核医学プチ講座「ブルズアイ」のシリーズ最終章!
負荷心筋血流シンチにおける負荷誘発虚血の評価指標値「SSS」「SRS」「SDS」についてのお話です。
まずはおさらい(詳細は2021年9月号ご参照ください)
「ブルズアイ(Bull’s-Eye)」とは心筋SPECT画像の短軸像(Short Axis : SA)を心尖部から心基部まで同心円状に投影したものです。(下図)ブルズアイの見方や評価により以下の観察が可能となります。
◎ 負荷心筋血流SPECTにおける虚血性変化を観察
◎ 時間毎の集積変化を観察
◎ 2つのRI薬品の心筋への集積を観察
◎ 心電図同期収集による心筋SPECTの壁運動等、動態観察
ここから本題!
「SSS」「SRS」「SDS」とは
ブルズアイを17または20セグメントに分割し(当院では17セグメントを採用)、0(正常)~4(無集積)の5段階にスコア化、このスコアをもとに評価します。
SSSは負荷時の合計スコア、SRSは安静時の合計スコア、SDSはSSSからSRSを差し引いた虚血心筋スコアとなります。 SDSを%表示し虚血心筋量を半定量的に評価したものが%Ischemic(%SDS)と定義されます。
以下、自験例を2例紹介します
症例1 %Ischemic=13.2%
症例2 %Ischemic=7.4%
最新の動向は
今回の内容につきましては、日本メジフィジックス 医療関係者向けサイト「SPECTを用いた虚血心筋の評価による治療選択と予後 %Ischemicの概念と臨床応用」(日本大学医学部循環器内科教授 松本直也先生監修)を参考に掲載しました。その中から一部%Ischemicに関する動向を紹介します。
Hachamovitchらは2003年に、虚血心筋量(%Ischemic)が左室心筋全体の10%以上の場合、薬物治療よりも血行再建術が予後を改善すると報告しております1)。その後、同一著者らが追試を行い、心筋梗塞の既往のない患者において、やはり虚血心筋量10%が血行再建術による予後改善の閾値であること(全ページの症例1はこれに相当)、虚血心筋量が大きいほど血行再建による予後改善効果が大きいことが報告されています2)。
虚血心筋を有する症例に対し、冠血行再建術が予後の改善につながるか否かを評価する前向き無作為化国際研究が現在進行中です(ISCHEMIA study)3)。また、相対的な心筋血流評価を補う方法として半導体検出器カメラを用いた心筋血流定量(myocardial flow reserve算出)の臨床的有用性4)も示唆されています。今後はこのような多方面からのエビデンスの蓄積や定量法の普及が望まれることになります。
放射線技術科主任/核医学専門認定技師/放射線内用療法安全取扱担当者 荒田