当院CT撮影線量について


先生こんにちは 診療放射線技術科の石井です。先日「神奈川放射線学術大会」に参加し、
「当院におけるCT撮影線量と診断参考レベルとの比較検討」というタイトルで発表をさせていただきました。今回はその「当院におけるCT撮影線量」についてお話しします。

【医療被ばくの最適化とは】

医療行為に使われる放射線には線量制限が課せられていません。これは、仮に線量に制限を設けてしまうと患者さんの診断や治療に支障をきたすおそれがあるためです。例えば診断においては、線量が低すぎると画質が損なわれ、診断能の低下を招きます。逆に高すぎる線量は不必要な被ばくとなります。
そこで「医療被ばくの最適化」を目的として昨年公開されたのが、「DRL(診断参考レベル)」です。

【DRL(診断参考レベル)とは?】

DRL(診断参考レベル)はJ-RIMEと呼ばれる医療被ばくに関するデータの収集・実態把握を目的とした団体により策定されました。意義は、「放射線診断においてその値を超えた場合は線量を下げることを検討すべきである」というものです。ただし注意すべき点として、臨床的に正当な理由がある場合は超過してもよいこと、が挙がります(患者さんの体重や体格により、高い線量が必要とされる場合があるため)。あくまでも目的は医療被ばくの低減ではなく最適化です。また、DRLの数値は患者さんの被ばく線量(臓器吸収線量や実効線量)は示していない点にも注意が必要です。

【当院のCT撮影線量とDRLを比較】

今回私は当院で扱っているCTの撮影線量とDRLの値を比較、調査をしました。(グラフ1)
グラフ1はCTDIと呼ばれるCTにおける線量の指標を示しています。赤で示されたグラフが先ほど説明したDRLの値、青で示されたグラフが当院の線量になります。結果、全ての検討部位でDRLの値を大きく下回りました。特に冠動脈CTは被ばくが多くなる分野ですが、当科の値は大きく下回る結果となりました。これは病院が海外製の高額なCT装置を整備してくれたこと、そして循環器内科岩城医師が積極的に低被ばく撮影を推奨したこと、それに応じてスタッフもソフトウェアを応用するなどの工夫をしたことによる結果であると考えています。

CTDI

近年、原子力発電所の事故などにより放射線に対して多少なりとも抵抗を覚える患者さんはいらっしゃると思いますが、今回のこの結果がそういった方々の検査に対する安心感に繋がれば幸いです。
当院では常に患者さんの被ばく線量を考慮し、最適な画像を提供するように心がけております。今回行った調査により当院で扱っているCT撮影の線量はDRLを大きく下回りましたが、この結果に満足せずこれからも被ばく低減・画質向上に努めていきます。今後ともどうぞ宜しくお願いします。