能な必要最低限の線量で撮影しなければなりません。我々技師は丁寧かつ迅速に撮影できるよう日頃からシミュレーションを実施し、安全・安心な出産ができるよう放射線技師として陰ながら協力できればと思っています。

知っているようで知らない!? レントゲンの基礎④-レントゲン-


これまでのシリーズではレントゲンの基礎として、撮影条件や距離のお話をさせて頂きましたが、今回は今まで当たり前のように発していた“レントゲン”についてお話させて頂こうと思います。
また多くの方が間違った使い方をしてしまう“放射線・放射能・放射性物質”についても併せてお話させて頂きます。

レントゲンとは何か?
1895年W.C.レントゲン博士が真空放電の実験中に偶然、いろいろな物を突き抜ける不思議な光線を見つけました。
発見時、未知の光線だった為、数学の未知の数を表す「X」の文字を使いX線と名付けられました。
当時、多くの学者は彼の発見を称えその光線のことをレントゲン線と呼びました。
その名残から、未だにX線を使った検査のことを、レントゲン検査と言っていますが、近年放射線業務の領域ではレントゲン検査と呼ばずに、正式名称のX線検査と呼んでいます。
博士はその後1901年に第1回ノーベル物理学賞を受賞したことでも有名ですね。

放射線・放射能・放射性物質
“放射線”とは、放射線物質から放出される粒子や電磁波のことです。
“放射能”とは、放射線を出す能力のことです。
“放射性物質”とは、放射能を出す物質のことです。
蛍に例えると、放射線は蛍の光、放射性物質は蛍、放射能は光を出す能力です。
また、蛍の光が虫かごから漏れると「放射線漏れ」、蛍が虫かごから逃げ出すと「放射性物質の漏れ」ということになります。
このように“放射線”と“放射能”では大きく意味が異なるのです。
しかし、特にポータブル撮影時において、「放射能が出るから逃げないと」と発言する医療従事者もいるほどで、一から説明したくもなるのですが、グッと堪えて日々業務に励んでいます。
(参照:http://www.rikuden.co.jp/housyasennokoto/kihon.html)

hotaru

特殊撮影主任:森直彦