e-ZISとは
脳神経関連疾患の核医学検査には脳血流をみるもの、物質代謝をみるもの、交感神経を見るもの等あります。CTやMRIと比較してもやもやとしていてわかりにくいSPECT画像ですが、軽微な所見を拾い上げまた客観性が保たれるような指標となる数値データを算出できることが特徴となります。中でも脳血流SPECT検査においては、SPECT画像のみでは脳のどの部分の血流が軽度低下しているのかを判断しにくいため、たくさんの正常患者のデータを集めて(正常データベース)それと比較することで血流の低下している場所をわかりやすくしています。
そのための解析ソフトのひとつがe-ZISと呼ばれるソフトウェアです。初期のアルツハイマー型認知症に関して血流低下がみられる部位、血流低下領域の割合などを数値化したZ-Scoreと呼ばれる指標を算出しています。
AD(Alzheimer’s disease)とDLB(レビー小体型認知症)の鑑別は?
先生はCingulate island signというサインをご存知でしょうか?これはPET検査においてADとDLB患者においてDLBのときは後頭葉の糖代謝の低下が見られる一方、後帯状回の糖代謝が相対的に保持されることが多く、結果として後帯状回が海に浮かぶ島のように写ってくるというものです1) これについてはDLBの臨床診断基準2017改訂版に支持的バイオマーカーの所見の一つとして位置づけられています。2)
上記はPET検査での所見ということでしたが、最近の報告によると脳血流SPECT検査でも同様な傾向を見ることができるそうです。(図1)3)
新指標「CIScore」を新たに算出
今回新しくなるe-ZISではSPECT画像において、この後頭葉と後帯状回の領域について関心領域(VOI:Volume of interest )を設定し、その割合をScore化して表示できるようになりました。CIScoreという指標になります。
(図2、図3)
参考文献:
1) Lim SM et al. j Nucl Med.2009; 50: 1638-1645.
2) Mckeith IG et al.Neurology.2017; Jun 7.[ Epub ahead of print]
3) Imabayashi E et al. EJNMMI Res.2016; 6: 67. (http://creativecomons.org./licenses/by/4.0/)
*写真は富士フイルムRIファーマ株式会社eZIS配布資料より抜粋いたしました。
実際のe-ZIS結果表示例
(DLB疑いで行われた脳血流SPECT症例)
Z-Scoreを表す標準脳との重ね合わせ画像において、後頭葉を中心とした血流低下を反映したZ-Scoreが、CIScoreVOI1(水色枠)の中に抽出されており、一方の後部帯状回を中心としたVOI2(赤枠)内では後帯状回の血流が保持されZ-Scoreは抽出されておらず、結果としてCIscoreは0.06と算出されています。
新しいデータベースも追加されます
従来より算出されているZ-Scoreに関してもアップデートされ正常データベースの追加があります。今までは70歳代までの正常データベースしかなかったのですが、新たに80歳代の正常データベースも追加されました。
認知症関連疾患については判断が難しいものと思われますが、このようなソフトウェアによる指標が客観性のある診断の材料となればと思います。