核医学プチ講座 ブルズアイ(その2) 「ブルズアイ」でわかること「いろいろ」


前回に引き続き「ブルズアイ (Bull’s-Eye)」特集です。今回は臨床でのブルズアイ画面の見方や評価方法についてお話させていただきます。

まずはおさらいになりますが、「ブルズアイ (Bull’s-Eye) 」とは心筋SPECT画像の短軸像 (Short Axis:SA) を心尖部から心基部まで同心円状に投影したものです。
同心円状に展開していることから「極座標表示」「Polar-Map」とも呼ばれています。

ブルズアイの見方や評価方法は以下の4つです。
◎ 負荷心筋血流SPECTにおける虚血性変化の観察
◎ 時間毎の集積変化を観察
◎ 2つのRI薬品の心筋への集積を観察
◎ 心電図同期収集による心筋SPECTの壁運動等、動態観察
それぞれ詳しく解説していきます。

負荷心筋血流SPECTにおける虚血性変化の観察

アデノシン薬剤負荷心筋血流SPECT短軸像を心尖部から心基部まで展開しています。上段は負荷血流、下段は安静血流です。中央部~心基部の中隔下壁~下壁にて負荷時集積低下が観察されます。

前頁の短軸像をブルズアイ展開します(上段:負荷血流 下段:安静血流)。Extentは集積低下が [2.5×標準偏差] 以下を一律で黒抜き表示します。[2.5×標準偏差] 以下で集積低下が統計的優位であるとされています。Severityは低下部位の深達度表示です。負荷時のExtent、Severityが安静時に比べて大きく抽出されていて、負荷時の血行障害を示しています。

さらにブルズアイを17の区域に分けてカウントの低下度合いを数値化し、負荷/安静相互の比較を行います。負荷時の低下度“SSS (Summed Stress Score) ”から安静時の低下度“SRS (Summed Rest Score)”を引いた“SDS (Summed Difference Score)”は実際の低下度として虚血性変化の指標値となり、血行再建術の適応評価に多く利用されています。

時間毎の集積変化を観察

心筋SPECTにおける早期像と遅延像をブルズアイ展開することにより、放射性薬剤が心筋内に“滞留”しているか、あるいは“流出(洗い出し)”しているかを判定します。

心筋血流製剤(201TlCl,99mTc-TF)や心筋脂肪酸製剤(123I-BMIPP)では心筋変性や心筋細胞の脱落がある場合に“流出”が観察されることがありますが、近年心筋脂肪酸製剤では“洗出”が停滞するケースで有意な疾患があるという報告も挙がってきています。

2つのRI薬品の心筋への集積を観察

201TlCl/123I-BMIPPをブルズアイ上で比較算出により集積の乖離度(ミスマッチ:Mismatch)の判定も可能になります。

心電図同期収集による心筋SPECTの壁運動等、動態観察

当院では心筋血流SPECT収集においてほぼ全例に心電図同期収集を行い、血流の評価に加えて壁運動等の心機能解析を行っております。各部位における壁運動や壁厚変化を観察し、部位による容積曲線の変化や、位相解析を行っています。負荷誘発における壁運動の同調性の低下や、心ペーシング施行前の心機能解析としてPhase-Mapの算出等も求められます。

またまた誌面の都合で次回はブルズアイ展開とSegment解析に絞ってまたお話させていただければと願っています。

参考文献
1)日本メジフィジックス医療関係者向けサイト:シンポジウム/心不全における心臓核医学によるアプローチ:BMIPPイメージング(TGCV)