CTC検診を受けてみました


当院検診センターでは昨年10月より大腸CT検診をスタートいたしましたが、私も実際に大腸CT検診を受検してみましたのでここでご紹介させていただきます。

大腸CTも前処置が必要

大腸CTは、CTで内視鏡の様な画像を得ることができる次世代的なイメージの検査ですが、検査においては前処置が必要となります。内視鏡検査と同様に大腸を空っぽにするための前処置で、消化のよい検査専用食を食べる必要があります。また、便を完璧に空っぽにするのは難しいので、少量のバリウムを同時に摂取することで、あえて便にバリウムを混ぜ込ませ画像処理でその便を取り除く技なども利用しています。

検査食はS&B食品!

検査食は検査前日の朝食、昼食、夕食、検査当日の朝食がセットで販売されておりそれを購入します。私が購入したのはこの検査食で、製造はあのS&B食品なので自然と期待してしまいます。

検査食レポート(総合得点は○○点!)

検査前日の朝食は中華粥とコーンスープ。期待しての一発目、レンジで調理する中華粥だったのですがこれはいけませんでした。味がうすすぎておいしくない。残念。しかし、コーンスープの方はおいしくいただけましたのでやや信頼回復一安心です。つづいて昼休み。昼食はカレーです。なにげに肉の様なものやニンジンまであっておいしくいただけました。昼食後には少量のバリウムを飲む必要があるのですが、飲むヨーグルトのような少し甘い感じの感触で、主食の量が少ないこともあってデザート感覚でおいしくいただけました。午後の仕事もがんばれます。
夕食は親子丼でこれも鶏肉が入っていて味もしっかりしていました。さすがS&B食品。最初の中華粥が足を引っ張ったものの最後はしっかりと結果を残してくれました。総合80点としたいと思います。

初経験、異物挿入!(検査当日)

検査は朝8時30より行います。この日は横山技師も一緒に検査を行いました。お互いにCTを撮り合いっこするという、異様な風景でした。
さて、最初に真田先生からブスコパンの注射をしていただき、その後CTのベッドにころがります。横向きに寝るといよいよ真田先生が私の肛門に検査用のチューブを挿入します。肛門にものを入れるのは初めてでしたが、特に違和感も痛みもなく、残念ながら(?)癖になるような快感もありませんでした。(写真:真ん中が検査用チューブ。右は内視鏡)

続いて、肛門のチューブから炭酸ガスが入ります。すぐにお腹がはってきます。痛くはないのですが、お腹が風船になった気分です。お腹ぱんぱん状態は、やはりあまり気持ちのよいものではありませんでした。撮影はうつぶせと仰向けの2ポーズなのですが、うつぶせの方はお腹がつぶれるのできつい印象をもちました。とはいうものの、仰向けでの撮影時には「炭酸ガスではなく水素ガスだったら空飛べるのかな?」なんて考える余裕もあり、ものの10分程度で検査終了となりました。

さすが流行の炭酸!体によい!?

ガス注入を止めるとすぐにお腹の張りがとれて楽になりました。大腸CT検査では長年、炭酸ではなく空気をお尻からいれて検査をしていたのですが、脂汗をかいてつらそうな患者さんをたくさんみてきました。しかし、この炭酸ガス注入器の購入以降はそのような光景を見ることがなくなったので、きっと楽なのだろうと想像はしていたのですが、本当に楽でした。検査終了後もトイレに行きたいという感触もなく、すぐに白衣に着替えてそのまま検査業務にはいれました。

私の大腸はだいちょーぶ(大丈夫)!!

私はタバコを吸わないものの、お酒の方を少々毎日飲んでいて、年齢の方も40を超えてしまったこともあり多少大腸癌については心配していたのですが、検査結果は問題なしということで一安心できました。これでまた晩酌を楽しむことができます。

食事制限と前日にお酒が飲めないことがつらいところですが、人は時にこのような経験をしてみるのも大切だなと感じ、また5年後にでも受検してみようかと考えています。

CT.MRI室主任 保田 英志

症例(Rad@Home2019年1月号掲載分)


問題: 50歳代、女性。心窩部痛で救急外来受診。



回答

胃アニサキス症(gastric anisakiasis)

 

 

 

 

 

 

胃体部で浮腫性壁肥厚を認めます(左上図、右上図:黄矢印)。周囲脂肪織濃度上昇を伴っています(左下図:赤矢印)。上部消化管内視鏡検査では、胃壁に付着したアニサキス虫体がみられ、鉗子を用いて除去しました(右下図)。

アニサキス症は、アニサキス亜科のAnisakis simplex、Pseudoterranova decipiensの幼虫が寄生したサンマ・サケ・スルメイカなどの生鮮魚介類を生食することによりおこる内臓幼虫移行症です1)2)。ほとんどは体外へ排出されますが、体外へ排出されず、胃・腸管壁などに穿入することで急性腹症を呈します3)

胃アニサキス症の症状としては、生鮮魚類を生食後、3~4時間後の夜中に心窩部痛が見られることが多いです。本症例では、前日にサバ、イカを摂取し、当日の朝心窩部痛で起床したというエピソードがありました。CT所見は、胃壁粘膜下浮腫(100%)、胃周囲の脂肪織濃度上昇(95%)、腹水(75%)、十二指腸拡張(70%)が特徴です4)。胃アニサキス症におけるCTの役割は類似した症状を呈する他疾患の除外が目的で、アニサキス症の臨床診断でもCTを行うと30%は膵炎や胆嚢炎などの他の疾患であったと言われています4)。鑑別としては、急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)があげられますが、画像診断で鑑別は困難です。治療は、内視鏡的に虫体を除去します。

参考文献)
1)北村彰英、後藤司、長田啓嗣ら.アニサキスと思われる腸管線虫症の2手術例について.南大阪医学.1997;45(1):14-27.
2)吉川正英、松村雅彦、山尾純一ら.回虫症・アニサキス症・旋尾線虫症.GI Res.2006;14(4):357-63.
3)下國達志、青木貴徳、大黒聖二ら.消化管外アニサキス症による絞扼性イレウスの1例.日本臨床外科学会雑誌.2008;69(6):1373-7.
4)Shibata E, et al. CT findings of gastric and intestinal anisakiasis. Abdominal Imaging, 39:257-261, 2014.

 

歯科撮影用装置が新しくなりました!


この度パノラマX線装置更新に伴い、セファロ撮影も可能な
Veraview epocs(べラビュー エポックス) 2D Series (モリタ製作所)
を導入いたしました。

セファログラム(頭部エックス線規格写真)とは…
一定の規格をもって撮影されたエックス線写真ことで、一定の規格とは、
1)頭部固定装置(イヤーロッド)を外耳孔に入れ指示器を眼窩下点に位置させて頭部を固定する
2)被写体とエックス線管の焦点との距離(通常150cm)および、被写体とフィルムとの距離(通常15cm)が一定である
3)中心エックス線が一定の場所を(側面像では左右のイヤーロッドの中心軸を、正面像では左右のイヤーロッドの中央で正中矢状面を)通過する
というものです。
一定の規格により撮影されることから、再現性の高いエックス線像が得られる、実体の大きさを容易に計算できる、というメリットがあり、経時的な比較・検討が可能であるため矯正治療の評価において多用されます。

一般撮影・被曝管理主任 森 直彦

これでぴったりマッチング! 高精度照射を行う技術 IGRTとは?


当院の放射線治療室が立ち上がり10月でまもなく3年が経とうとしています。最近では、複雑な方向からの照射や高精度な治療がますます増えてまいりました。
今回は放射線治療を行うにあたって高精度に照射を行うためのIGRTという技術を紹介したいと思います。

IGRT

IGRTとは画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy)の略称で、照射の直前や照射中にX線画像やCBCT(Cone Beam CT)などの画像情報を利用して計画画像との位置のズレを数値化し、照射位置を修正しながら照射を行う高精度治療技術です。

各治療日における内臓の充満度の違いや呼吸に伴う内臓の動きなどにより、病巣位置が計画時のCT位置と比べ動く可能性があります。そこで、IGRTを行うことにより照射位置を補正し、正確に病巣に照射することができます。
位置の修正については骨を中心に合わせるのか、組織の濃淡値による臓器を中心に合わせるのかをそのときの状況で選択できます(図1,2)。
もちろん万能ではないので、最終的には位置照合結果の判断は医師によって行われる必要があります。また、IGRTを用いることによってわずかなズレを正確な位置に補正することは可能ですが、患者体位のねじれや大幅なズレを修正することは困難です。そのため、従来通りのレーザー照準器を利用した位置合わせによる患者体位の再現性が重要となってきます。

当院では、前立腺がんや肺がん、リンパ節転移や骨転移など多方向から複雑に照射を行う治療にIGRTを利用しています。さらに、IGRTを用いると定位放射線照射なども行うことができます。定位放射線照射とは、3~4cmの小さな病変に対してピンポイントで行う照射のことです。転移性肺がんや転移性脳腫瘍などに用いられる治療でIGRTが必要不可欠となります。
さらに、当院では6軸寝台を導入していますので、患者体位のねじれ補正を行うことができます。6軸寝台はIGRTでの補正時にX軸(左右方向)、Y軸(頭尾方向)、Z軸(腹背方向)の補正だけではなく、それぞれの軸における回転方向(pitch、yaw、roll)の補正を行いますので、通常の3軸寝台よりも精度の高い照射が可能になります(図3)。

あなたの胃粘膜は大丈夫?


Helicobacter pylori(以下Hp)感染による持続性胃炎は胃癌発生リスクに関与すると認知されていますが、除菌療法により胃がんリスクは30~40%低下することがWHOにより報告されています。
医学の進歩に伴いがんに至るまでの道筋が明らかになってきている今、がんにならないように原因を除くことが早期発見・早期治療といえるのではないでしょうか。
そこで、検診やドックなどで早期胃癌を見つけることに加え、Hp感染の有無や胃がんのリスク表現である萎縮性胃粘膜の程度を評価し、除菌の勧奨や経過観察を継続することも重要となっています。

内視鏡検査(胃カメラ)は胃の中をカラーで直接目視するため、凹凸が少ない粘膜の荒れや平坦な病変、色の変化を認識できHp感染有無の検査も可能です。
一方、胃X線検査はモノクロにて粘膜の凹凸を表現するため平坦な病変や粘膜の色の変化を観察することは出来ませんが、わずかな粘膜の凹凸や異常を描出することが可能です。装置やバリウム製剤の精度向上により最近ではHp感染や胃粘膜萎縮もある程度わかるようになってきました。

Hp感染胃炎に対する除菌療法は2013年2月に保険適応となり、正式な治療対象となっています。胃X線検査においてHp感染の有無を考慮した撮影と読影を行うことは、受診者に胃がんリスクに関する情報を提供できるので、胃がん予防にも貢献することができます。
ただし、Hp除菌により胃がんリスクは減少しますが、ゼロにはなりません。除菌後、除菌に成功した場合でも非感染者よりは胃がんリスクが高くなるからです。したがって、胃がん死亡者を減らすためには、Hp除菌後の人にも定期的な画像検査を行う必要があります。すべての人に内視鏡検査を行うことは不可能です。そこで胃X線検査は重要な役割を担えるのではないでしょうか。

Hp感染・萎縮粘膜の有無、背景胃粘膜を知り、自分の胃粘膜が胃がんを発生しやすいか、そうでないかを把握することはとても大切です。また、個々の胃の状態、特に胃がんに関するリスク度によって胃の検査方法や間隔などを個々で設定するのが合理的です。
ご自身の胃粘膜状態を知らないは、まずは手軽に受診できる胃X線検査(バリウム検査)を受けてみては、いかがでしょうか。

胃X線検査に携わるものとして、Hp感染の有無や胃がんのリスクの表現である萎縮性胃炎の程度を評価できるような、より精度の高い画像を提供できるように日々努力をしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

胃がん検診技術部門 B資格 小曽根容子

水を味方に!? MR ハイドログラフィ


MRIは撮影パラメータを操作する事でT1強調画像、T2強調画像といったさまざまなコントラストの画像を得ることが可能です。さらに撮影法を工夫する事で造影剤を使わず血管を描出するMRAなどのような特殊な画像も得ることができます。
今回ご紹介するのはその中の一つ MR ハイドログラフィ という方法です。

MR ハイドログラフィとは?

T2強調画像は水を高信号で描出しますが、撮影時に水をより強く高信号にすることで周囲の組織を抑制しつつ水のみが画像化されます。これがMR ハイドログラフィです。
当院でも様々な部位でこの撮影を行っています。いくつかご紹介していきます。

MRCP(MR cholangiopancreatography:MR胆道膵管撮像法)

胆汁、膵液を対象とした手法です。胆嚢、胆管、膵管を描出します。
当院では細かいスライスと厚いスライスの2種類を撮影することで局所の観察と全体像の把握を行なっています。
腹部の撮影のため息止めが必要となりますが、上手く息が止まらない場合は自由呼吸下でも撮影可能です。
胆石や胆嚢炎、総胆管結石膵がん、胆道がん、胆のうがんなどの疾患で活躍する撮影です。結石の部分は通常類円形の欠損像として描出されます。手術前に胆管膵管の走行を把握するのに役立ちます。

MRU(MR urography:MR尿路撮像法)

尿路の全体を描出する手法です。
経静脈性腎盂造影(DIP)でも尿路を撮影できますが、MRUでは造影剤を使わず検査可能です。尿管結石や尿路腫瘍などで拡張された尿管の描出と閉塞部の同定に役立ちます。
また、連続的に撮影をすることで尿の流れを観察することもできます。

MR ミエログラフィ(MR脊髄撮像法)

脳脊髄液を対象とした手法です。脊柱管内の脊髄を描出します。
X線でもミエログラフィがありますが、MRIでは造影剤を使用せず侵襲性なく検査可能です。
椎間板突出などで脊髄が圧排されているところが欠損像として観察できます。
息止め不要で10秒程度で撮影が可能です。

MRC(MR cisternography:MR脳層撮像法)

こちらも脳脊髄液を利用した手法です。微細な脳血管や脳神経を脊髄液の中に陰影像として描出します。
スライス厚をとても薄く(0.8mm)撮影するため脳神経由来の腫瘍を見つける場合や、血管が神経を圧迫していないかを観察する際に有用です。撮影後に白黒反転する事で血管と神経を白く描出することも可能です。

MRIの少し特殊な画像についてご紹介させていただきました。
この様にMRIは工夫によって様々な撮影が可能となります。より良い画像を提供するためにこれからも励みたいと思います。

金属アーチファクト低減処理(MAR)を紹介します


当院に新しく導入されたRevolution HD(GE社製64列CT装置)に搭載された
“金属アーチファクト低減処理(Metal Artifact Reduction)”
についてご紹介します。

従来のCT装置では、金属によるアーチファクト(障害陰影)を軽減する方法がない為、人工骨頭や人工関節、ペースメーカーなどの体内金属を含む撮影において障害陰影を回避することが出来ませんでした。しかし、今回搭載されたMAR処理を行うことで体内金属により生じるアーチファクトを軽減し、画像をより明瞭に描出することができるようになりました。今回は当院で実際に経験した症例をご紹介したいと思います。

Case 1 頭部血管内治療後(コイリング後)の評価

頭蓋内コイルの周囲にハレーション(青丸:金属周囲が白くなっている部分)とダークバンド(赤丸:金属周囲の黒くなっている部分)によるアーチファクトが大きく発生しその周囲の状態が確認できませんが、MAR処理後は前述のアーチファクトが軽減され確認できる範囲が広がっています。コイリング後の出血の有無を評価する範囲が広がり、診断精度の向上につながると考えられます。

Case 2  左下腿骨手術後(プレート固定後)の評価

Axial像(一般的な輪切り画像、横断)で赤矢印部分にアーチファクトが確認できます。これをCoronal像(冠状断)で確認すると赤丸で囲った部分となります。さらに3D画像構築を行うとアーチファクトにより骨折線の一部に不明瞭な場所(青丸で囲った部分)が生じています。
しかし、MAR処理後はそれらのアーチファクトがすべて抑制され、より明瞭になっています。このようにMAR処理はAxial像(横断)だけでなく、Coronal像(冠状断)やSagittal像(矢状断)、さらには3D画像等の画像作成に対しても有効な技術です。

症例(Rad@Home2018年11月号掲載分)


問題:46歳、男性 .

採血でFree T3 8.37pg/mL、Free T4 2.38ng/mL、TSH<0.004μU/ml。

下記のa.~e.のうち、最も考えられる疾患は何でしょうか?

a. Plummer病
b. Basedow病
c. 慢性甲状腺炎(橋本病)
d. 亜急性甲状腺炎
e. 甲状腺癌

解説と回答

◆甲状腺シンチグラフィについて
①臨床的意義
超音波検査の発達に伴い、甲状腺の形態や腫瘍の有無を判断することは少なくなり、むしろ甲状腺摂取率が重要です。
②使用する放射性医薬品
123I、131I、99mTc-pertechnetate(99mTcO4ー)で、99mTcO4ー(半減期約6時間)が最も多く用いられます。99mTcO4ーの摂取は甲状腺機能と比例し、ヨウ素の摂取制限は不要です。投与量74~185MBqを静注後、30分後に撮像します。ヨードイオン(Iー)と同様に1価の陰イオンであり、甲状腺に取り込まれますが、有機化されないため再び血中に放出されます。この原理を用いて摂取率の測定を行います。また、抗甲状腺薬の治療効果の判定にも有用です。当院での99mTcO4ーの甲状腺摂取率の正常値は、30分値で0.4~2.5%としています。

a. Plummer病は、自律性機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroid nodule;AFTN)において甲状腺ホルモンが過剰に産生分泌される病態です。結節状の集積がみられる一方で、正常甲状腺部分をほとんど、または全く描出しません(下図A)。
b. Basedow病では、甲状腺腫大と摂取率の亢進が特徴です(下図B)。
c. 慢性甲状腺炎(橋本病)では、病期により様々な像を示します。びまん性腫大、RI分布の不均一、進展例では軽度~高度の不規則な欠損像が認められます。
d. 亜急性甲状腺炎では、シンチグラフィでは全く描出しないことが多いです。無痛性甲状腺炎でも同様に摂取率が低いです。
e. 甲状腺癌では、腫瘍が存在する部位に一致して辺縁不規則な欠損像を示します。

解答d. 亜急性甲状腺炎

参考文献)
・核医学ノート 金原出版
・核医学検査ガイドブック プリメド社 など

リードレスペースメーカーについて


2017年より日本でもリードレスペースメーカーが保険適応になりました。

リードレスペースメーカーはカプセル型で、小さなフックで心室壁に固定し心室に電気信号を送ります。
従来のペースメーカーとは異なりジェネレーターを入れるポケットを作らなくてすむため、感染のリスクや患者さんの痛みを軽減できます。またリードもありませんのでリードの断線による動作不具合もありません。留置後は条件付きではありますがMRIの撮影も可能です。

当院でも先日1症例目のリードレスペースメーカーを施行しました。
大腿静脈を穿刺しシースを右心室まで到達させ、先端から造影し留置する場所を確認します。その後デバイスをシース先端から出して心室壁に固定されるか確認し、デバイスを切り離します。従来のペースメーカーの手技時間は2~3時間要していましたが、1症例目でも1時間程で手技を終了することができました。

リードレスペースメーカーの電池寿命は10年程といわれていますが、その頃には体外に取り出すことはできないので、電池寿命が近づいたタイミングでもう1個留置することになります。

今はまだリードレスペースメーカーの適応は限られてはいますが、今後様々な不整脈に対応できるリードレスペースメーカーが登場してくると思います。患者さんにとっても病院にとってもメリットのあるデバイスですのでさらなる発展に期待したいところです。

血管撮影・インターベンション認定技師 北畠 太郎

身体の中から狙い撃ち!? ― 内用療法(核医学治療)について ―


内用療法(核医学治療)とは?

体内に投与(静脈注射、経口)した放射性同位元素(アイソトープ:RI)やこれを組み込んだ薬剤を用いた放射線治療で、核医学治療・RI内用療法・RI治療とも言われています。
現在、日本で保険収載されている内用療法は4つほどあります。

1 骨転移のある去勢抵抗性前立腺がん治療(塩化ラジウム注射液、ゾーフィゴ®静注)
2 骨転移疼痛緩和治療(塩化ストロンチウム注射液、メタストロン®注)
3 甲状腺癌に対する術後アブレーション
4 バセドウ病に対する内用療法

これらの4つに関して紹介させて頂きます。

1.去勢抵抗性前立腺がんの骨転移治療

ゾーフィゴ®静注という放射性医薬品を静脈注射して治療を行います。

ゾーフィゴ®静注とは?
ゾーフィゴ®静注には、α線を放出する223Ra(ラジウム)という放射性物質が含まれています。この223Raには骨成分であるカルシウムと同様に骨に集積しやすい性質があり、静脈注射で体内に送られると代謝が活発になっているがんの骨転移巣に多く運ばれます。そして、そこから放出されるα線が骨転移したがん細胞の増殖を抑えます。(下図)
こうした作用により、骨転移した去勢抵抗性前立腺がんに対して治療効果が期待できる放射性医薬品です。

2.骨転移疼痛緩和治療のメタストロン®治療

メタストロン®注という放射性医薬品を静脈注射して治療を行います。

メタストロン®注とは?

メタストロン®注は、がんの骨転移による疼痛緩和を目的とした治療用の放射性医薬品です。この薬はβ線を放出する89Sr(ストロンチウム)という放射性物質が含まれています。この89Srには骨成分であるカルシウムと同様に骨に集積しやすい性質があり、骨転移部では、正常の骨より長く留まり、その部位に放射線があたることにより疼痛緩和が期待できると考えられています。

3.甲状腺癌に対する術後アブレーション

放射線ヨウ素甲状腺乳頭癌および濾胞癌が治療の対象となります。

アブレーションとは?

放射性ヨウ素(131I)という放射性物質が含まれたカプセルを内服します。ヨウ素が甲状腺に集積する性質を利用して、甲状腺に取り込ませ、放射性ヨウ素から放出されるβ線により破壊することをアブレーションと言います。
甲状腺癌により甲状腺全摘術によって病巣をすべて取り除くことができたと判断された場合でも、わずかに残存していることがあります。これにより、甲状腺癌の再発や他部位への転移を予防する目的でアブレーションを行います。

4.バセドウ病に対する内用療法

バセドウ病には薬物療法、手術療法とアイソトープ治療(内用療法)があります。

アイソトープ治療とはどのようなことをするの?

放射線ヨウ素を含んだカプセルを内服します。ヨウ素が甲状腺に集積する性質を利用して、甲状腺に取り込ませ、放射性ヨウ素から放出されるβ線により組織を破壊し、甲状腺を小さくしてホルモンを産生する力を弱くする治療法です。

これらの4つの内用療法の内、代表的なゾーフィゴ®静注とメタストロン®注の開始に向けて放射線治療科の朝比奈先生を筆頭に核医学チームで準備を進めております。今後の進捗状況や、内用療法が実際に運用を開始した際にはまた改めてお知らせします。

参考文献)
・バイエル薬品株式会社「知っておきたい治療のお話と治療中の注意点」
・日本メジフィジックス株式会社「メタストロン注(ストロンチウム-89)の治療を受けられる患者さんとご家族の方へ」
・富士フィルムRIファーマ株式会社「外来アブレーションをお受けになる患者さんへ」、「バセドウ病アイソトープ治療Q&A」