今月の症例 2023.9月号掲載


問:10代 女性
発熱、咳嗽あり肺炎の診断で抗生剤加療されていたが解熱せず。
既往:特記事項なし
下記の画像から想定される疾患はなんでしょうか?

 


解答・解説

解説
10代女性の肺結核の症例です。発熱が続き、抗生剤投与でも改善せず当院に紹介受診となりました。周囲に明らかな結核感染者はおらず、感染経路は不明です。胸部単純写真で右上肺野に浸潤影がみられ、両側肺に結節影もあり初診時は肺炎が疑われました(図1)。
1ヶ月後、浸潤影は淡くなっているものの症状改善しないためCT検査が施行されています(図2,3)。CT検査では右上葉肺尖部付近に不整な空洞状構造(図4a 橙色矢印)が認められ、周囲や中葉、舌区、両側下葉にコンパクトな粒状構造が散見されます(図4a 黄枠)。分布や所見から典型的な二次結核と考えます。
CT検査所見と合わせて単純写真の所見を解説します。右上肺野の浸潤影に囲まれた部分が空洞を示唆する所見です(図5a,b 黄枠、黄矢印)。さらに、微小な結節影が散見されます(図5a,c 橙色矢印)。単純写真で右肺尖部の空洞構造や結節影を指摘出来るかが今回症例での重要なポイントとなります。空洞性病変は気道末梢の結核病変の乾酪壊死により液状化が起こり、癒合することで形成されます1)。その過程で乾酪壊死した成分が気管支を充填し樹枝状構造と周囲のつぼみ状の構造が形成されます。CT検査では末梢肺の細やかな分枝状構造として見られ、tree-in-bud appearanceと表現されます1)(図6)。治療後では空洞構造は残存しているものの周囲の浸潤影や粒状構造は改善が見られました(図7)。

症例のポイント

①両側上肺野主体の空洞構造や粒状影 (胸部単純写真)
②持続する咳嗽、発熱
③周囲の結核感染者の存在
④CT検査での空洞構造の確認、コンパクトな粒状構造、tree-in-bud appearance

結核は一般的な病気ですが想定されていない場合は診断に苦慮することもあります。胸部単純写真の所見が重要となる症例でした。

【参考文献】
1)高橋雅士, 新 胸部画像診断の勘ドコロ, 第3版, メディカルビュー社, 2014年, 結核と非結核性抗酸菌症における画像診断のABC: 160-166.