症例(Rad@Home2018年11月号掲載分)


問題:46歳、男性 .

採血でFree T3 8.37pg/mL、Free T4 2.38ng/mL、TSH<0.004μU/ml。

下記のa.~e.のうち、最も考えられる疾患は何でしょうか?

a. Plummer病
b. Basedow病
c. 慢性甲状腺炎(橋本病)
d. 亜急性甲状腺炎
e. 甲状腺癌

解説と回答

◆甲状腺シンチグラフィについて
①臨床的意義
超音波検査の発達に伴い、甲状腺の形態や腫瘍の有無を判断することは少なくなり、むしろ甲状腺摂取率が重要です。
②使用する放射性医薬品
123I、131I、99mTc-pertechnetate(99mTcO4ー)で、99mTcO4ー(半減期約6時間)が最も多く用いられます。99mTcO4ーの摂取は甲状腺機能と比例し、ヨウ素の摂取制限は不要です。投与量74~185MBqを静注後、30分後に撮像します。ヨードイオン(Iー)と同様に1価の陰イオンであり、甲状腺に取り込まれますが、有機化されないため再び血中に放出されます。この原理を用いて摂取率の測定を行います。また、抗甲状腺薬の治療効果の判定にも有用です。当院での99mTcO4ーの甲状腺摂取率の正常値は、30分値で0.4~2.5%としています。

a. Plummer病は、自律性機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroid nodule;AFTN)において甲状腺ホルモンが過剰に産生分泌される病態です。結節状の集積がみられる一方で、正常甲状腺部分をほとんど、または全く描出しません(下図A)。
b. Basedow病では、甲状腺腫大と摂取率の亢進が特徴です(下図B)。
c. 慢性甲状腺炎(橋本病)では、病期により様々な像を示します。びまん性腫大、RI分布の不均一、進展例では軽度~高度の不規則な欠損像が認められます。
d. 亜急性甲状腺炎では、シンチグラフィでは全く描出しないことが多いです。無痛性甲状腺炎でも同様に摂取率が低いです。
e. 甲状腺癌では、腫瘍が存在する部位に一致して辺縁不規則な欠損像を示します。

解答d. 亜急性甲状腺炎

参考文献)
・核医学ノート 金原出版
・核医学検査ガイドブック プリメド社 など