肝MRエラストグラフィ


肝硬変を初期に発見することの重要性
日本では、肝炎ウィルスによる肝硬変の発症がおおいですが、アルコールやカロリーの撮り過ぎなどによる脂肪肝から重度の脂肪肝、そして肝硬変へと至るケースもあります。肝硬変は、肝がんを誘発させることから、早期の段階で肝硬変を把握し治療へつなげることは重要です。
肝臓MRエラストグラフィは、肝臓の硬さを定量化し、肝の線維化を把握することができる新しい画像診断法です。

図1

最先端CT装置の今


今回は今春に横浜で行われました医用画像機器展での情報をもとに最先端のCT装置に関してご紹介したいと思います。

マルチスライスCTは現在国内に1万台以上設置されており、広く普及しています。このニュースレターでも紹介しているように撮影スピードが高速化され冠動脈の撮影までもが可能になってきていることも普及を後押ししているものと思われます。しかし、マルチスライスCTであれば冠動脈の検査ができるというわけではありません。現在のところ64列以上のCTで撮影することが推奨されていますが、それでもきれいに撮影できないような症例もあります。
最新のCT装置では64列以上でも撮影が難しかった心臓の動きが速くシャッタースピードが間に合わない症例などにも対応できる装置が開発されています。CTの撮影技術は冠動脈以外の部分はほぼ確立されてきており、冠動脈の撮影がどこまでできるかが装置を比較するうえで重要なポイントとなります。

現在国内で使用されている最先端CT装置メーカーは、ドイツのシーメンス、アメリカのGE、日本の東芝の装置でしょう。
それぞれに特徴のある製品を販売していますので、それぞれのフラッグシップモデルについてご紹介いたします。

図2

シーメンスではエックス線管が2個搭載された装置を開発しています。すでに開発から10年が経過していますが、いまだに他社は開発できていません。この2管球搭載型装置というのはX線の出力源であるX線管球を2つ搭載している装置です。メリットは、撮影時間を通常の半分の時間にできるという点になります。この撮影時間というのは一般的な写真撮影で言うとシャッタースピードに当たります。
心臓は息止めをしても止めることができませんので、どれだけ高速にシャッターを切れるかどうかは非常に重要なポイントになります。この装置のシャッタースピードがどれだけ速いのかというと、現在のCT装置の1回転にかかる時間が約0.3秒程度ですので、その半分の0.15秒程度のシャッタースピードを確保することができる装置です。たいした差ではないように感じますが、これによって今まで心拍数が高くて綺麗に撮影できなかったような症例も撮影できるようになり、動きの早い大動脈弁なども静止した画像を得ることができるようです。今までは検査前にベーターブロッカーの服用をし、心臓の動きを緩やかにして撮影していましたが、このような前処置も不要になります。
この高速撮影は心臓以外の部位にも有効です。胸部CTなどは1秒以下で撮影でき、息止めの必要がないといわれるほどの圧倒的なスピードです。救急から小児までと幅広く活用されています。

図3

デュアルエナジー技術による石灰化除去

2つエックス線管から異なるエネルギーのエックス線を出力することにより、組織弁別が可能となるデュアルエナジー技術もこの装置が最初に商品化した技術になります。この技術を利用することにより、腎結石の性状を同定することや冠動脈や大動脈などに生じた石灰化を造影剤と分離して表示することなどができるようになります。また画質を綺麗にすることができる効果があり、腕を下した状態で撮影した腹部CT画像なども綺麗に観察できるようです。このほかにも、造影剤を濃く映すことが可能なので、造影剤を半分まで減らすことができます。この技術は現存の64列装置でもある程度可能な技術ではありますが、冠動脈撮影には利用できなかった技術であり、これで造影剤20cc以下での冠動脈撮影も可能となります。


図4

東芝の装置はシーメンスの装置とは異なり1回転で広範囲を撮影できるという点が特徴となっています。これは一般的な写真撮影でいうと「広角が広く撮れる」という表現が最も近いと思います。0.5ミリの検出器を320列配置することで、一度に160mmの範囲を撮影することが可能です。「面検出器CT」とか「ワイドカバレッジCT」などと表現されていて写真に示すようにかなり幅広の検出器が搭載されています。
この面検出器は東芝が世界に先駆けて開発した技術でした。

この装置の利点は広範囲を繰り返し撮影することができますので、血流解析などが可能です。臓器に造影剤が入ってくるところから出て行くところまでを繰り返し撮影するパーフュージョン検査と呼ばれるものの精度が向上します。パーフュージョン検査は現存の64列装置でも可能で頭部の動きの少ない部分でよく利用されていますが、このワイドカバレッジ装置ですと心臓のパーフュージョン検査も出きるようになります。心筋に取り込まれる造影剤をダイナミックに観察することができ、心筋虚血の有無を確認することができるようです。ただし、シャッタースピードが2管球搭載型と同じとはいきませんので心拍数が低めの患者様が対照となり限定的ではあります。
シーメンスの項でご紹介したデュアルエナジー技術に関しては、東芝の装置は1回目の撮影と2回目撮影で電圧切り替えを行うことにより2種類のエネルギー画像を得る方式です。簡易的でよいのですが、2度の撮影の間に時間が経過するため冠動脈などといった動きのある部位に対しては良い適応ではないようです。しかしこの点に関しては、ソフトウェアによる動態解析を利用し静止画を取得できるような工夫をしています。

図8


 

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GEの装置も東芝の装置と同様に160mmの幅を1回転で撮影することが可能なワイドカバレッジ装置です。東芝の装置と同様に血流解析等が可能ですが、心拍数に対して限定的となります。しかし、動態解析を使用したソフトウェアを利用し静止画を取得するような技術を搭載しており高心拍へも対応できるよう工夫されています。この動態解析ソフトウェアはGE社が最初に開発したもので、高い評価が得られているようです。
通常のヘリカルスキャンに関してはワイドカバレッジ装置の場合は少しスピードを落とす必要があることから、シーメンスの装置のような超高速ヘリカル撮影はできません。それでも写真に示すような冠動脈撮影と大動脈撮影の同時撮影を7秒ほどで可能にしています。

デュアルエナジー技術に関しては、このフラッグシップモデルでは東芝と同じように2回の撮影が必要となりますが、GE社はすでに1度の撮影中にエックス線管にかける電圧をミリ秒単位で変化させることで2種類のエネルギーのエックス線を出力させる技術を持っています。来年にはこの装置でも冠動脈にも対応可能な装置が発表されるものと期待されます。

図5


以上のようにフラッグシップモデルにはそれぞれに特徴があります。個人的にはシーメンスの技術が頭一つ抜け出ているように感じられます。しかし、一般の家電と同じように、最高位機種が一番売れているわけではなくそれぞれのニーズにあったものが売れています。特にコストや使いやすさという点で国産装置は日本では圧倒的に有利です。国内市場は東芝の装置が多数を占めており、近隣施設にも東芝の320列装置や64列装置が多数設置されています。日本が世界一のCT保有国であるのも東芝社の力によるところが大きいでしょう。
このようにCT装置の技術革新は目覚しいものがありますが、実はこのほかにも3D画像処理コンピューターなども大きく発展しています。また最近では手術前に3Dモデルを作成することで診療報酬の面で加点があったことから、3Dプリンタとの接続も一般的に行われるようになってきています。次回はこれらCT装置周辺機器についてご紹介できたらと思います。

(X線CT認定技師:保田 英志)R@H2015年11月号より