軟部腫瘍のMRI検査


軟部腫瘍の画像診断では、腫瘍の存在診断に始まり、良悪性の鑑別や組織の推定、腫瘍の進展範囲の把握などが行われています。
現在、多くの画像モダリティ(超音波、単純X線撮影、CT、MRIなど)がある中で、組織コントラストに優れ、任意の断面を撮像可能であり、軟部腫瘍に対しての質的診断、広がり診断に優れているMRI検査は極めて重要であり、当院でも月に数例は必ずオーダーされています。
病変部位や腫瘍形態が様々であるため、軟部腫瘍は撮像する技師の腕の見せ所でもあります。

勝負は検査の前から!!

検査前に病変部位を確認し撮像範囲を決めます。
MRI検査の撮像時間は他のモダリティと比べて長く、どの撮像部位でも20~30分はかかる検査であり、患者さんは撮影中、可能な限り動いてはいけません。なかなか大変な検査ですが、われわれ技師はなるべく早く検査を終えてあげたいと考えています。
そこで事前に依頼医からの情報やカルテを確認し、さらに検査前に患者さんと部位の確認をしています。より多くの情報を得ることで、患者さんの撮影体位、撮像コイルの選択がスムーズに決まり、円滑に検査を進めることができます。

病変部位にマーカーと言う、いわゆる目印となるものを貼り付けるのも必須です。これは、MRI画像で基本となる、T1強調画像とT2強調画像で共に高信号を示すもので、撮影時・読影時の目印になるものです。

手指、手関節、肘関節にある軟部腫瘍に対しては、基本的にうつぶせで寝てもらいます。病変部にマーカーを貼り付け、撮影したい範囲がしっかり入るようコイルを選択しています。
動かないように固定することが大事です。病変部を圧迫し過ぎないように注意します。

コントラストを制する!!撮像シーケンス

T1強調画像とT2強調画像、T2脂肪抑制画像を基本とし、より脂肪を疑う場合はT1脂肪抑制画像、出血病変やヘモジデリン沈着の検出にはT2スター強調画像、また腫瘍の良悪性の鑑別の助けとなる拡散強調画像も撮像しています。

脂肪腫疑いの1例
T1強調画像、T2強調画像ともに高信号で、境界明瞭、辺縁平滑な腫瘤を認めます。
T1脂肪抑制画像にて内部の信号低下あり、一部隔壁構造も伴っているのが分かります。
明らかな充実成分や、拡散強調画像で高信号となるような、拡散制限を伴う部位は無いということで、今回の検査では脂肪腫が疑われました。

 

-頸動脈プラークイメージ-


MRIに携わっていると、めまいやしびれといった症状の患者さんを撮影した際に頸動脈狭窄を発見することがあります。頸動脈が狭窄するとTIA(一過性脳虚血発作)を引き起こすだけでなく、形成されたプラーク(変性、肥厚した血管の膜)が剥がれることで脳梗塞を発症すると知られています。
その為、プラークがどのような性状であるか評価することがその後の治療に重要となってきます。そこで今回は当院で行われているMRIの頸動脈プラークイメージについてご紹介します。

プラークの種類と見え方

頸動脈プラークには以下に示すように2つタイプがあります。
プラークイメージは保存的に狭窄部を観察する場合はもちろん、CEA(頸動脈内膜剥離術)やCAS(頸動脈ステント留置術)といった血行再建術による治療を考えた場合に必要となる狭窄の位置やプラークの性状を評価する際にも有効です。

プラークの種類による見え方の違い

当院のプラークイメージの特徴

当院で撮像しているプラークイメージは3つあります。

① 3D TOF MRA (3D TOF法による非造影血流画像)

血液を高信号で描出。狭窄部位を探すために用いられます。また、プラークの被膜の厚みも観察できます。画像処理でMIP画像も作成可能です。

② 3D Cube T1WI FS (3D CHESS法による脂肪抑制T1強調画像)

血管は黒、不安定なプラークは白で描出し、安定したプラークは灰~黒で描出します。
3Dで細かく撮影しているため画像処理によって様々な断面が作成可能です。

③ LAVA FLEX (3D Dixon法による脂肪抑制T1強調画像)

②とコントラストはほぼ同じですが、Dixon法と呼ばれる局所磁場不均一に強い方法を用いるため肺野が近接している腕頭動脈、鎖骨下動脈のプラークを評価するのに有効です。

以上のように、MRIでは病態に合わせて撮影方法を選択する事によって、よりわかりやすい画像を得る事ができます。その為、検査中は得られた画像を注意深く観察し、より良い画像が取得できるように努力しています。

水を味方に!? MR ハイドログラフィ


MRIは撮影パラメータを操作する事でT1強調画像、T2強調画像といったさまざまなコントラストの画像を得ることが可能です。さらに撮影法を工夫する事で造影剤を使わず血管を描出するMRAなどのような特殊な画像も得ることができます。
今回ご紹介するのはその中の一つ MR ハイドログラフィ という方法です。

MR ハイドログラフィとは?

T2強調画像は水を高信号で描出しますが、撮影時に水をより強く高信号にすることで周囲の組織を抑制しつつ水のみが画像化されます。これがMR ハイドログラフィです。
当院でも様々な部位でこの撮影を行っています。いくつかご紹介していきます。

MRCP(MR cholangiopancreatography:MR胆道膵管撮像法)

胆汁、膵液を対象とした手法です。胆嚢、胆管、膵管を描出します。
当院では細かいスライスと厚いスライスの2種類を撮影することで局所の観察と全体像の把握を行なっています。
腹部の撮影のため息止めが必要となりますが、上手く息が止まらない場合は自由呼吸下でも撮影可能です。
胆石や胆嚢炎、総胆管結石膵がん、胆道がん、胆のうがんなどの疾患で活躍する撮影です。結石の部分は通常類円形の欠損像として描出されます。手術前に胆管膵管の走行を把握するのに役立ちます。

MRU(MR urography:MR尿路撮像法)

尿路の全体を描出する手法です。
経静脈性腎盂造影(DIP)でも尿路を撮影できますが、MRUでは造影剤を使わず検査可能です。尿管結石や尿路腫瘍などで拡張された尿管の描出と閉塞部の同定に役立ちます。
また、連続的に撮影をすることで尿の流れを観察することもできます。

MR ミエログラフィ(MR脊髄撮像法)

脳脊髄液を対象とした手法です。脊柱管内の脊髄を描出します。
X線でもミエログラフィがありますが、MRIでは造影剤を使用せず侵襲性なく検査可能です。
椎間板突出などで脊髄が圧排されているところが欠損像として観察できます。
息止め不要で10秒程度で撮影が可能です。

MRC(MR cisternography:MR脳層撮像法)

こちらも脳脊髄液を利用した手法です。微細な脳血管や脳神経を脊髄液の中に陰影像として描出します。
スライス厚をとても薄く(0.8mm)撮影するため脳神経由来の腫瘍を見つける場合や、血管が神経を圧迫していないかを観察する際に有用です。撮影後に白黒反転する事で血管と神経を白く描出することも可能です。

MRIの少し特殊な画像についてご紹介させていただきました。
この様にMRIは工夫によって様々な撮影が可能となります。より良い画像を提供するためにこれからも励みたいと思います。

フェイクイメージ を撃退せよ!


アーチファクトとは…

虚像、障害陰影とも言われ、画像に映り込んでしまうにせ偽の信号を指します。特にMRIのアーチファクトは多くの種類があり異常所見ではない部位でも異常のように見えてしまう場合があるため、よく理解し適切に抑制することが必須です。
今回のニュースレターではMRIで見られる代表的なアーチファクトを紹介します。

折り返しアーチファクト

撮影する範囲の外側にある対象物が撮影範囲内に映り込む現象で、位相エンコード方向※に現れます(図1)。本来画像の外にある対象物が映り込むことは診断にも影響することがあるため、抑制する必要があります。抑制方法はいくつかありますが、それぞれの方法にメリット・デメリットがあるので検査や患者さんの状況ごとに適切な方法を選択しています。

モーションアーチファクト

様々な動きによるアーチファクトです。動脈、静脈の拍動や呼吸の動きによるものや、患者さんの体動によって生じるものがあります。腹部検査では呼吸によるアーチファクトがしばしばみられます(図2)。検査中の不意の動きなども考慮し、私たち技師は目的部位をしっかり固定し、患者さんに動かないでいただくことの重要性を説明してから検査をしています。

磁化率アーチファクト

磁化率アーチファクトとは、組織と空気、組織と金属といったように磁化率の異なる境界に生じるアーチファクトです。(磁化率とは物質の磁化の難度を表すもので、磁石にくっつきやすいものほど強い。)磁化率の違いがMRI装置内で磁場の歪みを生み、画像の歪みの原因になります。その例で多いのが、義歯(図3)、入れ歯やアイシャドー、金属クリップなどです。 検査の前に取り外すことの出来るものはすべて外していただいていますが、取り外せない物については同部の周囲が広範囲に歪みを生じ評価が難しくなります。

厄介なアーチファクトも上手く利用すると、とても力強い味方になってくれます。そんな症例を紹介します。

微小出血検出(磁化率アーチファクトを利用)

T2*強調画像は磁場の不均一性に敏感であるグラジエントエコー法で撮像したMRI画像の一種です。頭蓋内の微小出血はCT画像には映りませんが、T2*強調画像で磁化率アーチファクトにより画像に現れます。

その他にも、ケミカルシフトアーチファクト、N/2アーチファクト、打ち切りアーチファクト、ジッパーアーチファクト、マジックアングルアーチファクト、クロストークアーチファクトなどなど、たくさんのアーチファクトがあります。MRI担当技師は、ドクターが求めている画像を出来るだけキレイに撮像すべく、日々これら厄介なアーチファクトと戦って仕事をしています。

MR Elastography(エラストグラフィ)とは


本邦では近年、生活習慣病が急速に増加しています。それに伴い、NAFLD(non-alcoholic fatty liver disease,非アルコール性脂肪肝)が注目されています。本邦におけるNAFLD患者は1000万人にのぼると推定されています。NAFLD患者のうち、20%(200万人)はNASH(non-alcoholic steatohepatitis,非アルコール性脂肪肝炎)であるといわれています。NASHは一見単なる脂肪肝と鑑別できませんが、ウイルス性肝炎と同様に慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌と進行する予後不良の疾患です。

従って、NAFLDからNASHを抽出することが臨床上極めて重要な問題となります。様々な臨床指標からの抽出が試みられていますが、最終的には肝組織における炎症とその結果としての線維化の有無を評価することになります。従来その評価には生検が施行されていましたが、NASHの患者200万人を抽出するために潜在患者であるNAFLD患者全員に侵襲的な生検を施行するのは非現実的です。そこでNASH患者を拾い上げるための非侵襲的な検査として

MR Elastography(エラストグラフィ)

が近年注目されています。今回そのMR Elastography (以下MRE)について解説させていただきます。

肝臓をゆらす!?

MRE とは肝の線維化を非侵襲的、簡易的に診断するためのMRIの撮影方法の1つです。
通常の肝臓の撮影と異なるの点は、パッシブドライバー(下図)という装置を使用し、外部から肝臓に振動を与え、波を発生させる点です。その波が返ってくるスピードから肝臓の固さを知ることができます

どうやってゆらすの?

撮影のポジショニングを簡単に説明します。
剣状突起からやや右側(肝臓の位置)にパッシブドライバーを配置し上からバンドで固定します。その上にボディコイルを置き、コイルがずれないようにさらに上から固定します。
撮影時間は他のルーチン撮像を含めて約30分程度です。
撮影の後半でパッシブドライバーが振動して、発生した波を解析します。振動は強いですが、痛みはありません。

具体的にMRE撮像から得られる画像は
・ Wave image
・ Elastography
の2つです。実際の画像と読み方を次に示します。

MR Elastography(エラストグラフィ)画像の見方

Wave image 波の伝わり方
Elastography 物質の硬さ(相対値)
MRElastgraphyでは、Wave imageが波の伝わり方を、Elastographyが物質の硬さ(相対値)を示します。さらにElastographyはcolor map、Glay scaleの二種類で表示しています。

MREの撮像ルーチンでは肝線維化の評価のみならず以下のような評価も含まれています。撮像時間は30分程度で終了します。MREルーチンでは造影は行っていません。

・肝繊維化診断:病理の線維化指標に対応したF0-F4で表現
・肝の脂肪沈着の量:%表示されます。
・肝の鉄沈着の量:NAFLDからNASH移行の原因の一つ
・非造影のMRIによる肝SOLの評価
など

この技術は肝線維化を侵襲性なく行えることが最大のメリットです。もちろん通常の肝臓の撮影も同時に行えるので、様々な肝疾患の診断に役立ちます。肝生検の結果とも高い割合で一致しているという報告※もあり、期待が高まっていくと思われます。

※参考文献:肝臓MR Elastographyについて―MRIで硬さを測る― 池波 聰 アールティ No.56 January 2013

 

これぞ!高級マットレス!?


最近はご高齢の方が検査する機会が増え、円背の患者さんも1日に何人もMRI撮影にいらっしゃいます。
当然、円背しているとまっすぐ寝ることは出来ず、なおかつ頭部は顎が上がった状態になります。(このポジショニングだと頭部MRIや頭部血管の撮影に悪い影響を及ぼしてしまうことがあります。)

さらに、曲がった背中が常に寝台にあたるため検査中は痛みが続き、動いてしまうことで検査が上手くいかないこともあります。そこで、当院では 円背姿勢の患者さんに対してMRI用スパインマットレスというのを使用しておりますので、ご紹介したいと思います。

MRI用スパインマットレス
円背姿勢の方が平らな寝台に横たわる際には、頭頂が下がり顎が上がった状態になります。
そこでスパインマットレスを用いると、患者さんの足が自然に上がり、頭部位置が下がり顎を引いた状態に近づけることが出来ます。長時間の検査でも、円背患者さんにとって無理のない体勢を維持し、検査を円滑に進める事ができます。

さらに、臀部から脊柱部にかけて、左右からの傾斜を設け安定したホールド感をもたらす新タイプのスパインマットレスが追加されました。背骨があたる中心部はクッションを抜き圧力を分散することにより、背骨のマット底打ちによる痛みを大幅に軽減できる形状です。実際に患者さんには非常に好評を得ています。CT検査で使っている施設もあるようです。MRI検査は他の検査に比べて、検査にかかる時間が長いですのでこのような患者さんが少しでも楽になるような補助具は必要ですね。

造影剤を使用しないで血管撮影!! 〜下肢動脈編〜


MRIで造影剤を使わずに頭部血管を描出できることは以前に他の技師から紹介させていただきました。実は他の部位の血管も造影剤を使わず描出可能です。今回はその一つである下肢動脈の検査についてご紹介させていただきます。

下肢動脈でも造影剤なし!

まずは撮影の手順を紹介します。
①検査着に着替えてもらい、MRI室に入ります。
②検査は仰向けで行います。足先まで覆うようにコイルを配置し、指にはセンサーを装着します。良い画像を得るために足は動かさないように患者さんにご協力いただきます。
③センサーにより心電同期させ拡張期と収縮期の画像を撮像します。
2つの画像から動脈がよく描出される画像が得られます。(下記で詳しく説明します。)
④下腿部・大腿部・骨盤部の3部位に分けて撮影し、最後に合成します。

動脈だけを画像にするには…

動脈は収縮期において血流が速いため信号が抜け描出されず、拡張期では血流速度が緩やかになるため高信号を示します。
静脈は心周期に依存することなく血流速度が遅いため、どのタイミングでも高信号に描出されます。
よって、拡張期から収縮期の画像を差分することで動脈画像となります。

CT  vs  MRI

造影剤を使用したCT画像と比較してみました。
例えば下肢痛でASOを疑った場合、エコー検査やABI測定などの生理検査で下肢血流低下を判定してから造影CTを撮影します。
CT画像の結果次第でEVT治療(カテーテル治療)の適応などを判断しますが、このCT画像(左)のように石灰化が多いと血管の狭窄部位の同定は困難です。
このような場合に、MRI撮影を行うと(右)石灰化部分の評価が可能となります。

今回紹介した撮影方法で造影剤を使用せずに石灰化の影響を受けず下肢動脈の評価が行えます。さらにMRIでの撮影なので被ばくがありません。たくさんのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
まずは検査時間です。約30~40分と長時間の検査となります。その間は動かないでいただく必要がある為、患者さんの状態次第では検査不適応となってしまう場合もあります。さらに、不整脈がある場合には画像の収集がうまくできずきれいな動脈像が得られないこともあります。
メリット、デメリットが共にありますが、そんな中でもMRIによる検査が選択されているケースには腎機能不良や若年者、石灰化が多く評価困難な症例が挙げられます。
やはり造影剤を使うことなく行えることが最大のメリットなので、これからも様々なケースを経験し生かしていくことでこの検査に適応できる方を増やしていきたいと思います。

石井泰貴

特集MRI:コイルは地味だが役に立つ!


MRI用コイルってご存知ですか?

MRIは強い磁場の中に身体をおき、電磁波(RFパルス)を人体に照射したり断ったりを高速に繰り返しおこなって撮影しています。この電磁波送信の繰り返しによって、人体の水素原子から信号(FID信号)が放出され、この微弱なFID信号をMRI用コイルで受信し、演算処理をすることでMRI画像が出来上がります。
つまりこのMRI用コイルは高感度な受信アンテナで、なくてはならない物なのです。自宅で地上波を見ようとする時に、電波を受信するアンテナが必要ですよね。また、電波の感度が良ければノイズものらないはずです。MRI用受信コイルも同じようなものと考えてよろしいかと思います。ということで、今回は地味ではありますが、MRI撮影にとって重要なこのMRI用コイルについてご紹介したいと思います。

FIDandImaging

MRI用コイルといっても、種類がたくさんある事をご存知でしょうか?一般的なのは、頭部用コイル・脊椎用コイル・腹部用コイルだと思います。これに加え当院では整形領域のコイルも使用しています。次にそれぞれのコイルを紹介します。

HNS

BodyandCardiac

ShouldrKnee

関節用コイル

膝関節には前十字靭帯、後十字靭帯、外側・内側側副靭帯、半月板、滑膜、などの観察すべきポイントが多くあります。
何気なく撮影しているような画像でも、きちんとしたポジショニングをすることで描出能に違いがでるため、診断に影響することがあります。例えば、前十字靭帯の描出方法です。
通常、前十字靭帯は膝関節を少し曲げることでピ-ンと張ります。靭帯が張った状態にすることで靭帯断裂などの評価がしやすくなります。また、外側にわずかに傾けることで前十字靭帯を1スライス内におさめ、靭帯を連続して描出することが出来、評価しやすくなります。
膝関節用コイルはこの様なポジショニングが簡便に出来る形をしています。

KneeCoil

今回紹介した膝用コイルだけでなく、専用コイルは非常に使いやすく画質の向上・仕事の効率化が計れる有用な道具です。また、正しく診断がおこなわれるように我々放射線技師も解剖をよく理解して検査をおこなうことを心掛けています。
専用コイルは他部位への応用も可能なので患者さんごとに最適なコイル選択をおこない安全・安心なMRI検査をおこなっております。
(救急撮影認定技師 平野 謙一)

MRマンモグラフィとは?


乳房のMRI・・?

乳房のレントゲン(マンモグラフィ)ならやったことあるけれど、乳腺MRIってどうなのかしら?なんだか怖い・・・とお思いの方いらっしゃるのではないでしょうか?どんな撮影で、どんなふうに検査するのかがなんとなくでも分かれば、少しは不安な気持ちがなくなるのではと思い今回はMRマンモグラフィをテーマにしてみました。

MRマンモグラフィーって痛い??

検査の方法について
①患者様は検査着に着替えてもらい、造影剤を注入するための点滴の準備をします。
②次にMRI室に入り、MRI装置の上に置いてある乳房専用コイルと呼ばれるものに、それぞれ左右の乳房を入れてもらいます。
③そのままうつ伏せの姿勢で乗ってもらいます。その際、両上肢はバンザイした状態で、患者様の体部は動かないようにマジックテープで固定していきます。
*検査時間はこの状態で30~40分かかります。マンモグラフィの様に圧迫される痛みはありませんが、通常の臥位での撮影と異なりうつぶせの体勢で行うことがややつらい検査といえます。造影剤量は20mlほどで検査できます(CTは100cc使います)。

MRM

MRM2

どんな画像が撮影されるの?

MRIでは沢山の種類の画像を撮影しています。当院では1000枚近い画像を収集しています。
最初に造影剤を使用しないで撮影する単純MRI撮影を行い、その後造影剤を注入して造影MRI撮影を行います。
MRIでは様々な方向から断面を切り出すことが出来ますが、両方の乳房が同じ断面に写り、CT検査などと同じ切り方になる水平断(AX像)によって撮影することで、比較しやすくなり多くの病変の発見に有用です。(下図)

MRM3

単純MRI(主要3種)

1.脂肪抑制のT2強調画像

嚢胞性病変や粘液癌などの液体成分を含む病変をより抽出可能です。また、様々なコントラストの変化から腫瘤の壊死、浮腫、繊維化などの推定に役立っています。

MRM4

2.T1強調画像

乳管内出血の有無、腫瘤内部の脂肪評価に役立っています。腫瘍の輪郭しかわからないので通常はその評価には使われません。
乳房は脂肪組織が多いので乳房や皮下脂肪が白く描出されています。

MRM5

3.拡散強調画像

良悪性の鑑別に有用です。腫瘍などの細胞密度の高い病変は白く映ります。細胞密度の高くない背景は真っ黒なので、病変が浮き出て見えます。後述する造影後のMIP( Maximum Intensity Projection)に類似した画像が造影無しで得られます。

MRM6

造影MRI(ダイナミック撮像)

単純撮影が終後、造影剤を使用しての撮影を行います。
MRマンモグラフィで最も重要な検査となります。

なんと1mm以下で撮影

 

一般的に乳癌は、造影剤注入後2分以内に造影剤の取り込みが最大となることが多いと言われています。そのため当院ではガイドラインに推奨されている空間分解能1mm以下を維持しつつ、撮影スピードが約1分の撮像を連続3回行っています。造影剤の動態を追う撮影なので、ダイナミック撮影といいます。
1mm以下で撮像することによって、任意の断面に再構築可能なMPR処理や質の高いMIP (Maximum Intensity Projection)像の作成が可能です。(下写真)また、腫瘤の最も染まった相で冠状断(COR像)のMPR処理画像を作成することにより、病変の広がりも診断できます。

MRM7

更に高分解能に!

ダイナミック撮像後、さらに高空間分解能を意識した水平断(AX像)また患側、対側それぞれの矢状断(SAG像)を撮像しています。矢状断を撮像するメリットは、水平断を含めた2方向からの観察によって病変の形態がより正確に把握可能であり、矢状断のほうが乳管内成分を見やすい場合もある、マンモグラフィのMLOと簡易的に部位の対比(厳密には矢状断とMLOは異なる)が可能な事などが挙げられます。(写真)

MRM8

以上のようにMRIでは時間はかかりますが、乳癌診療に役立つ画像を様々に撮影することが可能です。
(鈴木 圭一郎)

*ガイドライン:欧米における乳房MRIのガイドライン(2009年3月)

当院のGE社製 3T(テスラ)MRI装置のご紹介


3.0T(テスラ)MRIが当院に入ってから、早いものでもう3年が経過しました。事故もなく安全に検査をすることが出来ていると言う事は、何ものにも変えがたい喜びです。安全第一で今後もMRI検査を行っていきたいと思います。

そこで、今回はあらためて3.0T MRIのメリット・デメリット・安全上の注意点などを交え、紹介したいと思います。
現在、日本国内で人体に使用できるMRI装置には静磁場強度が、0.5T~3.0Tまで多種多様な装置があります。臨床機では3.0Tが最上位機種となります。また、実験段階ではありますが、すでに7.0TのMRI装置で人体の撮影も行われています。近い将来、7.0T の臨床装置が登場する日もそう遠くはないかもしれません。
静磁場強度が高くなる最大のメリットは、信号強度(signal/noise)が向上することにより、高分解能な画像が撮影できる様になることです。また、撮影時間の短縮も可能になります。(画像1)

MR1
画像1

わずかな磁化率の差が画像に影響するため、今までは見えなかったものが見えるようになることもあります。(画像2)

MR2
画像2

周波数の差が大きくなるため、T2強調画像やT1強調画像だけではなく、ASLやMRS(画像3)などもきれいに撮影できます。また、functionalやelastgraphyなども1.5T MRIよりきれいに撮影することが出来ます。

MR3
画像3:3T装置で撮影されたT2強調画像、T1強調画像(造影)、ASL画像、MRS

また、デメリットとしては、3.0T MRI対応の体内金属以外は検査が出来ません。冠動脈ステントも、5年以上前に挿入したものは3.0T MRIでの磁場試験を行っていない製品も多く存在するため、安全性が確認できないものに関しては1.5T MRIでの検査となります。また、他院で挿入した冠動脈ステントや体内金属などは、製品の型番が確認できて安全性が担保できなければ3.0T MRIでは検査を行わないようにしています。一番重要なことは、安全性の担保に尽きると思います。リスクを負ってまで3.0T MRIで検査する必要はありません。安全面が確認できない場合は、1.5T MRIで検査をおこなえば良いのです。2台を使い分けすることで、スムースな検査が可能となっています。磁場強度が増すと、それだけ金属の吸引力が増加します。もし誤って金属を持ち込むと、3.0T MRIは1.5T MRIの2倍の吸引力になるため、大事故になりかねません。3.0T MRIが納入された時から、金属に関しては今まで以上に慎重に対応するようになりました。実際に磁場の吸引力を体験すると分かるのですが、3.0T MRIは桁違いの磁力です。
3.0TのMRI装置はメリット・デメリットありますが、安全に使い分けを行えば非常にメリットの多い装置であることは間違いありません。患者さんにとって、安全に安心して検査が行えるように、これからも日々精進してまいります。