放射性ヨウ素(131I)内用療法について ~バセドウ病の治療~


甲状腺とヨードは仲良し

バセドウ病の131I内用療法は甲状腺のヨウ素取り込み能を利用して、131Iをカプセル(ヨウ化ナトリウムカプセル)として経口投与します。経口投与された131Iは特異的に甲状腺に集積し、甲状腺濾胞細胞を破壊します。その結果、甲状腺が縮小し甲状腺機能亢進症を改善させるという治療法です。
1998年から13.5mCi(500MBq)までであれば、外来での131I投与が可能になりました。当院でも外来にて行っています。
バセドウ病には薬物療法、手術療法と内用療法があります。患者さんが希望すればアイソトープ治療を受けられますが、適応と禁忌事項があります。

適応

・抗甲状腺薬治療や手術を望まないとき
・甲状腺腫を小さくしたいとき
・心臓病や肝臓病などの慢性疾患を持っているとき
・抗甲状腺薬で十分コントロールできないとき
・抗甲状腺薬で副作用が出現したとき
・抗甲状腺薬中止後に再発したとき
・手術後にバセドウ病が再発したとき

禁忌

・妊婦、妊娠している可能性のある女性
・近い将来(6ヶ月以内)妊娠する可能性がある女性
・授乳婦
・重症甲状腺眼症(相対的禁忌)

慎重投与

・18歳以下
※原則として19歳以上を適応対象とする

バセドウ病131I内用療法の実際

◎スケジュール

治療前の準備としてヨード制限、抗甲状腺薬の中止、甲状腺摂取率の測定、甲状腺眼症の評価等が必要になります。
当院では、治療日の5日前に摂取率測定を行います。摂取率測定は測定目的用の123Iカプセルを内服し、24時間後に測定します。(図1)

◎線量の決定方法

131Iの投与量は、放射線治療医が(1)甲状腺131I摂取率、(2)推定甲状腺重量、(3)有効半減期などをもとにして、適切な量(期待照射線量30~70Gy)を算定します。

◎ヨウ化ナトリウムカプセル

カプセルは表1に示すものを、患者さんの投与量に応じて組み合わせて使用します。
例)投与線量が336MBqの場合
ヨウ化ナトリウムカプセル3号を3カプセル(111MBq×3=333MBq)投与

◎治療日当日

核医学検査室(管理区域内)にて放射線治療医、看護師、診療放射線技師が立会いの下でヨウ化ナトリウムカプセルを内服します。

<内服の注意点>
内服の際は手指の被ばくを避けるために、カプセルは直接手で触れないようにします。当院ではカプセルを割り箸で掴み口に運んで内服して頂きます。

<お渡しするもの>
*エチケット袋
何らかの理由で嘔吐をした場合、吐瀉物からの汚染被害を避けるためにお渡しします。
*患者情報カード
緊急時に備えて131I内用療法を受けたことが明確になるように図3に示す患者情報カードをお渡しします。こちらは必携して頂くようにお伝えします。

内服した131Iのうち、甲状腺に取り込まれなかったものはほとんど尿中に排泄されます。また、極微量ですが汗や唾液にも含まれます。この131Iから放出される放射線は人体に悪影響を及ぼしませんが、微量の放射線が出ていることを患者さん自身に認識して頂く必要があります。ご本人に対して安全な治療法なので、他人に危険を及ぼすことはありませんが、内用療法を受けた方のエチケットとして上記の2点に加え、後述する生活制限においても守っていただきたい事柄です。

◎治療後

<経過>
治療後次第に甲状腺は縮小し甲状腺ホルモン値は減少しますが、治療後半年間は甲状腺機能が安定しないことがあるため定期的な診察が必要となります。甲状腺眼症が悪化する場合があるため、治療の前に甲状腺眼症の治療が必要となります。治療効果には個人差があり、甲状腺機能が正常となって内服治療が不要になる方もいれば、甲状腺機能低下症となり甲状腺ホルモン薬の内服を継続する必要がある方もいます。

<生活制限>
1.家庭での注意、2.乳児・幼児との接し方、3.学童・妊婦との接し方について各制限項目及び制限日数が設けられています。こちらの詳細については放射線治療医及び看護師からプリント及びパンフレットを配布し説明を行っています。

131I内用療法は70年以上の歴史がある安全な治療法です。その安全性に関しても報告されています。当院での治療成績に関しても機会がありましたらご報告させて頂きます。厳格な適応や禁忌の問題もありますので適応を考慮する症例が出た際は当院の専門医へご相談下さい。