YSK MultisliceCT Collection 2023


新型コロナウィルス感染予防対策によりCT検査が非常に多くなり、検査予約枠の減少や検査待ち時間が長くなっていることから、2021年4月にCT装置が1台増設されました。同時に128列CT装置が最新型の256列CT装置に更新され、当院には治療計画用装置を含め計4台のマルチスライスCT装置が整備されました。今回は新しくなった2台の装置を含めた当院のマルチスライスCTをご紹介します。

Revolution CT エリアディテクター型デュアルエナジーCT 2021年設置

昨年4月より新設された256列マルチスライスCT装置で同時にデュアルエナジー撮影も可能なGE社最高位機種になります。エリアディテクター(面検出器)型*なので心臓をたった0.28秒で撮影することも可能な装置です。これにより冠動脈撮影はほとんどブレることなく撮影できるようになりました。ソフトウェア技術も一新され、画像再構成にはAIが用いられ画質が向上しました。また画像作成に時間がかかっていたデュアルエナジー撮影についても高速化され、臨床で無理なく使用できるレベルへと進化、同時に画質の向上も実現され、造影剤半減した画像であっても、自然なコントラストで表現された画像を仕上げてくれるようになりました。

Aquilion Helios 80列マルチスライスCT 2021年設置

4月に新設されたキャノンメディカルシステム(旧東芝メディカル)の装置です。80列の装置ですので冠動脈撮影はできない装置ではありますが、当院で検査している検査種の90%をカバーできる万能な装置です。国産メーカーということもあり、使いやすいインターフェイスが特徴です。工事期間中はCT装置の稼働台数が少ない状態で大量の検査をこなす必要がありました。しかしながらAIを用いた画像作成により少ないエックス線量でもきれいな画像を取得できるため省力化が可能で、かなりの検査数をこなしてもオーバーヒートしませんでした。検査説明に来たメーカーの方も驚いていたそうです。

Revolution HD CT デュアルエナジーCT 2018年設置

5年前に設置されたデュアルエナジー装置です。当時最先端で大学病院などをメインに販売されていた装置です。現在も販売されており、最近では中規模の病院にも設置されるようになってきました。最新型装置(RevolutionCT)と比較すると、ソフトウェアの面では劣りますが、当時最新型機種であったこともあり、ハード面は非常に強力で最新型の装置よりもエックス線出力についてはこちらの装置の方が優秀で、骨領域の画像は最新機種よりもきれいな印象です。また1日80件撮影してもオーバーヒートすることなく稼働してくれています。

Toshiba Aquilion LB 放射線治療計画用16列CT 2016年設置

放射線治療室が整備された際に設置されたCT装置で、治療計画用途のためワードボアと言って患者さんが入るところ(丸の部分)が大きく設計された装置です。治療計画用となってはいますが16列マルチスライスCT装置ですので、全身撮影も可能です。メイン装置の点検時などには診断領域の撮影も行えるコスパ優秀な装置です。

ドキドキしてもハッキリ!クッキリ! 心電図同期撮影


以前ご紹介したTAVI(Transcatheter Aortic Valve Replacement:経カテーテル大動脈弁留置術)の術前に行うCT検査でも利用している心電図同期撮影についてご紹介したいと思います。
心電図同期撮影とは、心電図モニター用のパッチを体に装着し、心電図波形データを収集しながらCT画像を得る撮影法です。

利用例1:心臓(冠動脈)CT

心電図同期撮影を利用する検査目的の多くがこの心臓CTです。心臓(冠動脈)は、他の部位と異なり絶えず拍動している為、息止めや高速で撮影を行うだけではブレのない画像を得ることはできません。そこで、心電図と同期させて、心臓の動きが少ないタイミングのデータを取得し画像再構成を行うことでブレのない画像が得られます。心電図では、繰り返される心臓の拍動(拡張と収縮)を電気信号の時間的変化(心電図波形)としてとらえる事ができます。詳細は割愛させて頂きますが、正常な心電図波形は図のようなPQRST波の繰り返しで表され、CT画像収集に必要な心臓の動きが少ないタイミングとしては拡張中期・収縮末期があります。心拍数が低い場合は拡張期、高い場合は収縮期が収集に適しているとされています。

このような画像再構成に最適なデータを抽出することにより、動きのない冠動脈画像を得ることができます。下はその一例ですが、左冠動脈に入っているステントがはっきりとわかります。

 

利用例2:大動脈解離

大動脈解離でも心臓の拍動の影響を受けやすい上行大動脈の解離が疑われる際に、心電図同期を用いて撮影する場合があります。心電図同期させることにより、拍動によって解離に見えてしまう偽画像(アーチファクト)かどうかの判断が可能となることや、大動脈解離が冠動脈に及んでいるかどうかの判断が可能になります。 同期の有無によりどの程度見え方が変わるのか比べてみました。下の画像のように同期することで冠動脈起始部が明瞭に観察できます。

利用例3:TAVI術前・術後CT

TAVI (Transcatheter Aortic Valve Replacement:経カテーテル大動脈弁留置術)は大動脈弁狭窄に対する治療として、開胸手術にて弁置換を行う従来の方法と比較し低侵襲です。
しかし、カテ―テルを用いた手技の為、

・人工弁を狭窄部まで進める際の血管経路の確認
(カテ―テルを進めることが出来る走行や血管径であるか)
・大動脈弁の径に適した人工弁の選択、人工弁を留置する位置の検討
(冠動脈を閉塞させない場所)

などが重要です。
これらの正確な情報を得る為には心電図同期を用いたぶれのないCT画像を必要とします。
また、心臓の拍動に加え、呼吸による影響、体動、正確な心電図波形の表示や画像再構成に用いる波形データの選択が画像精度を大きく左右します。検査を行う技師として、患者への説明(息止め等)や、モニターの正確な装着、機械操作(最適な波形の選択等)を常に心がけて撮影しています。

今回紹介した冠動脈CTやTAVI術前検査は、64列以上の高速撮像ができるCT装置が推奨されています。当院は64列CTが2台あり、どちらも冠動脈撮影に対応できる体制となっています。装置の性能を最大限活かせるよう研鑽を積みたいと思います。

CT認定技師 江上

CT angiographyをきれいに撮るためのテクノロジー


CT angiography (CTA) は血管の走行を確認したり、病気を診断するために有用な検査です。
これは造影剤が目的の動脈に到達したタイミングを見計らってCTを撮るという方法で撮像されます。しかし、静脈から注射した造影剤が目的の動脈に造影剤が到達するタイミングは個人差があり、事前に知ることができません。そこで当院ではボーラストラッキングという方法を用いて正確に目的血管のCTAを撮像しています。
ボーラストラッキングとは目的動脈の位置で連続的にスキャンしてモニタリングを行い、造影剤が到達したら撮像を開始する方法です。

ボーラストラッキングはいろいろな血管に適用できます。

MRI認定技師 五十嵐

造影CTってどうやるの? 造影CTの現場をご紹介します!


“造影”という言葉をこちらのブログでは何度もご紹介しておりますが、実際の使用方法などについてお話したことがなかったかと思います。今回は造影CT検査の実際についてお話しさせていただきます。

見えないものを見えるように

ご存じかと思いますが、造影というのは影を造る書きますが造影剤はまさしくそのような薬です。見えないものを見えるようにしてくれます。CT用の造影剤には数グラムのヨードが含まれており、このヨードがエックス線に吸収されやすいので、写真によく写る、すなわち影を造るということになります。

まるでハイボール?濃いめと薄めと大容量と・・

CT用の造影剤には種類があり、容量と濃度などの違いがあります。
容量は造影剤の量で、体が大きい人は大容量のものを、小さい人は少ないものを使います。

濃度は造影剤の濃さを表すもので、これは写りにくいような細かい部位を撮影するときに使います。代表的なものは頭の血管撮影や心臓血管撮影といった血管径が5mm以下のようなものの撮影で、高濃度造影剤100ccを25秒という非常に速いスピードで注入しています。血管にリボビタンD 1本分の量を25秒で入れると想像してください。かなり速い速度で入れていることがわかるかと思います。

造影剤はねばっこい?

あまり知られていないのですが、造影剤は少しねばねばしています。これを血管内の細い針先から高速で入れるには結構な力が必要となります。そこでインジェクターという装置を使って注入しています。これを利用すると、短時間に正確な量の造影剤を注入できます。
しかし、血管が正しく確保されていることが重要です。しっかりと針が血管の中に入っていないと、あっという間に100ccの造影剤が皮下に漏れてしまいます。ですので、造影検査は血管確保がとても重要な検査となっています。

静脈からの注射で動脈血管を簡単に評価できる造影CTですが、実際にはこのように慎重な手技が必要とされる検査となっています。

放射線科福技師長 保田

認知症検査入院と画像検査について


当院では認知症検査入院を今年から開設いたしました。認知症関連疾患においては、患者さんの不安は最もですが介護者の負担も大きいことは最近ではよく知られている事柄ではないでしょうか。介護生活そのものの負担も大きいですか、その診断に至る過程でも大きな負担がかかるかと思います。患者さん自身の不安に寄り添うことや、検査や診察の度に病院へ連れ添うのも大変であろうかと感じます。入院で一通りの検査や診察が受けられるのであれば、働く世代の負担も多少ではありますが軽減されるものと思われます。

認知症検査入院の検査内容といたしましては、脳血流-MIBGシンチ、認知機能検査-神経心理検査(臨床心理士)、 頭部MRI-VSRAD(ブイエスラド)、神経内科診察などが含まれております。
今回は認知症関連画像検査について、代表的な二つの検査(脳血流シンチ・頭部MRI)について簡単にご紹介します。

認知症を対象とした画像検査(脳血流シンチ・頭部MRI)について

認知症疾患を対象とした頭部MRIは、脳の形をみる検査となります。脳そのものの形や、脳以外のものが写っていないか、腫瘍がないか、脳室が大きくなっていないかなどの形を評価した所見をみることができます。
脳血流シンチは、放射性同位元素の動態を追いかけることにより、脳への血液の流れ具合を見ています。MRIが形を評価していますが、こちらは機能を評価しています。

画像所見を数値化してより分かりやすく

そして、このそれぞれの特徴を生かした画像解析手法を用いることで、画像だけでは認識しづらい軽微な所見も評価することができるようになってきています。VSRADやe-ZISといった解析ソフトウェアがそれにあたります。
頭部MRIでは形態的に画像を評価する特徴を生かし、正常患者さんの脳の形態と比較して評価するソフトウェアが用いられており、VSRADと呼ばれるソフトウェアになります。
脳血流シンチでは脳血流の分布について、正常患者さんの脳血流分布と比較して評価するe-ZISというソフトウェアが用いられています。あたかも脳の偏差値のようですね。

画像検査については放射線科紹介でも対応しています

入院できれば家族負担は減るものの、患者さん自身が入院という形に納得しないということもあるのではないでしょうか。認知症はとてもナイーブな疾患であるかと思いますので、「家族が一緒に来てくれるから検査を受ける」、「昔からお世話になっている先生に診察してもらいたい」というケースもあるかと思います。当放射線科ではそのような場合には外来で、脳血流シンチや頭部MRI-VSRAD(ブイエスラド)検査を行うことが可能です。現在、地域の先生からもこの様な依頼をうけて検査を行っております。画像検査のみが必要な場合にはご利用ください。
地域の皆様のためにも多様な検査ニーズに対応し、一億総活躍時代のシステム構築に貢献できればと考えております。

CT.MRI室主任 保田英志

CTC検診を受けてみました


当院検診センターでは昨年10月より大腸CT検診をスタートいたしましたが、私も実際に大腸CT検診を受検してみましたのでここでご紹介させていただきます。

大腸CTも前処置が必要

大腸CTは、CTで内視鏡の様な画像を得ることができる次世代的なイメージの検査ですが、検査においては前処置が必要となります。内視鏡検査と同様に大腸を空っぽにするための前処置で、消化のよい検査専用食を食べる必要があります。また、便を完璧に空っぽにするのは難しいので、少量のバリウムを同時に摂取することで、あえて便にバリウムを混ぜ込ませ画像処理でその便を取り除く技なども利用しています。

検査食はS&B食品!

検査食は検査前日の朝食、昼食、夕食、検査当日の朝食がセットで販売されておりそれを購入します。私が購入したのはこの検査食で、製造はあのS&B食品なので自然と期待してしまいます。

検査食レポート(総合得点は○○点!)

検査前日の朝食は中華粥とコーンスープ。期待しての一発目、レンジで調理する中華粥だったのですがこれはいけませんでした。味がうすすぎておいしくない。残念。しかし、コーンスープの方はおいしくいただけましたのでやや信頼回復一安心です。つづいて昼休み。昼食はカレーです。なにげに肉の様なものやニンジンまであっておいしくいただけました。昼食後には少量のバリウムを飲む必要があるのですが、飲むヨーグルトのような少し甘い感じの感触で、主食の量が少ないこともあってデザート感覚でおいしくいただけました。午後の仕事もがんばれます。
夕食は親子丼でこれも鶏肉が入っていて味もしっかりしていました。さすがS&B食品。最初の中華粥が足を引っ張ったものの最後はしっかりと結果を残してくれました。総合80点としたいと思います。

初経験、異物挿入!(検査当日)

検査は朝8時30より行います。この日は横山技師も一緒に検査を行いました。お互いにCTを撮り合いっこするという、異様な風景でした。
さて、最初に真田先生からブスコパンの注射をしていただき、その後CTのベッドにころがります。横向きに寝るといよいよ真田先生が私の肛門に検査用のチューブを挿入します。肛門にものを入れるのは初めてでしたが、特に違和感も痛みもなく、残念ながら(?)癖になるような快感もありませんでした。(写真:真ん中が検査用チューブ。右は内視鏡)

続いて、肛門のチューブから炭酸ガスが入ります。すぐにお腹がはってきます。痛くはないのですが、お腹が風船になった気分です。お腹ぱんぱん状態は、やはりあまり気持ちのよいものではありませんでした。撮影はうつぶせと仰向けの2ポーズなのですが、うつぶせの方はお腹がつぶれるのできつい印象をもちました。とはいうものの、仰向けでの撮影時には「炭酸ガスではなく水素ガスだったら空飛べるのかな?」なんて考える余裕もあり、ものの10分程度で検査終了となりました。

さすが流行の炭酸!体によい!?

ガス注入を止めるとすぐにお腹の張りがとれて楽になりました。大腸CT検査では長年、炭酸ではなく空気をお尻からいれて検査をしていたのですが、脂汗をかいてつらそうな患者さんをたくさんみてきました。しかし、この炭酸ガス注入器の購入以降はそのような光景を見ることがなくなったので、きっと楽なのだろうと想像はしていたのですが、本当に楽でした。検査終了後もトイレに行きたいという感触もなく、すぐに白衣に着替えてそのまま検査業務にはいれました。

私の大腸はだいちょーぶ(大丈夫)!!

私はタバコを吸わないものの、お酒の方を少々毎日飲んでいて、年齢の方も40を超えてしまったこともあり多少大腸癌については心配していたのですが、検査結果は問題なしということで一安心できました。これでまた晩酌を楽しむことができます。

食事制限と前日にお酒が飲めないことがつらいところですが、人は時にこのような経験をしてみるのも大切だなと感じ、また5年後にでも受検してみようかと考えています。

CT.MRI室主任 保田 英志

金属アーチファクト低減処理(MAR)を紹介します


当院に新しく導入されたRevolution HD(GE社製64列CT装置)に搭載された
“金属アーチファクト低減処理(Metal Artifact Reduction)”
についてご紹介します。

従来のCT装置では、金属によるアーチファクト(障害陰影)を軽減する方法がない為、人工骨頭や人工関節、ペースメーカーなどの体内金属を含む撮影において障害陰影を回避することが出来ませんでした。しかし、今回搭載されたMAR処理を行うことで体内金属により生じるアーチファクトを軽減し、画像をより明瞭に描出することができるようになりました。今回は当院で実際に経験した症例をご紹介したいと思います。

Case 1 頭部血管内治療後(コイリング後)の評価

頭蓋内コイルの周囲にハレーション(青丸:金属周囲が白くなっている部分)とダークバンド(赤丸:金属周囲の黒くなっている部分)によるアーチファクトが大きく発生しその周囲の状態が確認できませんが、MAR処理後は前述のアーチファクトが軽減され確認できる範囲が広がっています。コイリング後の出血の有無を評価する範囲が広がり、診断精度の向上につながると考えられます。

Case 2  左下腿骨手術後(プレート固定後)の評価

Axial像(一般的な輪切り画像、横断)で赤矢印部分にアーチファクトが確認できます。これをCoronal像(冠状断)で確認すると赤丸で囲った部分となります。さらに3D画像構築を行うとアーチファクトにより骨折線の一部に不明瞭な場所(青丸で囲った部分)が生じています。
しかし、MAR処理後はそれらのアーチファクトがすべて抑制され、より明瞭になっています。このようにMAR処理はAxial像(横断)だけでなく、Coronal像(冠状断)やSagittal像(矢状断)、さらには3D画像等の画像作成に対しても有効な技術です。

日本はCTの国


院内の広報誌「まちあい」で公開した記事ですが、先生にも是非紹介したいと思います。

日本のCTの保有台数ですが、先生は世界で何番目か?ご存知でしょうか?国の大きさを考えてみてください。先進国や発展途上国でも違ってくるでしょう。アメリカ!でしょうか?それとも中国、オーストリア?
さて答えは……..。

実は、私達の国の日本です。2014年のデータですが、1位は日本で12,943台、2位はアメリカで12,740台です。人口100万人あたりの台数はでも1位は日本で107台です。アメリカはなんと41台で、ドイツは35台です。このデータからもわかるように日本はこんな小さな国でありながら、どこでも、誰でも高水準な医療を受けることが可能であるということがわかります。ちなみにMRIの保有台数も世界1位です。加えて、日本は国民皆保険制度なので、世界で一番安い金額でCTやMRIを受けられる国なのです。意外と知られていない事実なので今回ご紹介させていただきました。

これだけCTが多いということは、適切な言葉ではないかもしれませんが、被ばくも多くなるということになります。日本は世界で唯一の被ばく国です。被ばくということに当然敏感になると思います。CTの線量指標にDRLs2015というものが公開され、日本の診療放射線技師はその線量指標を越えないように医師と共同で診療をおこなっています。当院でもDRLs2015を認識して、CTの被ばく線量を把握し、DRLs2015の線量指標を越えていないことを確認しています。

昨今の報道で小児の被ばくに関して取り上げられていますが、医師はリスクとベネフィットを考え、技師は診断を損なうことなく適切な線量で検査を行っていますので、安心してCT検査などを紹介いただきたいと思っています。今後はCTの被ばく線量管理を個人単位で考えていこうと考えています。また報告したいと思います。

放射線科技師長 高橋光幸

 

CT気管支ナビゲーション


当放射線技術科では、ヘリカルCTで得たボリュームデータを画像処理し、三次元表示を行う3DワークステーションZiostation2(写真1赤丸)を活用して、肺がん手術や経気管支鏡生検(TBLB)などの支援を目的とした画像提供を積極的に行っています。
TBLBは呼吸器内科が月10件程度行っていますが、病変まで到達する気管支の経路を作成した画像を提供しています。術者が確認のために見る透視画像と類似したRaySum画像、気管支鏡の視野と同様の仮想内視鏡表示(VE)(図1)によって検査をスムースに、かつ正確にナビゲートします。
TBLBの支援画像の作成で大事なことは、病変に向かう気管支へのルートをつけることですが、対象の病変を選択するだけで気管支口から病変までの最短ルートを自動で選択してくれます。当院放射線技術科の技師はローテーションで複数のモダリティーの対応が求められるため、画像処理にはまず使いやすさも求められます。近年の3Dワークステーションでは画像処理能力の進歩によって、高い精度で誰もが使いやすいものとなってきています。今後も画像処理を最大限にいかしつつ、各診療科の診断、治療に迅速に提供できるよう当院放射線技術科全技師が努力しております。

大腸CT検診が スタートしました


当院の健康医学センター“さくらサロン”では、年々増大傾向にある大腸がんを標的とした大腸CT(Computed Tomographic Colonoscopy : CTC)を使った大腸CT検診(以下CTC検診)を始めました。先生はすでにご存知かと思いますが、CTC検診とは以下のような内容です。

CTC検診とは?

CTを使って大腸スクリーニング検査を行い、大腸癌や、前癌状態である大腸ポリープや腺腫を見つける検診方法です。「大腸内視鏡検査は受けたくないが、大腸の検査をしてほしい」という被検者の需要も高いと思われます。

CTC検診の特徴は?

低侵襲
最大の特徴は、従来の大腸内視鏡や注腸検査に比べて簡単な前処置と少ない苦痛で全大腸を観察できることです。

多彩な画像処理
画像ワークステーション内のCT大腸解析アプリケーションを使用することにより、以下のような画像を駆使して客観的かつ多方面より全大腸を観察できます。
低被ばく
当院に新しく導入されたCT装置を使用することにより、放射線被ばくの少ない検査を行えます。

CTC検診の検査精度は?

CTC検診の精度は、少し前の多施設共同研究によるとかなり高いものといえます。

・径10mmより大きい腺腫あるいは癌の検出率は感度90%、特異度86%
(多施設共同研究ACRIN6664米国2008)
・径6mm以上のポリープと癌の検出率は感度87%、特異度92%
(多施設共同臨床研究JANCT2009、日本)

特に日本での多施設共同臨床研究 JANCT2009では、6mm以上の隆起性病変に対しては約90%前後の感度と特異度を保持しております。ちなみに便潜血検査の感度は約30~90%と施設によりかなりばらつきがあります。

大腸がんCT検診のおおまかな流れ

検査当日の流れ

①検査前
撮影の前に、トイレに行っていただきます。

②検査前に注射
腸の動きを一時的に抑えるお薬を注射させていただきます。

③肛門より炭酸ガス注入
細いチューブを肛門から少し入れて、炭酸ガス注入装置にて安全に大腸を拡張します。

④撮影開始
拡張を確認したら、CT撮影を開始します。(仰向けとうつぶせの2回撮影 5~10秒の息止め)

⑤検査終了
チューブを抜いて検査終了です。注入された炭酸ガスは自然と吸収されます。

駆け足でご説明させていただきましたが、ご理解いただけましたでしょうか?当院健康医学センター“さくらサロン”では、医師と技師一体となって、大腸CT検診スタートに向けて現在、撮影と読影にトレーニングを進めてまいりました。近隣の皆様の大腸がん検診の一端を担うことができるよう、今後も研鑽していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

横山 力也
日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師
NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構
胃がん検診読影部門 B資格

参考文献
野崎良一 CT Colonography 実践ガイドブック 医学書院
永田浩一 遠藤俊吾 安田貴明 その他 症例で学ぶ大腸CT診断 シーピーアール;初版