今回は喉頭がんについて紹介します。
放射線治療は、放射線を照射することによりがん細胞を破壊し、消滅させたり、小さくしたりすることが目的となります。
がん細胞に正確に放射線を照射するため、頭頸部領域ではシェルという固定具(写真.1)を使用するのが一般的です。シェルを使用することにより、毎回の照射精度を向上させることができます。
頭頸部領域においての放射線治療の大きなメリットは、機能温存になります。喉頭がんの場合、外科的手術にて喉頭を切除しないため、声を出す機能を失うことがありません。早期の喉頭がんの場合、治癒率についても非常に高く、最近では放射線治療が第一選択となる場合がほとんどです。
放射線は正常な細胞にもダメージを与えますが、その影響をなるべく少なくするために、分割にて放射線を照射します。通常、治療にかかる期間は6〜7週間ほどになります。
がんの進行度により、放射線治療を単独で行う場合と、放射線治療と薬物療法を併用する場合があります。早期症例(TNM分類のT1~2,N0)では放射線治療が選択されます。
声門上部がんT1~2症例や声帯運動障害があり浸潤傾向の強いT2症例に対しては化学放射線療法あるいは喉頭温存手術が推奨されています。
T3~4症例では、大半が喉頭全摘となりますが、近年では患者のQOLを考慮し、可能な限り喉頭温存を図るべきとする考えになりつつあります。
1)放射線治療(単独)
早期の場合は放射線治療単独で行います。週に5回で計30回程度(約6週)の分割照射が一般的です(図.1)。早期の場合は放射線を照射する範囲が狭いので、皮膚の発赤や嗄声(声がれ)などの比較的軽い副作用がみられます。
2)化学放射線療法
化学放射線療法は、進行した喉頭がんに対して、薬物療法と併用して放射線治療を行う方法です。薬物を併用することにより放射線治療の効果を高めることができます。最近のメタアナリシスの結果でも、同時併用化学療法が照射単独に比較して有意に予後が良好であることが示されています。同時併用薬剤としては、シスプラチン単剤がエビデンスのある薬剤になります。
一方で、副作用は化学療法と放射線の両方の副作用により嗄声や音声障害、粘膜炎による嚥下障害、皮膚炎、骨髄抑制など放射線単独時より反応が強くでます。
●副作用について
放射線治療中や治療直後の急性期の副作用としては、皮膚の炎症による痛み(図.2)、口腔・咽頭・喉頭の粘膜炎による痛みがしばし見られますが、これは時間とともに回復します。
治療後数か月経って現れる晩期の副作用としては、唾液の出る量の減少や口腔乾燥、味覚障害、摂食・嚥下機能の低下等が出る場合があります。これらについては定期的な診察にて適切に対応して行きます。
= 参考文献 =
金原出版 放射線治療ガイドライン2016 P113~117
集潤社 がん・放射線療法2017 P709~715
金原出版 放射線治療Q&A 日本放射線腫瘍学会編 P71~77