特集MRI:コイルは地味だが役に立つ!


MRI用コイルってご存知ですか?

MRIは強い磁場の中に身体をおき、電磁波(RFパルス)を人体に照射したり断ったりを高速に繰り返しおこなって撮影しています。この電磁波送信の繰り返しによって、人体の水素原子から信号(FID信号)が放出され、この微弱なFID信号をMRI用コイルで受信し、演算処理をすることでMRI画像が出来上がります。
つまりこのMRI用コイルは高感度な受信アンテナで、なくてはならない物なのです。自宅で地上波を見ようとする時に、電波を受信するアンテナが必要ですよね。また、電波の感度が良ければノイズものらないはずです。MRI用受信コイルも同じようなものと考えてよろしいかと思います。ということで、今回は地味ではありますが、MRI撮影にとって重要なこのMRI用コイルについてご紹介したいと思います。

FIDandImaging

MRI用コイルといっても、種類がたくさんある事をご存知でしょうか?一般的なのは、頭部用コイル・脊椎用コイル・腹部用コイルだと思います。これに加え当院では整形領域のコイルも使用しています。次にそれぞれのコイルを紹介します。

HNS

BodyandCardiac

ShouldrKnee

関節用コイル

膝関節には前十字靭帯、後十字靭帯、外側・内側側副靭帯、半月板、滑膜、などの観察すべきポイントが多くあります。
何気なく撮影しているような画像でも、きちんとしたポジショニングをすることで描出能に違いがでるため、診断に影響することがあります。例えば、前十字靭帯の描出方法です。
通常、前十字靭帯は膝関節を少し曲げることでピ-ンと張ります。靭帯が張った状態にすることで靭帯断裂などの評価がしやすくなります。また、外側にわずかに傾けることで前十字靭帯を1スライス内におさめ、靭帯を連続して描出することが出来、評価しやすくなります。
膝関節用コイルはこの様なポジショニングが簡便に出来る形をしています。

KneeCoil

今回紹介した膝用コイルだけでなく、専用コイルは非常に使いやすく画質の向上・仕事の効率化が計れる有用な道具です。また、正しく診断がおこなわれるように我々放射線技師も解剖をよく理解して検査をおこなうことを心掛けています。
専用コイルは他部位への応用も可能なので患者さんごとに最適なコイル選択をおこない安全・安心なMRI検査をおこなっております。
(救急撮影認定技師 平野 謙一)

放射線治療センターの近況


放射線技師長の高橋です。昨年の9月末より開設となった放射線治療ですが、約4か月で66名の患者さまに利用していただきました。予想を超える利用者にとても驚いています。外科の患者さまが35名、泌尿器科の患者さまが14名、内科の患者さまが12名なので、ほぼこの3科の患者さまで占められています。圧倒的に多いのは乳腺で、次に前立腺です。この利用状況は、ほぼどこの病院でも同じようなものだと考えています。
今回も当科放射線治療センターの近況をご報告させていただきたいと思ます。

Good Job賞を受賞!

今年の1月4日に院内のGood Job賞を江川放射線治療主任が受賞しました。Good Job賞は年度内の病院運営において、大きな業績を残した職員、また部署に与えられる賞です。放射線治療の開設準備は心身ともにとても大変であったと思います。私も江川主任が赴任されるまでは放射線治療センター開設の中心にいたので、感無量でした。江川主任のみでなく、看護部、事務部、そしてすべてを取りまとめていただいた渡邊外科統括部長にもお礼を述べたいと思います。

EgawaandHosokawaDr

放射線治療カンファランスを開催

放射線治療運営委員会が先日行われ、外部からの紹介患者さまが少ないことが問題になりました。また、院内の患者さまにおいても、本当は放射線治療の適応なのだけど…..という例もあるので、今月より放射線治療医師と、各診療科の先生(各科ごと)でカンファランス&勉強会を行うことになりました。まずは先日、呼吸器内科の先生方と行いました。

benkyoukai

Facebookページをオープン!

横浜栄共済病院放射線科でfacebook pageを立ち上げました。横浜栄共済病院は放射線治療をおこなっています。とういうことをSNSで少しでも多くの皆さまに知ってもらうためです。放射線治療関係のみでなく、ニュースレターの過去ログであるブログとも連携して、いろいろな情報を発信しようと考えています。ぜひ「いいね!!」や「フォロー」をお願いします。

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脳血流SPECT:統計解析による診断のポイント:その2~血流低下の大きさ・部位を可視化する~


解剖学的標準化(前回のおさらい)

前回では脳血流SPECT画像を解剖学的標準化により標準脳に変換し、血流低下部位をMRIモデルに投影するところまでを紹介させていただきました。(図1)

図1

CBFpart2ふきだし

血流低下の大きさ・部位を可視化する

Z-Scoreという指標

前回でも触れさせていただきましたが、脳血流SPECTは局所の脳血流量に応じて分布するトレーサーを用いて検査を行います。脳血流がある部位で正常よりも血流が低下していれば、その場所の脳機能が低下していると考えられます。通常はSPECT画像を視覚的に判断しますが、精神疾患や神経変性疾患の初期では脳血流量の低下は僅かなものが多く、判断に困難を極めることが多々あります。また正常の血流分布は年齢群によって変わるため、ある部位で実際に血流が低下している場合でも年齢によって正常と捉えられてしまうことがあります。1)
ポイントは脳血流SPECTで血流の分布に応じてカウントが得られることを踏まえ、

①特定の場所で
②同年齢(群)の正常の平均に比べて
③どの程度カウントが低下しているか

を評価する数値や指標が必要となります。
当院で使用されている脳血流統計解析ソフトeZISではZ-Scoreという数値(指標)を使用します。
Z-Score=(正常群平均Voxel値―症例Voxel値)/(正常群標準偏差)
で表されます。すなわち血流低下が大きいほど症例Voxel値は小さいため、分子が大きくなりZ-Scoreが大きくなります。また一定のZ-Score以上の領域を投影することで臨床上有意な血流低下各領域を抽出することが可能になります。

今回は99mTc-ECDを使用した脳血流SPECTを統計解析ソフト「eZIS」で処理を行った画像につき、代表的な3つの認知症について紹介させていただきます。Z-Score>1.0のものをMRIモデルに投影することで、その部位の血流低下の有無、低下の程度が把握しやすくなります。

まず、認知症画像診断で注目される場所と疾患を図2に示します。(この中で主な場所の働きは以下のようになります。)

CBFpart2図2

1)アルツハイマー型認知症(AD)

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞と神経細胞の間にシミのような老人斑(アミロイド斑)の出現により、脳が萎縮します。新しいことを覚える機能を障害されることが多いので、出来事自体を忘れてしまい、日常生活に支障をきたします。
アルツハイマー型認知症の脳血流SPECT画像の特徴としては①後帯状回から②楔前部および側頭頭頂葉皮質の血流低下が見られます。(図3)
またアルツハイマー型認知症の進行の程度についても、eZISによる統計処理画像にて把握することが可能となりました。(図4)

CBFpart2図3.4

2)レビー小体型認知症(DLB)

レビー小体型認知症とは脳の内部に異常なたんぱく質(レビー小体)が蓄積して神経細胞が障害されて起こる認知症です。はっきりした幻視、被害妄想、抑うつ症状がみられます。同じくレビー小体が原因となるパーキンソン病と似た症状があり、手足が震える、身体の動きが遅くなる、歩幅が小さくなるという症状も観察されることがあります。
脳血流SPECT画像の特徴として、アルツハイマー型認知症と同様に①帯状回から②楔前部および③側頭頭頂葉皮質の血流低下、に加えて④後頭葉皮質の血流低下が見られます。(図5)

CBFpart2図5

3)前頭側頭葉型認知症(FTD)

脳の前頭葉が萎縮して起こる認知症で、アルツハイマー型認知症のような記憶障害が初期には見られないのが特徴です。認知症状として社会的なルールを無視するような行動が見られ、行動的な特徴として好みの変化、同じ言葉の繰り返し、毎日同じ食べ物だけを好んで摂る、毎日まったく同じ時間に同じ行動をとる、などがあります。一緒に生活している人は、まるで別人がいるように感じるほどです。このような症状が出ていても、最近のことをきちんと記憶している人がいます。ピック病と呼ばれる場合もあります。
FTDの脳血流SPECTでは前頭葉、側頭葉の血流低下が特徴的です。(図6)

CBFpart2図6

今回は誌面の都合でここまでの紹介とさせていただきますが、詳しくは富士RIファーマ株式会社HP(http://fri.fujifilm.co.jp/index.html)内「撮って診る!!認知症」のコーナーにてとても分かり易い案内があります。御参照いただければ幸いです。
次回はアルツハイマー型認知症をZ-Scoreの数値を更に評価する方法について、より詳しく説明したいと思います。

参考文献:1)松田博史、朝田隆:ここが知りたい認知症の画像診断(2014.10 harunosora)

(核医学専門技師 荒田 光俊)

手根管撮影について


手根管とは?

今回は手根管撮影について書かせていただきます。手根管撮影は手根管症候群やその疑いに対して整形外科医が撮影依頼を出されます。手根管症候群は手根管内における正中神経の圧迫麻痺で最も頻度の多い神経障害です。(下図)屈筋腱鞘炎による手根管内圧の亢進、手の過度の使用、管内に発生したガングリオンなどの腫瘤、橈骨や手根骨骨折後の変形、妊娠などによる全身浮腫、長期血流透析に伴うアミロイド沈着などが発生の要因となります。症状は母指より環指橈側1/2の正中神経支配領域のしびれ感、知覚障害及び母指球筋の脱力、委縮が主訴となります。中年以降の女性に多く、利き手側に多く発症します。

手根管
日本整形外科学会HPより引用

撮影方法について

撮影は肘関節を伸展して手関節の下に発砲スチロールなどを置き手関節を背屈させて手掌面を垂直にします。中心エックス線を30度傾け、手根管をめがけて撮影します。 撮影されるエックス線像として第1指側より、手根管を形成する大菱形骨結節、舟状骨、有頭骨、有鈎骨の接戦像が描写し手根管の軸位像が描写されます。

手根管2

手根管3

知っているようで知らない マンモグラフィーの基礎⑥ マンモグラフィーの弱点を補うために


マンモグラフィーは「高濃度乳房に弱い」という話題を第2回、第5回で取り上げました。高濃度乳房では背景乳腺がマンモグラフィー上高濃度につまり白く描出されるため、やはり白く描出される乳がんが隠れてしまいやすいのです。アメリカのコネチカット州では健診マンモグラフィで高濃度の場合はそのことを受診者に知らせるべきあるとの法律が策定されました。日本でも患者団体からの同様の要望書が厚生労働省に提出されています。任意型の健診ではすでに乳腺濃度を結果説明の際に受診者に知らせる試みが広がっています。乳房構成が高濃度であると、マンモグラフィで乳がんが見つかりにくいことを知らせ、他のモダリティの検査の受診を勧めることが目的です。
昨年の春より当院の乳がんドックでもマンモグラフィの乳房の構成を受診者に知らせることにしています。

乳がんドック報告書(抜粋)

超音波検査について

マンモグラフィーのこの弱点を克服するための方法としては、前回取り上げたトモシンセシス撮影(断層撮影)が有用です。そのほかには超音波検査も有用です。
超音波検査で使用するプローブは生体内に「超音波」を発射します。発射された超音波は生体内の組織で一部反射し、一部透過します。反射波(エコー)はプローブに戻ってきます。エコーの強さの情報をグレースケールに振り分けて輝度変調し、エコーが戻ってくるまでの時間を距離に変換して画像表示したものが超音波検査です。超音波プローブの中には超音波を発射する圧電素子が横並びしており、横方向に順次超音波を発生させることで「Bモード画像」が出来上がります。

生体内の組織によって音響インピーダンスが異なっており、組織間の音響インピーダンスの差が大きいほど超音波の反射が大きく、差が小さければ音波はほとんど透過します。腸管内ガスや骨は超音波をほとんど反射してしまうので、検査では真っ白に見え、ガスや骨の後方は何も見えません。水は超音波をほとんど透過しますので、膀胱に溜まった尿や血管内の血液は超音波検査では真っ黒に均一に描出されるのです。

超音波の波長より十分に小さい境界の集合体(不均質な組織)では音波はあらゆる方向に散乱します。このうちプローブに帰る方向への散乱を「後方散乱」と呼びます。後方散乱は病変の「内部エコー」の違いに関与しています。病変の中に音響インピーダンスの異なる組織が混在する場合や、網目構造、乳頭状構造がある場合は、後方散乱が強く起こるため内部エコーは高く、つまり白っぽく描出されます。病変の内部に均一な腫瘍細胞がぎっしり詰まっているような場合は内部エコーは低く、つまり黒っぽくなります。

乳がんUS

乳房構成の違いと正常乳腺の超音波画像

乳がんの中でも、腫瘍細胞が均一に増殖する充実腺管がんや髄様がん、腫瘍内部に線維成分の増生が強い硬がんは超音波画像では内部エコーレベルが低エコーで黒っぽく見えます。内部に細かい隔壁構造があり粘液の中に腫瘍細胞がまばらに存在する粘液がんや、乳頭状の構造をとる乳頭腺管がんは、比較的エコーレベルが高くなります。これらのがんが、脂肪性の乳腺の中にできると、マンモグラフィでは見逃すことはまずないですが、超音波検査では腫瘍と正常乳腺のコントラストが小さいためうっかりすると見落としてしまいます。

一般に超音波は若年者に多い高濃度乳房が得意で、マンモグラフィーは高齢者になると多い脂肪性乳腺が得意と言えます。精密検査を行う乳腺外来では両方とも行います。検診はマンモグラフィーが基本です。しかし高濃度乳房が多く、乳がんの罹患率も高めの40代の健診に超音波検査をどのように取り入れることができるか、検討されつつあります。

外科乳腺甲状腺担当部長
俵矢 香苗

放射線の種類を変えて照射をおこなう技術


放射線の種類を変えて照射をおこなう技術

さて、これまで現在注目されている3つの照射技術、『がんの形や動きに合わせて照射をおこなう技術』、『放射線の強さを変えて照射をおこなう技術』の2つについて解説してきました。今回は、最後の1つ『放射線の種類を変えて照射をおこなう技術』について説明させて頂きます。
放射線の種類を変える技術とは、放射線そのものを変えて治療をおこなう技術です。これまでは、リニアック(直線加速器)を使用したX線や電子線を用いた放射線治療を紹介してきましたが、今回は話題の粒子線治療について紹介いたします。

○粒子線治療とは?

粒子線(荷電重粒子線(かでんじゅうりゅうしせん))治療とは、粒子放射線ビームを用いた放射線治療法の総称です。陽子線治療、重粒子(炭素イオン)線治療が有名で世界の各地で臨床応用や研究が行われています。

○粒子線治療の特徴

粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロン等の加速器から得られる陽子線や重粒子(炭素イオン)線を病巣に照射します。

ガンマ線、エックス線、電子線などは体外から照射すると、体の表面近くで線量が最大(ピーク)となり、それ以降は深さとともに減少します。一方、粒子線はそのエネルギーによって飛程(体内で到達する深さ)が一定で、その飛程の終端近くでエネルギーを急激に放出して止まります。この現象をブラッグ・ピークと呼びます(図1)。実際の治療では特殊なフィルター(リッジフィルター)を使用し、このブラックピークの幅を拡げて照射を行います(図2)。

RT図1図2

粒子線治療は病巣の部分で粒子が止まり、体表面から照射の道筋にある正常な細胞にあまり影響を与えず照射をすることが可能な治療なので、とても体に優しく、今までのX線治療では効かなかった病気も治ると期待されています(図3)。

RT図3

○実際の粒子線治療

陽子線や重粒子(炭素イオン)線は病巣に限局して照射できることから、進行していない限局した病巣の治療に適していると考えられています。病巣の周りに放射線に弱い組織がある場合に、特に有効性が発揮できると言われています。(図4)

料金の方は高額で300万円程かかってしまいます。しかし近年、ある特定の疾患で保険診療が使用できるようになりました。

図4.粒子線治療装置と症例
図4.粒子線治療装置と症例

○現在の粒子線治療施設

現在、日本には粒子線がん治療施設が15ヵ所(重粒子線:5ヵ所、陽子線:11ヵ所)あります。粒子線治療施設数においては世界で一番多い国となっています(世界の39箇所で稼働、内15箇所は日本で稼働)。特に重粒子線治療については、治療患者数、治療成績の観点からも世界の最先端技術を誇っています。
神奈川県内では、神奈川県立がんセンターでH27年12月より重粒子線治療を行っています。詳しくは神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設「 i-ROCK 」のページをご参照下さい。
ご紹介した通り、粒子線治療はとても体に優しく、夢の治療だと言われています。まだまだ高額な料金がかかってしまうという問題等もありますが、近い将来必ず身近な治療になると思います。

当院の放射線治療装置も順調に稼動しています

ご無沙汰しております、放射線技術科の江川です。

待ちに待った放射線治療が10月よりついに始まりました。ご心配お掛けしましたが、治療患者数も順調に増えており、年内中(12月28日現在)には50名を超える患者数となりそうです。

当院は放射線治療が初めての経験と言うことで、現在通常の照射方法で対応していますが、来年は新たに高精度な治療も取り組んでいく予定でおりますのでご期待頂ければと思います。

先生の施設において放射線治療適応の患者様がおいでになりましたら是非とも当院への受診をお勧め下さい。よろしくお願い致します。

 

放射線治療専門技師 江川 俊幸

図1

乳がんドックのご紹介~受診のメリットについて~


昨年の12月より当院健康医学センターにおいて乳がん検診に特化した「乳がんドック」を新設したことをお伝えいたしました。今回は、受診のメリットをご紹介いたします。

乳房の構成(乳腺密度)を知ろう!

受診者は自分の乳房の状況(乳腺密度)・自分の乳がんリスク・年齢などを考えて、適切な乳がん検査を選択し受診することが大切です。
一般的に、日本女性は欧米女性の乳房(脂肪を含んだ乳腺密度が少ない大きい乳房)と異なり乳腺密度が濃い乳房の人が多く(不均一高濃度・高濃度の乳房)マンモグラフィだけでは、乳がんを見つけづらくなるため、超音波検査も併せて受診いただくことをおすすめしています。
当院の乳がんドック(B・Cコース:超音波検査を含むもの)を受診いただくと検査結果、判定と共に乳房の構成(乳腺密度)、今後における適切な乳がん検診の選択方法をお伝えしています。

Corsemanma

乳腺密度の違いとは?

マンモグラフィは、乳がんを白い塊として写しだすもの。しかし乳腺もまた、白く写る。つまり、乳腺密度が濃いと真っ白な画像になってしまい、乳がんが見えづらくなってしまうのです。乳腺は母乳をつくるところですから、若ければ若いほどその密度は濃く、年を重ねるにつれ徐々に薄くなっていくものです。欧米女性の場合、日本人に比べ乳腺密度が少ないことが多く、さらに乳がんの罹患年齢のピークがおよそ60〜70歳。したがって乳腺密度も薄く、マンモグラフィでも比較的見つけやすい。ところが、日本人女性の場合は罹患年齢のピークが40代、と非常に若い。加えて、50歳以上でも乳腺が濃い女性が多い。つまり、日本人女性は”マンモグラフィに不向き”なのです。
現在、横浜市乳がん検診(マンモグラフィ)では2年に1回の検査が行われています。検査は40歳代は2方向、50歳以上は1方向の撮影です。この検査だけでは心配との受診者の声が多く、その際は当院の乳がんドックAコースもしくは3Dマンモグラフィを含むCコースをおすすめしています。

ManmaDense

乳房について相談された際は、是非、当院の乳がんドックをおすすめしていただけましたら幸いです。女性の大切な命と乳房を守るため、早期発見率を高める努力をしていきますので、これからも何卒よろしくお願いいたします。(マンモグラフィ認定技師 小曽根容子)

 

MRマンモグラフィとは?


乳房のMRI・・?

乳房のレントゲン(マンモグラフィ)ならやったことあるけれど、乳腺MRIってどうなのかしら?なんだか怖い・・・とお思いの方いらっしゃるのではないでしょうか?どんな撮影で、どんなふうに検査するのかがなんとなくでも分かれば、少しは不安な気持ちがなくなるのではと思い今回はMRマンモグラフィをテーマにしてみました。

MRマンモグラフィーって痛い??

検査の方法について
①患者様は検査着に着替えてもらい、造影剤を注入するための点滴の準備をします。
②次にMRI室に入り、MRI装置の上に置いてある乳房専用コイルと呼ばれるものに、それぞれ左右の乳房を入れてもらいます。
③そのままうつ伏せの姿勢で乗ってもらいます。その際、両上肢はバンザイした状態で、患者様の体部は動かないようにマジックテープで固定していきます。
*検査時間はこの状態で30~40分かかります。マンモグラフィの様に圧迫される痛みはありませんが、通常の臥位での撮影と異なりうつぶせの体勢で行うことがややつらい検査といえます。造影剤量は20mlほどで検査できます(CTは100cc使います)。

MRM

MRM2

どんな画像が撮影されるの?

MRIでは沢山の種類の画像を撮影しています。当院では1000枚近い画像を収集しています。
最初に造影剤を使用しないで撮影する単純MRI撮影を行い、その後造影剤を注入して造影MRI撮影を行います。
MRIでは様々な方向から断面を切り出すことが出来ますが、両方の乳房が同じ断面に写り、CT検査などと同じ切り方になる水平断(AX像)によって撮影することで、比較しやすくなり多くの病変の発見に有用です。(下図)

MRM3

単純MRI(主要3種)

1.脂肪抑制のT2強調画像

嚢胞性病変や粘液癌などの液体成分を含む病変をより抽出可能です。また、様々なコントラストの変化から腫瘤の壊死、浮腫、繊維化などの推定に役立っています。

MRM4

2.T1強調画像

乳管内出血の有無、腫瘤内部の脂肪評価に役立っています。腫瘍の輪郭しかわからないので通常はその評価には使われません。
乳房は脂肪組織が多いので乳房や皮下脂肪が白く描出されています。

MRM5

3.拡散強調画像

良悪性の鑑別に有用です。腫瘍などの細胞密度の高い病変は白く映ります。細胞密度の高くない背景は真っ黒なので、病変が浮き出て見えます。後述する造影後のMIP( Maximum Intensity Projection)に類似した画像が造影無しで得られます。

MRM6

造影MRI(ダイナミック撮像)

単純撮影が終後、造影剤を使用しての撮影を行います。
MRマンモグラフィで最も重要な検査となります。

なんと1mm以下で撮影

 

一般的に乳癌は、造影剤注入後2分以内に造影剤の取り込みが最大となることが多いと言われています。そのため当院ではガイドラインに推奨されている空間分解能1mm以下を維持しつつ、撮影スピードが約1分の撮像を連続3回行っています。造影剤の動態を追う撮影なので、ダイナミック撮影といいます。
1mm以下で撮像することによって、任意の断面に再構築可能なMPR処理や質の高いMIP (Maximum Intensity Projection)像の作成が可能です。(下写真)また、腫瘤の最も染まった相で冠状断(COR像)のMPR処理画像を作成することにより、病変の広がりも診断できます。

MRM7

更に高分解能に!

ダイナミック撮像後、さらに高空間分解能を意識した水平断(AX像)また患側、対側それぞれの矢状断(SAG像)を撮像しています。矢状断を撮像するメリットは、水平断を含めた2方向からの観察によって病変の形態がより正確に把握可能であり、矢状断のほうが乳管内成分を見やすい場合もある、マンモグラフィのMLOと簡易的に部位の対比(厳密には矢状断とMLOは異なる)が可能な事などが挙げられます。(写真)

MRM8

以上のようにMRIでは時間はかかりますが、乳癌診療に役立つ画像を様々に撮影することが可能です。
(鈴木 圭一郎)

*ガイドライン:欧米における乳房MRIのガイドライン(2009年3月)

知っているようで知らない!? レントゲンの基礎③ -撮影距離-


前回X線写真撮影時の条件についてお話させて頂きましたが、今回は距離についてお話させていただきます。

撮影距離って重要なの?

先生の施設ではX線写真を撮る際、どれぐらい距離をとって撮影されていますか?
当院では、立位の胸部・腹部は200cm、臥位であれば100cm、その他整形等での骨の撮影は一部を除いて100cmで撮影しています。

撮影距離が短いと画像が拡大します

距離を選定する際、考えなければならないこと、それは画像の拡大(ゆがみ)です。
X線写真は、X線が管球から円錐状(四角錐)に放射されているため(図1)、厚みのある被写体を撮影するとX線写真上では常に像の拡大が発生し、実物より大きく描出されています。(図2)

距離をとることで平行に!

Aの位置よりもBの位置から撮影した方が患者さんに入射するX線が平行に近くなり画像の拡大が少なくなります。(図1.図2)
その為、可能な限り距離を離して撮影するのが理想ですが、距離を離しすぎると線量不足になります。撮影室の広さや、使用するX線発生装置の性能を考慮した上で当院では200cmと選定しました。

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胸部レントゲンを後ろから撮る理由

また、胸部撮影をPA(Posterior-Anterior view)撮影するのも、心臓をフィルムに近づけることによって、ほぼ実物大に写るからです。AP(Anterior-Posterior view)撮影では若干ですがフィルムと心臓に距離が開くので心臓がやや大きくなり、肺が狭く写ります。
従って、PAで撮影した方が心臓は実物大に写り、肺が広く写るため診断しやすくなるのです。

整形等での骨の撮影においても理想としてはなるべく距離を離した方がいいのですが、多くの場合臥位での撮影となりますので、天井の高さや操作性を考え100cmとなりました。

X線写真は、前回との比較を目的に撮影することが多いです。
我々放射線技師は、担当者が替わってもなるべく統一条件下で撮影するように心掛けて、日々従事しています。
(森 直彦)

脳血流SPECT:統計解析による診断のポイントその1 ~統計解析の仕組み~


日頃脳血流SPECT(図1)の検査依頼いただき、厚く御礼申し上げます。脳血流SPECTの統計解析は認知症および神経疾患における核医学診断では標準的手法として恒常的に施行されております。

図1:spect
図1:spect

そこで今回は脳血流SPECT画像を統計解析する流れを紹介させていただきます。
当院では脳血流SPECT検査におきましては
・99mTc-ECDでは「eZIS」(図2)
・99mTc-HMPAOでは「iSSP」(図3)
という統計解析ソフトを使用し、脳外科依頼を含めて全ての脳血流SPECT検査に統計解析を行います。

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統計解析による手法とは~正常画像との比較~

・各年齢群におけるノーマルデータベースと比較

統計解析による手法は個々の脳血流SPECT画像につき、同年齢群の正常データベースと比較して血流が低下している部位を探し出す方法です。「同年齢群」という表現ですが、年齢毎に正常での脳の血流分布は異なります。そこで例えば55歳なら51~60歳の正常例の脳血流分布との比較、75歳なら71~80歳の正常例の脳血流分布との比較というくくりで解析を行うことになります。最近は高齢化に伴い、80歳代のノーマルデータベース(NDB)も追加されています。(図4)

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*同一年齢群と異なる年齢群で統計解析した場合の違い

年齢とは異なる年齢群のデータベースで解析を行うと違った結果をもたらすので注意が必要です(図5)。

NDBの違いによる解析結果の変化
図5:NDBの違いによる解析結果の変化 80歳代のノーマルデータベースを用いて比較すると後部帯状回の血流低下が明瞭に描出されています。

・標準化してから正常脳に重ねあわせます

もちろん脳血流SPECT画像について皆それぞれ血流分布はもとより、形状や大きさはそれぞれ少しずつ異なります。そこで個々の画像を一定の形に変換する「解剖学的標準化」という作業を行います。これにより、脳の大きさの差異、左右の歪みなども一定の形に置き換えることが可能になります。一方で正常データベースで得られた脳血流分布も同様に「解剖学的標準化」することで、個々の場所での血流分布を比較することが出来ます。

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次回は血流低下部位を抽出する仕組みについてお話しさせていただきます。

(核医学認定技師 荒田 光俊)