さて今回も前回に引き続き、がんの形や動きに合わせて照射をおこなう技術Part2をお送りします。
今回は、IGRTと呼ばれる治療技術をご紹介致します。IGRTはImage Guided Radiation Therapyの略で、日本語では画像利用放射線治療もしくは画像誘導放射線治療と訳されます。
放射線治療では、照射時に患者自身の位置変化であったり、体内臓器の大きさの違いや動き(腸管のガスや膀胱の容量、呼吸による肺や肝臓の動き)などで、照射位置がずれる場合があります。IGRTは、これらの位置ずれを、X線画像を利用して修正を行い、放射線を正確に病巣に照射する治療技術です。
IGRTでは、放射線治療室内で照射直前に、X線撮影やコーンビームCT撮影(CBCT)、X線透視などを行い、画像を取得します。得られた画像情報(治療直前画像)と実際に照射を行う画像情報(治療計画画像)を比較し、照射位置のずれ量を1mm単位で修正し、照射を行います(図2)。照射直前に位置照合をするため、精度高い放射線治療が行えます。また、IGRTを利用することにより、正常組織への照射を最小限に抑えながら、病巣への放射線の集中性を高めることが可能になります。現在、最も注目されている治療技術です。
IGRTは通常治療から高精度治療で幅広く利用されており、最近では呼吸による病巣の動きにも対応した照射(追尾照射や迎撃照射)も可能になっています。
当院に導入される放射線治療装置(LINAC)もX線撮影、CBCT、X線透視全ての機能を搭載しておりますので、IGRTが可能です。治療する疾患や照射部位により適切な位置照合方法を選択し、精度の高い照射を行っていきます。安全で安心できる(身体にやさしい)放射線治療を目指して行きますので、ご期待して頂ければと思います。
次回は放射線の強さを変えて照射をおこなう技術(強度変調放射線治療:IMRT)についてお送りします。
図2 画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiation Therapy) 画像は東芝メディカルシステムズより提供