当院のGE社製 3T(テスラ)MRI装置のご紹介


3.0T(テスラ)MRIが当院に入ってから、早いものでもう3年が経過しました。事故もなく安全に検査をすることが出来ていると言う事は、何ものにも変えがたい喜びです。安全第一で今後もMRI検査を行っていきたいと思います。

そこで、今回はあらためて3.0T MRIのメリット・デメリット・安全上の注意点などを交え、紹介したいと思います。
現在、日本国内で人体に使用できるMRI装置には静磁場強度が、0.5T~3.0Tまで多種多様な装置があります。臨床機では3.0Tが最上位機種となります。また、実験段階ではありますが、すでに7.0TのMRI装置で人体の撮影も行われています。近い将来、7.0T の臨床装置が登場する日もそう遠くはないかもしれません。
静磁場強度が高くなる最大のメリットは、信号強度(signal/noise)が向上することにより、高分解能な画像が撮影できる様になることです。また、撮影時間の短縮も可能になります。(画像1)

MR1
画像1

わずかな磁化率の差が画像に影響するため、今までは見えなかったものが見えるようになることもあります。(画像2)

MR2
画像2

周波数の差が大きくなるため、T2強調画像やT1強調画像だけではなく、ASLやMRS(画像3)などもきれいに撮影できます。また、functionalやelastgraphyなども1.5T MRIよりきれいに撮影することが出来ます。

MR3
画像3:3T装置で撮影されたT2強調画像、T1強調画像(造影)、ASL画像、MRS

また、デメリットとしては、3.0T MRI対応の体内金属以外は検査が出来ません。冠動脈ステントも、5年以上前に挿入したものは3.0T MRIでの磁場試験を行っていない製品も多く存在するため、安全性が確認できないものに関しては1.5T MRIでの検査となります。また、他院で挿入した冠動脈ステントや体内金属などは、製品の型番が確認できて安全性が担保できなければ3.0T MRIでは検査を行わないようにしています。一番重要なことは、安全性の担保に尽きると思います。リスクを負ってまで3.0T MRIで検査する必要はありません。安全面が確認できない場合は、1.5T MRIで検査をおこなえば良いのです。2台を使い分けすることで、スムースな検査が可能となっています。磁場強度が増すと、それだけ金属の吸引力が増加します。もし誤って金属を持ち込むと、3.0T MRIは1.5T MRIの2倍の吸引力になるため、大事故になりかねません。3.0T MRIが納入された時から、金属に関しては今まで以上に慎重に対応するようになりました。実際に磁場の吸引力を体験すると分かるのですが、3.0T MRIは桁違いの磁力です。
3.0TのMRI装置はメリット・デメリットありますが、安全に使い分けを行えば非常にメリットの多い装置であることは間違いありません。患者さんにとって、安全に安心して検査が行えるように、これからも日々精進してまいります。

特集MRI:薬を使わないでできる脳血流検査  ASLを紹介します


MRIで脳血流診断?

脳血流の評価というと、放射性核種を用いて血流量を定量評価する脳血流シンチがゴールドスタンダードです。当院の核医学検査でも行っている検査ですが、当院のように核医学検査装置を有している施設でなければ検査ができません。MRIで脳血流が評価できないかという事で、造影剤を使って脳血流を評価する方法(dynamic susceptibility contrast:DSC法)があります。DSC法は造影剤が脳血管内に流入する状態を撮影し続けます。しかし、解析方法の自動設定が難しく、定量値が撮影法に依存すること、定量値に誤差が生じやすいなどの問題点があり、精度の高い安定した定量値を得ることは難しいため、定性的な評価に利用されています。
近年、造影剤を使わずに脳血流評価が行えるASL (arterial spin labeling)法が普及してきました。ASLの研究自体は古く約20年の歴史がありましたが、装置の高性能化・高磁場強度の装置の登場により、ようやくソフトウェア技術が追いついてきました。造影剤が不要で、放射線被ばくも無く、非侵襲的に繰り返し検査することが可能で、当院のプロトコルでは約2分で撮影する事が可能です。

なぜ注射なしでOKなのか?

原理は頸部血管にラジオ波を照射して血液内のプロトンをラベリング(磁気的に標識)します。このラジオ波をラベリングパルスと呼びます。ラベリングされた血液が脳組織に到達するまで待った後、高速に画像収集を行います。ラベリングパルス「あり」の時と「なし」の時の差を解析するとわずかな磁場の変化がみられます。この違いが入ってきた脳血流の違いとして描出され、核医学検査のような脳灌流画像を取得する事ができます。ラベリングされた血液が造影剤代わりとなることから、適切なタイミングで撮像されていないと結果が正しくなくなる恐れがあります。

図1
InnervisionHPより引用

どのタイミングで撮影するのか?

ラジオ波でラベリングされた血液が脳組織に到達してから画像収集までの時間をPLD(post label delay)といいます。臨床では血流速度に個人差や左右差があることから適切なタイミングでの撮影が難しいときがあります。その為、原則としてPLD=1525msec(1.5秒)とPLD=2525msec(2.5秒)の2つのタイミングで撮影をしています。血流速度の速いものを反映しているのがPLD1525msecの画像、遅い血流を反映しているのがPLD2525msecであると考えられます。(当院症例:Case5をご参照ください)

図2
各種脳還流画像検査法の特徴(表:八重洲クリニック様HPから引用改変)

当院での症例

50歳代女性 左方麻痺 救急車で当院に搬送された。
CTでは異常所見なく、MRIを施行された。
拡散強調画像で淡い高信号、MRAで右MCAに狭窄が疑われ、ASL画像にて右中大脳動脈支配領域に一致した血流低下が疑われた。DSA検査を施行後、血管内治療が行われた。

図4

図5

図8

 

 

 

肝MRエラストグラフィ


肝硬変を初期に発見することの重要性
日本では、肝炎ウィルスによる肝硬変の発症がおおいですが、アルコールやカロリーの撮り過ぎなどによる脂肪肝から重度の脂肪肝、そして肝硬変へと至るケースもあります。肝硬変は、肝がんを誘発させることから、早期の段階で肝硬変を把握し治療へつなげることは重要です。
肝臓MRエラストグラフィは、肝臓の硬さを定量化し、肝の線維化を把握することができる新しい画像診断法です。

図1