ガンマカメラって、シンチ検査と何が違うの??


通常画像診断関連の検査というと、胸部レントゲンやCTなどが代表的で、次にバリウム検査やMRIなどが思い浮かばれ、核医学検査を想像される方は少ないのではないでしょうか。
当院の核医学検査数は他の施設に比べ多いくらいなのですが、CT検査やMRI検査に比べると、1,2割くらいの件数しかない、あまり表にでる機会がない検査となっております。
今回はそのような珍しい検査部門で使われている核医学検査装置について、マニアックではありますが理解すると割と面白いかと思いますのでご紹介させていただきます。

レントゲンとは反対に…

核医学検査は、放射性同位元素を患者さんの体内に投与し、その動態を測定、画像化する検査です。通常レントゲンではエックス線を体に照射し、その吸収差を画像化していますが、核医学検査は反対で、体から出てくる放射線を検出して画像化していることになります。
核医学検査で画像化するのに用いられる放射線はガンマ線(γ線)と呼ばれる放射線になります。放射線にはいろいろと種類があり、エックス線、ガンマ線、アルファ線、ベータ線、重粒子線などがありますが、この中でこのガンマ線というものを検出して画像化しています。

ガンマ線は電磁波の一種で、性質的にはエックス線と同じといわれています。エックス線はレントゲン検査やCTなどで使われるもので、専用の装置に高い電圧をかけると発生するものです。しかし、ガンマ線は装置から出てくるわけではなく、放射性同位元素から出てくるものを指します。

ガンマカメラってどんなカメラ??

ガンマ線を検出するのに使われているのが、その名の通りこのガンマカメラと呼ばれる装置です。体が覆われるように横幅が大きい装置となっています。この装置の中に、ガンマ線を検出する装置が格納されています。

ガンマ線は通常物質を電離させることができるので、その電離した電子を数えることでそこにどれくらいのガンマ線が存在するかを測定することができますが、画像化するにはそれだと効率が悪く、たくさんの放射線同位元素が必要となってしまいます。ですので一度、ガンマ線を蛍光体(シンチレーター)と呼ばれる物質と接触させて光を発生させます。その光信号をさらに倍増させる装置(光電子増倍管という)を通すと高い信号値が得られるので、少ない放射線でも効率よくガンマ線を検出できます。
ちなみに蛍光体(シンチレータ)を利用して画像を得ることから、核医学検査はシンチグラフィとも呼ばれております。

このような放射線を光に変換して信号値を上げる技術は、レントゲンやバリウム検査、CTでも利用されており、被ばく線量の低減に利用されています。
以上、今回は簡単ではありますが核医学検査装置の基本原理についてご紹介させていただきました。

副技師長・核医学検査担当 保田

CT angiographyをきれいに撮るためのテクノロジー


CT angiography (CTA) は血管の走行を確認したり、病気を診断するために有用な検査です。
これは造影剤が目的の動脈に到達したタイミングを見計らってCTを撮るという方法で撮像されます。しかし、静脈から注射した造影剤が目的の動脈に造影剤が到達するタイミングは個人差があり、事前に知ることができません。そこで当院ではボーラストラッキングという方法を用いて正確に目的血管のCTAを撮像しています。
ボーラストラッキングとは目的動脈の位置で連続的にスキャンしてモニタリングを行い、造影剤が到達したら撮像を開始する方法です。

ボーラストラッキングはいろいろな血管に適用できます。

MRI認定技師 五十嵐

レントゲン撮影のいま・むかし 内耳道の撮影方法


今回は内耳道の撮影法の昔と現在についてお話をさせて頂きます。
私が放射線技師になった頃(30なん年前)はまだCTがSingle Scanで1枚の撮影時間が4秒もかかり画像再構成時間が17秒、それに加えて一人の患者さんを撮影するために数回の休止時間(Cooling Time)が必要なため耳鼻科領域の撮影には適していませんでした。そのため内耳道の撮影はエックス線撮影に頼らざるをえませんでした。
その撮影法がステンバース法です。

内耳道撮影が必要とされる主な症例は耳鳴り、感音難聴、顔面神経麻痺です。撮影所見としては内耳道肉腫、内耳道の骨折、狭窄です。内耳道の左右差が2mm以上超えると拡大と認められ腫瘍の有無を疑うそうです。
私が技師になりたての時に耳鼻科の先生から、“一側性の感音難聴は両側の内耳道の比較が必要なため左右が明瞭に比較できる写真を撮影してもらいたい”と言われた事があります。
患者さんの頭の形・年齢により撮影体位が維持出来るかの判断が必要で、私には苦手な撮影法でした。

しかし、現在ではCTの発展に伴い容易に内耳道の撮影が短時間で明瞭に撮影でき(撮影だけだと約15秒)、ステンバース法の撮影も少なくなってきました。これからも先生のオーダーにかなう画像を提供したいと考えてます。

一般撮影担当 青木

MRI検査を安全に実施するために


今回は当院がMRI検査を安全におこなうために、日々行っていることを紹介したいと思います。
MRI検査をするときに最も気を付けなくてはいけない事、それは“本当にその患者さんをMRI室に入れて検査して良いのか”ということです。MRI室に金属は持ち込めません。しかし、患者さん自身の体内にいろいろな医療デバイスが入っていることがあります。当院の場合、1.5T(テスラ)と3.0Tの2台MRI装置があるため特に注意が必要です。

 

MRIは強力な磁石と電磁波の力を利用して身体の臓器や血管を撮影します。
MRIの磁石の強さはT(テスラ)で表し、数が大きいほど磁力が強くなります。したがって、1.5Tより3.0Tがより大きな磁力です。
この磁力が体内金属への及ぼす作用は
①吸引力・回転力
②発熱
があり、磁力が強いほど作用も大きくなるため体内金属の種類によって1.5T装置のみ検査可能か、3.0T装置でも検査を行えるのか確認が必要となります。

便利なサイト見つけました!

医療デバイスそれぞれの添付文章が全て揃っていれば、そこからMRIに関する情報を探し出せば良いですが、時間と労力がとてもかかります。そこで、文字を入力しただけですぐに検索してくれるインターネットを使用しない手はありません。しかしインターネット検索はとても手軽な一方、情報が多すぎてこれもまた大変な場合が正直あります。
何かもっと手軽に、そしてすぐに分かる検索サイトはないものかと思っていたところ、技師長が情報を持ってきてくれました。非常に便利なので先生の病院でもし困っていたら使ってみてください。
そのサイトは、メディエ株式会社が運営しているmedie(Medical Disporsable Equipment)医療材料データベースです。「本当にこういうの、探していたんだよね」と言いたくなるサイトです。この中にある、「医療機器のMR適合性検索システム」。非常に優れものです。この会社は、もともと医療材料のデータベースを役立つ分類ごとにまとめて編集し、お客様に提供していた会社のようです。このMRI適合検索システムのおかげで、翌日のプリチェックと安全確認をスムーズに行うことができています。MRI検査を安全に効率よく行うためにもこの検索システムは非常に重宝しております。

また、MRI検査の安全面での疑問などはMRI SAFETY FOURUMもおすすめです。MRI検査時における様々な疑問に対して解決してくれます。日々更新されているので、こちらのサイトもおすすめです。
便利なものは共有した方が良いなと思い、今回はこのようなサイトを紹介させて頂きました。安全な医療を提供する上で、また良い情報がありましたらこの場を使って紹介していきたいと思います。

MRI担当 平野

“なんとなく”が数値でわかる!骨シンチ画像解析プログラム BONENAVI


従来、骨シンチの評価は集積の程度を客観的に評価することが困難でした。「集積が淡い」「集まり方が不整」「加齢性変化?」など画像への視覚的印象が評価の項目であり、経時的観察においても同部位の集積について視覚的比較に留まる傾向がありました。近年ではSPECT撮影の追加や、MRI画像、CT画像や単純XP画像と対比させて評価を行っています。
一方で、骨シンチの読影支援に関する報告や米国における定蘊的評価法の報告を基にスウェーデンのEXINI Diagnostics社が骨シンチのCAD*システム“EXINI bone”を開発しました。この“EXINI bone”は、2012年には米国でFDAの承認を受け、現在では欧州、米国、アジア等で広く使用されています。
今回ご紹介する、“BONENAVI(ボーンナビ)”は、EXINI Diagnostics社からの技術協力を得て開発され、日本人データベースを用いた骨シンチ画像解析プログラムです。 2015年5月に医療機器としての製造販売認証を取得しています。
*CAD:Computer Assisted Diagnosis

1. ANN値<異常集積の可能性>

BONENAVI はデータベース*を用い、年齢、性別、癌種(乳癌/前立腺癌)を考慮したANN(Artifical Neural Network)解析アルゴリズムを構築しました。
データベースにおける癌腫の内訳は、乳癌が41%、前立腺癌が29%、その他の癌(肺癌、腎癌、膀脱癌等)が30%です。
ANN解析で求められたANN値は0~1の値により異常集積の可能性を表示します。1に近づくほど異常集積の可能性が高くなります。(図1)
なお、ANN値の解析は天気予報の降水確率と類似しており転移の確率をとらえるという意味で使用するのが望ましく明確なカットオフ値があるわけではありません。
*日本人データベース(9施設、n=1549)

2. BSI(Bone Scan Index)<異常集積の広がり>

BSIはMSKCC*が提唱した骨転移の広がりを評価する指標で、全身の骨量に占める高集積部位(赤色)の割合(%)を算出したもので、
0%   転移なし
0.5~5%  概ね転移あり
5%超え  ほとんど転移がある
と考えてよいです。(図2)
*MSKCC:New York Memorial Sloan-Kettering Can cer Center

3. HSn(Hotspot number)<異常集積の数>

高集積部位(赤色)の個数をHSn(Hotspot number)と定義します。
ただし、近接する2つの集積が合わさってしまうとHSnの数は減少してしまいます。

今回はBONENAVI解析の流れについて述べさせていただきました。続編では臨床例を交えて説明させていただく所存です。

放射線技術科主任
核医学専門認定技師/放射線内用療法安全取扱担当者
荒田光俊

参考文献(画像含む)
・富士フィルム富山化学「Bone Scan Index(BSI)による骨シンチの定量化」

造影CTってどうやるの? 造影CTの現場をご紹介します!


“造影”という言葉をこちらのブログでは何度もご紹介しておりますが、実際の使用方法などについてお話したことがなかったかと思います。今回は造影CT検査の実際についてお話しさせていただきます。

見えないものを見えるように

ご存じかと思いますが、造影というのは影を造る書きますが造影剤はまさしくそのような薬です。見えないものを見えるようにしてくれます。CT用の造影剤には数グラムのヨードが含まれており、このヨードがエックス線に吸収されやすいので、写真によく写る、すなわち影を造るということになります。

まるでハイボール?濃いめと薄めと大容量と・・

CT用の造影剤には種類があり、容量と濃度などの違いがあります。
容量は造影剤の量で、体が大きい人は大容量のものを、小さい人は少ないものを使います。

濃度は造影剤の濃さを表すもので、これは写りにくいような細かい部位を撮影するときに使います。代表的なものは頭の血管撮影や心臓血管撮影といった血管径が5mm以下のようなものの撮影で、高濃度造影剤100ccを25秒という非常に速いスピードで注入しています。血管にリボビタンD 1本分の量を25秒で入れると想像してください。かなり速い速度で入れていることがわかるかと思います。

造影剤はねばっこい?

あまり知られていないのですが、造影剤は少しねばねばしています。これを血管内の細い針先から高速で入れるには結構な力が必要となります。そこでインジェクターという装置を使って注入しています。これを利用すると、短時間に正確な量の造影剤を注入できます。
しかし、血管が正しく確保されていることが重要です。しっかりと針が血管の中に入っていないと、あっという間に100ccの造影剤が皮下に漏れてしまいます。ですので、造影検査は血管確保がとても重要な検査となっています。

静脈からの注射で動脈血管を簡単に評価できる造影CTですが、実際にはこのように慎重な手技が必要とされる検査となっています。

放射線科福技師長 保田

TAVIはじまりました


以前にご紹介させていただきましたが、当院ではTAVI(Transcatheter Aortic Valve Replacement 経カテーテル大動脈弁留置術)を行えるように準備をしてまいりました。さかのぼること3年前、カテーテル室更新に伴い、これからはTAVIもできる病院にしていかなければいけないと、カテーテル室をハイブリッド手術室に改装することとなりました。ハートチームの発足・施設認定の取得と段階を踏み、2019年10月31日、ついに1症例目を迎えることができました。指導医のもとTAVIを施行し、合併症なく手技を終わることができ患者さんも無事退院しております。

新たな選択肢“TAVI”

大動脈弁狭窄症に対する治療法は3つの選択肢があります。
・保存的治療(投薬治療)…症状が軽い場合 緩和や進行の抑制
・開胸手術(弁置換術)
・TAVI(経カテーテル治療)
根本的治療には開胸手術かTAVIを行いますが、現在の日本における第一選択は開胸手術です。TAVIは2013年10月保険適用となり選択肢に加わりました。開胸をせず人工心肺も不要な手技なので、開胸手術に比べて低侵襲です。そのため入院期間が短く、患者さんの比較的早い社会復帰が期待できます。高齢による体力の低下や、その他の疾患などのリスクを持っているため開胸手術を受けられない方の新たな選択肢となります。

手技が始まる“前”こそ重要!

TAVIは合併症を起こすとその死亡率はかなり高いものとなります。特に気を付けるべき合併症としましては、アクセスルートの損傷・弁輪部の破裂・左室損傷・冠動脈閉塞・人工弁の脱落等があげられます。これら重症化し得る合併症につきましては、術前の計画を正確に行うことである程度予測・回避できることが知られています。そこで重要視されているのが術前CTによる計測です。一度の検査でアクセスルートの評価と大動脈弁や冠動脈の情報まで得ることができます。主に計測するものとしましては、アクセスルートの血管径や性状、大動脈弁輪部や大動脈基部の径、弁輪部から冠動脈入口部までの高さなどで、コンマ何mmの単位で計測していきます。

術前の計測が手技の成否を決めるといっても過言ではないといわれていますので、撮影から計測、手技にわたり携わる我々放射線技師の役割は重大であると考えます。今後もより一層気を引き締めて精進していきたいと思っています。
また、TAVIの認定は3年ごとの更新制で症例数が規定数に達していないと継続して手技を行っていくことができません。3年間でTAVI 60件、AVR 60件、経食道心エコー 600件等かなり厳しい条件となります。先生の日々のご診療のなかで大動脈弁狭窄症の疑いがありそうな患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ当院にご紹介いただければ幸いです。TAVIの適応は大きく①重症度の高い大動脈弁狭窄症であること②開胸手術の適応でないことの2つですが、その他様々な要因を考慮して適応判定を行います。(詳しくはEdwards TAVI医療従事者向けサイト tavi-web.com./proffesionals/indication/を参照ください)よろしくお願い致します。
血管撮影・インターベンション認定技師 放射線技術科主任 北畠 太郎

医療法改正に伴う当院の取り組み


今年度より医療法が改正され、次年度から大きく放射線に関する扱いが変化します。病院にて、放射線安全管理責任者を立てなければなりません。基本医師ですが、放射線関連(事故や放射線障害が出たとき)に関して連絡体制などができていれば診療放射線技師が担うことができるとされています。多くの病院では放射線科医師が適任であると思いますが、大学病院でない場合マンパワーの問題などがあるので診療放射線技師が事実上担うことが予想されます。

放射線もしっかり証拠保全!?

具体的には2020年度より、使用した放射線量(線量)を表示できる装置を有する場合、照射録に記載する撮像条件とは別に個々の患者さんの情報・撮像部位を線量と共に記録する必要があります。CT・血管撮影装置(移動型含む)・核医学撮影装置などが対象です。CTの線量が問題となって、脱毛がおきた事例があります。また血管撮影や循環器領域では透視を使って治療をおこなうために透視時間が問題になります。最近では脳神経領域も治療で血管撮影装置を使うので透視時間が問題になります。一昔前までは透視は診断でしたが、現在では透視は治療と捉えて、適切な透視時間や透視線量を管理しないと放射線障害が起きる可能性があります。

当院ではまず従事者の被ばく管理を徹底的にチェックすることにしました。従事者は線量限度が適用されます。特に循環器系医師、脳神経外科医師、泌尿器科医師、消化器系医師がクローズアップされます。2021年度には水晶体の線量限度が年20mSvになると言われており(現在は150mSv)、大きく規制されます。放射線防護眼鏡が従事者には必須となります。
次に患者さんに放射線検査の正当性と、自院での放射線量、また自院での放射線量の適正化の取り組みを検査前にしなければなりません(ここは当院もこれから検討に入ります)。
このように昨今、放射線の取扱に関して大きく変化していますので十分留意ください。当院で依頼くださるCT検査、核医学検査においては2015年にJRIMEが提唱した線量指標を参考に適切に放射線量を調整していますのでご安心ください。放射線の取扱に関しては自院で指針を作成しなければならないため、当院も作成するための組織づくり・体制づくりを進めています。

放射線技術科 技師長  高橋 光幸

軟部腫瘍のMRI検査


軟部腫瘍の画像診断では、腫瘍の存在診断に始まり、良悪性の鑑別や組織の推定、腫瘍の進展範囲の把握などが行われています。
現在、多くの画像モダリティ(超音波、単純X線撮影、CT、MRIなど)がある中で、組織コントラストに優れ、任意の断面を撮像可能であり、軟部腫瘍に対しての質的診断、広がり診断に優れているMRI検査は極めて重要であり、当院でも月に数例は必ずオーダーされています。
病変部位や腫瘍形態が様々であるため、軟部腫瘍は撮像する技師の腕の見せ所でもあります。

勝負は検査の前から!!

検査前に病変部位を確認し撮像範囲を決めます。
MRI検査の撮像時間は他のモダリティと比べて長く、どの撮像部位でも20~30分はかかる検査であり、患者さんは撮影中、可能な限り動いてはいけません。なかなか大変な検査ですが、われわれ技師はなるべく早く検査を終えてあげたいと考えています。
そこで事前に依頼医からの情報やカルテを確認し、さらに検査前に患者さんと部位の確認をしています。より多くの情報を得ることで、患者さんの撮影体位、撮像コイルの選択がスムーズに決まり、円滑に検査を進めることができます。

病変部位にマーカーと言う、いわゆる目印となるものを貼り付けるのも必須です。これは、MRI画像で基本となる、T1強調画像とT2強調画像で共に高信号を示すもので、撮影時・読影時の目印になるものです。

手指、手関節、肘関節にある軟部腫瘍に対しては、基本的にうつぶせで寝てもらいます。病変部にマーカーを貼り付け、撮影したい範囲がしっかり入るようコイルを選択しています。
動かないように固定することが大事です。病変部を圧迫し過ぎないように注意します。

コントラストを制する!!撮像シーケンス

T1強調画像とT2強調画像、T2脂肪抑制画像を基本とし、より脂肪を疑う場合はT1脂肪抑制画像、出血病変やヘモジデリン沈着の検出にはT2スター強調画像、また腫瘍の良悪性の鑑別の助けとなる拡散強調画像も撮像しています。

脂肪腫疑いの1例
T1強調画像、T2強調画像ともに高信号で、境界明瞭、辺縁平滑な腫瘤を認めます。
T1脂肪抑制画像にて内部の信号低下あり、一部隔壁構造も伴っているのが分かります。
明らかな充実成分や、拡散強調画像で高信号となるような、拡散制限を伴う部位は無いということで、今回の検査では脂肪腫が疑われました。

 

ヘリコバクター・ピロリの感染診断の決め手は 「温かいバリウム?」~胃X線検査の見地より


胃がん検診は従来、その名の通り、胃がんの早期発見が目的とされていましたが、1990年代に胃がんの発生の主原因がヘリコバクター・ピロリの感染(以下、ピロリ菌感染)によるものであることがevidenceとともに確立しました。
さらにここ数年、ピロリ菌感染者に対しての除菌が我が国で保険適用になると、胃がんの拾い上げだけでなく、感染の有無を求められるような議論が日本消化器がん検診学会をはじめとした関係学会等で熱を帯びてくるようになってまいりました。消化器ご専門の先生にとりましては周知であると存じた上で述べさせていただきますが、ピロリ菌感染有無についての背景胃粘膜X線診断は、
①ひだ襞の分布・広がり、②ひだ襞の形状 ③胃粘膜表面像(胃小区像)の順番(図1)
にて判定いたしております。

①ひだ襞の分布・広がり

まず最初に、背臥位二重造影正面像での①襞の分布を観察いたします。
胃粘膜の萎縮が進行すればするほど肛門側から口側へ胃底腺領域が減少します。これにより襞分布が減少し、高度萎縮の場合は最終的には襞が消失してしまいます。

 

②ひだ襞の形状

次に着目するのは②襞の形状です。未感染胃の襞は細く比較的ストレートで表面も平滑で立ちあがりも緩やかなソフトな印象ですが、既感染胃の場合、太く蛇行して立ち上がり急峻で、印象としてハードなイメージです。

③粘膜表面像

最後に着目すべきは、③粘膜表面像です。未感染胃の粘膜模様は、平滑で滑らかな印象です。表現としては「ベルベット様」という表現です。また網目模様を呈することもあります。これに対して、既感染胃の場合は小顆粒像を呈し粗造な印象です。さらに萎縮が進行するとさらに粗い模様が目立ち「フリース様」と表現されます。

これらの所見を組み合わせて、胃X線検査ではピロリ菌感染の有無について診断いたします。除菌後状態の胃などは、所見が複雑に食い違って診断に難渋するケースもありますが、2013年より開催されている「ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会」によると、トレーニングをしっかりと積めば、医師、診療放射線技師ともに正診率は90%を超えるという報告もございます。

これらの所見をしっかりと診断できる画像を得るためには、「しっかりとバリウムが付着された像(背臥位二重造影像)」が必須であります。そのためには、撮影機器の精度管理と同時に、バリウムの品質管理を日常的に行うことが我々診療放射線技師の責務であると考えております。当院健康医学センター(健診センター)のX線TVシステムは、始業前に必ずJSGIファントムにて、画像の鮮鋭度やコントラストをチェックするだけでなく、使用するバリウムに関しても濃度のみならず、その粘度をあげないためにも液温管理を行っております。近年使用されている高濃度低粘性の硫酸バリウム懸濁液は、液温が低くなると粘性が上がり、胃の中で粘液と混ざって、ベタつきや凝集の原因となります。よって冷たい水でバリウムを懸濁することは、飲みやすくて被検者様の受容性が向上いたしますが、可能な限りお控えいただくことをお勧めいたします。(図2)
今後も栄区近隣地域の住民の皆様に貢献できるような、高品質な胃がん検診を提供していきたいと思っております。

横山力也
日本消化器がん検診学会胃がん検診専門技師
NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構胃がん検診読影部門B資格