結石破砕治療の実際


今回は尿管結石の治療を行うESWL装置についてご紹介したいと思います。その前にご存知の先生も多いかと思われますが、専門外の先生やスタッフもいらっしゃるかと思いますので、まず尿管結石について簡単に復習してみたいと思います。

●尿管結石について

尿管結石とは「尿路」に石ができる病気で、その素材は尿に溶けこんでいるカルシウムやシュウ酸、リン酸などです。これらのミネラル物質が何らかの原因で結晶となり、有機物質も巻き込んで石のように固まってしまうのです。
なぜ石が出来るのかは尿路感染、代謝異常、ホルモン、薬など、原因のはっきりしているものもありますが、およそ約8割は原因不明です。2:1以上の割合で男性に多い病気です。
いったんこの結石ができると、石が細菌を増やし、細菌は石をますます成長させるという悪循環が起こり、腎盂腎杯の形そのままのサンゴ状結石となりやすいのが特徴です。

●サンゴ状結石

サンゴ状結石とは、結石関連物質が種々の条件下で結晶化し増大した結石が二つ以上の腎杯におよぶもののことをいいます。最近では、サンゴ状結石に対して経皮的腎結石摘出術(PNL)を行うことが多いですが、併用してESWLを行うことがあります。ESWLは体に傷をつけずに治療することができるという利点がありますが、サンゴ状結石の場合は大きい結石なだけにリスクもあります。そのひとつが“stone street”(ストーン・ストリート)と呼ばれる破砕した細かい結石の小片が尿道に詰まってしまう状態です。この状態になってしまうと尿管が結石により閉塞され腎機能の低下を引き起こす可能性があります。この状態になってしまった場合は、ダブルJなどの尿管ステントを挿入して再度ESWLをおこなって徐々に排石させていきます。次に実際に当院で行われた症例をご紹介します。

当院で行ったサンゴ状結石のESWLによる破砕

73歳男性。肉眼的血尿で来院され、CTでサンゴ状結石と診断された患者さんです。
そのサンゴ状結石に対してESWLを行いました。その結果、破砕されたものの“stone street”となりダブルJステントを挿入しました。その後少しずつ排石され腎機能も改善してきました。まだ尿管内に結石が残っているためダブルJは抜去できませんが、尿管内から排石されると抜去できます。少しずつ破砕の効果はあり、腎臓に残っている結石もそのまま大きくならなければフォローできます。当院のESWLは初回は入院していただくことが多いですが、その後は通院での治療が可能となります。尿路結石症は再発する頻度が高く、結石治療後も定期的受診による再発有無の確認、再発予防のための生活指導が重要になります。これから暑い季節になってきますと発汗などで水分不足になりがちです。水分補給もひとつの予防策になるので、水分補給を心がけるのもよいそうです。 (北畠 智子)

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知っているようで知らない!? レントゲンの基礎② ー撮影条件ー


前回、単純撮影の撮影条件は、X線管電圧、X線管電流、撮影時間で決まるというお話をさせて頂きましたが、今回は実際に当院での撮影条件を元に、どのような組み合わせで撮影しているかをお話させて頂きたいと思います。

大人と子供でこんなに違う撮影条件

単純撮影と聞いて、1番最初に思い浮かぶのはやはり胸部撮影ではないでしょうか?

当院でも最も撮影数の多い検査の1つとなっていますが、撮影回数が多いからこそ適正な撮影条件を組む必要があります。

実際に当院での撮影条件をお示しします。

管電圧(kV) 管電流(mA)  撮影時間(msec)
大人 120  100 32
小児 100  100 16
乳児 65 500  10

大人と小児では体格が違うので、管電圧(被写体コントラストを決定するもの)が違うのは当然のことですが、注目すべきは撮影時間ではないでしょうか?
胸部写真は息を止めて撮影しますが、乳児の場合息を止めての撮影はとても困難です。多くの乳児は泣き叫ぶので、息を吸った瞬間にタイミング良く撮影しなければなりません。しかし、撮影時間が長いとタイミングがズレてしまい、ブレた画像になってしまいます。ですので、出来るだけ撮影時間を短くし、ブレの少ない画像になるように心掛けています。
当院でも数年ぶりに産科が復活し、これから乳児を撮影する機会も増えてくると思います。
現在はこのような条件で撮影を行っていますが、機器の性能の向上に伴い、今後も検討する必要があります。

単純撮影は単純か?

決して単純ではなく、考慮すべき様々な内容が含まれています。しかもそれは、古典的なものから最新の撮影機器や最新技術に関係する重要なものばかりです。
CR装置では、撮影後に濃度調整機能や画像処理によって均一な黒化度が得られることから、撮影条件の選択から解放された気がしますが、それは誤りです。いくら画像処理を行おうが、センサーに入力される前の被写体コントラストを変化させることは出来ないので、検査に応じて適正な撮影条件を組むことが重要です。

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画像:Meiji Seika ファルマ株式会社HPより引用

 

今月の症例(膝MRI)


問題:下の画像から想定される疾患は?

図1-1:プロトン強調矢状断像
図1-1:プロトン強調矢状断像
図1-2:プロトン強調矢状断像
図1-2:プロトン強調矢状断像
図2-1:プロトン強調冠状断像
図2-1:プロトン強調冠状断像
図2-2:プロトン強調冠状断像
図2-2:プロトン強調冠状断像

解答:左外側半月板バケツ柄断裂

半月板のバケツ柄断裂は、半月板の縦断裂が前節から後節まで進展し、中央寄りの断片が顆間窩へ変位したものです(図4)。

図4:バケツ柄断裂シェーマ
図4:バケツ柄断裂シェーマ 引用元:http://www.judo-akimoto.com/sports_medicine16.htm

MRIの特徴的所見としては、本来あるべき位置の半月板が小さく変形している、冠状断像にて顆間窩にはがれた半月板の断片が認められる(fragment-in-notch sign)等があります。
図1-1では、図3の正常例で認められる半月板の蝶ネクタイ構造が認められなくなっています(absent bow tie sign)()。
図2-1では、顆間窩から外側顆背側にかけて異常な構造物が認められ()、フラップ状にはがれた外側半月板を見ているものと思われます。

図1-1:プロトン強調矢状断像
図1-1:プロトン強調矢状断像
図3:正常例
図3:正常例
図2-1:プロトン強調冠状断像
図2-1:プロトン強調冠状断像

 

知っているようで知らない マンモグラフィーの基礎⑤ マンモグラフィーの弱点


マンモグラフィーの弱点

第2回で高濃度乳腺を、第4回ではFAD(局所性非対称陰影)についてとりあげました。マンモグラフィは高濃度乳腺が苦手です。マンモグラフィでは乳腺実質は白く描出されますが、腫瘍も白く描出されるため高濃度、不均一高濃度乳腺では病変がはっきり認識できないことがあります。

マンモグラフィで「がん」がどの程度描出されるのでしょうか。宮城県は全国にさきがけてがん登録を行っている数少ない自治体のひとつです。その宮城県では検診発見乳がんと中間期乳がんを合わせた解析を行い、マンモグラフィの感度を算出しています。(グラフ)

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乳腺の構成別にみると、脂肪性乳腺では感度91%であるのに対し、高濃度乳腺で51%にとどまります。40歳代ではマンモグラフィの感度は59%でした。60歳代の81%と比較するとかなり低いことがわかります。若年であるほど高濃度、不均一高濃度乳腺の割合が多いためと推察されています。

マンモグラフィーの弱点はどう克服する?

トモシンセシス撮影

マンモグラフィーの断層撮影のような画像を得ることができ、乳腺の重なりの影響を排除できます。当院では2015年3月より乳腺外来診療に、2016年4月より人間ドック部門の健診にトモシンセシスを導入しています。

超音波検査

40歳代女性に対する乳がん検診においてマンモグラフィを行う群とマンモグラフィに超音波 を加えた群の検診成績を比較し乳房超音波検査の有効性を検証するランダム化比較試験(J−START)の結果が昨年発表されました。マンモグラフィ群0.33%の乳がん発見率に対し超音波を加えた群では0.50%で、乳がん発見率が改善したと報告されています。

従来法とトモシンセシス

トモシンセシスは紙芝居のように、コマ送りの動画で読影するため、紙面で再現するのは難しいのですが、マンモの「やぶにらみ」を減らすには有効な手段と考えております。

従来法とトモシンセシス
従来法とトモシンセシス
写真1 不均一高濃度の背景乳腺
写真1 不均一高濃度の背景乳腺 左MLO 黄色で囲った部分に病変があります
写真2 従来法とトモシンセシス
写真2 従来法とトモシンセシス 従来法のマンモでは石灰化しか描出されません。トモシンセシスでは石灰化の背景にある腫瘤まで明瞭に描出されています
写真3 乳腺散在の背景乳腺 写真3の右MLO 黄色で囲った部分が対側に比べ白く描出されています。局所的非対称性陰影、カテゴリー3と判定されます。トモシンセシスでみると、乳腺の重なりと判定できました。精密検査の際は超音波検査も行います。非対称性陰影と考えられた部位には、超音波検査では病変を認めませんでした。超音波検査もこのような所見の鑑別診断には有効な手段です
写真3 乳腺散在の背景乳腺
写真3の右MLO 黄色で囲った部分が対側に比べ白く描出されています。局所的非対称性陰影、カテゴリー3と判定されます。トモシンセシスでみると、乳腺の重なりと判定できました。精密検査の際は超音波検査も行います。非対称性陰影と考えられた部位には、超音波検査では病変を認めませんでした。超音波検査もこのような所見の鑑別診断には有効な手段です

マンモグラフィ専用ビューワー

マンモグラフィは乳腺を折りたたんで撮影するので、マンモグラフィに描出されている病変が乳房のどの辺りに位置するかを推定することは、意外に難しいものです。当院で採用しているマンモグラフィ専用ビューワーMammodite®(Netcamsystems)には、病変の位置推定機能があり、簡便に気になった病変の位置を推定することができます。(図1)

図1 Mammodite®(Netcamsystems)
図1 Mammodite®(Netcamsystems)

超音波検査を行う際、超音波検査技師がマンモグラフィ読影結果を参照して病変位置を推定しながら検査を行うとより正確な診断にたどり着くことができます。検査方法の特徴を知って、うまく組み合わせることが肝要です。

外科乳腺甲状腺担当部長
俵矢 香苗

 

乳房トモシンセシスの使用経験-3Dマンモグラフィの実際-


昨年トモシンセシス(3D)撮影ができるマンモグラフィ装置「Selenia Dimensions」(Hologic社製,販売:日立製作所)が導入されたことをお伝えしてから早いもので1年が経ちました。
この1年でトモシンセシスの有効性を実感できる様々な臨床症例を経験しました。そこで今回は、使用経験についてお伝えさせて頂きます。

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当院では診療受診者は初診・再診に関わらず全員combo撮影を実施しています。cobmo撮影というのはトモシンセシスと通常のマンモグラフィ(2D)が1度の圧迫で同時に撮影できるというものです。撮影時間は1方向8秒ほどで完了します。
トモシンセシスはマンモグラフィの弱点であった乳腺の重なりを排除できる画像が得られるため、通常より強い圧迫を必要としないという議論もなされていますが、乳房を薄くすることで被ばく線量を減少させられること、motion artifactを回避できることを考慮して、できるだけ圧迫をして撮影を行っています。
通常のマンモグラフィよりもわずかではありますが圧迫時間が長くなるため、当初は患者さまの負担を心配していました。しかし、お話を伺うと負担は全くと言っていいほどありませんでした。実際の患者さまの反応をご紹介させて頂きます。

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◆ 圧迫時間の延長に気付かない、違和感のない方が大多数

◆ 圧迫を弱めたりはしていないにも関わらず以前の機械より痛くないという声が多い

◆ 3D撮影ができることへの喜び、興味が大きい

◆ 一方で、少数ではあるが従来のマンモグラフィより詳細に描出されることへの不安を抱く方もいる

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症例1

昨年、芸能界で話題となった「乳頭直下の腫瘤」です。2D画像(左)では見落としてしまいそうですが、トモシンセシス画像(右)では境界明瞭な腫瘤をしっかりと認めます。

症例2

2D画像(左)でも境界が微細鋸歯状な腫瘤を認めますが、トモシンセシス画像(右)では辺縁にスピキュラが伴っている(ピンクの矢印部分)ことが認められます。
それに加えてさらに胸壁寄りに2Dでは確認できない構築の乱れ(赤い矢印部分)が認められます。こちらは術後の病理結果でdaughter lesion(娘病変)と診断されました。

症例3

2D画像(左)では背景の乳腺濃度が高いため所見を認めるのが困難です。トモシンセシス画像(右)では乳頭方向に辺縁にスピキュラを伴うFAD(ピンクで囲まれた部分)が認められます。
それに加えて構築の乱れ(赤で囲まれた部分)が認められます。こちらは術後の病理結果で副病変と診断されました。

症例4

2D画像(左)でも乳頭方向に構築の乱れが認められますが、トモシンセシス画像(右)ではよりはっきりと構築の乱れ(ピンクで囲まれた部分)が認められます。
それに加えて境界が辺縁明瞭な腫瘤(赤い矢印)を認めましたが、こちらはUSで線維腺腫と診断されました。

症例4-2

上記の画像の対側である右乳房の画像です。トモシンセシス画像(右)でFADが認められました。


実際の症例を提示しながら、トモシンセシスの使用経験について述べさせて頂きました。

トモシンセシスは乳腺の重なりという弱点を打開する新たな技術であり、病変の検出、辺縁の詳細な描出、広がりの把握等に有効であることが分かりました。また、明らかな乳癌所見に対しては2D画像でも判断できますが、daughter lesion(娘病変)や副病変の有無、対側乳房病変の発見にも有効であると感じられました。動画でないと分かりづらいため症例は提示しませんでしたが、検診においてFAD等を指摘され要精密検査となり3D撮影を施行し、正常乳腺の重なりであることが明らかになり異常なしと判断された症例も経験しました。石灰化病変においては2D画像だけで十分な形態診断は可能だと感じました。しかし、マンモトーム対象症例においてはトモシンセシス画像により石灰化の深さ方向まで把握できるため、非常に有用です。今後も使用経験を重ねていく上で、トモシンセシスの可能性をさらに見出していきたいと思います。

(マンモグラフィ認定技師 塚川 知里)

3D画像処理の実際


前回のCT特集ではCT画像の成り立ちから3D画像の作られ方、そして画像の種類について江上技師が紹介しました。今回は3D画像ができるまでの実際の流れを当院の最新型ワークステーションを例にご紹介したいと思います。

3Dワークステーション

3D画像は簡単なものですとCT装置の中に入っているソフトウェアで作成することも可能ですが、機能に制限があり専用の画像処理装置を用いるのが一般的です。
当院ではザイオステーションと呼ばれる日本製のソフトウェアを使用して画像処理を行っています。実際の流れとして腹部血管の画像処理をご紹介します。
マルチスライスCTではCT画像を撮影しますと自動的に1ミリスライス以下の画像が再構成され、装置からザイオステーションへ自動転送されます。その画像は部位にもよりますが300枚から1000枚くらいです。この画像をワークステーションで展開するとこのような画像が出来上がります。 (写真1)

CT1

実際の画像処理の流れ

これだけでも十分きれいな画像といえるのですが、実はこの程度のことは最近のCT装置であれば装置付属のソフトウェアでも作ることができます。しかし、この画像は色合いだけを変更しているにすぎません。CT画像はその濃度差で大まかな組織がわかりますので、それにあわせてこの濃度は筋肉だから赤黒黄色っぽい色、骨だから白、血管だから赤などという感じで色付けしている画像になります。ですから細かく見ると、造影剤も骨も同じような色合いで表現されており、血管と骨の違いが認識しづらくなります。

 

専用ワークステーションの威力

そこで実際にはワークステーションを利用してひと手間加えます。

その作業というのは1個のCTデータを分割し骨だけのデータ、血管だけのデータといった具合に厳密に切り分けを行う操作です。そうすることによりそれぞれに別々の色をつけて最終的に一つの3D画像に戻してあげるということができ、それぞれのコントラストが明確になります。

こちらは処理前の画像です。3D画像の濃度を変更させると実際に存在しているデータすべてが表現できます。これが本当の実データで、立方体となっています。(写真2)

CT2

この立方体を濃度変化だけで表現したのが先ほどの画像になります。(写真1)ここから専用ワークステーションで立方体のなかから、この部分は骨、この部分は造影剤だという風に切り分けを行うことで、血管だけを描出したり、骨だけを描出したり、また大動脈と門脈や肝静脈を色分けしたりということができるようになります。実際には、画像の濃度差を利用して分けていきます。

実際の切り分け手法

一番簡単な例をご紹介します。腹部大動脈の症例でこれを血管と骨に分離します。最初に濃度を変更します。CT画像上もっとも白く映る「骨」以外が消えるような濃度まで設定を変更し、この状態で骨を消すという指令をかけます。(写真3、4)そうするとここに見えている骨だけが消えます。

CT3

しかし、このままの濃度だと大動脈も見えません。ですので、血管が見えるような濃度にもどしていきます。すると、大動脈が見えてくるのと同時に消しきれなかった骨の薄い部分がみえてきます。 (写真5)そうしたら今度は血管を残すという処理をかけます。すると血管だけを残すことができます。(写真6)

CT4

この様なことを繰り返し行って大動脈と骨のそれぞれの3Dデータを作成します。ここからそれぞれに色付けを行います。骨は白で、血管は赤といった感じです。質感を持たせるためにカラーにはグラデーションをつけたりしています。するとこのように血管だけをはっきり観察できる画像をつくることができます。(写真7)

さらに血管の画像と骨の画像を組み合わせたり、骨だけをすかせて表現することも可能となります。(写真8、9)

CT5

画像処理の基本はこのような「骨はずし」と呼ばれる手法が基本となります。実際はこのほかにも冠動脈の画像処理のように、冠動脈の屈曲に合わせて画像を切り出す処理やサブトラクションといって造影剤の使用前後で画像同士を引き算して造影剤だけを画像化する頭部血管画像処理(写真10)、空気だけを表現して大腸の走行をみたりするCTC画像処理(写真11)といった骨はずし以外の画像処理も多々あります。処理には時間がかかるものとかからないものとがあり、その差は症例によるところが大きいと感じています。

CT6

先日、横浜で行われた学会と機器展示に参加し最新型のワークステーションを拝見してきました。最近のワークステーションは自動で画像処理をしてくれるようなものもあり、画像を転送しただけで自動的に骨を外してくれるそうです。しかし血管の走行や骨の変形などは症例によって変わってくるため、すべての症例で自動処理がうまくいくというレベルには至っていないようでした。しかし、これらのパターンマッチング技術に関してはビッグデータが活用され、最近話題の人工知能も用いられるようになれば今後解決されるのではないかと思っているのですが、それはそれでこちらが困ってしまうな~とも思っています。汗(^▽^)汗

保田 英志 (X線CT専門技師および肺がんCT検診認定技師)

 

当院の健診センターがリニューアルされました!


当院のリニューアル工事が進行中であるのは、すでにご存知であると思いますが、待望の第一期工事がこの春に完了いたします。今回竣工する新B棟には、病棟のほか、放射線治療施設や薬剤部、職員食堂などのほか、私どもが勤務します健康医学センター(健診センター)も入ります。これを機にセンター常設のX線機器も更新されますので、この紙面をお借りして、新機種のご紹介をさせていただきます。
当科の診療放射線技師は「安全に精度の高い検査や治療を低被ばくで提供する」という共通目標で日々業務を行っていますが、まさにそれを実現するためのサポート役として、申し分ないデヴァイスを手に入れることができました。特に安全面においては、被検者様にご協力していただき体位変換をお願いしている胃X線検査の前壁撮影逆傾斜時の安全をサポートしてくれる「自動肩当て装置」の存在は、我々としても待望の装置であり、昨年あった群馬での死亡事故のような危険は回避するのは当然ですが、被検者様にも検査時の安心感をご提供できると強く思う次第であります。胸部X線装置も更新され、X線TV同様、高精細な Panel Detector(FPD)の搭載モデルが導入されたことも精度をさらに向上させる一因となることを期待します。また、近年、話題になりがちな放射線被ばく管理についても、今回導入された装置はいずれも、一検査あたりの入射線量(計算値)がリアルタイムで表示され、効率よく管理することができます。胃X線検査を行うFPD搭載X線TV装置(写真1、2)は、パルス透視やDose rateを設定することができるため従来の機器より半分の透視線量で検査を行うことができます。今後、これらの装置の至適な安全運用と精度向上の手技を模索していこうと思っております。
センターのオープンは6月半ばの予定です。この稿がお目にかかる頃にはすでに軌道に乗っていると思います。もちろん先生のご利用も心よりお待ち申し上げております。

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少し宣伝をさせていただきます。
当院健康医学センターでは、より多くの方が便利にご利用いただけるよう、基本人間ドック、脳ドック、乳がんドックがインターネットで予約できるようになりました。当院ホームページの健康医学センターのバナーより入ることができます。どうぞご利用ください!
また、センターの公式Facebookページも開設されましたので、併せて、よろしくお願いいたします。

横山力也 (日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師、NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構 胃がん検診読影部門 B資格)

3年目の「脳DATスキャン」


脳核医学画像診断「脳DATスキャン」:ドーパミントランスポータシンチグラフィー(図1)については当院でも検査開始から3年目へ突入しました。最近では幾つかのご施設から検査依頼の御紹介いただき厚く御礼申し上げます。
3年目に入った節目として、改めて脳DATスキャンのおさらいをしてみます。

1)基本原理

①神経伝達物質であるドパミンはシナプス小胞に包れ、シナプス間隙に放出されます。

②放出されたドパミンはドパミン受容体に結合し、信号が神経細胞に伝達されます。

③シナプス間隙のドパミンはDATにより再取り込みされ、シナプス小胞に貯蔵されます。

④ドパミン神経の変性・脱落がみられるPDでは、ドパミン神経の減少とともにDATが減少します。

下記図1にて健常例とパーキンソン病例を提示します。

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2)画像評価

①視覚評価

線条体部位の形状を評価します。検査開始当初は線条体への集積が正常では「勾玉(まがたま)」、「三日月」「カンマ」、異常では「ドット」かという見分け方が典型とされていました。(図2)

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最近では左右の対称性、非対称性も視覚評価のポイントとして重要視され、特に被殻後部から集積低下が始まることが着目されています。(図3)

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②定量的評価

投与された放射性医薬品(DATスキャン:123I-イオフルパン)の線条体への集まり具合を数値化して評価する方法で線条体以外の部分、すなわちバックグラウンド(BG)を1とした場合の線条体の集積比をSBR(Specific Binding ratio)と称す数値とします。現在、全国的に「DATView」という解析ソフトウェアが広く使用されております。前の視覚評価で取り上げた左右の集積比であるAIという指標も作成しております。(図3)

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3)DATスキャン:3年目の現場の取り組み

この4月に従来の「DAT View」を含む核医学解析ソフト「隼」を導入し、新たな展開を迎えようとしています。

従来の「DAT View」では構成する断面をAC-PCラインに合せて再構成していましたが、実際のSPECT断面からAC-PCラインを同定するのはかなり困難な作業でした。(図4)

DAT4

新規ソフトウェアの導入にて「Assist AC-PC」という機能が加わり、これまで困難であったAC-PCラインの自動同定によって処理作業の煩雑さが解消され、併せて処理解析による誤差も解消しております。(図5)

DAT5

現在、神奈川県内13施設において同一の最新型線条体ファントムを用いた多施設共同研究が展開されております。施設および機器による測定誤差等を解析し、施設間差を是正する標準化作業の一環として取り組んでおり、当院も参加させていただいております。3年目を迎え、より正確な検査が出来るよう、今後とも様々な点からアプローチして行く所存であります。(核医学認定技師 荒田 光俊)

*神奈川県線条体ファントム多施設共同研究参加施設

東海大学医学部付属病院、北里大学病院、昭和大学横浜市北部病院、昭和大学藤が丘病院、横浜市立大学横浜市総合医療センター、横浜市立大学医学部附属病院、新百合ヶ丘総合病院、、帝京大学溝口病院、横浜みなと赤十字病院、川崎市立川崎病院、済生会横浜市東部病院、関東労災病院、横浜栄共済病院

 

IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)とは?


さて今回は、放射線の強さを変える技術について説明させて頂きます。IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)という治療技術です。日本語では強度変調治療と呼ばれます。お聞きになったことがあるのではないでしょうか?
IMRTは、照射野内で不均一な線量分布を作成しながら照射をおこないます。通常の照射方法では、正常組織にも同じように放射線が照射されてしまいますが、IMRTは放射線の強度を変化させ、多方向から照射をおこなうことで、病巣へ線量を集中させ、正常な所に照射される量を少なくすることができます。つまり、IMRTは病巣への線量集中と正常組織の線量低下を一変にかなえることが可能な高精度な照射技術となります(図3、図4)。この技術の登場により、従来では実現不可能であった放射線治療が展開できるようになったため大幅に悪性腫瘍の治療方法の選択が拡がりました。

IMRTにはSMLC-IMRT、DMLC-IMRT、Compensating filter IMRTなどの手法があります。それぞれ紹介致します。
(1) SMLC-IMRT(Segmental MLC-IMRT)
別称step and shoot法と呼びます。MLC形状の異なった複数の照射野を重ね合わせることにより、1つの照射野を作成し照射をおこないます。多数のMLCパターン(セグメント)の合成による照射方法です。
(2) DMLC-IMRT(Dynamic MLC-IMRT)
別称sliding window法と呼びます。照射中にMLCを連続的に動かし、左右1対のリーフの運動速度の差により強度を変調させ照射をおこないます。
(3) Compensating filter IMRT
別称physical modulator IMRT(補償フィルタ強度変調放射線治療)法と呼びます。専用の補償フィルタを用いてビーム強度プロファイルを作成し照射をおこないます。

現在IMRTの適応は、頭頸部腫瘍や前立腺がんが主流ですが、乳がんや肺がんなど、その他の疾患でも積極的に検討がなされています。近い将来、IMRTが通常の照射法となるかも知れません。また、IMRTの照射技術も日々進化しております。最近ではより高技術なVMAT(Volume Modulated Arc Therapy:強度変調回転照射)※3と呼ばれる照射法もおこなわれる様になっています。
当院でもIMRT可能な治療装置を導入しました。こちらの方も順次準備を整えていきたいと考えていますので、ご期待頂ければと思います。

次回は、既に放射線治療が開始していると思います。順調にスタートしていれば良いのですが…
ということで次回は、放射線治療の開始報告と放射線の種類を変る技術について紹介させて頂きます。

(放射線治療認定技師 江川 俊幸)

IMRT1IMRT2

※1コミッショニング
各施設に納入された高エネルキー放射線治療機器特有の放射線出力の状態について、測定・数値なとの登録・確認を行い、品質か管理されていることを確認すること.受入れ試験に引き続きおこなう一連の作業行程.
※2モデリング
治療計画装置にビームデータや加速器のパラメータを登録し、計算アルゴリズムに応じた関数の設定をビームデータに合わせ込み、最終的にビームデータを承認するまでの作業.
※3VMAT
IMRTの進化形であり、ガントリーを回転しながらX線量を加減し治療を行います.IMRTより良好な線量分布を達成しつつ、治療時間の短縮が可能のため患者の負担が軽減できる.

CT所見を利用した脾臓の重症度分類


2015年12月と1月の2か月間、放射線科で研修させていただいた初期研修医2年目の金澤将史と申します。私は救急科志望であり、広い救急の分野の中でも外傷救急は画像診断の果たす役割が大きいと日々の臨床経験を通して実感しています。今回、脾臓の損傷と治療方針選択にあたってCT所見を利用した重症度分類を用いることの有用性を検討する論文を見つけましたので、その内容を紹介させていただきます。

Nitima Saksobhavivat、 MD et al.
Blunt Splenic Injury: Use of a Multidetector CT–based Splenic Injury Grading System and Clinical Parameters for Triage of Patients at Admission
Radiology 2015;274:702-711.

鈍的脾損傷に対しては、循環動態や腹膜炎の有無をもとに手術または非外科的治療が選択され、脾動脈塞栓術も一般的に行われるようになっています。しかしながら、治療法を選択するためのガイドラインやコンセンサスはありません。一方で、脾損傷の重症度評価のためのCT所見に基づいたグレード分類システムが開発され、最適な治療のためには動脈相と門脈相の2相性CTが重要という報告もされています。ここでいうグレード分類システムというのは、血腫(画像1 グレード3 3cmより大きな実質内血腫)や活動性出血(画像2 グレード4a  活動性実質内出血)などのCT所見をもとに脾損傷の重症度を分類するもので、グレード 1、2、3、4a、4bに分類され数字が大きいほど重症度が高いというものです。論文では、鈍的脾損傷患者に適切な治療(保存的治療、脾動脈塞栓術、手術など)を選択する際、2相性CTに基づくグレード分類システム及び臨床パラメータを使用した場合の有用性を評価しています。入院時にCTを施行した鈍的脾損傷患者171人を対象としたレトロスペクティブな検討です。CTグレード分類で重症度の低かった症例(グレード 1~3)は保存的治療のみでその他侵襲的な治療を要さなかった例が多く、グレード分類の重症例(グレード 4a、4b)の多くは手術や塞栓術などを必要としました。筆者たちは、鈍的脾損傷においてCTによるグレード分類システムは保存的治療成功例の最良の予測因子であると結論付けるとともに、動脈相と門脈相の画像を適用して脾損傷による活動性出血や非出血性血管損傷を識別しやすくすることが、正確な損傷の分類や治療方針決定に必須であると述べています。
外傷診療における重症度評価や治療方針決定にCTがいかに有用であるかを改めて認識するような報告でした。外傷初期診療ガイドラインでもCTは画像検査の中心に位置づけられており、機器の性能向上と撮影時間短縮により、ますますその有用性が指摘されています。全身CTや撮影のタイミングについてはまだ検討の余地がありますが、今後も外傷診療において中心的役割を担うものと考えられます。

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