○○は脱がさないで!? 止まらない検査依頼!画像診断現場のリアル


【情報通信技術の進化とCT現場】
この25年の間、情報通信技術は飛躍的に進化しました。スマートフォンやイ
ンターネット、AIが普及し、その技術革新は医療現場にも大きな影響を与えま
した。レントゲンはフィルムからモニター診断へ、カルテは電子化され、紙を
探し回る手間もなくなりました。画像診断の分野で特に大きな変化をもたらし
たのが マルチスライスCT です。25年前、当院のCTは1回転で1枚の画像し
か撮れませんでしたが、今では256枚以上を同時に撮影可能です。検出器を小
型化して多数並べたことで、1回のスキャンで一気に画像が得られるように
なったのです。半導体技術の進歩も大きく貢献しました。その結果、かつて
30分かかっていた検査が、今では5~10分で完了します。

【急増する検査件数】
「こんなに早く検査できるなら、もっと多くの患者さんを診られるはず!」─
─ 当然、臨床サイドの要望は増えます。毎年件数は増えて気がつけば、1日
40件だったCT検査が70~80件、最近では120件を超える日もあります。
とはいえ、装置の進化だけではここまでの対応は不可能です。現場でもあれこれ工夫を凝らし、効率化を図ってきました。

【現場での工夫と効率化の取り組み】
患者さんの負担を減らす工夫(長谷川主任が導入!:2000年頃からスタート)
なるべく服や靴を脱がずに検査を受けられるようにしていま
す。服の脱ぎ着には1回あたり5分ほどかかり、1日に100件
の検査を考えると大きな時間短縮につながります。


3D画像処理のクラウド化(2010年頃からスタート)
これまでCT室で行っていた3D画像処理をクラウド化し、レントゲン室のスタッフ
も手伝える体制にしました。CTスタッフの負担を軽減し、全体の効率を向上させ
ています。
予約枠の調整(コロナ頃からスタート)
週明けの月曜日は、週末に入院した患者さんなど、病棟からの検査依頼が増える
ことが多いため、外来患者さんの予約枠を減らして、待ち時間が長くならないよ
うに調整をしています。
血管確保の時間を短縮(コロナ明けからスタート)
造影剤を使う検査では、検査室内ではなく、前室であらかじめ血管確保を行い、
検査時の時間を短縮しています。確保困難事例で検査室が長時間占拠されること
もなくなりました。

【待ち時間の現実と予約システムの課題】
それでも、同じ時間帯に患者さんが集中すると混雑は避けられません。「予約した
のに1時間も待たされた!」という声が聞こえることもありますし、タイミングに
よっては2時間待ちになることもあります。救急外来や病棟の急変、緊急手術の可
能性がある場合など、どうしても予約患者さんの対応が後回しになることがあり、
予約システムが形骸化しているのが現状です。
【現場スタッフの奮闘】
技師、看護師、事務が協力し、なんとか毎年増え続ける検査件数をこなしていま
す。正直、勤務時間をオーバーする日が多いですが、皆の努力と工夫で現場が回っ
ている状態です。今後もさらに効率化を図れるのか、試行錯誤を続けていくしかあ
りません。そういえば細川前院長が「変化を続けられるものが生き残る」みたいな
ことおっしゃっていました。技術の進歩がどんなに進んでも、最終的には「現場の
知恵と努力」が不可欠です。今日も待合室では、検査の順番を待つ患者さんが、ス
マートフォンを見つめながらそわそわしています。そんな視線を感じつつ、私たち
はまた次の検査へと足を運んでいます。

保田

線量管理による被曝低減の取り組み


診療放射線技師の仕事”というと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。おそらく真っ先に思いつくのはレントゲンやCT、MRIの撮影ではないでしょうか。しかし、それ以外にも診療放射線技師の大事な仕事があります。それは患者さんと医療スタッフの被ばくを管理することです。患者さんと医療スタッフの被ばくを最小限に留めることは診療放射線技師の責務です。今回は患者さんの被ばくを最小限にして検査をするために行っている当院の取り組みを紹介します。

被ばく低減の考え方

被ばくを少なくするためには、ただ“放射線の量を少なくすればいい”ということではありません。今回は教育を目的として、低線量から高線量でスイカをCT撮影してみました。スイカのタネを病変と仮定します。線量不足では画質が悪くタネはほとんど識別できません。これでは病変を見落としてしまいます。低被ばくで検査を行っていても病変を見つけられなければ意味がありません。次に線量適正の画像は線量過剰と比べると画質は劣りますが、タネ5つが明確に識別可能です(黄色矢印)。最高の画質ではありませんが、診断には十分な画質と言えます。そして線量過剰の画像はタネがとても明瞭に見えますが、これは線量適正でも得られる情報ですので、それ以上の画質を求めるのは余計な被ばくということになります。我々は全ての患者さんに対して“適正線量”で検査するために線量管理を行っています。

線量管理の取り組み

当院では半年に1度、それまでの検査を見返して線量の見直しを行っております。日本では診断参考レベルと呼ばれる線量の基準値が定められておりますが、当院のCT装置ではその基準値より大幅に低い線量で検査を行っています(下表)。

これほど低線量で検査できる理由の一つは装置の性能が良いためと言うのもありますが、定期的な線量の見直しをしていることで、さらなる装置の性能を活かすことができるのです。また、装置に表示される線量と実際に出力されている線量がズレていないかの確認もおこなっています。当院では今後も適正な線量での検査を行ってまいります。  五十嵐

新しい画像補正技術による冠動脈CT撮影の 進化


冠動脈CT撮影(Coronary CT Angiography)は、心疾患の診断において重要な検査方法です。当院では現在、3台のCT装置を運用しており、そのうち2台はGE社製の心臓CT撮影が可能な装置です。これらの装置には、GE社の画像補正技術(Snap Shot Freeze:以下SSF)が適用可能であり、心臓の動きによる画像のブレを抑え、診断の精度と効率を大幅に向上させます。今回は、この技術の仕組みとその多くの利点について詳しく紹介します。

■ 従来の冠動脈CT撮影の課題

冠動脈CT撮影は、心電図波形を監視しながら、心拍に合わせて冠動脈の状態を撮影します。高心拍や不整脈、呼吸による動きは画像のブレを引き起こしますが、心臓の動きが少ないタイミングを自動的に探し出し、冠動脈が最も安定している瞬間を利用することでブレのない画像を作成しています。しかし、最も安定しているタイミングでも画像のブレが残ることがありました。

■ 画像補正技術の紹介

GE社の画像補正技術(SSF)は、前述の動きが少ないと判断されたタイミングのデータだけでなく、その前後約60ミリ秒のデータを使用します。これにより、合計3タイミングのデータを基に、冠動脈の速度や移動方向といった動きを解析し、動きによるブレ(モーションアーチファクト)の原因を特定、補正します。この技術により、高心拍(HR80程度)の方にも鮮明な画像を提供することができるようになりました。
下図は、この技術の動作原理を視覚的に示しています。心臓の動きが最も少ない瞬間(ターゲット心位相)を選び出し、その前後のデータ(左位相と右位相)も使用して動きの解析を行います。ベクトル動態解析によって各瞬間のデータを基に、心臓の動きを解析し、動きによるブレを補正します。最終的にブレのない鮮明な画像が生成されます。そして現在、SSFがver2(SSF2)となり、さらなる技術革新が進みました。従来は主に冠動脈の動き補正のみであったのに対し、SSF2ではそれに加えて弁、心腔、心筋の動きも補正できるようになりました。

■ 症例提示

GE社の画像補正技術により高心拍や不整脈の患者でも鮮明な画像を提供することが可能となり、さらにSSF2では弁、心腔、心筋の動きも補正できるため、心臓全体の詳細な画像を取得することができるようになりました。今後もこのような技術の進歩に注目し、最新のアプリケーションを積極的に取り入れることで、より高品質な医療サービスを提供していけるよう日々研鑽を積んでいきたいと思います。

CT担当 江上

頭部血管CT撮影の実際


CT検査は短時間に素早く検査できることからあらゆる部位について撮影が行われています。今回はたくさんある撮影部位の中でも、撮影が難しい頭部血管造影CT検査の実際についてご紹介します。

スピード注入が重要!

頭部血管造影CT検査の対象で、代表的なのは脳動脈瘤になります。頭部の血管は脳動脈瘤の好発部位である脳動脈輪でも数ミリと細いです。また、脳血管の周りは脳組織が近接しています。脳組織もCT画像上白っぽく写るので、造影剤を入れた脳血管をさらに白く写さないと視認性が悪くなります。そのため濃い造影剤を速いスピードで注入しています。
早く注入するためには工夫が必要です。右腕の血管に太めの留置針を指します。ここがこの検査の重要なポイントのひとつです。左腕だと左の静脈から心臓に至るまで距離がありますが、右だと距離が短くなることなどから造影剤の高速注入に有効であるとされています。実際に左腕からで失敗したことも経験しています。針に関しては、造影剤はネバネバしていますので、太い針を用いないと勢いよく注入することができない為20Gの留置針を用いています。

タイミングを逃すな!

撮影のタイミングも重要です。脳は造影剤が動脈からすぐに静脈へと流れていきます。動脈も静脈も両方が写ってしまうと観察しにくい画像となってしまいます。その為、造影剤が脳の動脈に到達したら速やかに撮影開始する必要があります。
くも膜下出血症例の場合はさらに難しくなります。出血によって脳が腫れ、造影剤が頭の血管に入りにくい状態となるからです。これにより撮影タイミングの判断が難しくなります。さらに、くも膜下出血自体が淡く白く写るので、その淡い白色の中に存在する造影剤の白色を観察する必要があり、いつも以上に造影剤の高速注入と撮影タイミングの決定がシビアになります。また、患者さんの状態も悪いことが多く、動きにも注意して撮影する必要があります。
以上、頭部血管造影CT検査の実際についてご紹介しました。

CT担当 保田福技師長

最新CT“Revolution”で頭部撮影!


今回は2021年3月に更新となった新しいCT装置Revolutionでの頭部単純撮影についてご紹介します。

わずか1秒

“Revolution”はGE社製256列マルチスライスCT装置で、最高位モデルとなります。従来より短時間、高精細、低被ばく撮影が可能になりました。
最大50cm径で16cmの範囲をわずか1秒で撮影できます。頭部撮影では以前はヘリカル(らせん状)スキャンで寝台を動かしながら10秒程かける方法だけでしたが、それに比べてはるかに撮影時間が短くなりました。当直業務に入っておりますと、頭部のCT撮影を頻繁に行います。夜間救急で運ばれてくる小児や認知症、泥酔した患者さんなどの場合は撮影中静止していることが難しいため非常に役に立っています。

脳実質が鮮明に

画質に関しましてもAIによるディープラーニングを用いた新しい画像再構成により脳実質のわずかな濃度差をより鮮明に写すことが可能になりました。以前からある装置に比べ新しい装置の画像の方が灰白質と白質の境界が明瞭に見えます。

もちろん低被ばく

被ばく線量は、“診断参考レベル”という撮影時の放射線量が他の医療機関と比較して高すぎていないかを判断する目安となる線量指標が公表されており、成人の頭部CTの診断参考レベルは77mGyと言われています。当院では従来装置での撮影が約76mGy、新しい装置では約66mGyと13%もの被ばく量が低減された事例もあります。
他の部位に関しましても、適切な線量で診断に適した画像を提供して行きたいと思いますので今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

大腸CT検診スタートから4年で見えてきたもの


大腸CT検診について

大腸CT検査は適切な前処置を行った上で肛門部にカニューレを挿入、炭酸ガスを逆行的に大腸内に注入し続けた状態で腹臥位、背臥位の2体位(必要であれば側臥位も追加して)撮影を行います。さらに撮影データは画像ワークステーション(当院ではziosoft社のziostation2を使用)にて解析・観察します。
全大腸検査のGolden Standardといわれる大腸内視鏡検査と比べて、被検者の苦痛が少なく、多種に渡る画像解析(仮想大腸展開画像①や仮想内視鏡画像②、仮想注腸画像③など)を駆使して、多角的な読影が可能です。
大腸がんは我が国で増大傾向にあり、検診分野のさらなる普及が予想されます。当院では2018年11月より大腸CT検診を開始いたしました。院内掲示や当院ウェブサイト等で募集を行ってまいりましたところ、栄区や近隣の市区以外の地域からもお申し込みをいただいております。

大腸CT検診の前処置について

当院大腸CT検診の前処置法④は、検査前日の大腸CT検査食3食に加えて、毎食後、大腸CT用バリウム(商品名;コロンフォート)を服用し、検査前夜にマグコロール散50gを400mlの水にて溶かし服用するという方法をとっています。
全大腸内視鏡検査に行うゴライテリー法(検査当日にニフレックを約2,000ml服用)に比べて受容性が高く、自宅にて安全に行うことができる前処置法であります。食後に服用する大腸CT用バリウムは解析時に、病変と残渣を区別するために、残渣に標識する目的(fecal tagging)で服用しております。多少残液が残っていても、均一に標識されていれば病変との鑑別は容易になり、読影時間が短縮できるというメリットがあります。

検査精度について

検査精度についてお示しいたします⑤。大腸CT検診は4年間で75名(ボランティア含む)の方が受検されました。受検者の内訳は、男性46名、女性29名で年齢は29才~80才(中央値60才)でした。受検者75名中、異常なしは37名(49.3%)、経過観察(1年後に大腸CTもしくは大腸内視鏡を受検推奨)が、21名(28.0%)、要精密検査対象の方が11名(要精検率9.1%)いらっしゃいました。そのうち8名の方が精密検査(大腸内視鏡検査)を当院消化器内科で施行した結果、早期大腸がんの方が1名(1.3%)いらっしゃいました。また、大腸CT検査の所見と大腸内視鏡検査の所見が一致した方が8人中6人で陽性反応的中率は75.0%でした。その一方で腸管拡張不良や前処置不良等の理由により、大腸の一部が判定不能となってしまった方も6名(8.0%)いらっしゃいしました。

今後の課題

判定不能例をさらに少なくすることが望まれます。前処置の方法を今後改善していくことになると思うのですが、受検者によって状態もまちまちであることや、受容性と腸管洗浄効果はトレードオフの関係ですので、今後慎重に検討、対応することが必要と考えます。今後も地域の皆様に良質な検診をご提供できるように研鑽してまいります。

横山

腎機能が低下した患者さんの造影検査


“ぞうえいざい”ってすごいんです!

造影CTは非造影CTに比べて多くの情報が得られる有用な検査です。しかし、腎機能が低下した患者さんに対しては造影剤の使用を慎重に考える必要があります。当院では腎機能が低下した患者さんには使用する造影剤の量を減らして検査を行っていますが、その際、“dual energy CT”という特別な検査方法を行うことで造影効果を高めています。今回はそんな当院における造影剤減量の検査を紹介します。

そもそも、造影剤と腎機能って??

CTで用いる造影剤は体内に残ることなく、腎臓を通って体外へ尿として排泄されます。このとき腎臓に負担をかけるため、腎機能が低下した患者さんに造影剤を使用すると造影剤腎症になるリスクが高いことが知られています。造影剤腎症とは造影剤による腎障害のことで、造影投与と関連する腎機能低下です。一般的に腎機能は7~14日で元に戻りますが、場合によっては稀ではありますが腎機能低下が進行して人工透析が必要となる場合もあります。
腎機能はeGFR(estimated Glomerular Filtration Rate:推算糸球体濾過値)で判断します。
eGFRが低いほど腎機能が低下していることを示しており、当院ではeGFR 45以下の患者さんには使用する造影剤の量を減らして検査を行っています。また、eGFR 30以下の患者さんには原則として造影剤を使用しないことになっています。

造影剤を減らしたCT検査

基本的にCTは管電圧(X線のエネルギー)を下げるほど造影効果を高めることができます。一方で管電圧を下げるとX線の量が足りずに画質低下を引き起こします。
“dual energy CT”は2種類のエネルギーのX線(80kv,140kv)を利用して撮像することで通常のCTに加えいろいろな種類の画像を得ることができます。その1つに「仮想単色X線画像」というものがあります。これは2種類のエネルギーで得られた情報から計算を行い仮想的に低電圧で撮像したような画像のことです。

見劣りしない!低電圧のCT画像

通常の造影CT画像と造影剤を減量した仮想単色X線画像を比較すると全く同様の画質とはならないものの、通常の造影検査と遜色ない造影効果が得られています。“dual energy CT”はその機能が搭載されている装置でしか行うことができません。
当院では“dual energy CT”が使える装置を導入しており、腎機能が低下した患者さんに対しても造影剤減量による画像コントラストを低下させずに造影検査が可能となっています。

五十嵐

 

マットにコロン 大腸ふんわり


大腸CT検査(以下CTC検査)において、腸管の拡張は検査精度に影響を及ぼす最も重要な要因の1つです。
CTC検査では、肛門から炭酸ガスを注入することで大腸を拡張し、背臥位(あおむけ)と腹臥位(うつぶせ)でCT撮影をします。大腸がしっかり拡張されると腸管壁がよく観察でき所見も見つけやすくなります。しかし、腹臥位(うつぶせ)の撮影では腹部の圧迫により横行結腸やS状結腸が圧排されて十分な拡張が得られないことがあり、読影に影響がでます。

とくに腹部の膨らみのある方(BMI25以の方)は腹臥位(うつぶせ)撮影での拡張不良が顕著となります。そのため当院では、腸管の拡張を良好にするため大腸CTマット(以下コロンマット)を用いて撮影しています。

大腸ふんわり 魔法のマット!

コロンマットはCT検査台の上に置いて使用します(貼付け等の作業は不要です)。マットの空洞部に腹部を入れるようにして腹臥位(うつぶせ)になることで腹部とCT検査台の間に空間ができ腹部の圧迫が軽減、腸管拡張も良好になります!

CTC検査は側臥位→腹臥位→背臥位と体位変更が多い検査のため、コロンマットがあると“体位変換が行いやすい”“安定した体位維持が可能となる”など“腹部とCT検査台の間に空間をつくる”だけでないとても役に立つマットです。
診療放射線技師として良好な画像を提供できるように日々研鑽していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
胃がん検診技術部門 B資格 小曽根

256列のパワー!新入りCTが凄い!


2021年3月から、GEヘルスケア社のRevolution CTが当院に新しく設置されました。2021年9月号のニュースレターで少しだけ登場しましたが、今回は大きく4つに分けて詳しくご紹介させていただきます。この装置を簡潔に表すなら“速く綺麗に撮れる”。その高性能っぷりに私たちも日々驚かされています。そんなRevolution CTの魅力を少しでもお伝えできればと思います。

一目瞭然!4倍撮影が可能に

このCT最大の特徴は、256列マルチスライスCTであるというところです。0.625mmの検出器が管球に対し256列並んでいるので、1回転で0.625mm×256つまり16cm分撮影できます(身の回りのものでわかりやすく例えると1万円札の長尺側と同じ長さです)。すでに当院にある従来CT(64列)では1回転4cm分撮影が可能ということなので、4倍撮影できる範囲が広がったということになります。では、この256列の力が生かされるときとはいったいどんな時でしょうか?

1回転スキャンで頭部もバッチリ

1回転スキャンの素晴らしさを最も実感するのが頭部CT撮影です。頭部撮影中は動かないでいることが重要であるため、患者さんには10数秒間ほど動かずじっとしてもらう必要がありました。しかし、中にはどうしても動いてしまう患者さんもいらっしゃいます。そこで登場するのがこの1回転スキャンです。16cm以内であればなんと1秒で撮影することができます。これによって、長時間じっとしていることが困難な患者さんの検査もスムーズに行うことができます。

幅広な検出器を生かした高速撮影

先述の頭部撮影だけでなく、他部位の撮影も速いのがこのRevolution CTの素晴らしい点になります。従来CT(64列)と比較すると、体幹部の撮影時間が1/2~1/3程度になりました。呼吸苦などで息を止めていられない患者さんや小児の撮影で力を発揮してくれています。

高心拍・不整脈どんとこいの心臓撮影

造影検査といえば様々ありますが、なかなか一筋縄ではいかないのが心臓CT検査です。特に高心拍や不整脈がある心臓だとブレが大きく、思うような画像が得られない場合も多々ありましたが、このCTを導入してからは格段に減少しました。
ここでも大活躍するのが1回転スキャンです。従来CT装置は約4回転のスキャンと長い息止めを必要としていましたが、16cm以内の心臓であれば、1回転分つまり1秒以下で撮影可能になりました。具体例として、従来CTとRevolution CTとで比較した資料を掲載いたします。どちらも同じ患者さんを撮影しています。Revolution CTでの撮影の方が高心拍ですが、LAD分枝がはっきりと映し出されています。従来CTも管球回転速度が速く心臓CTに強い装置でしたが、Revolution CTはそれを遥かに上回る性能になっています。何回転もスキャンがいらないので画像のブレを抑制できることに加え、10秒以上の息止めをしていただくことも無くなりました 。

Revolution CTを迎え入れてから、提供できる画像の質が大幅にアップし、短時間撮影の実現により患者さんの負担を軽減することができるようになりました。私たちも装置の進歩に負けず、より一層精進して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。
清水

YSK MultisliceCT Collection 2023


新型コロナウィルス感染予防対策によりCT検査が非常に多くなり、検査予約枠の減少や検査待ち時間が長くなっていることから、2021年4月にCT装置が1台増設されました。同時に128列CT装置が最新型の256列CT装置に更新され、当院には治療計画用装置を含め計4台のマルチスライスCT装置が整備されました。今回は新しくなった2台の装置を含めた当院のマルチスライスCTをご紹介します。

Revolution CT エリアディテクター型デュアルエナジーCT 2021年設置

昨年4月より新設された256列マルチスライスCT装置で同時にデュアルエナジー撮影も可能なGE社最高位機種になります。エリアディテクター(面検出器)型*なので心臓をたった0.28秒で撮影することも可能な装置です。これにより冠動脈撮影はほとんどブレることなく撮影できるようになりました。ソフトウェア技術も一新され、画像再構成にはAIが用いられ画質が向上しました。また画像作成に時間がかかっていたデュアルエナジー撮影についても高速化され、臨床で無理なく使用できるレベルへと進化、同時に画質の向上も実現され、造影剤半減した画像であっても、自然なコントラストで表現された画像を仕上げてくれるようになりました。

Aquilion Helios 80列マルチスライスCT 2021年設置

4月に新設されたキャノンメディカルシステム(旧東芝メディカル)の装置です。80列の装置ですので冠動脈撮影はできない装置ではありますが、当院で検査している検査種の90%をカバーできる万能な装置です。国産メーカーということもあり、使いやすいインターフェイスが特徴です。工事期間中はCT装置の稼働台数が少ない状態で大量の検査をこなす必要がありました。しかしながらAIを用いた画像作成により少ないエックス線量でもきれいな画像を取得できるため省力化が可能で、かなりの検査数をこなしてもオーバーヒートしませんでした。検査説明に来たメーカーの方も驚いていたそうです。

Revolution HD CT デュアルエナジーCT 2018年設置

5年前に設置されたデュアルエナジー装置です。当時最先端で大学病院などをメインに販売されていた装置です。現在も販売されており、最近では中規模の病院にも設置されるようになってきました。最新型装置(RevolutionCT)と比較すると、ソフトウェアの面では劣りますが、当時最新型機種であったこともあり、ハード面は非常に強力で最新型の装置よりもエックス線出力についてはこちらの装置の方が優秀で、骨領域の画像は最新機種よりもきれいな印象です。また1日80件撮影してもオーバーヒートすることなく稼働してくれています。

Toshiba Aquilion LB 放射線治療計画用16列CT 2016年設置

放射線治療室が整備された際に設置されたCT装置で、治療計画用途のためワードボアと言って患者さんが入るところ(丸の部分)が大きく設計された装置です。治療計画用となってはいますが16列マルチスライスCT装置ですので、全身撮影も可能です。メイン装置の点検時などには診断領域の撮影も行えるコスパ優秀な装置です。