前回の特集ではCTにおける専用ワークステーションを使用した基本的な画像処理技術について記載させて頂きましたが、今回はその画像処理技術を利用したCTによる手術支援3D画像について大腸がんの症例を元にご紹介させて頂きたいと思います。
近年、腹腔鏡の技術が進歩し大腸癌の手術でも腹腔鏡下でおこなうことが多くなり、当院でも行われています。開腹術と比較し、腹腔鏡下での手技は当然ながら視野が狭くなります。手術前に腫瘍や血管等の位置を把握できるような3D画像を外科の先生に提供するようにしています。
術前支援3D画像
【下行結腸癌術前】
当院では大腸がん術前の時などにおいて造影剤を使用してのCTC撮影(後述)を行っています。造影剤を使用することにより、動脈・門脈を描出することが可能となり、さらに腫瘍も造影剤によって染まるため、血管と腫瘍の位置関係が鮮明になり、術前計画や術中の画像支援として有用であると考えています。
下の画像は下行結腸にできた腫瘍の術前の為、造影剤を使用したCTC検査を行った症例です。エアーイメージで大腸の走行、腫瘍の位置や形状が確認でき(赤丸)、さらに造影剤を使用することにより動脈・門脈の血管走行、腫瘍(赤矢印)への栄養血管を確認できます。
CTCとは?
下に示した検査手順の通り、CT検査は肛門からチューブを挿入し(図1)、そこから空気を注入して大腸全体を十分に拡張させた状態で、仰向けとうつ伏せの2体位でCT撮影を行います(図2)。2体位で撮影することで、腸管描出不良部分を補完するだけでなく病変に見える残便を移動させて診断能を向上させることが可能となります。そして、得られた画像データは画像処理専用のワークステーションで処理することにより、空気だけを抽出したエアーイメージ画像や、仮想内視鏡画像という内視鏡検査を行ったような大腸画像を作成することができます。(図3)以上までを一般的にはCTC(CTcolonography)検査と呼ばれています。
内視鏡挿入困難症例
図は、エアーイメージとその病変部の拡大画像、さらに、カメラのイラストの方向から病変部を観察した仮想内視鏡画像になります。こちらの方は大腸内視鏡挿入が困難であったためCTCが検討され、このようにCTC検査によって病変の診断が可能になりました。当院では、この症例のように、腸管の屈曲が強い等の理由で内視鏡検査が困難であった方の多くがCTCを施行し、病変部の描出を可能にしています。
CTCは、わが国ではまだ特殊検査という位置づけですが、欧米では大腸がんのスクリーニング検査にも用いられており、当院でも多くの方が受けられております。これからも診断に役立てていただけるよう我々放射線技師は画像処理に取り組みたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(江上 桂)