知っているようで知らない!? レントゲンの基礎③ -撮影距離-


前回X線写真撮影時の条件についてお話させて頂きましたが、今回は距離についてお話させていただきます。

撮影距離って重要なの?

先生の施設ではX線写真を撮る際、どれぐらい距離をとって撮影されていますか?
当院では、立位の胸部・腹部は200cm、臥位であれば100cm、その他整形等での骨の撮影は一部を除いて100cmで撮影しています。

撮影距離が短いと画像が拡大します

距離を選定する際、考えなければならないこと、それは画像の拡大(ゆがみ)です。
X線写真は、X線が管球から円錐状(四角錐)に放射されているため(図1)、厚みのある被写体を撮影するとX線写真上では常に像の拡大が発生し、実物より大きく描出されています。(図2)

距離をとることで平行に!

Aの位置よりもBの位置から撮影した方が患者さんに入射するX線が平行に近くなり画像の拡大が少なくなります。(図1.図2)
その為、可能な限り距離を離して撮影するのが理想ですが、距離を離しすぎると線量不足になります。撮影室の広さや、使用するX線発生装置の性能を考慮した上で当院では200cmと選定しました。

distance
胸部レントゲンを後ろから撮る理由

また、胸部撮影をPA(Posterior-Anterior view)撮影するのも、心臓をフィルムに近づけることによって、ほぼ実物大に写るからです。AP(Anterior-Posterior view)撮影では若干ですがフィルムと心臓に距離が開くので心臓がやや大きくなり、肺が狭く写ります。
従って、PAで撮影した方が心臓は実物大に写り、肺が広く写るため診断しやすくなるのです。

整形等での骨の撮影においても理想としてはなるべく距離を離した方がいいのですが、多くの場合臥位での撮影となりますので、天井の高さや操作性を考え100cmとなりました。

X線写真は、前回との比較を目的に撮影することが多いです。
我々放射線技師は、担当者が替わってもなるべく統一条件下で撮影するように心掛けて、日々従事しています。
(森 直彦)