CTC検診を受けてみました


当院検診センターでは昨年10月より大腸CT検診をスタートいたしましたが、私も実際に大腸CT検診を受検してみましたのでここでご紹介させていただきます。

大腸CTも前処置が必要

大腸CTは、CTで内視鏡の様な画像を得ることができる次世代的なイメージの検査ですが、検査においては前処置が必要となります。内視鏡検査と同様に大腸を空っぽにするための前処置で、消化のよい検査専用食を食べる必要があります。また、便を完璧に空っぽにするのは難しいので、少量のバリウムを同時に摂取することで、あえて便にバリウムを混ぜ込ませ画像処理でその便を取り除く技なども利用しています。

検査食はS&B食品!

検査食は検査前日の朝食、昼食、夕食、検査当日の朝食がセットで販売されておりそれを購入します。私が購入したのはこの検査食で、製造はあのS&B食品なので自然と期待してしまいます。

検査食レポート(総合得点は○○点!)

検査前日の朝食は中華粥とコーンスープ。期待しての一発目、レンジで調理する中華粥だったのですがこれはいけませんでした。味がうすすぎておいしくない。残念。しかし、コーンスープの方はおいしくいただけましたのでやや信頼回復一安心です。つづいて昼休み。昼食はカレーです。なにげに肉の様なものやニンジンまであっておいしくいただけました。昼食後には少量のバリウムを飲む必要があるのですが、飲むヨーグルトのような少し甘い感じの感触で、主食の量が少ないこともあってデザート感覚でおいしくいただけました。午後の仕事もがんばれます。
夕食は親子丼でこれも鶏肉が入っていて味もしっかりしていました。さすがS&B食品。最初の中華粥が足を引っ張ったものの最後はしっかりと結果を残してくれました。総合80点としたいと思います。

初経験、異物挿入!(検査当日)

検査は朝8時30より行います。この日は横山技師も一緒に検査を行いました。お互いにCTを撮り合いっこするという、異様な風景でした。
さて、最初に真田先生からブスコパンの注射をしていただき、その後CTのベッドにころがります。横向きに寝るといよいよ真田先生が私の肛門に検査用のチューブを挿入します。肛門にものを入れるのは初めてでしたが、特に違和感も痛みもなく、残念ながら(?)癖になるような快感もありませんでした。(写真:真ん中が検査用チューブ。右は内視鏡)

続いて、肛門のチューブから炭酸ガスが入ります。すぐにお腹がはってきます。痛くはないのですが、お腹が風船になった気分です。お腹ぱんぱん状態は、やはりあまり気持ちのよいものではありませんでした。撮影はうつぶせと仰向けの2ポーズなのですが、うつぶせの方はお腹がつぶれるのできつい印象をもちました。とはいうものの、仰向けでの撮影時には「炭酸ガスではなく水素ガスだったら空飛べるのかな?」なんて考える余裕もあり、ものの10分程度で検査終了となりました。

さすが流行の炭酸!体によい!?

ガス注入を止めるとすぐにお腹の張りがとれて楽になりました。大腸CT検査では長年、炭酸ではなく空気をお尻からいれて検査をしていたのですが、脂汗をかいてつらそうな患者さんをたくさんみてきました。しかし、この炭酸ガス注入器の購入以降はそのような光景を見ることがなくなったので、きっと楽なのだろうと想像はしていたのですが、本当に楽でした。検査終了後もトイレに行きたいという感触もなく、すぐに白衣に着替えてそのまま検査業務にはいれました。

私の大腸はだいちょーぶ(大丈夫)!!

私はタバコを吸わないものの、お酒の方を少々毎日飲んでいて、年齢の方も40を超えてしまったこともあり多少大腸癌については心配していたのですが、検査結果は問題なしということで一安心できました。これでまた晩酌を楽しむことができます。

食事制限と前日にお酒が飲めないことがつらいところですが、人は時にこのような経験をしてみるのも大切だなと感じ、また5年後にでも受検してみようかと考えています。

CT.MRI室主任 保田 英志

金属アーチファクト低減処理(MAR)を紹介します


当院に新しく導入されたRevolution HD(GE社製64列CT装置)に搭載された
“金属アーチファクト低減処理(Metal Artifact Reduction)”
についてご紹介します。

従来のCT装置では、金属によるアーチファクト(障害陰影)を軽減する方法がない為、人工骨頭や人工関節、ペースメーカーなどの体内金属を含む撮影において障害陰影を回避することが出来ませんでした。しかし、今回搭載されたMAR処理を行うことで体内金属により生じるアーチファクトを軽減し、画像をより明瞭に描出することができるようになりました。今回は当院で実際に経験した症例をご紹介したいと思います。

Case 1 頭部血管内治療後(コイリング後)の評価

頭蓋内コイルの周囲にハレーション(青丸:金属周囲が白くなっている部分)とダークバンド(赤丸:金属周囲の黒くなっている部分)によるアーチファクトが大きく発生しその周囲の状態が確認できませんが、MAR処理後は前述のアーチファクトが軽減され確認できる範囲が広がっています。コイリング後の出血の有無を評価する範囲が広がり、診断精度の向上につながると考えられます。

Case 2  左下腿骨手術後(プレート固定後)の評価

Axial像(一般的な輪切り画像、横断)で赤矢印部分にアーチファクトが確認できます。これをCoronal像(冠状断)で確認すると赤丸で囲った部分となります。さらに3D画像構築を行うとアーチファクトにより骨折線の一部に不明瞭な場所(青丸で囲った部分)が生じています。
しかし、MAR処理後はそれらのアーチファクトがすべて抑制され、より明瞭になっています。このようにMAR処理はAxial像(横断)だけでなく、Coronal像(冠状断)やSagittal像(矢状断)、さらには3D画像等の画像作成に対しても有効な技術です。

日本はCTの国


院内の広報誌「まちあい」で公開した記事ですが、先生にも是非紹介したいと思います。

日本のCTの保有台数ですが、先生は世界で何番目か?ご存知でしょうか?国の大きさを考えてみてください。先進国や発展途上国でも違ってくるでしょう。アメリカ!でしょうか?それとも中国、オーストリア?
さて答えは……..。

実は、私達の国の日本です。2014年のデータですが、1位は日本で12,943台、2位はアメリカで12,740台です。人口100万人あたりの台数はでも1位は日本で107台です。アメリカはなんと41台で、ドイツは35台です。このデータからもわかるように日本はこんな小さな国でありながら、どこでも、誰でも高水準な医療を受けることが可能であるということがわかります。ちなみにMRIの保有台数も世界1位です。加えて、日本は国民皆保険制度なので、世界で一番安い金額でCTやMRIを受けられる国なのです。意外と知られていない事実なので今回ご紹介させていただきました。

これだけCTが多いということは、適切な言葉ではないかもしれませんが、被ばくも多くなるということになります。日本は世界で唯一の被ばく国です。被ばくということに当然敏感になると思います。CTの線量指標にDRLs2015というものが公開され、日本の診療放射線技師はその線量指標を越えないように医師と共同で診療をおこなっています。当院でもDRLs2015を認識して、CTの被ばく線量を把握し、DRLs2015の線量指標を越えていないことを確認しています。

昨今の報道で小児の被ばくに関して取り上げられていますが、医師はリスクとベネフィットを考え、技師は診断を損なうことなく適切な線量で検査を行っていますので、安心してCT検査などを紹介いただきたいと思っています。今後はCTの被ばく線量管理を個人単位で考えていこうと考えています。また報告したいと思います。

放射線科技師長 高橋光幸

 

CT気管支ナビゲーション


当放射線技術科では、ヘリカルCTで得たボリュームデータを画像処理し、三次元表示を行う3DワークステーションZiostation2(写真1赤丸)を活用して、肺がん手術や経気管支鏡生検(TBLB)などの支援を目的とした画像提供を積極的に行っています。
TBLBは呼吸器内科が月10件程度行っていますが、病変まで到達する気管支の経路を作成した画像を提供しています。術者が確認のために見る透視画像と類似したRaySum画像、気管支鏡の視野と同様の仮想内視鏡表示(VE)(図1)によって検査をスムースに、かつ正確にナビゲートします。
TBLBの支援画像の作成で大事なことは、病変に向かう気管支へのルートをつけることですが、対象の病変を選択するだけで気管支口から病変までの最短ルートを自動で選択してくれます。当院放射線技術科の技師はローテーションで複数のモダリティーの対応が求められるため、画像処理にはまず使いやすさも求められます。近年の3Dワークステーションでは画像処理能力の進歩によって、高い精度で誰もが使いやすいものとなってきています。今後も画像処理を最大限にいかしつつ、各診療科の診断、治療に迅速に提供できるよう当院放射線技術科全技師が努力しております。

大腸CT検診が スタートしました


当院の健康医学センター“さくらサロン”では、年々増大傾向にある大腸がんを標的とした大腸CT(Computed Tomographic Colonoscopy : CTC)を使った大腸CT検診(以下CTC検診)を始めました。先生はすでにご存知かと思いますが、CTC検診とは以下のような内容です。

CTC検診とは?

CTを使って大腸スクリーニング検査を行い、大腸癌や、前癌状態である大腸ポリープや腺腫を見つける検診方法です。「大腸内視鏡検査は受けたくないが、大腸の検査をしてほしい」という被検者の需要も高いと思われます。

CTC検診の特徴は?

低侵襲
最大の特徴は、従来の大腸内視鏡や注腸検査に比べて簡単な前処置と少ない苦痛で全大腸を観察できることです。

多彩な画像処理
画像ワークステーション内のCT大腸解析アプリケーションを使用することにより、以下のような画像を駆使して客観的かつ多方面より全大腸を観察できます。
低被ばく
当院に新しく導入されたCT装置を使用することにより、放射線被ばくの少ない検査を行えます。

CTC検診の検査精度は?

CTC検診の精度は、少し前の多施設共同研究によるとかなり高いものといえます。

・径10mmより大きい腺腫あるいは癌の検出率は感度90%、特異度86%
(多施設共同研究ACRIN6664米国2008)
・径6mm以上のポリープと癌の検出率は感度87%、特異度92%
(多施設共同臨床研究JANCT2009、日本)

特に日本での多施設共同臨床研究 JANCT2009では、6mm以上の隆起性病変に対しては約90%前後の感度と特異度を保持しております。ちなみに便潜血検査の感度は約30~90%と施設によりかなりばらつきがあります。

大腸がんCT検診のおおまかな流れ

検査当日の流れ

①検査前
撮影の前に、トイレに行っていただきます。

②検査前に注射
腸の動きを一時的に抑えるお薬を注射させていただきます。

③肛門より炭酸ガス注入
細いチューブを肛門から少し入れて、炭酸ガス注入装置にて安全に大腸を拡張します。

④撮影開始
拡張を確認したら、CT撮影を開始します。(仰向けとうつぶせの2回撮影 5~10秒の息止め)

⑤検査終了
チューブを抜いて検査終了です。注入された炭酸ガスは自然と吸収されます。

駆け足でご説明させていただきましたが、ご理解いただけましたでしょうか?当院健康医学センター“さくらサロン”では、医師と技師一体となって、大腸CT検診スタートに向けて現在、撮影と読影にトレーニングを進めてまいりました。近隣の皆様の大腸がん検診の一端を担うことができるよう、今後も研鑽していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

横山 力也
日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師
NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構
胃がん検診読影部門 B資格

参考文献
野崎良一 CT Colonography 実践ガイドブック 医学書院
永田浩一 遠藤俊吾 安田貴明 その他 症例で学ぶ大腸CT診断 シーピーアール;初版

デュアルエナジーCT装置始動しました


昨年末に設置工事が完了し、1月より本格的に新しいCT装置のほうが動き出しましたのでご報告します。今回設置されました装置は、GE社製のデュアルエナジー装置で、Revolution HD GSIと呼ばれる装置です。1管球型と呼ばれるデュアルエナジー装置の中では最も実績のある装置となっています。

デュアルエナジーCTとは
デュアルエナジー装置というのは、2種類のエネルギーを使用して撮影が可能な装置のことです。X線発生装置でエネルギーを変化させたり、2つの発生装置を利用したりするなどの方式があります。ご存知かもしれませんが、X線にはエネルギーというものがあります。そしてそれはエックス線を発生させるときの電圧のかけ方で変更することができます。

エネルギーが違うと画像が変わる
エネルギーを変更することによって、エックス線の透過能力が変わり画像の見え方が変わってきます。たとえば胸のレントゲン撮影ですが、胸のレントゲン撮影ではレントゲン室で撮影する時と、ポータブル装置を用いて病棟で撮影する時とでは使用するエネルギーが違います。なぜ使用するエネルギーが違うのかということはここでは触れませんが、これによって画像の見え方が変わってきます。以下の画像はエネルギーを変えて撮影したレントゲン画像です。このように骨が見やすかったり、肺が見やすかったりします。そして、これを引き算することで一つのものに焦点を当てた画像を作成することができます。これがデュアルエナジー技術の基本となります。

造影剤を明瞭にできます
CTでもこのように2種類のエネルギーで撮影を行うことで造影効果を強調したりすることが可能です。この造影強調効果はデュアルエナジーCTで最も利用されている技術の一つであると思います。こちらは当院の装置で撮影されたものですが、ひとつのエネルギーで撮影された画像と比べ、造影効果を強調し腫瘍を見やすくするような画像も得ることができます。この技術を逆手に利用することで造影剤量を減らすことも可能です。

基礎技術の向上でさらにレベルアップ
2種類のエネルギーで撮影するので、被曝が2倍になるように感じるところですが、最近は技術の高度化によりその点も改善されました。それにより通常撮影(デュアルエナジーではない撮影)では今までの4割少ない線量で撮影できるようになっています。それによって4D撮影や高解像撮影などができるようになり、それを生かすための3次元画像処理装置も大幅なバージョンアップをしております。これらについては次号以降でご紹介させていただきたいと思います。
(X線CT認定技師 保田 英志)

レントゲン画像http://www.innervision.co.jp/suite/ge/21healthcare/2010/1006_2/index.htmlより引用

CT 装置 更新しました!


旧CTの解体・回収

写真1、2が今回新CT導入に伴い撤去となったCT装置で、13年という長期間稼働していたシーメンス社製16列CTです。当院では同じシーメンス社製の64列CTが現在も稼働していますが、64列CT導入以前はこの16列CTで心臓CT等の複雑な検査も行っていました。16列CTは長きにわたり活躍してくれた装置です。私は今年で働き始めて9年目になりますが、このCTから沢山学ばせてもらいました。
解体・回収作業(写真3)は約2日という短期間で終了し、その後、床・天井・壁の塗装や空調整備期間として約1週間程度かかり、新CT設置の準備が完了しました。

新CTの設置・稼働

写真5が新たに導入となったGE社製64列のDual-Energy CTです。設置期間はとても短く約2日程度で、その後メーカーによる装置の点検等の引き渡し試験が行われ、最後に横浜市からの使用許可を受け、旧CT解体期間を合わせて約3週間で新CT稼働となりました。
これで当院ではシーメンス社製64列CTとGE社製64列CTの2台体制となり、検査効率の向上やDual-Energy技術によって行える新たな撮影が可能となりました。

CT装置更新という機会に立ち会うのは初めての経験でしたが、その短さに驚かされました。しかしながら短期間とは言え装置更新に伴いCT装置が1台体制となってしまう中で、できる限り検査数を落とさずに運用する為の方法や事前準備を学べたことは、今後にも生かせる貴重な経験となりました。
新CTでは新たな技術を駆使した撮影方法が可能となり、造影剤の減量・被曝線量の低減・定量解析等が行えるようになりました。これらの技術を最大限に活用していけるよう撮影技術の習得に力を入れていきます。

X線CT専門技師 江上 桂

Dual Energy CT


今回は、近年注目されているDual Energy CT(以下DECT)についてお話させて頂きます。説明するにあたり、まず従来使用しているCTであるSingle Energy CTの課題について述べ、続いてDual Energy撮影法、そして臨床応用という流れでまとめてみました。

従来CT撮影の課題
ご存知の通り、CTは被写体を輪切りにして3次元で体内の情報を取得出来る有能な装置ですが、実は以下のような従来のCTでは克服できない課題があります。
① CT値の違いが画像の濃淡差として表現されますが、異なる物質であってもCT値が近い場合濃淡差が付かず判別がつかないことや、同一の物質でもその密度が異なるとCT値が変化してしまう:図1参照
② X線高吸収物質(骨や金属、造影剤)に起因するアーチファクト(ビームハードニングアーチファクト)が発生してしまう:図2参照

Dual Energy撮影法
Dual energy撮影は、前述した従来のSingle energy CTの課題を克服する方法として2つのエネルギーのX線(=Dual Energyを利用する撮影法です。

従来CTでは120kVという単一のエネルギーが使用されてきましたが、デュアルエナジー撮影では異なる2つのエネルギー(140kV等の高エネルギーと80kV等の低エネルギー)が使用されます。

ここで、2つのエネルギーを使用した例を図3に示します。横軸をエネルギー、縦軸をCT値とし、赤:物質a、緑:物質b、青:物質cとします。物質a、物質bに注目して頂くと、2つのエネルギーを使用することで一方のエネルギーでは同じCT値を示しても(電圧A)、もう一方のエネルギーでは異なるCT値を示します(電圧B)。

以上より、別々の物質だと同定できる=着目したい物質のみにフォーカスして表示できるという仕組みです。
さらに、このように異なったエネルギーで撮影する為、様々な種類の画像を得ることも可能になり、それがビームハードニングアーチファクトを抑えた画像の作成につながります。
この2つのエネルギーの取得方法はCTメーカー各社で異なり、以下の方法があります。
①X線管を2回転させて同じ部位を1回転ごとに異なるエネルギーで撮影する(2回転方式)
②CT装置に2つ管球を搭載し、異なるエネルギーで撮影する(2管球方式)
③1つの管球で高速で電圧を切替ながら撮影する(高速スイッチング方式)
④得られたエネルギーを、検出器側で低・高エネルギーに分ける(2層検出器方式)
各方式はそれぞれに特徴がありますが、今回は割愛させて頂きます。

臨床応用
では最後に、Dual Energy技術を利用して得られる画像をいくつか紹介したいと思います。

・腎結石の成分同定

尿管結石では、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどのカルシウム結石か、それ以外なのかの鑑別が治療方針を決定する上で重要ですが、どちらの結石も通常のCTでは高いCT値を示し白く写る為その鑑別は困難です。しかし、DECTを用いれば図のようにカルシウム結石を青、それ以外を赤というように、成分の違いを可視化することができます。

・石灰化除去

 従来は困難であった石灰化を伴う血管の内腔評価が可能になります。

 

単色X線等価画像:ビームハードニングアーチファクトを抑えることができる

・金属からのアーチファクトを低減

上腕骨骨折術後など、プレートのアーチファクトにより評価困難な部分もX線のエネルギーを変えることにより、アーチファクトが低減され評価可能になります。

下の写真のように、50KeVから190KeVに変更していくと、金属プレートからのアーチファクト(ビームハードニングアーチファクト)が、高いエネルギーになるほど少なくなっていることがわかります。(赤丸)

X線CT認定技師 江上 桂

ヘリカルスキャンは万能ではない!!:CT特集アーカイブ


ヘリカルスキャンは高速撮影が可能!

CT撮影には大きく分けて2つの方式があります。

頭部撮影の撮影モードはコンベンショナルスキャンとヘリカルスキャンの2通りあり、それぞれの特徴を模式図と共に下記に示します。

コンベンショナルスキャン(コンベンショナルとは「従来の」という意味)では、スキャンと寝台の移動が交互に行われます。一枚撮影したらベッドが移動し引き続き撮影という流れを繰り返す撮影で、CT撮影の基本撮影法です。一方、ヘリカルスキャンは寝台移動とスキャンが連続的に行われるもので、撮影しながらベッドが移動する撮影法です。スキャン軌道が螺旋を描くため、ヘリカルスキャンや螺旋スキャン、またスパイラルスキャンとも呼ばれます。原理的な詳細は割愛させて頂きますが、この二つの方式には次の表のような特徴があります。

ヘリカルスキャンは万能ではない!!

先述した撮影方式の違いにより、ヘリカルスキャンを用いるとCT撮影のスピードは圧倒的に速くなります。(頭部CTで3秒程度で撮影可)その為、救急時における頭部撮影では患者の体動を考慮し、ヘリカルスキャンを選択する場合が多いです。しかし、ヘリカルスキャンではチルト機能(装置を傾けて撮影する)が出来ない為、注意する点もあり今回はその事例をお示ししたいと思います。
図1-bは、頭部CTの画像です。CTでは同一スライス面上に金属などの高吸収体がある場合、図1-bのような放射状の偽陰影を生じてしまいます。図1-aは本スキャン前の位置決め画像で、この画像から撮影範囲の設定を行います。黄色線は、図1-bにおけるスライス面を示しています。図1-aと図1-bを見比べて頂くとわかるように、橋と義歯が同一スライスに存在してしまうためアーチファクトによって橋及び脳実質の描出がやや不良となっていることがわかります。

この影響を無くす方法は、患者の体位を変えるかスキャン方式を変えるかによって、観察したい部位が義歯と同じスライスとならないようにする必要があります。患者の体位を変えるとは、具体的には顎を引き頭を高くしスライス面内に義歯が入らないようにすることです。また、スキャン走査方向を変えるとはチルト機構を利用することです。チルトとは「傾ける」という意味で、図2のようにCT装置自体に傾斜をつけて走査を行うものです。こうすることで義歯の影響を避ける事が可能となり、図2-bに示すように、橋の横にある所見が明瞭に描出されるようになります。反面、この撮影方式ではヘリカルスキャンが行えず、冠状断や矢状断といった画像再構成ができません。

これらのことを考慮し適切な撮影体位にすること、適宜最適なスキャン方法を選択することを心掛けて撮影しています。

江上桂 X線CT認定技師

*この記事はR@H2014年9月号に掲載した内容を再編集したものになります。

 

最先端! CT展示会にいってQ!!


毎年4月にパシフィコ横浜で医学放射線学会と放射線技術学会、そして医用画像総合展という画像診断関連機器の展示会が行われています。全国からたくさんの放射線科医師や技師、メーカー、物理学者などが参加する学会で私も毎年参加しています。この機器展示会ではメーカー各社が最新の装置を展示しており、大変にぎわいのある会となっています。今回私はCT装置メーカーを回ってお話を聞いてきました。最先端CT装置メーカーというと数社あり、CTマニアの間でも意見がありますが、私としては唯一2管球型という装置(従来のCT装置ですとエックス線を出力するエックス線管球という部品が1台に1つしかなかったところが2個ついているもの)を開発しているSIEMENSの装置が最も優れていると思いますので、その装置を例に最先端のCTでできることを簡単にご紹介したいと思います。

胸のCTが1秒以下で!?

2つのエックス線管球がついているので、撮影が倍速になります。最近の装置は高速化が進んでいるので1つの管球だけの装置でも十分といえるスピードを持ちますが、この方式ですとその高速CTのさらに倍なので圧倒的に速い撮影ができるというアドバンテージがあります。ここまで速いと冠動脈のCT撮影も失敗なくできるようですし、胸部の撮影でも息を止める必要もなく、心臓周囲の肺も通常ですとぶれてしまいますがここも静止した画像を得ることができるようです。

造影剤が半分以下でOK

2つの管球を持つことで、出力も倍にすることができます。CT装置の撮影ではエックス線のエネルギーを変更することができるのですが、いままで120kvという透過力が高いエネルギーのものを利用していたのですが、たくさんのエックス線を出せる為、この装置では透過力の弱い70kvが使えるようになりました。70kvでは造影剤を濃く映し出す効果があります。ですから、これを利用すると半分の造影剤でも撮影できるようになるのです。当院の装置でも同じようなことができるのですが、1管球なので、大量のエックス線を出すのに時間がかかり実用的ではありません。それでも当院の江上技師が色々と工夫して一部の検査で利用しています。

なんと!D撮影!!

撮影時間が短いことから、連続で同じ部位を撮影し続けることもできます。要は動画撮影になります。DSA検査のように造影剤が大動脈から頸動脈、脳動脈に入ってその後静脈を経て心臓にもどるまでを連続で撮影できる機能です。造影剤の動態や脳動脈瘤の脆弱な部分(ブレブ)を観察することも出来るそうです。

後から造影剤の濃度を変えられる!?

これは2つのエックス線管から2種類のエネルギーを出力させて撮影する方式でデュアルエナジー撮影と呼ばれる方式です。造影剤の見え方を撮影後に変えることができます。これを利用することで造影剤がない画像を作ることもできます。また骨のない画像や石灰化だけを除いた画像、結石の性状をみる画像、造影剤量の定量などができます。この機能で読影が楽しくなると実際に利用している放射線科医がおっしゃっていました。

最先端装置では以上のような高度な画像を撮影することができます。あらゆる応用がきくので使いこなせるのかという気もします。しかしこの装置の特徴はパワーがあって速いというところにあり、機能が沢山あるというわけではないため自然に使いこなすことが出来る良く考えられた装置だと感じています。iphoneのようにスペックが高いものほど主婦や女子高生が使いこなせてしまうのと同じです。職人のような放射線科医と技師が組んで使わないと活きて来ないようなタイプの装置もあり、それはそれでやってる方は面白いのですが、この装置のように高度な事が誰でもできるという方が時代に合っていると思っています。
X線CT認定技師 保田英志
写真引用 https://www.healthcare.siemens.co.jp/computed-tomography/imaging-contest/award2016