CT所見による絞扼性小腸閉塞の評価


初めまして。私は初期研修医2年目の小林雄介と申します。(2018年2月現在)
放射線科医師を目指すべく、現在、横浜栄共済病院放射線科で研修の日々を送っています。よろしくお願いします。

今回、ご紹介する文献は2017年にRadiology誌に掲載された「CT所見による絞扼性小腸閉塞の評価」というものです。全256例の小腸閉塞のうち、絞扼の疑われた105例については手術、CT所見と術中所見、病理所見と対比して実際の絞扼の有無を検討しています。その結果、絞扼が疑われるCT所見として挙げられているものは

  1. 腸管壁の造影不良(Figure1 赤矢印腸管壁は白矢印と比べて造影不良)
  2. びまん性の腸管膜脂肪織濃度上昇(Figure2 矢印)
  3. closed-loop(Figure3 矢印)
  4. 腸管膜への液体貯留(Figure4 矢印)
  5. 腸管壁肥厚(Figure5 矢印)
  6. 腹腔内遊離ガス(Figure6 矢印)
  7. whirl sign(Figure7 矢印)

の7つです。これらの所見はいずれのものが存在しても絞扼の可能性を示唆する所見であるとされており、特に①②③については、絞扼が正確に予測できるとされています。さらに①と②が存在すると、手術での腸管切除が必要になることが予想され、逆に①②③いずれも認めなければ絞扼は否定的とまでされています(実際には4/62の症例で①②③の所見がなくても手術所見で絞扼を認めていたため、そこまで言い切っていいかは疑問ですが)。

日常診療においては、上記の所見を一つでも認めた場合は絞扼性小腸閉塞の可能性がある、と思っていただければ幸いです。上記7つの画像を自検例から抜粋して添付しますのでご参考にしてください。

参考文献:Ingrid Millet, et al: Assessment of strangulation in Adhesive Small Bowel Obstruction on the Basis of Combined CT Findings: Implications for Clinical Care Radiology 2017 vol.285: issue 3: Pages798-808

 

CT所見を利用した脾臓の重症度分類


2015年12月と1月の2か月間、放射線科で研修させていただいた初期研修医2年目の金澤将史と申します。私は救急科志望であり、広い救急の分野の中でも外傷救急は画像診断の果たす役割が大きいと日々の臨床経験を通して実感しています。今回、脾臓の損傷と治療方針選択にあたってCT所見を利用した重症度分類を用いることの有用性を検討する論文を見つけましたので、その内容を紹介させていただきます。

Nitima Saksobhavivat、 MD et al.
Blunt Splenic Injury: Use of a Multidetector CT–based Splenic Injury Grading System and Clinical Parameters for Triage of Patients at Admission
Radiology 2015;274:702-711.

鈍的脾損傷に対しては、循環動態や腹膜炎の有無をもとに手術または非外科的治療が選択され、脾動脈塞栓術も一般的に行われるようになっています。しかしながら、治療法を選択するためのガイドラインやコンセンサスはありません。一方で、脾損傷の重症度評価のためのCT所見に基づいたグレード分類システムが開発され、最適な治療のためには動脈相と門脈相の2相性CTが重要という報告もされています。ここでいうグレード分類システムというのは、血腫(画像1 グレード3 3cmより大きな実質内血腫)や活動性出血(画像2 グレード4a  活動性実質内出血)などのCT所見をもとに脾損傷の重症度を分類するもので、グレード 1、2、3、4a、4bに分類され数字が大きいほど重症度が高いというものです。論文では、鈍的脾損傷患者に適切な治療(保存的治療、脾動脈塞栓術、手術など)を選択する際、2相性CTに基づくグレード分類システム及び臨床パラメータを使用した場合の有用性を評価しています。入院時にCTを施行した鈍的脾損傷患者171人を対象としたレトロスペクティブな検討です。CTグレード分類で重症度の低かった症例(グレード 1~3)は保存的治療のみでその他侵襲的な治療を要さなかった例が多く、グレード分類の重症例(グレード 4a、4b)の多くは手術や塞栓術などを必要としました。筆者たちは、鈍的脾損傷においてCTによるグレード分類システムは保存的治療成功例の最良の予測因子であると結論付けるとともに、動脈相と門脈相の画像を適用して脾損傷による活動性出血や非出血性血管損傷を識別しやすくすることが、正確な損傷の分類や治療方針決定に必須であると述べています。
外傷診療における重症度評価や治療方針決定にCTがいかに有用であるかを改めて認識するような報告でした。外傷初期診療ガイドラインでもCTは画像検査の中心に位置づけられており、機器の性能向上と撮影時間短縮により、ますますその有用性が指摘されています。全身CTや撮影のタイミングについてはまだ検討の余地がありますが、今後も外傷診療において中心的役割を担うものと考えられます。

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