知っているようで知らない!? レントゲンの基礎① ー管電圧とはー


レントゲン基礎

単純撮影は当院で最も多く実施される検査ですが、先生の施設でも実施される機会が多いのではないでしょうか?
現在はCR装置*が主流となっていますので、患者様の体格にかかわらず均一で安定した写真が得られますが、私がこの仕事を始めた頃は、直接フィルムに撮影し、現像して画像を得ていましたので、撮影条件を誤ると診断出来ない画像になることもありました。
先生の施設ではどのようにして撮影条件を決めていらっしゃいますか?今回は撮影条件についてお話しさせて頂きます。

*CR装置
デジタルレントゲン装置、デジタルカメラと同じようにコンピューター側で濃度を補正します。濃度差が生じる事はないのですが、適正なX線量で撮影しないと被ばくが多くなる事もあります。

レントゲンの撮影条件とは

レントゲン写真は白から黒の濃淡で表されますが、この濃淡差のつけ方の違いはX線管電圧、X線管電流、撮影時間で決定します。この値を変化させるとX線の質と量を変化させることが出来ます。質が変化すると画像のコントラストが変化し、量が変化すると濃度が変化します。これら三つの条件を使い分けることが日常業務では重要になる場面が多くあります。

画像コントラストに関係する管電圧!

X線管電圧はX線のエネルギーのことであり、X線が物体を突き抜けるちから(透過力)がどのくらい大きいかに関係しています。つまり、X線管電圧を高くするとコントラストが低下します。例えば胸部レントゲンの場合、管電圧は120kVと高圧撮影で撮影します。管電圧を高くすることで、肋骨影や石灰化が淡くなり、肺内陰影が見えやすく、心臓、横隔膜に重なった肺野も観察出来ます。また、患者さんの被ばくも減少します。(画像1)レントゲン画像1

画像濃度に関係する管電流と撮影時間!

管電流とはX線の量を決めるものです。撮影時間とはシャッタースピードのことです。この2つをかけ合わせることによって写真の濃度が決定します。フィルム時代だった頃はX線の量が多すぎると真っ黒な写真が(画像2a)、X線の量が少なすぎると真っ白な写真が出てきました(画像2b)。この管電流(単位mA)と撮影時間(単位s)をかけ合せたものをmAs値(‘ますち’と呼びます)といいます。mAs値が同じ場合、写真の濃度は同じになります。

レントゲン画像2

このように、単純撮影における撮影条件は、まず管電圧を決定することで、X線の質を決めます。次に黒化度に大きく関係するX線の量を決定します。X線の量は、管電流と撮影時間の積で与えられることから、多くの組み合わせが考えられます。単純撮影はボタン1つで撮影できます。しかし、我々診療放射線技師はそのボタンを押す前に様々なことを考えています。
患者様の状態や体格等を考慮し、長年の経験から撮影条件を決め、より適切な画像を提供出来るように努めています。

次回は実際の撮影条件の組み立て方についてご説明したいと思います。

 

3DCT画像とその成り立ちについて


今回のCT特集では、画像処理技術について説明させていただきます。まず前置きとして、CT画像の成り立ちについて説明してから本題に入りたいと思います。

CT画像とは

CTで得られる画像は図1に示すような横断面(Axial断面)画像です。この画像は小さな四角形の集合体で構成されています。このマス目のX-Y方向をピクセルといい、通常512×512マス配置されています。これに厚み方向を合わせた立方体をボクセルとよびます。
このボクセルデータの集合によってCT画像は構成されています。 今回は日常診療でよく利用されるMPR法とVR法について紹介します。

図1

1枚1枚のAxial画像を積み重ねることにより下図のような3次元データとなります。そしてこの3次元データに対し種々の処理を加えることにより、様々な3D画像を得ることができるようになります(図2)。
下肢動脈の3D画像などでは約1000枚のCT画像を元に作成しています。

図2

日常診療で良く使われる代表的な3D画像処理を2つご紹介します

1.MPR(multi planar reconstruction)表示法

日常のCT検査で最も多く行われる3D画像処理です。
こちらの表示法は、日本語で「多断面再構成法」といい、任意の断面で画像を再構築する方法です。通常の横断(axial)画像のみでは把握しづらい場合等に、図に示した冠状断(coronal)や矢状断(sagittal)を追加する他、観察したい目的部分が最も良く観察できる断面(任意の断面)を再構築することができます。

図3

図4

2.VR(volume rendering)表示法

VR(volume rendering)表示法を説明するにあたって、最初にCT値について説明させていただきます。CTの画像は、CT値と呼ばれるCT画像特有の値で構成されています。人体を構成する物質のCT値は水を基準(CT値:0)として、相対値で表されます。CT値の低い方から高い方へ、黒から白の濃淡(グレースケール)で表すことにより画像化しています。例えば、図3の画像において点線で囲んだ部分に注目すると、この範囲は空気で構成されているためCT値は-1000となり画像上は黒で表現されています。
VR表示法とは、このCT値を調整することにより観察したい部分を立体的に表示します。また、CT値に対応した色と、画像に陰影をつけるための透過度の設定を行うことによって色をつけて表示することが可能です。CT値を狭めていくと皮膚面まで描出することができます。またCT値を上げていくと、臓器が見えてきます。さらにCT値を上げていくと、骨の描出ができるようになります(図4)。

図5

図6

VR画像の活用例

以前こちらで特集させて頂いた当院のマルチスライスCTでは、非常に薄いスライス厚で広範囲を短時間で撮影できるため、様々な画像処理を高精度に行うことが可能となっています。以下は、その画像処理技術の恩恵が高いものの一例です。

図7

図8

以上、今回はほんの一部ではありますが代表的な画像処理のご紹介をさせて頂きました。オートメーション化が進んではいますが、我々放射線技師がマニュアルで画像を作り込んでいく作業も多く、作成者の技術や知識が大変重要です。画像作成者としてより有用な画像作成ができるよう、画像処理技術を磨くのはもちろんのこと、ソフトとハード両面の進歩に柔軟に対応していきたいと考えています。(江上 桂)

図はCT適塾HP(:http://www.ct-tekijyuku.net/index.html)より引用改変させていただきました。

知っているようで知らない マンモグラフィーの基礎④


局所的非対称性陰影(Focal Asymmetric Density:FAD)って何?

さて、この連載もおかげさまで第4回となりました。前回は石灰化についてとりあげました。今回は「局所的非対称性陰影」についてとりあげます。FADと略語で呼ばれることもあります。マンモグラフィ独特の所見用語で、耳慣れない用語かもしれませんが、マンモ業界では「腫瘤」「石灰化」とともに非常によく出てくる用語です。
右は横浜市乳がん検診票です。ご覧になったことがありますか?
マンモ独特の用語ですがある意味マンモグラフィ読影の特徴を表している用語だと思います。

図2

高濃度乳腺にできた乳がんは雪のなかの白うさぎ。白うさぎいる??=FAD

連載第2回目に高濃度乳腺をとりあげました。乳房は脂肪、結合組織、乳腺組織から成ります。乳腺組織は乳汁を生産する組織で、加齢とともに萎縮します。乳腺組織は、マンモグラフィ上白く描出されます。若い方や授乳経験の少ない方は乳房全体が白っぽく描出され、ご高齢の方や授乳経験の多い方は乳房全体が黒っぽく描出されます。X線吸収係数が大きい組織ほど白く、小さい組織ほど黒く描出されます。乳がんの係数は0.85 に対し乳腺組織0.80,脂肪組織0.45です。若い方の高濃度乳腺はほとんど脂肪を含まないので、このような乳房に乳がんができると背景乳腺との色の差が少なく非常に見えづらくなります。

図3

図4

症例1

下の症例は比較的濃度の高い背景にできた乳がんがあります。赤点線ががんの範囲です。超音波検査でみると3.5cmの腫瘤でした。背景乳腺が高いがために「腫瘤が隠れていそうだけど本当に??そうなの??」 こんなとき局所的非対称性陰影という所見用語をつかいます。

図5

図6

症例2

この症例は背景乳腺はそれほど高濃度でないが、がんが小さいためにはっきりとした腫瘤に見えない。でもなにか隠れていそう=「局所的非対称性陰影」とされた症例です。
切除検体のMMGでは乳腺の重なりの影響が排除されがんの存在がはっきり見えます。

図7

症例3

白っぽく見えてなにか隠れていそう?精査すると何も病変はなく正常乳腺でした。
乳房を折りたたんで撮影するので、乳腺がたくさん重なって撮影された部分は正常でも白っぽく浮かび上がって見えます。病変が隠れていそうだけど実は正常乳腺の重なり=これも「局所的非対称性陰影 FAD」と表現します。

図8

乳腺と病変の違いは非常にわずか・・

乳腺と病変のX線吸収の違いは非常にわずかです。そこを目一杯強調して検出するのがマンモグラフィです。マンモグラフィの読影は雪の中で白うさぎを探す、ジャングルの中で迷彩の兵隊さんを探す、闇の中で黒子をさがすようなものです。よく見えなくて確信できないけどなんか怪しい=「局所的非対称性陰影=FAD」です。
高濃度の若い人の乳腺では悪性病変があっても腫瘤として認識できず局所的非対称性陰影としてしか認識できないことも多いです。
局所的非対称性陰影の多くは正常乳腺の重なりですが、病変が隠れていることもあるので精査の対象となります。他に悪性病変を疑う所見が一緒にあれば病変の存在する確率が高くなります。

図10

あらためて考える「SPECT」の意義・その1


核医学検査で「SPECT」という言葉を耳にすることがあると思われます。「SPECT」はSingle Photon Emission CTの略で核医学ガンマカメラの撮影手技のひとつであり、X線CTなどと同様の断層撮影です。脳血流や心筋シンチグラムではこの手技が第1選択となります。一方で骨シンチグラムやガリウムシンチグラムでは全身像や局所の撮影は従来から第1選択であり、必要に応じてSPECT撮影を追加します。当院の実際としては、これらの検査においてはほぼ全例SPECT撮影を行っております。また腎レノグラムや唾液腺シンチグラムなどに代表される放射性医薬品を投与された後の経時的画像収集検査においても、SPECTは追加項目の検査になる場合があります。
唾液腺シンチグラムは過テクネチウム酸ナトリウム溶液(99mTcO4-:パーテクネテート)を投与し唾液腺への集まり具合やクエン酸刺激への反応を観察する検査です。シェーグレン症候群に代表される唾液腺分泌機能を評価する検査が唾液腺動態シンチグラムです。一方、唾液腺腫瘍などでWartin腫瘍や多形腺腫などの判別を目的として行う検査として唾液腺形態シンチグラムがあります。Wartin腫瘍や多形腺腫では投与された放射性医薬品は正常唾液腺と同様に必ず集積しますが。クエン酸刺激に対しては正常唾液腺が分泌排出されて唾液腺への集まりが低下するのに対し、Wartin腫瘍や多形腺腫では刺激に反応せずにそのまま留まっていることが判別のポイントとなります。
唾液腺形態シンチグラムではパーテクネテートを投与後、10分前後、20分前後、30分前後、40分前後で正面像、左右側面像の局所撮影を行います。20分での撮影を終えた後、クエン酸刺激反応を観察するためにレモンキャンディーを舐めていただきます。20分前後/30分前後の画像の差異を検討するのには正面像が従来重要視されて来ましたが、当院ではクエン酸刺激を行う直前にSPECT収集を行い、刺激後30分前後の局所撮影を行った後に続けて再度SPECT収集を行います。
下記は右耳下腺腫瘍疑いで施行された一例です。投与後20分の正面像撮影(図1)を行い、その後SPECT撮影を実施しております(図2)。クエン酸刺激後に投与後30分の正面像撮影(図3)を行い、その後同様にSPECT撮影を実施しております(図4)。正面像の比較でクエン酸刺激前後のある程度の判別は可能ですが、目的部位の実際の集積についてはSPECTを追加することによって、より鮮明になってきます。
経時的な撮影を行っている上でのSPECT撮影を組み込むので以前のガンマカメラではSPECTを収集する時間の確保がままなりませんでしたが、現在のガンマカメラでは「分解能補正+OSEM (Ordered Subset Expectation Maximization)」という画像再構成手法で短時間の収集(7分程度)でも鮮明なSPECTイメージを得ることが容易となったことでプロトコルが達成されています。次回は「分解能補正+OSEM」についてお話することにしましょう。

図11

IGRT :画像誘導放射線治療について


さて今回も前回に引き続き、がんの形や動きに合わせて照射をおこなう技術Part2をお送りします。
今回は、IGRTと呼ばれる治療技術をご紹介致します。IGRTはImage Guided Radiation Therapyの略で、日本語では画像利用放射線治療もしくは画像誘導放射線治療と訳されます。
放射線治療では、照射時に患者自身の位置変化であったり、体内臓器の大きさの違いや動き(腸管のガスや膀胱の容量、呼吸による肺や肝臓の動き)などで、照射位置がずれる場合があります。IGRTは、これらの位置ずれを、X線画像を利用して修正を行い、放射線を正確に病巣に照射する治療技術です。
IGRTでは、放射線治療室内で照射直前に、X線撮影やコーンビームCT撮影(CBCT)、X線透視などを行い、画像を取得します。得られた画像情報(治療直前画像)と実際に照射を行う画像情報(治療計画画像)を比較し、照射位置のずれ量を1mm単位で修正し、照射を行います(図2)。照射直前に位置照合をするため、精度高い放射線治療が行えます。また、IGRTを利用することにより、正常組織への照射を最小限に抑えながら、病巣への放射線の集中性を高めることが可能になります。現在、最も注目されている治療技術です。
IGRTは通常治療から高精度治療で幅広く利用されており、最近では呼吸による病巣の動きにも対応した照射(追尾照射や迎撃照射)も可能になっています。
当院に導入される放射線治療装置(LINAC)もX線撮影、CBCT、X線透視全ての機能を搭載しておりますので、IGRTが可能です。治療する疾患や照射部位により適切な位置照合方法を選択し、精度の高い照射を行っていきます。安全で安心できる(身体にやさしい)放射線治療を目指して行きますので、ご期待して頂ければと思います。

次回は放射線の強さを変えて照射をおこなう技術(強度変調放射線治療:IMRT)についてお送りします。

図13

図14

図2 画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiation Therapy) 画像は東芝メディカルシステムズより提供

今後の画像読取装置(カセットタイプデジタルラジオグラフィーFPD)とは


デジタルレントゲンの元祖はCR

数年前までは、カセットにX線をあて中のフイルムを現像機で現像しシャウカステンで読影を行っていました(アナログ撮影)。その後、当院でもフイルムに変わりIPカセッテ(イメージングプレート)を使用するCR(Computed Radiography)システムに移行しモニターで画像診断するようになりました(デジタル撮影)。デジタル化されモニター診断が可能となり、様々な濃度で画像を見ることが可能になりました。
しかし、CRシステムではX線をあてたIPカセッテのデータを読み取り装置に入れ、読み取った画像をサーバーに転送し、読み取った情報を消去するなど作業工程に多くの時間がかかりました。

FPD (Flat panel Detector)とは

現在各社より発売されているX線自動検出装置FPD(フラットパネルデジタルラジオグラフィーFPD)は、簡単に言えば高級デジタル一眼カメラです。従来のIPに変わり、カセッテ内にフォトダイオード(検出器)が敷き詰められており、X線信号から電気信号への変換がカセッテ内のフォトダイオードで瞬時に行われ、同時に無線通信で撮影画像がモニター上にリアルタイムで出力されます。このフォトダイオードに記憶された画像は数秒間で消去され、次の撮影も直ぐ出来る特徴を持っています。
今までは病棟のポータブル撮影に数十枚のIPカセッテを用意しなくてはいけませんでしたが、1枚のバッテリー内蔵型カセッテで(1回の充電で)、100画像以上の撮影が可能になります。カセッテがワイヤレスタイプであるので、物理的な装置との接続も不要です。さらに被曝線量の低減(50%減)も可能だそうです。
ポータブル撮影業務の効率化はもちろんのこと、一般撮影室でも使用できる装置であり価格も発売当初より下がってきましたので、今後急速に広まる医療画像装置の一つと思います。

図1

特集MRI:薬を使わないでできる脳血流検査  ASLを紹介します


MRIで脳血流診断?

脳血流の評価というと、放射性核種を用いて血流量を定量評価する脳血流シンチがゴールドスタンダードです。当院の核医学検査でも行っている検査ですが、当院のように核医学検査装置を有している施設でなければ検査ができません。MRIで脳血流が評価できないかという事で、造影剤を使って脳血流を評価する方法(dynamic susceptibility contrast:DSC法)があります。DSC法は造影剤が脳血管内に流入する状態を撮影し続けます。しかし、解析方法の自動設定が難しく、定量値が撮影法に依存すること、定量値に誤差が生じやすいなどの問題点があり、精度の高い安定した定量値を得ることは難しいため、定性的な評価に利用されています。
近年、造影剤を使わずに脳血流評価が行えるASL (arterial spin labeling)法が普及してきました。ASLの研究自体は古く約20年の歴史がありましたが、装置の高性能化・高磁場強度の装置の登場により、ようやくソフトウェア技術が追いついてきました。造影剤が不要で、放射線被ばくも無く、非侵襲的に繰り返し検査することが可能で、当院のプロトコルでは約2分で撮影する事が可能です。

なぜ注射なしでOKなのか?

原理は頸部血管にラジオ波を照射して血液内のプロトンをラベリング(磁気的に標識)します。このラジオ波をラベリングパルスと呼びます。ラベリングされた血液が脳組織に到達するまで待った後、高速に画像収集を行います。ラベリングパルス「あり」の時と「なし」の時の差を解析するとわずかな磁場の変化がみられます。この違いが入ってきた脳血流の違いとして描出され、核医学検査のような脳灌流画像を取得する事ができます。ラベリングされた血液が造影剤代わりとなることから、適切なタイミングで撮像されていないと結果が正しくなくなる恐れがあります。

図1
InnervisionHPより引用

どのタイミングで撮影するのか?

ラジオ波でラベリングされた血液が脳組織に到達してから画像収集までの時間をPLD(post label delay)といいます。臨床では血流速度に個人差や左右差があることから適切なタイミングでの撮影が難しいときがあります。その為、原則としてPLD=1525msec(1.5秒)とPLD=2525msec(2.5秒)の2つのタイミングで撮影をしています。血流速度の速いものを反映しているのがPLD1525msecの画像、遅い血流を反映しているのがPLD2525msecであると考えられます。(当院症例:Case5をご参照ください)

図2
各種脳還流画像検査法の特徴(表:八重洲クリニック様HPから引用改変)

当院での症例

50歳代女性 左方麻痺 救急車で当院に搬送された。
CTでは異常所見なく、MRIを施行された。
拡散強調画像で淡い高信号、MRAで右MCAに狭窄が疑われ、ASL画像にて右中大脳動脈支配領域に一致した血流低下が疑われた。DSA検査を施行後、血管内治療が行われた。

図4

図5

図8

 

 

 

脳DATスキャンのご紹介


パーキンソン症候群およびレビー小体型認知症の画像診断が可能になりました

脳核医学画像診断の最新の話題として、パーキンソン症候群およびレビー小体型認知症を対象とした検査名「脳DATスキャン」:ドーパミントランスポータシンチグラフィーを紹介させていただきます。

2014年1月27日(月)より(株)日本メジフィジックスより「ダットスキャン静注」(123I-イオフルパン:123I-FI-CIT)の販売開始となり、当院でも検査を開始しております。

本製剤ではパーキンソン病(PD)およびレビー小体型認知症(DLB)にみられる黒質線条体ドパミン神経の変性・脱落を評価するために、黒質線条体ドパミン神経のターミナル(終末)に高発現している、ドパミントランスポーター(DAT)の結合能の評価をターゲットとします。ゆえに黒質線条体ドパミン神経の変性・脱落により、本製剤の線条体への集積は低下することで

①臨床的に診断が確定しないパーキンソン症候群患者において,特発性パーキンソン病に関連するパーキンソン症候群,多系統萎縮症,及び進行性核上性麻痺と本態性振戦(ET)の鑑別診断

②レビー小体型認知症(DLB)と推定される病態とアルツハイマー型認知症(AD)の識別診断

が期待されます。

線条体への集積は年齢ごとに減少していくとの報告もあり、脳血流の統計解析手法と同様に今後解析方法等の更なる開発は進んで行くと思われます。21世紀の脳核医学診断の第一弾としてご紹介させていただきました。

図1

高度化する放射線治療


今回は放射線治療の進化した背景についてご紹介したいと思います。現在の放射線治療の進化は目覚ましく、以前と比べることができないくらいに進化しています。その中で最も変化をもたらしたのが、マルチリーフコリメータが登場したことです。以前の照射では、照射をおこなう部位に対し、固形の鉛ブロック(モノブロック)を複数使用し照射野を形成し(図1)、これを照射装置のヘッド部分に取り付けて照射をおこなっていました。現在はマルチリーフコリメータがヘッド部内に装備され、一枚一枚の板を動かすことで病巣の形に合わせた照射がおこなえるようになりました(図2)。また安全面においても、以前のように治療中にブロックが落下するなどの心配もなくなりました。
マルチリーフコリメータの一番の利点は、リスク臓器への線量を減らす照射野が容易に作成できるようになったことです。この技術を利用することで、最近注目されている、SRT(定位的放射線治療)、IMRT(強度変調治療)、IGRT(イメージガイド下放射線治療)などの高精度で高技術な放射線治療が可能となりました。こちらの方は随時紹介していく予定であります。さらに現在では、マルチリーフコリメータも進化しており、放射線遮蔽能力の向上や運動性能の向上(移動スピード)などが大幅に進化しております。
当施設に入る治療装置にも最先端の技術が搭載されたマルチリーフコリメータが装備されていますので体に優しく安心できる放射線治療がご提供できると思います。

マルチリーフコリメータ

知っているようで知らない マンモグラフィの基礎③


石灰化=がん それは間違いです!!

マンモグラフィーでよくみかける石灰化。石灰化があると必ずがんが隠れているのでしょうか??今回は、知っているようで知らない「石灰化」を掘り下げてみようと思います。

「石灰化」とは文字通り組織にカルシウムが沈着してできた構造物です。マンモグラフィーにうつっている石灰化それ自体は結晶化したカルシウムです。がんに関連する石灰化であってもそれは同じです。どうも石灰化という用語が一人歩きしていて、一般の患者さんのなかには石灰化=がんだと思い込んでしまっているかたもよくいらっしゃいます。もちろん石灰化=がん細胞が描出されているのではありません。石灰化、つまりカルシウムの結晶がどのような機序で生成され、その周囲がどんな構造かが問題なのです。それは良性のこともあるし悪性のこともあるのです。

石灰化はみつけるのは簡単! みつけたあとの良悪性の鑑別診断が重要

マンモグラフィ上には、皮膚、乳腺、乳腺周囲の結合組織、脂肪組織等が描出されています。それぞれの組織ごとにX線吸収度が異なりその違いがマンモグラフィーでは白〜黒のグラデーションで表現されます。乳がんのX線吸収係数は0.85cm-1/20keVです。それに対し正常の乳腺組織は0.80、脂肪組織は0.45、微小石灰化は12.5です。背景乳腺が高濃度乳腺であっても脂肪性乳腺であっても石灰化をマンモグラフィー上で見つけることは比較的簡単なのです。前回背景乳腺濃度のお話しをしました。背景乳腺が高濃度だと、がんがあっても腫瘍そのものが視認しにくいことがあるのですが、そんな場合でも石灰化はよく見えます。高濃度乳腺や不均一高濃度の乳腺ではがんの本体は見えなくても石灰化のみが見えてがんが見つかることもしばしばあります。
しかし石灰化は数からいうと良性変化に伴うものが圧倒的多数で、がんに伴うものは一部です。ほとんどのマンモグラフィーでなんらかの石灰化がうつっています。全く石灰化のうつっていないマンモグラフィーを探す方が難しいくらいです。石灰化は見つけることよりも、鑑別診断がキモなのです!!

良悪性の鑑別のポイント1  大きい石灰化(短径5mm以上のもの)はまず良性

図2

良悪性の鑑別のポイント2  ミリ単位の微小石灰化は良悪性の鑑別が必要

乳がんに関連する石灰化のほとんどは、乳管内のがんに生じます。乳管内のがんに起こる石灰化の生成機序は大きく分けて2通りあります。一つは乳管内に生じたがん細胞が増殖した結果、乳管の中心部で腫瘍壊死が起こり、壊死組織に石灰が沈着する「壊死型石灰化」です。壊死型石灰化=がんの石灰化と考えてよいです。もう一つは、乳管の管腔や篩状構造をとったがんのなかの管腔構造の中に石灰分を含んだ分泌物が貯留し、その分泌物の中に石灰の結晶が析出する「分泌型石灰化」です。

壊死型石灰化=乳管内を埋め尽くしたがんの中心が壊死してその内部にできる。

図4

分泌型石灰化=乳管内の分泌物に石灰の結晶が析出

図6

良悪性の鑑別のポイント3  規則性をもった分布は乳がんの可能性が高い

図7