アーチファクトとは…
虚像、障害陰影とも言われ、画像に映り込んでしまうにせ偽の信号を指します。特にMRIのアーチファクトは多くの種類があり異常所見ではない部位でも異常のように見えてしまう場合があるため、よく理解し適切に抑制することが必須です。
今回のニュースレターではMRIで見られる代表的なアーチファクトを紹介します。
折り返しアーチファクト
撮影する範囲の外側にある対象物が撮影範囲内に映り込む現象で、位相エンコード方向※に現れます(図1)。本来画像の外にある対象物が映り込むことは診断にも影響することがあるため、抑制する必要があります。抑制方法はいくつかありますが、それぞれの方法にメリット・デメリットがあるので検査や患者さんの状況ごとに適切な方法を選択しています。
モーションアーチファクト
様々な動きによるアーチファクトです。動脈、静脈の拍動や呼吸の動きによるものや、患者さんの体動によって生じるものがあります。腹部検査では呼吸によるアーチファクトがしばしばみられます(図2)。検査中の不意の動きなども考慮し、私たち技師は目的部位をしっかり固定し、患者さんに動かないでいただくことの重要性を説明してから検査をしています。
磁化率アーチファクト
磁化率アーチファクトとは、組織と空気、組織と金属といったように磁化率の異なる境界に生じるアーチファクトです。(磁化率とは物質の磁化の難度を表すもので、磁石にくっつきやすいものほど強い。)磁化率の違いがMRI装置内で磁場の歪みを生み、画像の歪みの原因になります。その例で多いのが、義歯(図3)、入れ歯やアイシャドー、金属クリップなどです。 検査の前に取り外すことの出来るものはすべて外していただいていますが、取り外せない物については同部の周囲が広範囲に歪みを生じ評価が難しくなります。
厄介なアーチファクトも上手く利用すると、とても力強い味方になってくれます。そんな症例を紹介します。
微小出血検出(磁化率アーチファクトを利用)
T2*強調画像は磁場の不均一性に敏感であるグラジエントエコー法で撮像したMRI画像の一種です。頭蓋内の微小出血はCT画像には映りませんが、T2*強調画像で磁化率アーチファクトにより画像に現れます。
その他にも、ケミカルシフトアーチファクト、N/2アーチファクト、打ち切りアーチファクト、ジッパーアーチファクト、マジックアングルアーチファクト、クロストークアーチファクトなどなど、たくさんのアーチファクトがあります。MRI担当技師は、ドクターが求めている画像を出来るだけキレイに撮像すべく、日々これら厄介なアーチファクトと戦って仕事をしています。