腎機能が低下した患者さんの造影検査


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造影CTは非造影CTに比べて多くの情報が得られる有用な検査です。しかし、腎機能が低下した患者さんに対しては造影剤の使用を慎重に考える必要があります。当院では腎機能が低下した患者さんには使用する造影剤の量を減らして検査を行っていますが、その際、“dual energy CT”という特別な検査方法を行うことで造影効果を高めています。今回はそんな当院における造影剤減量の検査を紹介します。

そもそも、造影剤と腎機能って??

CTで用いる造影剤は体内に残ることなく、腎臓を通って体外へ尿として排泄されます。このとき腎臓に負担をかけるため、腎機能が低下した患者さんに造影剤を使用すると造影剤腎症になるリスクが高いことが知られています。造影剤腎症とは造影剤による腎障害のことで、造影投与と関連する腎機能低下です。一般的に腎機能は7~14日で元に戻りますが、場合によっては稀ではありますが腎機能低下が進行して人工透析が必要となる場合もあります。
腎機能はeGFR(estimated Glomerular Filtration Rate:推算糸球体濾過値)で判断します。
eGFRが低いほど腎機能が低下していることを示しており、当院ではeGFR 45以下の患者さんには使用する造影剤の量を減らして検査を行っています。また、eGFR 30以下の患者さんには原則として造影剤を使用しないことになっています。

造影剤を減らしたCT検査

基本的にCTは管電圧(X線のエネルギー)を下げるほど造影効果を高めることができます。一方で管電圧を下げるとX線の量が足りずに画質低下を引き起こします。
“dual energy CT”は2種類のエネルギーのX線(80kv,140kv)を利用して撮像することで通常のCTに加えいろいろな種類の画像を得ることができます。その1つに「仮想単色X線画像」というものがあります。これは2種類のエネルギーで得られた情報から計算を行い仮想的に低電圧で撮像したような画像のことです。

見劣りしない!低電圧のCT画像

通常の造影CT画像と造影剤を減量した仮想単色X線画像を比較すると全く同様の画質とはならないものの、通常の造影検査と遜色ない造影効果が得られています。“dual energy CT”はその機能が搭載されている装置でしか行うことができません。
当院では“dual energy CT”が使える装置を導入しており、腎機能が低下した患者さんに対しても造影剤減量による画像コントラストを低下させずに造影検査が可能となっています。

五十嵐