知っているようで知らない!? レントゲンの基礎④-レントゲン-


これまでのシリーズではレントゲンの基礎として、撮影条件や距離のお話をさせて頂きましたが、今回は今まで当たり前のように発していた“レントゲン”についてお話させて頂こうと思います。
また多くの方が間違った使い方をしてしまう“放射線・放射能・放射性物質”についても併せてお話させて頂きます。

レントゲンとは何か?
1895年W.C.レントゲン博士が真空放電の実験中に偶然、いろいろな物を突き抜ける不思議な光線を見つけました。
発見時、未知の光線だった為、数学の未知の数を表す「X」の文字を使いX線と名付けられました。
当時、多くの学者は彼の発見を称えその光線のことをレントゲン線と呼びました。
その名残から、未だにX線を使った検査のことを、レントゲン検査と言っていますが、近年放射線業務の領域ではレントゲン検査と呼ばずに、正式名称のX線検査と呼んでいます。
博士はその後1901年に第1回ノーベル物理学賞を受賞したことでも有名ですね。

放射線・放射能・放射性物質
“放射線”とは、放射線物質から放出される粒子や電磁波のことです。
“放射能”とは、放射線を出す能力のことです。
“放射性物質”とは、放射能を出す物質のことです。
蛍に例えると、放射線は蛍の光、放射性物質は蛍、放射能は光を出す能力です。
また、蛍の光が虫かごから漏れると「放射線漏れ」、蛍が虫かごから逃げ出すと「放射性物質の漏れ」ということになります。
このように“放射線”と“放射能”では大きく意味が異なるのです。
しかし、特にポータブル撮影時において、「放射能が出るから逃げないと」と発言する医療従事者もいるほどで、一から説明したくもなるのですが、グッと堪えて日々業務に励んでいます。
(参照:http://www.rikuden.co.jp/housyasennokoto/kihon.html)

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特殊撮影主任:森直彦

手根管撮影について


手根管とは?

今回は手根管撮影について書かせていただきます。手根管撮影は手根管症候群やその疑いに対して整形外科医が撮影依頼を出されます。手根管症候群は手根管内における正中神経の圧迫麻痺で最も頻度の多い神経障害です。(下図)屈筋腱鞘炎による手根管内圧の亢進、手の過度の使用、管内に発生したガングリオンなどの腫瘤、橈骨や手根骨骨折後の変形、妊娠などによる全身浮腫、長期血流透析に伴うアミロイド沈着などが発生の要因となります。症状は母指より環指橈側1/2の正中神経支配領域のしびれ感、知覚障害及び母指球筋の脱力、委縮が主訴となります。中年以降の女性に多く、利き手側に多く発症します。

手根管
日本整形外科学会HPより引用

撮影方法について

撮影は肘関節を伸展して手関節の下に発砲スチロールなどを置き手関節を背屈させて手掌面を垂直にします。中心エックス線を30度傾け、手根管をめがけて撮影します。 撮影されるエックス線像として第1指側より、手根管を形成する大菱形骨結節、舟状骨、有頭骨、有鈎骨の接戦像が描写し手根管の軸位像が描写されます。

手根管2

手根管3

知っているようで知らない!? レントゲンの基礎③ -撮影距離-


前回X線写真撮影時の条件についてお話させて頂きましたが、今回は距離についてお話させていただきます。

撮影距離って重要なの?

先生の施設ではX線写真を撮る際、どれぐらい距離をとって撮影されていますか?
当院では、立位の胸部・腹部は200cm、臥位であれば100cm、その他整形等での骨の撮影は一部を除いて100cmで撮影しています。

撮影距離が短いと画像が拡大します

距離を選定する際、考えなければならないこと、それは画像の拡大(ゆがみ)です。
X線写真は、X線が管球から円錐状(四角錐)に放射されているため(図1)、厚みのある被写体を撮影するとX線写真上では常に像の拡大が発生し、実物より大きく描出されています。(図2)

距離をとることで平行に!

Aの位置よりもBの位置から撮影した方が患者さんに入射するX線が平行に近くなり画像の拡大が少なくなります。(図1.図2)
その為、可能な限り距離を離して撮影するのが理想ですが、距離を離しすぎると線量不足になります。撮影室の広さや、使用するX線発生装置の性能を考慮した上で当院では200cmと選定しました。

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胸部レントゲンを後ろから撮る理由

また、胸部撮影をPA(Posterior-Anterior view)撮影するのも、心臓をフィルムに近づけることによって、ほぼ実物大に写るからです。AP(Anterior-Posterior view)撮影では若干ですがフィルムと心臓に距離が開くので心臓がやや大きくなり、肺が狭く写ります。
従って、PAで撮影した方が心臓は実物大に写り、肺が広く写るため診断しやすくなるのです。

整形等での骨の撮影においても理想としてはなるべく距離を離した方がいいのですが、多くの場合臥位での撮影となりますので、天井の高さや操作性を考え100cmとなりました。

X線写真は、前回との比較を目的に撮影することが多いです。
我々放射線技師は、担当者が替わってもなるべく統一条件下で撮影するように心掛けて、日々従事しています。
(森 直彦)

結石破砕治療の実際


今回は尿管結石の治療を行うESWL装置についてご紹介したいと思います。その前にご存知の先生も多いかと思われますが、専門外の先生やスタッフもいらっしゃるかと思いますので、まず尿管結石について簡単に復習してみたいと思います。

●尿管結石について

尿管結石とは「尿路」に石ができる病気で、その素材は尿に溶けこんでいるカルシウムやシュウ酸、リン酸などです。これらのミネラル物質が何らかの原因で結晶となり、有機物質も巻き込んで石のように固まってしまうのです。
なぜ石が出来るのかは尿路感染、代謝異常、ホルモン、薬など、原因のはっきりしているものもありますが、およそ約8割は原因不明です。2:1以上の割合で男性に多い病気です。
いったんこの結石ができると、石が細菌を増やし、細菌は石をますます成長させるという悪循環が起こり、腎盂腎杯の形そのままのサンゴ状結石となりやすいのが特徴です。

●サンゴ状結石

サンゴ状結石とは、結石関連物質が種々の条件下で結晶化し増大した結石が二つ以上の腎杯におよぶもののことをいいます。最近では、サンゴ状結石に対して経皮的腎結石摘出術(PNL)を行うことが多いですが、併用してESWLを行うことがあります。ESWLは体に傷をつけずに治療することができるという利点がありますが、サンゴ状結石の場合は大きい結石なだけにリスクもあります。そのひとつが“stone street”(ストーン・ストリート)と呼ばれる破砕した細かい結石の小片が尿道に詰まってしまう状態です。この状態になってしまうと尿管が結石により閉塞され腎機能の低下を引き起こす可能性があります。この状態になってしまった場合は、ダブルJなどの尿管ステントを挿入して再度ESWLをおこなって徐々に排石させていきます。次に実際に当院で行われた症例をご紹介します。

当院で行ったサンゴ状結石のESWLによる破砕

73歳男性。肉眼的血尿で来院され、CTでサンゴ状結石と診断された患者さんです。
そのサンゴ状結石に対してESWLを行いました。その結果、破砕されたものの“stone street”となりダブルJステントを挿入しました。その後少しずつ排石され腎機能も改善してきました。まだ尿管内に結石が残っているためダブルJは抜去できませんが、尿管内から排石されると抜去できます。少しずつ破砕の効果はあり、腎臓に残っている結石もそのまま大きくならなければフォローできます。当院のESWLは初回は入院していただくことが多いですが、その後は通院での治療が可能となります。尿路結石症は再発する頻度が高く、結石治療後も定期的受診による再発有無の確認、再発予防のための生活指導が重要になります。これから暑い季節になってきますと発汗などで水分不足になりがちです。水分補給もひとつの予防策になるので、水分補給を心がけるのもよいそうです。 (北畠 智子)

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知っているようで知らない!? レントゲンの基礎② ー撮影条件ー


前回、単純撮影の撮影条件は、X線管電圧、X線管電流、撮影時間で決まるというお話をさせて頂きましたが、今回は実際に当院での撮影条件を元に、どのような組み合わせで撮影しているかをお話させて頂きたいと思います。

大人と子供でこんなに違う撮影条件

単純撮影と聞いて、1番最初に思い浮かぶのはやはり胸部撮影ではないでしょうか?

当院でも最も撮影数の多い検査の1つとなっていますが、撮影回数が多いからこそ適正な撮影条件を組む必要があります。

実際に当院での撮影条件をお示しします。

管電圧(kV) 管電流(mA)  撮影時間(msec)
大人 120  100 32
小児 100  100 16
乳児 65 500  10

大人と小児では体格が違うので、管電圧(被写体コントラストを決定するもの)が違うのは当然のことですが、注目すべきは撮影時間ではないでしょうか?
胸部写真は息を止めて撮影しますが、乳児の場合息を止めての撮影はとても困難です。多くの乳児は泣き叫ぶので、息を吸った瞬間にタイミング良く撮影しなければなりません。しかし、撮影時間が長いとタイミングがズレてしまい、ブレた画像になってしまいます。ですので、出来るだけ撮影時間を短くし、ブレの少ない画像になるように心掛けています。
当院でも数年ぶりに産科が復活し、これから乳児を撮影する機会も増えてくると思います。
現在はこのような条件で撮影を行っていますが、機器の性能の向上に伴い、今後も検討する必要があります。

単純撮影は単純か?

決して単純ではなく、考慮すべき様々な内容が含まれています。しかもそれは、古典的なものから最新の撮影機器や最新技術に関係する重要なものばかりです。
CR装置では、撮影後に濃度調整機能や画像処理によって均一な黒化度が得られることから、撮影条件の選択から解放された気がしますが、それは誤りです。いくら画像処理を行おうが、センサーに入力される前の被写体コントラストを変化させることは出来ないので、検査に応じて適正な撮影条件を組むことが重要です。

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画像:Meiji Seika ファルマ株式会社HPより引用

 

医療被ばく低減施設を目指します!


いつも大変お世話になっています。技師長の高橋です。本号が発刊される際は、すでに新年度が始まっていると思います。当放射線科の谷部長は「1年目標を立て、期日を決め実行することは成長していくためにも重要である」とよく話をしてくれます。それとは別に病院でも勤務員評価制度が始まり、個人の目標値を決めて日々研鑽しています。
さて、2015年度の私の成果目標は、
1)CT Colonographyによるスクリーニングのルーチン化
2)日本診療放射線技師会が定める、医療被ばく低減施設認定の取得を目標としました。

1)に関しては医師の役割、技師の役割、看護師の役割の調整がつかず、ルーチン化を断念せざるをえない結果となってしまいました。
2)に関しては取得までは到達できませんでしたが、準備を始めるところまで行くことができました。

医療被ばくに関して、昨年J-RIME(医療被ばく研究情報ネットワーク)から、診断参考レベル(Diagnostic Reference Level; 以下DRL)の指標が公開されました。興味があれば、是非こちらを閲覧していただければと思います。
このDRLの指標というのはこうしなければならないというものではなく、自施設の医療被ばくがどの程度の位置にあるのか?といった現状を把握するためのものであるということです。間違えてはいけないのは、この値は標準値ではないということです。あくまでも医師と協同でこれくらいの画像の質であれば、この撮影条件で良い、というように診断に必要な画質を担保したうえで撮像条件(医療被ばく)を決めることに変わりはありません。

放射線被ばくに関しては昨今、新聞報道などで社会的にも感心が高まっており、関連学会でもその対応としてこのようなガイドライン作成などが進められております。この医療被ばく低減施設認定を取得することで、当施設で放射線検査を受けられる患者さんが安心して検査を受けていただけるようになればと考えております。
さて、実際に医療被ばく低減施設取得に向けてと申しましても、実際にどうやって良いかが全くわからず、関連病院で唯一取得している平塚共済病院に見学に行ってきました。まず、説明されたのがX線量の実測をしておくと良いということでした。実測をするには高価な線量計が必要です。当院では昨年、X線TV装置を更新した際に、スウェーデン製のUnfors Xiという線量計を購入していました。その点では取得に向けた費用は軽減されます。もうひとつ重要なことは、審査官が来た時に、こういった理由で被ばくに取り組んでいるということをきちんと証明できれば良いということでした。そのためにはマニュアル類の整備や、放射線に関わるスタッフ教育なども必要となります。
このように認定取得にはX線の実測以外にも様々なハードルがありかなり大変なのですが、個人のスキルを磨くとともに科の底上げ効果も期待できるものと思われました。将来的には栄区および連携医の先生のご施設などで撮影線量に関するアドバイスなども出来るようになればと考えています。今すぐにできるものではないのですが、向かっていく方向はこういう方向だよということを示し、スタッフとともに頑張っていきたいと思います。宜しくお願いします。

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知っているようで知らない!? レントゲンの基礎① ー管電圧とはー


レントゲン基礎

単純撮影は当院で最も多く実施される検査ですが、先生の施設でも実施される機会が多いのではないでしょうか?
現在はCR装置*が主流となっていますので、患者様の体格にかかわらず均一で安定した写真が得られますが、私がこの仕事を始めた頃は、直接フィルムに撮影し、現像して画像を得ていましたので、撮影条件を誤ると診断出来ない画像になることもありました。
先生の施設ではどのようにして撮影条件を決めていらっしゃいますか?今回は撮影条件についてお話しさせて頂きます。

*CR装置
デジタルレントゲン装置、デジタルカメラと同じようにコンピューター側で濃度を補正します。濃度差が生じる事はないのですが、適正なX線量で撮影しないと被ばくが多くなる事もあります。

レントゲンの撮影条件とは

レントゲン写真は白から黒の濃淡で表されますが、この濃淡差のつけ方の違いはX線管電圧、X線管電流、撮影時間で決定します。この値を変化させるとX線の質と量を変化させることが出来ます。質が変化すると画像のコントラストが変化し、量が変化すると濃度が変化します。これら三つの条件を使い分けることが日常業務では重要になる場面が多くあります。

画像コントラストに関係する管電圧!

X線管電圧はX線のエネルギーのことであり、X線が物体を突き抜けるちから(透過力)がどのくらい大きいかに関係しています。つまり、X線管電圧を高くするとコントラストが低下します。例えば胸部レントゲンの場合、管電圧は120kVと高圧撮影で撮影します。管電圧を高くすることで、肋骨影や石灰化が淡くなり、肺内陰影が見えやすく、心臓、横隔膜に重なった肺野も観察出来ます。また、患者さんの被ばくも減少します。(画像1)レントゲン画像1

画像濃度に関係する管電流と撮影時間!

管電流とはX線の量を決めるものです。撮影時間とはシャッタースピードのことです。この2つをかけ合わせることによって写真の濃度が決定します。フィルム時代だった頃はX線の量が多すぎると真っ黒な写真が(画像2a)、X線の量が少なすぎると真っ白な写真が出てきました(画像2b)。この管電流(単位mA)と撮影時間(単位s)をかけ合せたものをmAs値(‘ますち’と呼びます)といいます。mAs値が同じ場合、写真の濃度は同じになります。

レントゲン画像2

このように、単純撮影における撮影条件は、まず管電圧を決定することで、X線の質を決めます。次に黒化度に大きく関係するX線の量を決定します。X線の量は、管電流と撮影時間の積で与えられることから、多くの組み合わせが考えられます。単純撮影はボタン1つで撮影できます。しかし、我々診療放射線技師はそのボタンを押す前に様々なことを考えています。
患者様の状態や体格等を考慮し、長年の経験から撮影条件を決め、より適切な画像を提供出来るように努めています。

次回は実際の撮影条件の組み立て方についてご説明したいと思います。

 

今後の画像読取装置(カセットタイプデジタルラジオグラフィーFPD)とは


デジタルレントゲンの元祖はCR

数年前までは、カセットにX線をあて中のフイルムを現像機で現像しシャウカステンで読影を行っていました(アナログ撮影)。その後、当院でもフイルムに変わりIPカセッテ(イメージングプレート)を使用するCR(Computed Radiography)システムに移行しモニターで画像診断するようになりました(デジタル撮影)。デジタル化されモニター診断が可能となり、様々な濃度で画像を見ることが可能になりました。
しかし、CRシステムではX線をあてたIPカセッテのデータを読み取り装置に入れ、読み取った画像をサーバーに転送し、読み取った情報を消去するなど作業工程に多くの時間がかかりました。

FPD (Flat panel Detector)とは

現在各社より発売されているX線自動検出装置FPD(フラットパネルデジタルラジオグラフィーFPD)は、簡単に言えば高級デジタル一眼カメラです。従来のIPに変わり、カセッテ内にフォトダイオード(検出器)が敷き詰められており、X線信号から電気信号への変換がカセッテ内のフォトダイオードで瞬時に行われ、同時に無線通信で撮影画像がモニター上にリアルタイムで出力されます。このフォトダイオードに記憶された画像は数秒間で消去され、次の撮影も直ぐ出来る特徴を持っています。
今までは病棟のポータブル撮影に数十枚のIPカセッテを用意しなくてはいけませんでしたが、1枚のバッテリー内蔵型カセッテで(1回の充電で)、100画像以上の撮影が可能になります。カセッテがワイヤレスタイプであるので、物理的な装置との接続も不要です。さらに被曝線量の低減(50%減)も可能だそうです。
ポータブル撮影業務の効率化はもちろんのこと、一般撮影室でも使用できる装置であり価格も発売当初より下がってきましたので、今後急速に広まる医療画像装置の一つと思います。

図1