VMAT~part2~ 検証作業


以前VMAT(Volumetric Modulated Arc Therapy:強度変調回転照射法)治療をご紹介しました。
VMAT治療は通常の放射線治療に比べ、とても複雑な治療となるため、患者さんごとに正しく照射が行われているか検証作業が必要になります。主な検証作業は、線量分布検証と評価点線量検証です。今回は当院で行っている線量分布検証をご紹介します。
線量分布検証とは、治療計画で得られた線量分布と実際に治療装置で照射をおこなった際の線量分布に相違はないか確認する作業になります。

VMATはオーダーメイド

実際の前立腺治療患者さんのVMAT治療計画です。線量ごとに色分けされた分布が表示され、赤い線は治療中にガントリーが回る軌道角度です。これだけを見ると複雑さは伝わりませんが、実際はすごく緻密に計算されており、治療目的(がん)に必要な線量があたり、リスク臓器(放射線感受性の高い正常組織)にはあまり線量が入らないような分布になっています。この治療計画をファントムに置き換えて線量分布を作成し、検証作業を行います。
VMAT治療ではマルチリーフも複雑に動くので、検証ではマルチリーフがスムーズに動いているかの動作確認も行います。

どこからでも!全方位検出!!

前述のファントムに置き換えた線量分布が正しく得られるかを測定する検出器です。1386個のSunPoint半導体検出器を円筒形ファントム内にらせん状に配列した多次元検出器で、360°どのガントリ角度からも常に一貫した等方位性が得られます。
この検出器で検出された線量分布を元に検証を行います。

誤差はどれくらい?

多次元検出器(1220型ArcCHECK)で測定した結果からガンマインデックスを求めます。ガンマインデックスとは位置誤差に対する評価値DTA(Distance to Agreement)、治療計画と測定値の相対的な差異を示すDD (Dose Difference)の両方を加味した評価指標。当院では、ガンマインデックス2mm(DTA:位置の相違),3%(DD:線量の相違)で95%以上を目標としています。
実際にArcCHECKで測定した分布とヒストグラムは以下のようになり、評価基準を満たさない点の中で、線量が基準より高く検出された点が赤く表示され、低く検出された点が青で表示されます。これによりどの部分で線量にズレが生じているか確認できます。
しかし、あくまでファントムでの評価なので実際の臓器でどのような線量分布を示すかは専用のアプリケーションを使用して検証しています。それについては、また別の機会に紹介したいと思います。

北畠(智)