当院の胃X線検診の精度管理について


はじめに

今回は当院健康医学センターで胃X線検査の検査精度についてお話させていただきます。先生はご存知かと思いますが、国立がん研究センターが出した「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版」の中で胃X線検査は、胃内視鏡検査と並んで、「推奨グレードB」とされており、死亡率減少効果が不利益を確実に上回る検査として、対策型検診・任意型検診としての実施を推奨されております。
近年では日本消化器がん検診学会などにより基準撮影法が提唱され、携わる診療放射線技師を中心に普及したことにより、平成28年度の日本消化器がん検診学会全国集計によりますと、発見がんの77.2%が早期がんであるという結果がでております(表1)。
検診の最大の命題である「救命可能のがん発見」に、ある一定の効果があることが示唆されていると言っていいと思われます。

検査数は約543万件/年(全国) 当センターは2014年より減少傾向

全国では1年間に約543万件の胃X線検診が行われております(表2)。
しかし当センターでの検査数は2014年より減少傾向で推移しております(右グラフ)。その大きな理由として、当センターが10年ほど前に経鼻内視鏡検査を導入したことが考えられます。
経鼻内視鏡検査は、経口法に比べて低侵襲かつ受容性が高いため、胃X線検査のかわりに選択される受診者様が増加傾向にあります。
しかしながら内視鏡検査に比べて、高スループットで技師1名にて行える低コストである胃X線検査はこれからもまだまだ検診の場では施行されていくことと思います。

当センターの検査精度

2017~2019年度の当センターの検査精度を(表3)にお示しいたします。全国集計(表2)より、①地域検診の要精検率と②がん発見率が高いのが特徴です。特にがん発見率は地域検診で約2.5倍、職域検診で約3倍の発見率となっております。有意差は検証してはおりませんが、その要因は、地域差・受診世代差・検査手技の違いなどと推定されます。

精度管理の方法、および工夫

近年のDR装置における撮影は、透視観察や撮影画像のリアルタイム観察が胃がんの拾い上げに不可欠であります。我々診療放射線技師も読影医を補助するつもりで「撮影しながら読影」して、ひとりひとりの受診者様を日々撮影しております。撮影技術の研鑽はもちろんのこと、症例検討会(最近のコロナ渦ではオンライン開催ですが)や成書で多くの胃がん症例を経験し、自施設の術前胃X線造影を通して、X線所見、内視鏡所見、そして術後病理所見を対比することによって、X線画像にfeed backし地道に一例ずつ積み上げていくのは、先人の諸先生方の手法と全くおなじであると痛感しております。また検査の特性上、受診者様に体位変換等のご協力をお願いして成立する検査であるため、最近増加傾向にあるご高齢の受診者様の安全性や利便性を向上するための工夫(緩衝用マットレス、左右表示)も行っております。

○緩衝用マットレス

逆傾斜時の撮影はマニュアルどおり安全に留意して行っておりますが、万一に備えて配置しました。

○左右表示

X線検査台にあがると、緊張から左右が一瞬わからなくなる方が多いので、さりげなくアシストする目的でつけてみました。マグネットで貼り付けるタイプのものを自作で作成しました。

私は健診を中心に業務させていただいておりますが、他にCTや血管造影、夜勤時にはMRIにも対応させていただくことがあります。検診の胃X線検査はこれらの先進的な技術を搭載した装置とは若干異なり、X線診断学や病理学的な知識・それらを具体化して根拠を示すことができる撮像技術をリアルタイムで撮影者に対して要求してきます。習得するには短期間とはいきませんが、今後とも地域のがん検診のために微力ながら研鑽していきたいと思っております。

健康医学センター担当 横山
日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師
日本消化器がん検診学会 胃がん検診読影補助認定技師
NPO消化器がん精度管理評価機構 胃がん検診読影部門B資格
神奈川県消化器がん一次検診機関連絡協議会技術部世話人
神奈川県消化管撮影技術研究会世話人

ヘリコバクター・ピロリの感染診断の決め手は 「温かいバリウム?」~胃X線検査の見地より


胃がん検診は従来、その名の通り、胃がんの早期発見が目的とされていましたが、1990年代に胃がんの発生の主原因がヘリコバクター・ピロリの感染(以下、ピロリ菌感染)によるものであることがevidenceとともに確立しました。
さらにここ数年、ピロリ菌感染者に対しての除菌が我が国で保険適用になると、胃がんの拾い上げだけでなく、感染の有無を求められるような議論が日本消化器がん検診学会をはじめとした関係学会等で熱を帯びてくるようになってまいりました。消化器ご専門の先生にとりましては周知であると存じた上で述べさせていただきますが、ピロリ菌感染有無についての背景胃粘膜X線診断は、
①ひだ襞の分布・広がり、②ひだ襞の形状 ③胃粘膜表面像(胃小区像)の順番(図1)
にて判定いたしております。

①ひだ襞の分布・広がり

まず最初に、背臥位二重造影正面像での①襞の分布を観察いたします。
胃粘膜の萎縮が進行すればするほど肛門側から口側へ胃底腺領域が減少します。これにより襞分布が減少し、高度萎縮の場合は最終的には襞が消失してしまいます。

 

②ひだ襞の形状

次に着目するのは②襞の形状です。未感染胃の襞は細く比較的ストレートで表面も平滑で立ちあがりも緩やかなソフトな印象ですが、既感染胃の場合、太く蛇行して立ち上がり急峻で、印象としてハードなイメージです。

③粘膜表面像

最後に着目すべきは、③粘膜表面像です。未感染胃の粘膜模様は、平滑で滑らかな印象です。表現としては「ベルベット様」という表現です。また網目模様を呈することもあります。これに対して、既感染胃の場合は小顆粒像を呈し粗造な印象です。さらに萎縮が進行するとさらに粗い模様が目立ち「フリース様」と表現されます。

これらの所見を組み合わせて、胃X線検査ではピロリ菌感染の有無について診断いたします。除菌後状態の胃などは、所見が複雑に食い違って診断に難渋するケースもありますが、2013年より開催されている「ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会」によると、トレーニングをしっかりと積めば、医師、診療放射線技師ともに正診率は90%を超えるという報告もございます。

これらの所見をしっかりと診断できる画像を得るためには、「しっかりとバリウムが付着された像(背臥位二重造影像)」が必須であります。そのためには、撮影機器の精度管理と同時に、バリウムの品質管理を日常的に行うことが我々診療放射線技師の責務であると考えております。当院健康医学センター(健診センター)のX線TVシステムは、始業前に必ずJSGIファントムにて、画像の鮮鋭度やコントラストをチェックするだけでなく、使用するバリウムに関しても濃度のみならず、その粘度をあげないためにも液温管理を行っております。近年使用されている高濃度低粘性の硫酸バリウム懸濁液は、液温が低くなると粘性が上がり、胃の中で粘液と混ざって、ベタつきや凝集の原因となります。よって冷たい水でバリウムを懸濁することは、飲みやすくて被検者様の受容性が向上いたしますが、可能な限りお控えいただくことをお勧めいたします。(図2)
今後も栄区近隣地域の住民の皆様に貢献できるような、高品質な胃がん検診を提供していきたいと思っております。

横山力也
日本消化器がん検診学会胃がん検診専門技師
NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構胃がん検診読影部門B資格

 

あなたの胃粘膜は大丈夫?


Helicobacter pylori(以下Hp)感染による持続性胃炎は胃癌発生リスクに関与すると認知されていますが、除菌療法により胃がんリスクは30~40%低下することがWHOにより報告されています。
医学の進歩に伴いがんに至るまでの道筋が明らかになってきている今、がんにならないように原因を除くことが早期発見・早期治療といえるのではないでしょうか。
そこで、検診やドックなどで早期胃癌を見つけることに加え、Hp感染の有無や胃がんのリスク表現である萎縮性胃粘膜の程度を評価し、除菌の勧奨や経過観察を継続することも重要となっています。

内視鏡検査(胃カメラ)は胃の中をカラーで直接目視するため、凹凸が少ない粘膜の荒れや平坦な病変、色の変化を認識できHp感染有無の検査も可能です。
一方、胃X線検査はモノクロにて粘膜の凹凸を表現するため平坦な病変や粘膜の色の変化を観察することは出来ませんが、わずかな粘膜の凹凸や異常を描出することが可能です。装置やバリウム製剤の精度向上により最近ではHp感染や胃粘膜萎縮もある程度わかるようになってきました。

Hp感染胃炎に対する除菌療法は2013年2月に保険適応となり、正式な治療対象となっています。胃X線検査においてHp感染の有無を考慮した撮影と読影を行うことは、受診者に胃がんリスクに関する情報を提供できるので、胃がん予防にも貢献することができます。
ただし、Hp除菌により胃がんリスクは減少しますが、ゼロにはなりません。除菌後、除菌に成功した場合でも非感染者よりは胃がんリスクが高くなるからです。したがって、胃がん死亡者を減らすためには、Hp除菌後の人にも定期的な画像検査を行う必要があります。すべての人に内視鏡検査を行うことは不可能です。そこで胃X線検査は重要な役割を担えるのではないでしょうか。

Hp感染・萎縮粘膜の有無、背景胃粘膜を知り、自分の胃粘膜が胃がんを発生しやすいか、そうでないかを把握することはとても大切です。また、個々の胃の状態、特に胃がんに関するリスク度によって胃の検査方法や間隔などを個々で設定するのが合理的です。
ご自身の胃粘膜状態を知らないは、まずは手軽に受診できる胃X線検査(バリウム検査)を受けてみては、いかがでしょうか。

胃X線検査に携わるものとして、Hp感染の有無や胃がんのリスクの表現である萎縮性胃炎の程度を評価できるような、より精度の高い画像を提供できるように日々努力をしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

胃がん検診技術部門 B資格 小曽根容子

~胃X線検査「透視観察手順」の重要性~


●基準撮影法の普及
スクリーニング胃X線検査(以下、胃X線検査)については、2009年にNPO日本消化器がん検診精度管理評価機構より提案された基準撮影法が広く浸透し、早期胃がんの拾い上げに、ある一定の効果を得ています。日本消化器がん検診学会から毎年報告されている、消化器がん検診全国集計(平成26年度)によると、胃X線検診による胃癌発見率は0.120%で内視鏡検診の0.19%と、それぞれの受検対象年齢を加味すると、さほど遜色を感じることができません。また特筆すべきは早期がん率で、進達度M、SMにとどまる早期胃癌は全体の74.2%と一昔では考えられない高率で救命可能の胃癌を拾い上げることができております。その理由はDR,FPDといったデジタル画像の台頭や高濃度低粘性バリウムを使用した二重造影像主体の撮影法など、多岐にわたるのですが、やはり、撮影読影のシステムを一新し、構築浸透させたこのモダリティに携わる技師、医師たちの熱意であると個人的には思っております。

●とっても大事な検査時読影力
しかし当然のことながら、見まねで基準撮影法どおり撮影していれば、早期がんが拾い上げられるわけではなく、それには熟練した撮影技術(+話術)と、透視観察時に求められる高い読影力(検査時読影力と呼んでます)が求められます。 これらを欠かすと、基準撮影法といえども、進行がんですらも見逃す危険性もあることは、我々技師の間でも共通認識として知っておかなくてはならないと思っております。

 

●透視観察手順をマニュアル化
そこで、我々の施設では現在、胃X線検査において、全ての胃壁において病変の見逃しがないように「透視観察手順」を検討し、マニュアル化を進めております。当院の撮影ルーチンは、基準撮影法2+任意撮影の14体位にて構成されておりますが、このマニュアルには、撮影体位の基準のみならず、その体位変換の間のどこで透視をオンにして、どの壁在を流れるバリウムを観察するか、またどこで透視をオフにしてX線被ばくを低減させるかなどを、事細かく記載されております。透視の画質も、黒潰れや白とびの解消、空間分解能の向上など昔のアナログの時代とは比べ物にならなく改善されてよくなっております。あとは我々技師の観察能が検査の精度を左右するといっても過言ではありません。
透視観察が基準化されることにより、検査がさらに基準化され術者によって異なる検査精度やX線被ばくの格差が是正されることにより、被検者にとってよりよい検査をご提供できればと思っております。
今後も栄区そして近隣の皆様のがん検診の中核として、安全で精度の高い検査を行っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたしします。

 


横山力也
日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師、
NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構 胃がん検診読影部門 B資格
神奈川県消化器がん一次検診機関連絡協議会 技術部世話人

当院の健診センターがリニューアルされました!


当院のリニューアル工事が進行中であるのは、すでにご存知であると思いますが、待望の第一期工事がこの春に完了いたします。今回竣工する新B棟には、病棟のほか、放射線治療施設や薬剤部、職員食堂などのほか、私どもが勤務します健康医学センター(健診センター)も入ります。これを機にセンター常設のX線機器も更新されますので、この紙面をお借りして、新機種のご紹介をさせていただきます。
当科の診療放射線技師は「安全に精度の高い検査や治療を低被ばくで提供する」という共通目標で日々業務を行っていますが、まさにそれを実現するためのサポート役として、申し分ないデヴァイスを手に入れることができました。特に安全面においては、被検者様にご協力していただき体位変換をお願いしている胃X線検査の前壁撮影逆傾斜時の安全をサポートしてくれる「自動肩当て装置」の存在は、我々としても待望の装置であり、昨年あった群馬での死亡事故のような危険は回避するのは当然ですが、被検者様にも検査時の安心感をご提供できると強く思う次第であります。胸部X線装置も更新され、X線TV同様、高精細な Panel Detector(FPD)の搭載モデルが導入されたことも精度をさらに向上させる一因となることを期待します。また、近年、話題になりがちな放射線被ばく管理についても、今回導入された装置はいずれも、一検査あたりの入射線量(計算値)がリアルタイムで表示され、効率よく管理することができます。胃X線検査を行うFPD搭載X線TV装置(写真1、2)は、パルス透視やDose rateを設定することができるため従来の機器より半分の透視線量で検査を行うことができます。今後、これらの装置の至適な安全運用と精度向上の手技を模索していこうと思っております。
センターのオープンは6月半ばの予定です。この稿がお目にかかる頃にはすでに軌道に乗っていると思います。もちろん先生のご利用も心よりお待ち申し上げております。

検診1

少し宣伝をさせていただきます。
当院健康医学センターでは、より多くの方が便利にご利用いただけるよう、基本人間ドック、脳ドック、乳がんドックがインターネットで予約できるようになりました。当院ホームページの健康医学センターのバナーより入ることができます。どうぞご利用ください!
また、センターの公式Facebookページも開設されましたので、併せて、よろしくお願いいたします。

横山力也 (日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師、NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構 胃がん検診読影部門 B資格)

摂食・嚥下障害検査をみる!


放射線科には直接関係ないのですが、摂食・嚥下障害検査で嚥下造影(videofluorography:VF)に立ち会う機会が最近増えてきましたので、今回これを紹介したいと思います。
摂食・嚥下障害とは、字の如く口から食べる機能障害のことで、普段私たちは意識していませんが、食べ物を口に入れて飲み込むまでに5つのステージがあるそうです。食べ物を認知する先行期、食べ物を良く噛む準備期、食べ物を後ろ側へ送る口腔期、食べ物が咽頭を通過する咽頭期、食べ物が食道を通過する食道期の5つです。これらのうち1つまたは複数機能しない場合を摂食・嚥下障害があるとされています。摂食・嚥下障害により、ご飯がうまく食べられないことによる栄養状態の低下や気道に食べ物が入ってしまう誤嚥性肺炎へのリスクがある他、ご飯が食べられないことによる食べる楽しみの喪失があげられます。原因としては高齢による飲み込みの筋力低下は一因ではありますが、最大の原因は脳卒中です。それが嚥下障害の40%を占め、急性期には30%の患者さんに誤嚥が認められるそうです。嚥下検査にはいくつかあるようですが精密検査としては嚥下内視鏡検査(VE)と嚥下造影検査(以下、VF)があります。今回、我々放射線科に関わりのあるVFを紹介します。

VF検査とは

この検査はTV室で透視をしながら検査をします、スタッフとして言語聴覚士(ST)、主治医、看護師、放射線技師で行なっています。バリウムが混ぜられている専用の検査食が用意され、とろみ、ゼリー、ヨーグルト、お粥など硬さの違う食べ物(写真1)を飲み込んでもらいます。基本的には坐位で検査を行い、言語聴覚士が介助を行いながら食物の飲み込みをしてもらい、その様子を透視で観察します。放射線技師はX線透視の調整と被ばくのコントロール、透視画像の記録を行っております。飲み込んだ食べ物が気管に入らないか、咽頭に残留がないか、坐位の角度によって嚥下状態に変化があるか、どの様な食形態ならば安全に食べることができるのかを評価します。

写真1

嚥下障害画像

30~40分程度の検査ですが誤嚥のリスクが非常に高いので常に吸引ができるよう準備をしています。透視画像は動画と音声を同時にDVDに記録保存し、スロー再生やコマ送りをして観察できるようにしています。検査の結果をふまえて、食事形態や食事時の姿勢の調節などを考察し、どのようなリハビリが必要か検討します。

胃X線検査の透視観察


日本消化器がん検診学会胃がん検診精度管理委員会によって基準撮影法ガイドラインが改正されて3年が経過しました。現在では、検診に従事する全国の技師に普及浸透し、ある一定の効果を得ていると確信されます。しかしながら、ただマニュアル通り撮影しても救命可能な早期胃がんは拾い上げることは容易ではありません。先生のやってらっしゃる内視鏡検診と肩を並べる精度を維持するためには、我々撮影する技師には熟練した透視観察が必要であると痛感しております。東京都がん検診センターの入口陽介先生のお言葉をお借りすると「ただ透視像を漫然とみる」のではなく、「自ら観に行く」事が必要だそうです。そこで、我々が普段拾い上げに使っている撮影テクニック(ってほどでもございませんが)を、ひとつご紹介させていただきます。

通常のX線検診においてはブスコパン等の鎮痙剤は使用しておりませんので、どうしても十二指腸へバリウムが流出してしまい、同時に幽門前部の蠕動も活発化します。よって前庭部~幽門前部にかけての観察がしづらくなります。しかしそんな時にもあわてずに、体位変換により椎体との重なりを避け、深い呼気によって前庭部を伸展させます。さらに幽門前部が拡がる撮影タイミングを計れば観察できる範囲も大きくなります。(図1)

前壁二重造影像においては胃型によっては描出が非常に難しく、さらに被検者様に逆傾斜がかかっている状態で透視観察をしなくてはならないので、できるだけ短時間の観察で最大の効果を求められます。我々の工夫としては圧迫ふとんの厚さを胃型に応じて可変させたり、透視観察時に吸気と呼気を使い分けたりしながら病変を拾い上げます。(図2)の左側の像では十二指腸の重なりによって陥凹病変が隠れていますが、その右側に先細りするヒダ集中像らしきものが透視上で目視できました。しかしこれだけでは要精検として拾い上げる所見としては乏しいので、深い呼気によって胃自体を押し上げて十二指腸と分離させて陥凹病変を描出しました。その陥凹周囲にはバリウムをはじいた粘膜の高まりも観察できました。これでがんを疑う所見をそろえることができたわけです。内視鏡下での拾い上げと同様、胃X線検査においても我々撮影技師自身が、胃がんのX線所見が頭に入っていないとなかなか拾い上げられません。

胃透視今後も研鑽を重ねて、地域のがん検診に微力ながらお役に立てるようにしていきたいと思っております。
(横山力也;胃がん検診専門認定技師、胃がんX線検診読影部門B資格)