症例(CT:腹痛)2020.12月号掲載


症例:50代 女性

主訴: 心窩部痛、発疹、掻痒感

下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

図1:単純CT検査 水平断像
図2:単純CT検査 a:冠状断像, b:矢状断像

解答と解説

中年女性の腹痛、発疹の症例です。
図1, 2では胃体部前壁の粘膜面から隆起する比較的低吸収な腫瘤病変が見られ、図3には同部を拡大したCT画像を供覧しています。図3a, b 黄色矢印では胃粘膜下に位置するようにして低吸収な腫瘤様構造が見られ、図3b橙矢印では対側の胃壁にもわずかに浮腫性変化が認められます。CT検査所見上で腫瘤様構造は胃の粘膜下に位置してみえ、gastrointestinal stromal tumor:GISTなど胃粘膜下腫瘍が疑わしい所見です。
診断目的に施行された内視鏡検査では白色の虫体(図4)が胃内に認められ、胃アニサキス症と診断されました。前日にしめ鯖を食べていたようです。

胃アニサキス症はアニサキス属の幼線虫が胃及び腸に寄生する幼虫移行症です。胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症に分かれます。アニサキスの成虫はクジラやイルカなど海洋哺乳類に寄生しており、幼虫はサバやサケ、タラ、イカなど魚介類に寄生し、生食で人の消化管壁に刺入して発症します。生食後24時間以内に発症することが多く、上腹部痛や嘔気、嘔吐や微熱が出現します。
胃アニサキス症は緩和型と劇症型に分かれ、緩和型は初感染に引き続いて起こる限局性アレルギー反応であり軽症例が多くみられます1)。一方で劇症型は再感染によるアレルギー反応で急性なアナフィラキシー様症状を呈します1)。また、今回症例のようにアレルギー反応で蕁麻疹などの掻痒感を伴う皮疹が生じる事もあります2)。治療はアニサキス虫体の内視鏡的除去です。
典型的なアニサキス症の画像は消化管壁の全周性の浮腫性変化と腹水貯留がポイントとなります。図5は典型例ですが、胃壁の全周性の強い浮腫(図5a-b)と腹水貯留が見られています(図5c)。特に腹水貯留が通常の胃炎との鑑別点となり得る所見です。鑑別は急性胃粘膜病変、好酸球性胃腸炎などが挙がります。
今回の症例ではこのような全周性の浮腫は示さず、あたかも粘膜下腫瘍の様な限局した腫瘤様の浮腫が見られました。腫瘤形態からアニサキス症を想定するのは困難となりますが、図3b橙色矢印の様に対側の胃壁にも浮腫が見られる点を考慮すると胃炎とともに鑑別には挙がるかもしれません。食事歴など生活歴も診断に重要な情報となります。

診断のポイント
① 食事歴、生活歴
② 症状(皮疹などアレルギー反応も含めて)
③ 消化管の強い全周性浮腫、腹水

診断に苦慮した胃アニサキス症の画像の非典型例を紹介いたしました。臨床情報と併せた診断の重要性を再認識した1例です。

図3: 単純CT検査 a:水平断像, b:冠状断像
図4: 内視鏡画像
図5: 胃アニサキス症 典型例CT検査画像 
 a:水平断像, b:冠状断像, c:水平断像 骨盤内

【参考文献】
1)山下康行: わかる!役立つ!消化管の画像診断. 学研メディカル秀潤社, p.60-61, 2017.
2)亀山梨奈, 矢上晶子, 山北高志, 中川真実子, 長瀬啓三, 市川秀隆, 松永佳世子. サンマ摂取によりアニサキスに対する即時型アレルギーを呈した1例. 皮膚科の臨床2006;55:1429-1432

核医学プチ講座 ブルズアイ(その1) ブルズアイっていったいなんだ!?


心筋血流SPECT検査を中心に心臓核医学診断では画像表示に「ブルズアイ(Bull’s-Eye)」が用いられます。最近では心臓MRIや心臓CT(Perfusion CT)でも採用されていますので、今回は画像表示方法の基礎について述べさせていただきます。

3方向+α見える!

心筋SPECT等の検査では画像表示として3方向の断面表示に加え、ブルズアイ(Bull’s-Eye)が表示されます(Fig1)。

のっけから余談話を展開しますが、「ブルズアイ」を「ヤ○―」や「グーグ○」で検索しますとディズニーのトイストーリーに出てくる馬がHitします。次に出てくるのが「ダーツや射撃の中心円」です。またその「中心円」を射貫くという意味で航空軍事用語でも使われています。まずはダーツに使用される標的盤でイメージを膨らませてください。 さて、心筋SPECT画像の再構成では前述の3方向が表示されます。水平方向長軸(Horizonal Long Axis:HLA)、垂直方向長軸(Vertical Long Axis:VLA)、そして短軸(Short Axis:SA)があります。(Fig2)

短軸像を心尖部から心基部まで同心円状に投影したものが「ブルズアイ(Bull’s-Eye)」となりますが、同心円状に展開していることから「極座標表示」「Polar-Map」とも呼ばれています。(Fig3)

ブルズアイで見てみると

ブルズアイ(極座標表示画像)では統計検定に基づいた異常領域の抽出が可能となります。またSPECT上での各区域に応じたカウントをScore表示することも出来ます。(Fig4,Fig5)

ちなみに冠動脈との標準的な位置関係も加えると以下のようになります。(Fig6)

誌面の関係で次回は「その2」として、ブルズアイ画面の見方や評価方法についてお話させていただきます。
放射線技術科主任・核医学専門認定技師 荒田

VMATご存知ですか?


VMATご存知ですか?

さて今回は、2021年に当院に新しく導入されたVMATについて紹介させていただきます。
VMATとは、強度変調回転照射法(Volumetric Modulated Arc Therapy : VMAT)のことで、IMRT※1の技術に従来日本で行われていた回転原体照射の機能を加えた照射法です。 マルチリーフコリメータ(Multi Leaf Collimator : MLC)※2を常に動かしながらガントリの回転速度と照射線量率を変化させることで強度変調をおこないます。これにより照射時間の短縮が可能となります。

IMRT (固定7門) vs VMAT (1回転)

VMATの最大の利点は、従来おこなってきた固定IMRTに比べ、病巣への線量集中はそのままで(もしくはそれ以上の集中性が確保できる)、短時間での治療が可能となる点です(fig.1)。
治療部位や照射方法にもよりますが、これまで10分以上必要であった照射時間が、数分で終了となります。これにより患者さんの負担が軽減され、より楽に治療が受けられるようになります。また、治療時間の短縮が可能となりますので、治療中の体の動きによる位置誤差も少なくできます。より安全で高精度な放射線治療を受けることができます。適応疾患※3についても、これまで以上に選択の拡大が期待できます。

※3)適応疾患

脳腫瘍、多発性脳転移、頭頸部癌、食道癌、肝胆膵癌、前立腺癌、骨転移など

治療装置の品実管理(QAQC)に関しても、VMATに対応した専用の検証装置を導入しました。
安全で安心できる放射線治療の提供を目標に、スタッフ一同頑張って参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

症例(歯科口腔外科より検査依頼) 2020.9月号掲載


症例 10代 男性

主訴: 左下顎の違和感、腫脹と疼痛

下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

図1:パノラマX線画像
図2:顎部CT検査 a:水平断像 軟部条件, b:水平断像 骨条件, c:矢状断像 骨条件, d:冠状断像 骨条件

解答と解説

若年男性の下顎部腫瘤の症例です。
図1では左側第二大臼歯歯根部周囲の下顎体部から下顎枝にかけて境界明瞭、辺縁平滑な多胞性透亮像が見られます(図3:黄矢印)。第二大臼歯歯根部は直線的な欠損像が見られ(図3:赤矢印)、この疾患での重要な所見となります。
図2a-2cのCT検査画像ではパノラマX線画像と同様に左下顎体部から下顎枝にかけて膨隆性骨腫瘤が見られ、骨皮質は菲薄化しています。境界明瞭で辺縁平滑な腫瘤であり図2d冠状断像で第二大臼歯歯根部に水平な骨吸収が認められます。この所見はナイフカット状の歯根部吸収と呼ばれ、エナメル上皮腫に特徴的な所見と言われています(図4)。
追加で施行されたMRI検査(図5)では上記所見と同様に左下顎体部から下顎枝を中心とした辺縁明瞭な嚢胞状構造が見られます。腫瘤内はT2強調像で高信号(図5a)、T1強調像で低信号(図5b)であり内部性状は均一です。

エナメル上皮腫は歯原性良性腫瘍の中で最も発生頻度が高く一般的な疾患です。エナメル器に類似した細胞からなり、大小の嚢胞を形成します。臨床症状は顔面腫脹が最も多く、疼痛がそれに続きます。発現年齢は20-30代の男性に多く、下顎が約80-90%で上顎に比して多く見られます。好発部位は上下顎とも臼歯から後方の顎骨内です。
画像所見は境界明瞭、辺縁平滑な単胞性、あるいは多胞性の透亮像を呈します。病変が歯槽部におよぶと歯の移動と歯根部の吸収が見られます。特に吸収面が直線的である「ナイフカット状歯根吸収」を示すことが本疾患の一番の特徴です。
病変内に埋伏した智歯を含むことが多く、含歯性嚢胞と鑑別を要する場合があります。
診断のポイントとしては
①年齢、部位(下顎後方)
②辺縁平滑、境界明瞭な透亮像
③ナイフカット状歯根部吸収
今回はエナメル上皮腫として典型例を提示致しました。

図3: パノラマX線画像 拡大
図4  a:CT画像冠状断像,    b:ナイフカット状の歯根部吸収 シェーマ
図5:MRI検査 a:T2強調像, b:T1強調像

【参考文献】豊田圭子: まるわかり頭頚部領域の画像診断. 学研メディカル秀潤社, p.734-737, 2015.

症例(CT、SECT) 2020.6月号掲載


症例:70歳代 男性

主訴:夜間外出や歩行障害、自宅を間違える、失禁などの行動が目立つようになり当院に受診。
認知機能評価のため脳血流シンチグラフィと頭部CT検査が施行された。

下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

 

図1:99mTc-ECD 脳血流シンチグラフィSPECT像 
a:水平断像, b:冠状断像,
c:矢状断像, d:正常参考例
図2:頭部CT検査 
a:水平断像,
b:冠状断像

 


解答・解説

本症例は正常圧水頭症に典型的な認知機能低下、歩行障害、失禁の症状を呈していました。

まずは図3、4でCT検査から正常圧水頭症の所見を説明します。
図3はCT検査水平断像ですが、図3aで側脳室がやや開いて見えます(矢印)。図3bでは側脳室前角と頭蓋内腔の測定部位を示しており、それぞれ4.58,12.81cmでした。側脳室前角幅/頭蓋内腔幅>0.3であれば正常圧水頭症の可能性があり、この値はEvans indexと定義されています。本症例のEvans index は0.356であり、0.3以上となっています。
図4の冠状断像では脳梁角も正常圧水頭症を評価しうる値です。具体的には90°以下であれば正常圧水頭症であり、本症例は81°で基準を満たしています。加えて、頭頂部の脳溝がやや狭小化しています。
最後に脳血流シンチグラフィですが、脳内集積の機序を簡単に説明致します。
脳血流シンチグラフィは脂溶性の放射性薬品が血液脳関門を通過して血中から脳組織内に取り込まれます。取り込まれた後は長時間組織に留まり、その分布は局所脳血流量と相関します。
今回検査では図1b冠状断像での頭頂部の扁平な集積が正常圧水頭症のポイントとなります。具体的には図5a矢印で示した部分であり、図5bでは頭頂部の脳溝の狭小化(矢印)が見られます。脳溝の狭小化を呈する理由としては水頭症によってシルビウス裂が開大し、頭頂葉や前頭葉が見かけ上頭側方向に圧排されることにより生じます。脳血流シンチグラフィでの集積があたかもカッパの皿の様に見えるため、CAPPAH(Convexity APPArent Hyperperfusion)サインとも呼ばれています。圧排された頭頂葉や前頭葉の血流が見かけ上で増加しているため、このような集積になるとされています。
本症例は髄液のタップテストにより症状が改善致しました。

図3: 頭部CT検査 水平断像 : Evans index測定
図4:頭部CT検査 冠状断像:脳梁角測定

診断のポイントとしては
症状:認知機能低下、歩行障害、失禁
Evans indexと脳梁角
脳血流シンチグラフィでのCAPPAHサイン
症状、画像所見でから診断に至った正常圧水頭症の1例を紹介いたしました。

図5:SPECT像とCT検査の対比とCAPPAHサインa:SPECT冠状断像, b:CT冠状断像, c:カッパ

【参考文献】徳田 隆彦. 髄液の産生・吸収障害と特発性正常圧水頭症の新しい画像診断臨床神経学 2014; 54:1193-1196

症例(腹部CT)


Case  80歳.女性.

上腹部痛、食欲不振

下記画像から考えられる疾患は?

 

 


解答と解説

下図A~D:口側小腸(赤矢印)が肛門側小腸(青矢印)に嵌入し、図Aでは標的様構造を示しており、内部に血管構造と脂肪組織が確認できます。嵌入した口側小腸の先端には脂肪腫と考えられる境界明瞭で辺縁平滑な脂肪濃度を示す腫瘤(緑矢印)を認めます。嵌入が始まる箇所より口側の小腸(黄矢印)は拡張しています。脂肪腫を先進部とする小腸重積が考えられます。図E~F:腹腔鏡下小腸切除術が施行され、小腸の中央部にみられた腫瘤は、病理組織で脂肪腫と診断されました。図Fは腫瘍の割面を示しています。
腸重積では、腸管が遠位もしくは近位の腸管内に折りたたむように嵌入します。最もよくみられる症状は、腹痛、嘔気・嘔吐です。腸重積をきたす原因としては腫瘍が最多であり、成人腸重積の約65%でみられます。蠕動に乗って先進部が遠位側に移動するために、近位側腸管が遠位側腸管の内側に引き込まれるようにして入り込むのが一般的です。CTでは、標的様構造の内部に脂肪組織と血管が巻き込まれる所見を確認することが重要です。小腸重積に限って言えば、原因として良性病変が最も多く、脂肪腫、GISTなどの腫瘍、非腫瘍性ポリープ、Meckel憩室、炎症性疾患、外傷などがあげられますが、悪性病変の場合は、腺癌、悪性GIST、転移、悪性黒色腫、リンパ腫などがあげられます。そのため、腸重積では重積先進部に特に注意する必要があります。治療としては、原則手術が必要です。

解答

脂肪腫を先進部とする小腸重積

参考文献)

・ 山下康行:わかる!役立つ!消化管の画像診断.秀潤社
・ Choi SH, Han JK, Kim SH, et al: Intussusception in adults: from stomach to rectum. AJR 2004;183:691-698
・ Warshauer DM, Lee JK. Adult intussusception detected at CT or MR imaging: clinical-imaging correlation. Radiology 1999;212:853-860

 

ドキドキしてもハッキリ!クッキリ! 心電図同期撮影


以前ご紹介したTAVI(Transcatheter Aortic Valve Replacement:経カテーテル大動脈弁留置術)の術前に行うCT検査でも利用している心電図同期撮影についてご紹介したいと思います。
心電図同期撮影とは、心電図モニター用のパッチを体に装着し、心電図波形データを収集しながらCT画像を得る撮影法です。

利用例1:心臓(冠動脈)CT

心電図同期撮影を利用する検査目的の多くがこの心臓CTです。心臓(冠動脈)は、他の部位と異なり絶えず拍動している為、息止めや高速で撮影を行うだけではブレのない画像を得ることはできません。そこで、心電図と同期させて、心臓の動きが少ないタイミングのデータを取得し画像再構成を行うことでブレのない画像が得られます。心電図では、繰り返される心臓の拍動(拡張と収縮)を電気信号の時間的変化(心電図波形)としてとらえる事ができます。詳細は割愛させて頂きますが、正常な心電図波形は図のようなPQRST波の繰り返しで表され、CT画像収集に必要な心臓の動きが少ないタイミングとしては拡張中期・収縮末期があります。心拍数が低い場合は拡張期、高い場合は収縮期が収集に適しているとされています。

このような画像再構成に最適なデータを抽出することにより、動きのない冠動脈画像を得ることができます。下はその一例ですが、左冠動脈に入っているステントがはっきりとわかります。

 

利用例2:大動脈解離

大動脈解離でも心臓の拍動の影響を受けやすい上行大動脈の解離が疑われる際に、心電図同期を用いて撮影する場合があります。心電図同期させることにより、拍動によって解離に見えてしまう偽画像(アーチファクト)かどうかの判断が可能となることや、大動脈解離が冠動脈に及んでいるかどうかの判断が可能になります。 同期の有無によりどの程度見え方が変わるのか比べてみました。下の画像のように同期することで冠動脈起始部が明瞭に観察できます。

利用例3:TAVI術前・術後CT

TAVI (Transcatheter Aortic Valve Replacement:経カテーテル大動脈弁留置術)は大動脈弁狭窄に対する治療として、開胸手術にて弁置換を行う従来の方法と比較し低侵襲です。
しかし、カテ―テルを用いた手技の為、

・人工弁を狭窄部まで進める際の血管経路の確認
(カテ―テルを進めることが出来る走行や血管径であるか)
・大動脈弁の径に適した人工弁の選択、人工弁を留置する位置の検討
(冠動脈を閉塞させない場所)

などが重要です。
これらの正確な情報を得る為には心電図同期を用いたぶれのないCT画像を必要とします。
また、心臓の拍動に加え、呼吸による影響、体動、正確な心電図波形の表示や画像再構成に用いる波形データの選択が画像精度を大きく左右します。検査を行う技師として、患者への説明(息止め等)や、モニターの正確な装着、機械操作(最適な波形の選択等)を常に心がけて撮影しています。

今回紹介した冠動脈CTやTAVI術前検査は、64列以上の高速撮像ができるCT装置が推奨されています。当院は64列CTが2台あり、どちらも冠動脈撮影に対応できる体制となっています。装置の性能を最大限活かせるよう研鑽を積みたいと思います。

CT認定技師 江上

当院の胃X線検診の精度管理について


はじめに

今回は当院健康医学センターで胃X線検査の検査精度についてお話させていただきます。先生はご存知かと思いますが、国立がん研究センターが出した「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版」の中で胃X線検査は、胃内視鏡検査と並んで、「推奨グレードB」とされており、死亡率減少効果が不利益を確実に上回る検査として、対策型検診・任意型検診としての実施を推奨されております。
近年では日本消化器がん検診学会などにより基準撮影法が提唱され、携わる診療放射線技師を中心に普及したことにより、平成28年度の日本消化器がん検診学会全国集計によりますと、発見がんの77.2%が早期がんであるという結果がでております(表1)。
検診の最大の命題である「救命可能のがん発見」に、ある一定の効果があることが示唆されていると言っていいと思われます。

検査数は約543万件/年(全国) 当センターは2014年より減少傾向

全国では1年間に約543万件の胃X線検診が行われております(表2)。
しかし当センターでの検査数は2014年より減少傾向で推移しております(右グラフ)。その大きな理由として、当センターが10年ほど前に経鼻内視鏡検査を導入したことが考えられます。
経鼻内視鏡検査は、経口法に比べて低侵襲かつ受容性が高いため、胃X線検査のかわりに選択される受診者様が増加傾向にあります。
しかしながら内視鏡検査に比べて、高スループットで技師1名にて行える低コストである胃X線検査はこれからもまだまだ検診の場では施行されていくことと思います。

当センターの検査精度

2017~2019年度の当センターの検査精度を(表3)にお示しいたします。全国集計(表2)より、①地域検診の要精検率と②がん発見率が高いのが特徴です。特にがん発見率は地域検診で約2.5倍、職域検診で約3倍の発見率となっております。有意差は検証してはおりませんが、その要因は、地域差・受診世代差・検査手技の違いなどと推定されます。

精度管理の方法、および工夫

近年のDR装置における撮影は、透視観察や撮影画像のリアルタイム観察が胃がんの拾い上げに不可欠であります。我々診療放射線技師も読影医を補助するつもりで「撮影しながら読影」して、ひとりひとりの受診者様を日々撮影しております。撮影技術の研鑽はもちろんのこと、症例検討会(最近のコロナ渦ではオンライン開催ですが)や成書で多くの胃がん症例を経験し、自施設の術前胃X線造影を通して、X線所見、内視鏡所見、そして術後病理所見を対比することによって、X線画像にfeed backし地道に一例ずつ積み上げていくのは、先人の諸先生方の手法と全くおなじであると痛感しております。また検査の特性上、受診者様に体位変換等のご協力をお願いして成立する検査であるため、最近増加傾向にあるご高齢の受診者様の安全性や利便性を向上するための工夫(緩衝用マットレス、左右表示)も行っております。

○緩衝用マットレス

逆傾斜時の撮影はマニュアルどおり安全に留意して行っておりますが、万一に備えて配置しました。

○左右表示

X線検査台にあがると、緊張から左右が一瞬わからなくなる方が多いので、さりげなくアシストする目的でつけてみました。マグネットで貼り付けるタイプのものを自作で作成しました。

私は健診を中心に業務させていただいておりますが、他にCTや血管造影、夜勤時にはMRIにも対応させていただくことがあります。検診の胃X線検査はこれらの先進的な技術を搭載した装置とは若干異なり、X線診断学や病理学的な知識・それらを具体化して根拠を示すことができる撮像技術をリアルタイムで撮影者に対して要求してきます。習得するには短期間とはいきませんが、今後とも地域のがん検診のために微力ながら研鑽していきたいと思っております。

健康医学センター担当 横山
日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師
日本消化器がん検診学会 胃がん検診読影補助認定技師
NPO消化器がん精度管理評価機構 胃がん検診読影部門B資格
神奈川県消化器がん一次検診機関連絡協議会技術部世話人
神奈川県消化管撮影技術研究会世話人

ガンマカメラって、シンチ検査と何が違うの??


通常画像診断関連の検査というと、胸部レントゲンやCTなどが代表的で、次にバリウム検査やMRIなどが思い浮かばれ、核医学検査を想像される方は少ないのではないでしょうか。
当院の核医学検査数は他の施設に比べ多いくらいなのですが、CT検査やMRI検査に比べると、1,2割くらいの件数しかない、あまり表にでる機会がない検査となっております。
今回はそのような珍しい検査部門で使われている核医学検査装置について、マニアックではありますが理解すると割と面白いかと思いますのでご紹介させていただきます。

レントゲンとは反対に…

核医学検査は、放射性同位元素を患者さんの体内に投与し、その動態を測定、画像化する検査です。通常レントゲンではエックス線を体に照射し、その吸収差を画像化していますが、核医学検査は反対で、体から出てくる放射線を検出して画像化していることになります。
核医学検査で画像化するのに用いられる放射線はガンマ線(γ線)と呼ばれる放射線になります。放射線にはいろいろと種類があり、エックス線、ガンマ線、アルファ線、ベータ線、重粒子線などがありますが、この中でこのガンマ線というものを検出して画像化しています。

ガンマ線は電磁波の一種で、性質的にはエックス線と同じといわれています。エックス線はレントゲン検査やCTなどで使われるもので、専用の装置に高い電圧をかけると発生するものです。しかし、ガンマ線は装置から出てくるわけではなく、放射性同位元素から出てくるものを指します。

ガンマカメラってどんなカメラ??

ガンマ線を検出するのに使われているのが、その名の通りこのガンマカメラと呼ばれる装置です。体が覆われるように横幅が大きい装置となっています。この装置の中に、ガンマ線を検出する装置が格納されています。

ガンマ線は通常物質を電離させることができるので、その電離した電子を数えることでそこにどれくらいのガンマ線が存在するかを測定することができますが、画像化するにはそれだと効率が悪く、たくさんの放射線同位元素が必要となってしまいます。ですので一度、ガンマ線を蛍光体(シンチレーター)と呼ばれる物質と接触させて光を発生させます。その光信号をさらに倍増させる装置(光電子増倍管という)を通すと高い信号値が得られるので、少ない放射線でも効率よくガンマ線を検出できます。
ちなみに蛍光体(シンチレータ)を利用して画像を得ることから、核医学検査はシンチグラフィとも呼ばれております。

このような放射線を光に変換して信号値を上げる技術は、レントゲンやバリウム検査、CTでも利用されており、被ばく線量の低減に利用されています。
以上、今回は簡単ではありますが核医学検査装置の基本原理についてご紹介させていただきました。

副技師長・核医学検査担当 保田

CT angiographyをきれいに撮るためのテクノロジー


CT angiography (CTA) は血管の走行を確認したり、病気を診断するために有用な検査です。
これは造影剤が目的の動脈に到達したタイミングを見計らってCTを撮るという方法で撮像されます。しかし、静脈から注射した造影剤が目的の動脈に造影剤が到達するタイミングは個人差があり、事前に知ることができません。そこで当院ではボーラストラッキングという方法を用いて正確に目的血管のCTAを撮像しています。
ボーラストラッキングとは目的動脈の位置で連続的にスキャンしてモニタリングを行い、造影剤が到達したら撮像を開始する方法です。

ボーラストラッキングはいろいろな血管に適用できます。

MRI認定技師 五十嵐