放射線の種類を変えて照射をおこなう技術


放射線の種類を変えて照射をおこなう技術

さて、これまで現在注目されている3つの照射技術、『がんの形や動きに合わせて照射をおこなう技術』、『放射線の強さを変えて照射をおこなう技術』の2つについて解説してきました。今回は、最後の1つ『放射線の種類を変えて照射をおこなう技術』について説明させて頂きます。
放射線の種類を変える技術とは、放射線そのものを変えて治療をおこなう技術です。これまでは、リニアック(直線加速器)を使用したX線や電子線を用いた放射線治療を紹介してきましたが、今回は話題の粒子線治療について紹介いたします。

○粒子線治療とは?

粒子線(荷電重粒子線(かでんじゅうりゅうしせん))治療とは、粒子放射線ビームを用いた放射線治療法の総称です。陽子線治療、重粒子(炭素イオン)線治療が有名で世界の各地で臨床応用や研究が行われています。

○粒子線治療の特徴

粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロン等の加速器から得られる陽子線や重粒子(炭素イオン)線を病巣に照射します。

ガンマ線、エックス線、電子線などは体外から照射すると、体の表面近くで線量が最大(ピーク)となり、それ以降は深さとともに減少します。一方、粒子線はそのエネルギーによって飛程(体内で到達する深さ)が一定で、その飛程の終端近くでエネルギーを急激に放出して止まります。この現象をブラッグ・ピークと呼びます(図1)。実際の治療では特殊なフィルター(リッジフィルター)を使用し、このブラックピークの幅を拡げて照射を行います(図2)。

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粒子線治療は病巣の部分で粒子が止まり、体表面から照射の道筋にある正常な細胞にあまり影響を与えず照射をすることが可能な治療なので、とても体に優しく、今までのX線治療では効かなかった病気も治ると期待されています(図3)。

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○実際の粒子線治療

陽子線や重粒子(炭素イオン)線は病巣に限局して照射できることから、進行していない限局した病巣の治療に適していると考えられています。病巣の周りに放射線に弱い組織がある場合に、特に有効性が発揮できると言われています。(図4)

料金の方は高額で300万円程かかってしまいます。しかし近年、ある特定の疾患で保険診療が使用できるようになりました。

図4.粒子線治療装置と症例
図4.粒子線治療装置と症例

○現在の粒子線治療施設

現在、日本には粒子線がん治療施設が15ヵ所(重粒子線:5ヵ所、陽子線:11ヵ所)あります。粒子線治療施設数においては世界で一番多い国となっています(世界の39箇所で稼働、内15箇所は日本で稼働)。特に重粒子線治療については、治療患者数、治療成績の観点からも世界の最先端技術を誇っています。
神奈川県内では、神奈川県立がんセンターでH27年12月より重粒子線治療を行っています。詳しくは神奈川県立がんセンター重粒子線治療施設「 i-ROCK 」のページをご参照下さい。
ご紹介した通り、粒子線治療はとても体に優しく、夢の治療だと言われています。まだまだ高額な料金がかかってしまうという問題等もありますが、近い将来必ず身近な治療になると思います。

当院の放射線治療装置も順調に稼動しています

ご無沙汰しております、放射線技術科の江川です。

待ちに待った放射線治療が10月よりついに始まりました。ご心配お掛けしましたが、治療患者数も順調に増えており、年内中(12月28日現在)には50名を超える患者数となりそうです。

当院は放射線治療が初めての経験と言うことで、現在通常の照射方法で対応していますが、来年は新たに高精度な治療も取り組んでいく予定でおりますのでご期待頂ければと思います。

先生の施設において放射線治療適応の患者様がおいでになりましたら是非とも当院への受診をお勧め下さい。よろしくお願い致します。

 

放射線治療専門技師 江川 俊幸

図1

乳がんドックのご紹介~受診のメリットについて~


昨年の12月より当院健康医学センターにおいて乳がん検診に特化した「乳がんドック」を新設したことをお伝えいたしました。今回は、受診のメリットをご紹介いたします。

乳房の構成(乳腺密度)を知ろう!

受診者は自分の乳房の状況(乳腺密度)・自分の乳がんリスク・年齢などを考えて、適切な乳がん検査を選択し受診することが大切です。
一般的に、日本女性は欧米女性の乳房(脂肪を含んだ乳腺密度が少ない大きい乳房)と異なり乳腺密度が濃い乳房の人が多く(不均一高濃度・高濃度の乳房)マンモグラフィだけでは、乳がんを見つけづらくなるため、超音波検査も併せて受診いただくことをおすすめしています。
当院の乳がんドック(B・Cコース:超音波検査を含むもの)を受診いただくと検査結果、判定と共に乳房の構成(乳腺密度)、今後における適切な乳がん検診の選択方法をお伝えしています。

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乳腺密度の違いとは?

マンモグラフィは、乳がんを白い塊として写しだすもの。しかし乳腺もまた、白く写る。つまり、乳腺密度が濃いと真っ白な画像になってしまい、乳がんが見えづらくなってしまうのです。乳腺は母乳をつくるところですから、若ければ若いほどその密度は濃く、年を重ねるにつれ徐々に薄くなっていくものです。欧米女性の場合、日本人に比べ乳腺密度が少ないことが多く、さらに乳がんの罹患年齢のピークがおよそ60〜70歳。したがって乳腺密度も薄く、マンモグラフィでも比較的見つけやすい。ところが、日本人女性の場合は罹患年齢のピークが40代、と非常に若い。加えて、50歳以上でも乳腺が濃い女性が多い。つまり、日本人女性は”マンモグラフィに不向き”なのです。
現在、横浜市乳がん検診(マンモグラフィ)では2年に1回の検査が行われています。検査は40歳代は2方向、50歳以上は1方向の撮影です。この検査だけでは心配との受診者の声が多く、その際は当院の乳がんドックAコースもしくは3Dマンモグラフィを含むCコースをおすすめしています。

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乳房について相談された際は、是非、当院の乳がんドックをおすすめしていただけましたら幸いです。女性の大切な命と乳房を守るため、早期発見率を高める努力をしていきますので、これからも何卒よろしくお願いいたします。(マンモグラフィ認定技師 小曽根容子)

 

MRマンモグラフィとは?


乳房のMRI・・?

乳房のレントゲン(マンモグラフィ)ならやったことあるけれど、乳腺MRIってどうなのかしら?なんだか怖い・・・とお思いの方いらっしゃるのではないでしょうか?どんな撮影で、どんなふうに検査するのかがなんとなくでも分かれば、少しは不安な気持ちがなくなるのではと思い今回はMRマンモグラフィをテーマにしてみました。

MRマンモグラフィーって痛い??

検査の方法について
①患者様は検査着に着替えてもらい、造影剤を注入するための点滴の準備をします。
②次にMRI室に入り、MRI装置の上に置いてある乳房専用コイルと呼ばれるものに、それぞれ左右の乳房を入れてもらいます。
③そのままうつ伏せの姿勢で乗ってもらいます。その際、両上肢はバンザイした状態で、患者様の体部は動かないようにマジックテープで固定していきます。
*検査時間はこの状態で30~40分かかります。マンモグラフィの様に圧迫される痛みはありませんが、通常の臥位での撮影と異なりうつぶせの体勢で行うことがややつらい検査といえます。造影剤量は20mlほどで検査できます(CTは100cc使います)。

MRM

MRM2

どんな画像が撮影されるの?

MRIでは沢山の種類の画像を撮影しています。当院では1000枚近い画像を収集しています。
最初に造影剤を使用しないで撮影する単純MRI撮影を行い、その後造影剤を注入して造影MRI撮影を行います。
MRIでは様々な方向から断面を切り出すことが出来ますが、両方の乳房が同じ断面に写り、CT検査などと同じ切り方になる水平断(AX像)によって撮影することで、比較しやすくなり多くの病変の発見に有用です。(下図)

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単純MRI(主要3種)

1.脂肪抑制のT2強調画像

嚢胞性病変や粘液癌などの液体成分を含む病変をより抽出可能です。また、様々なコントラストの変化から腫瘤の壊死、浮腫、繊維化などの推定に役立っています。

MRM4

2.T1強調画像

乳管内出血の有無、腫瘤内部の脂肪評価に役立っています。腫瘍の輪郭しかわからないので通常はその評価には使われません。
乳房は脂肪組織が多いので乳房や皮下脂肪が白く描出されています。

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3.拡散強調画像

良悪性の鑑別に有用です。腫瘍などの細胞密度の高い病変は白く映ります。細胞密度の高くない背景は真っ黒なので、病変が浮き出て見えます。後述する造影後のMIP( Maximum Intensity Projection)に類似した画像が造影無しで得られます。

MRM6

造影MRI(ダイナミック撮像)

単純撮影が終後、造影剤を使用しての撮影を行います。
MRマンモグラフィで最も重要な検査となります。

なんと1mm以下で撮影

 

一般的に乳癌は、造影剤注入後2分以内に造影剤の取り込みが最大となることが多いと言われています。そのため当院ではガイドラインに推奨されている空間分解能1mm以下を維持しつつ、撮影スピードが約1分の撮像を連続3回行っています。造影剤の動態を追う撮影なので、ダイナミック撮影といいます。
1mm以下で撮像することによって、任意の断面に再構築可能なMPR処理や質の高いMIP (Maximum Intensity Projection)像の作成が可能です。(下写真)また、腫瘤の最も染まった相で冠状断(COR像)のMPR処理画像を作成することにより、病変の広がりも診断できます。

MRM7

更に高分解能に!

ダイナミック撮像後、さらに高空間分解能を意識した水平断(AX像)また患側、対側それぞれの矢状断(SAG像)を撮像しています。矢状断を撮像するメリットは、水平断を含めた2方向からの観察によって病変の形態がより正確に把握可能であり、矢状断のほうが乳管内成分を見やすい場合もある、マンモグラフィのMLOと簡易的に部位の対比(厳密には矢状断とMLOは異なる)が可能な事などが挙げられます。(写真)

MRM8

以上のようにMRIでは時間はかかりますが、乳癌診療に役立つ画像を様々に撮影することが可能です。
(鈴木 圭一郎)

*ガイドライン:欧米における乳房MRIのガイドライン(2009年3月)

知っているようで知らない!? レントゲンの基礎③ -撮影距離-


前回X線写真撮影時の条件についてお話させて頂きましたが、今回は距離についてお話させていただきます。

撮影距離って重要なの?

先生の施設ではX線写真を撮る際、どれぐらい距離をとって撮影されていますか?
当院では、立位の胸部・腹部は200cm、臥位であれば100cm、その他整形等での骨の撮影は一部を除いて100cmで撮影しています。

撮影距離が短いと画像が拡大します

距離を選定する際、考えなければならないこと、それは画像の拡大(ゆがみ)です。
X線写真は、X線が管球から円錐状(四角錐)に放射されているため(図1)、厚みのある被写体を撮影するとX線写真上では常に像の拡大が発生し、実物より大きく描出されています。(図2)

距離をとることで平行に!

Aの位置よりもBの位置から撮影した方が患者さんに入射するX線が平行に近くなり画像の拡大が少なくなります。(図1.図2)
その為、可能な限り距離を離して撮影するのが理想ですが、距離を離しすぎると線量不足になります。撮影室の広さや、使用するX線発生装置の性能を考慮した上で当院では200cmと選定しました。

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胸部レントゲンを後ろから撮る理由

また、胸部撮影をPA(Posterior-Anterior view)撮影するのも、心臓をフィルムに近づけることによって、ほぼ実物大に写るからです。AP(Anterior-Posterior view)撮影では若干ですがフィルムと心臓に距離が開くので心臓がやや大きくなり、肺が狭く写ります。
従って、PAで撮影した方が心臓は実物大に写り、肺が広く写るため診断しやすくなるのです。

整形等での骨の撮影においても理想としてはなるべく距離を離した方がいいのですが、多くの場合臥位での撮影となりますので、天井の高さや操作性を考え100cmとなりました。

X線写真は、前回との比較を目的に撮影することが多いです。
我々放射線技師は、担当者が替わってもなるべく統一条件下で撮影するように心掛けて、日々従事しています。
(森 直彦)

脳血流SPECT:統計解析による診断のポイントその1 ~統計解析の仕組み~


日頃脳血流SPECT(図1)の検査依頼いただき、厚く御礼申し上げます。脳血流SPECTの統計解析は認知症および神経疾患における核医学診断では標準的手法として恒常的に施行されております。

図1:spect
図1:spect

そこで今回は脳血流SPECT画像を統計解析する流れを紹介させていただきます。
当院では脳血流SPECT検査におきましては
・99mTc-ECDでは「eZIS」(図2)
・99mTc-HMPAOでは「iSSP」(図3)
という統計解析ソフトを使用し、脳外科依頼を含めて全ての脳血流SPECT検査に統計解析を行います。

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統計解析による手法とは~正常画像との比較~

・各年齢群におけるノーマルデータベースと比較

統計解析による手法は個々の脳血流SPECT画像につき、同年齢群の正常データベースと比較して血流が低下している部位を探し出す方法です。「同年齢群」という表現ですが、年齢毎に正常での脳の血流分布は異なります。そこで例えば55歳なら51~60歳の正常例の脳血流分布との比較、75歳なら71~80歳の正常例の脳血流分布との比較というくくりで解析を行うことになります。最近は高齢化に伴い、80歳代のノーマルデータベース(NDB)も追加されています。(図4)

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*同一年齢群と異なる年齢群で統計解析した場合の違い

年齢とは異なる年齢群のデータベースで解析を行うと違った結果をもたらすので注意が必要です(図5)。

NDBの違いによる解析結果の変化
図5:NDBの違いによる解析結果の変化 80歳代のノーマルデータベースを用いて比較すると後部帯状回の血流低下が明瞭に描出されています。

・標準化してから正常脳に重ねあわせます

もちろん脳血流SPECT画像について皆それぞれ血流分布はもとより、形状や大きさはそれぞれ少しずつ異なります。そこで個々の画像を一定の形に変換する「解剖学的標準化」という作業を行います。これにより、脳の大きさの差異、左右の歪みなども一定の形に置き換えることが可能になります。一方で正常データベースで得られた脳血流分布も同様に「解剖学的標準化」することで、個々の場所での血流分布を比較することが出来ます。

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次回は血流低下部位を抽出する仕組みについてお話しさせていただきます。

(核医学認定技師 荒田 光俊)

 

特集CT:手術支援3D画像処理


前回の特集ではCTにおける専用ワークステーションを使用した基本的な画像処理技術について記載させて頂きましたが、今回はその画像処理技術を利用したCTによる手術支援3D画像について大腸がんの症例を元にご紹介させて頂きたいと思います。
近年、腹腔鏡の技術が進歩し大腸癌の手術でも腹腔鏡下でおこなうことが多くなり、当院でも行われています。開腹術と比較し、腹腔鏡下での手技は当然ながら視野が狭くなります。手術前に腫瘍や血管等の位置を把握できるような3D画像を外科の先生に提供するようにしています。

術前支援3D画像

【下行結腸癌術前】

当院では大腸がん術前の時などにおいて造影剤を使用してのCTC撮影(後述)を行っています。造影剤を使用することにより、動脈・門脈を描出することが可能となり、さらに腫瘍も造影剤によって染まるため、血管と腫瘍の位置関係が鮮明になり、術前計画や術中の画像支援として有用であると考えています。
下の画像は下行結腸にできた腫瘍の術前の為、造影剤を使用したCTC検査を行った症例です。エアーイメージで大腸の走行、腫瘍の位置や形状が確認でき(赤丸)、さらに造影剤を使用することにより動脈・門脈の血管走行、腫瘍(赤矢印)への栄養血管を確認できます。

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CTCとは?

下に示した検査手順の通り、CT検査は肛門からチューブを挿入し(図1)、そこから空気を注入して大腸全体を十分に拡張させた状態で、仰向けとうつ伏せの2体位でCT撮影を行います(図2)。2体位で撮影することで、腸管描出不良部分を補完するだけでなく病変に見える残便を移動させて診断能を向上させることが可能となります。そして、得られた画像データは画像処理専用のワークステーションで処理することにより、空気だけを抽出したエアーイメージ画像や、仮想内視鏡画像という内視鏡検査を行ったような大腸画像を作成することができます。(図3)以上までを一般的にはCTC(CTcolonography)検査と呼ばれています。

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内視鏡挿入困難症例

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図は、エアーイメージとその病変部の拡大画像、さらに、カメラのイラストの方向から病変部を観察した仮想内視鏡画像になります。こちらの方は大腸内視鏡挿入が困難であったためCTCが検討され、このようにCTC検査によって病変の診断が可能になりました。当院では、この症例のように、腸管の屈曲が強い等の理由で内視鏡検査が困難であった方の多くがCTCを施行し、病変部の描出を可能にしています。

CTCは、わが国ではまだ特殊検査という位置づけですが、欧米では大腸がんのスクリーニング検査にも用いられており、当院でも多くの方が受けられております。これからも診断に役立てていただけるよう我々放射線技師は画像処理に取り組みたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。(江上 桂)

ピンクリボンアドバイザーをご存知ですか?


昨年11月に行われた、ピンクリボンアドバイザー認定試験を受験しました。
今回は、このピンクリボンアドバイザーについて紹介していきたいと思います。

いきなりですが、乳がん検診の受診率はご存知でしょうか。
がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)によると、乳がん検診の受診率は34.2%です(2013年)(グラフ1)。全国でピンクリボン運動が精力的に行われ受診率が増加しているとは言うものの、実際に検診を受けた人は3人に1人程度とまだ少ないのが現状です。
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では、どのようにすれば受診率が向上するのでしょうか。
認定NPO法人乳房健康研究会が2013年に行った調査によると、住民検診でマンモグラフィを受けた人の3割は「知人・友人」に勧められたと回答しています。このことから、乳がん検診を勧める人の存在が受診率向上につながると考えられます。
そこで、“乳がんの検診、治療、ピンクリボン運動などについて正しい知識を持って、まわりの人の乳がん検診受診のきっかけをつくる人”として、ピンクリボンアドバイザー認定試験が始まりました。認定試験は初級・中級・上級と3段階に分かれています。
それぞれ、乳がんに関する正しい知識を身に付け、

初級…自分自身の健康管理に役立てたり、家族や知人・友人などの身近な人に乳がん検診を勧めたりする

中級…職場や地域の人々に乳がん検診を勧め、乳がんの正しい知識を伝える

 さらに、乳がんに関するさまざまな問題を理解し、その解決のために行動する

上級…乳がん検診や乳がんを取り巻く環境改善のために、教育・指導・社会活動を主導する

ピンクリボンアドバイザーは、ピンクリボン運動の主旨に賛同する人なら誰でも受験するこができます。私が受験した際には、医療関係者はもちろん一般の方もたくさん受けていました。私は昨年の試験で初級を取得したので、今年は中級を取得したいと思っています。
これから、ピンクリボンアドバイザーの活躍により受診率の向上、そして乳がんの早期発見につながることを期待し、私自身もピンクリボン活動に積極的に参加していきたいと思います。(大山 薫)

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今月の症例(胸部レントゲン)


76歳男性、喫煙者。2016年5月の検診で異常を指摘されました。下の画像から考えられる疾患は?

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解答:右下肺野結節影の出現

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2014年8月の胸部単純写真と2016年5月の胸部単純写真をよく見比べると、右下肺野に結節影が新たに出現しているのがわかります。

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CTでも、右中葉の不整形の高吸収結節は、形態的には炎症瘢痕様にも見えますが、2014年から2016年にかけてやや増大していることがわかります。この方は当院で手術が施行され、病理の結果は腺癌でした。2016年5月の胸部単純写真では異常はややわかりにくいと思われますが、前回と比較するとはっきりしてきます。やはり、比較は非常に重要ということがよくわかります。今回の症例では単純写真もそうですが、胸部CT上瘢痕様でしかも、発育も非常にゆっくりとなっています。渡邊らの初回CTで瘢痕様陰影を呈した肺癌の39例の検討では、特徴として男性、喫煙者、既存肺に変化のある症例に多く、腫瘍の倍加時間が短く、特に既存肺変化群で予後不良例が含まれるため注意が必要で、初回CTから2-3か月以内のフォローが望ましく、その後のフォローも必要と述べています。
文献:渡邊 創ら。初回のCT画像所見が瘢痕様陰影を呈する肺癌の検討. 肺癌2009;49:1011-1018

放射線治療始動!(横浜栄共済病院の放射線治療装置のご紹介)


お世話になります、放射線技術科の江川です。
長らくお待たせしておりました放射線治療設備ですが、9月に治療装置の設置および調整が完了しついに10月1日よりスタートすることができました。現在、順調に運営が進んでおります。
そこで今回は予定を変更し、当院に導入された放射線治療装置および関連機器について紹介させて頂きます。

〇放射線治療装置(直線加速器:LINAC)

elekta-synergyこのたび当院に設置されたのはスウェーデンに本社をおくElekta社の装置で、Elekta Synergy®(エレクタ シナジー)と呼ばれる装置です。この装置では従来の治療ビームでの位置照合装置の他、リニアックのガントリ部にCT画像が撮影できるX-ray Volume Imaging (XVI)を搭載し、画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy:IGRT)が可能な治療装置です(写真)。治療ビームに対して垂直方向に kV電圧(CTで利用されるエネルギー)のX線管球とフラットパネル検出器を装備しており、2D撮影や連続撮影(透視撮影)だけでなく、コーンビーム技術による3次元のCT(Cone Beam CT:CBCT)を撮影できる機能を備えています。(図1)

図1:IGRT機能搭載
図1:IGRT機能搭載 XVI(kV撮影による照合)およびiView System(MV撮影による照合) FPD:フラットパネルディテクタ

治療患者を寝台上でポジショニングした後、ガントリを1回転させCBCTを撮影することにより、実際の治療位置で3次元CT画像を得ることができます。得られた3次元画像を専用のワークステーション上で治療計画のCT画像と重ね合わせを行い、位置誤差を計算し、得られた位置誤差を自動で補正することが可能で以前より正確な位置で照射を行うことができます。また、6軸補正が可能な治療寝台HexaPOD™ evo(図2)を搭載しておりますので、より高精度な照射時にもスムーズな位置照合を行い照射をするすることができます。

図2:6軸補正が可能な治療寝台HexaPOD
図2:6軸補正が可能な治療寝台HexaPOD

〇放射線治療計画CT

写真2 放射線治療計画専用CT TOSHIBA AquilionLB 16列MDCT
写真2 放射線治療計画専用CT TOSHIBA AquilionLB 16列MDCT

放射線治療計画専用CTは、東芝AquilionLBを導入しました(写真2)。LBとはLarge Bore(ラージボア)の略で、開口径(内径)900mm、画像化領域850mmΦを実現した16列マルチスライスCTになります。
画像化領域が診断用のCTに比べ350mmも広いため、放射線治療計画に重要な、体表面まで確実に含んだ撮影が可能です。ラージボアCTは、ポジショニングの自由度が広がるため、患者固定具を使用した撮影や通常の体位が困難な場合の撮影時などに大きな威力を発揮します。
CT寝台も治療寝台と同じカーボンファイバーのフラット天板を採用しているため、位置の再現性も高精度に保たれます。
アプリケーションでは、被ばく低減技術である逐次近似計算ソフトを搭載しており、最大50%のノイズ低減と、75%の被ばく低減効果を実現しています。
また、呼吸同期撮影機能も搭載しているので、呼吸に合わせた撮影も可能です。

〇放射線治療計画装置 Pinnacle3

放射線治療計画装置 Pinnacle3
放射線治療計画装置 Pinnacle3

高度な処理による治療計画の時間を大幅に短縮することができ、自動臓器輪郭抽出ソフトウェアや3Dボリューム抽出ソフトウェアを搭載しており膨大な輪郭作成の時間を大幅に短縮し、治療計画を行うことができます。
また計画時にマルチモダリティ(CT & MRI・CT & PET・CT & CT 等)な画像を活用し、ワンクリックで画像の自動重ね合わせ(オートイメージフュージョンソフトウェア)を実現できるため、より正確な治療計画を可能とします。

〇装置の品質管理について

放射線治療を安全に行うための品質管理機器も充実しております。線量測定に必要なファントムや線量計、ビームチェック装置や投与線量検証プログラム、治療計画線量分布確認システムなど、日常の管理ツールから高精度な品質管理ツールまで多数導入することができました。これらのツールを有効に使用し、放射線治療が安全に提供できるよう品質管理に努めていく予定です。

安全で安心できる放射線治療の提供を目標に、地域密着の放射線治療を目指して参りますので、先生におかれましては、適応の患者さまがいらっしゃいましたら、是非とも当院にご紹介して頂ければと思います。よろしくお願い致します。

次回は、今回紹介の予定であった放射線の種類を変る技術(粒子線治療)について紹介させて頂きます。

(放射線治療認定技師 江川 俊幸)

当院のGE社製 3T(テスラ)MRI装置のご紹介


3.0T(テスラ)MRIが当院に入ってから、早いものでもう3年が経過しました。事故もなく安全に検査をすることが出来ていると言う事は、何ものにも変えがたい喜びです。安全第一で今後もMRI検査を行っていきたいと思います。

そこで、今回はあらためて3.0T MRIのメリット・デメリット・安全上の注意点などを交え、紹介したいと思います。
現在、日本国内で人体に使用できるMRI装置には静磁場強度が、0.5T~3.0Tまで多種多様な装置があります。臨床機では3.0Tが最上位機種となります。また、実験段階ではありますが、すでに7.0TのMRI装置で人体の撮影も行われています。近い将来、7.0T の臨床装置が登場する日もそう遠くはないかもしれません。
静磁場強度が高くなる最大のメリットは、信号強度(signal/noise)が向上することにより、高分解能な画像が撮影できる様になることです。また、撮影時間の短縮も可能になります。(画像1)

MR1
画像1

わずかな磁化率の差が画像に影響するため、今までは見えなかったものが見えるようになることもあります。(画像2)

MR2
画像2

周波数の差が大きくなるため、T2強調画像やT1強調画像だけではなく、ASLやMRS(画像3)などもきれいに撮影できます。また、functionalやelastgraphyなども1.5T MRIよりきれいに撮影することが出来ます。

MR3
画像3:3T装置で撮影されたT2強調画像、T1強調画像(造影)、ASL画像、MRS

また、デメリットとしては、3.0T MRI対応の体内金属以外は検査が出来ません。冠動脈ステントも、5年以上前に挿入したものは3.0T MRIでの磁場試験を行っていない製品も多く存在するため、安全性が確認できないものに関しては1.5T MRIでの検査となります。また、他院で挿入した冠動脈ステントや体内金属などは、製品の型番が確認できて安全性が担保できなければ3.0T MRIでは検査を行わないようにしています。一番重要なことは、安全性の担保に尽きると思います。リスクを負ってまで3.0T MRIで検査する必要はありません。安全面が確認できない場合は、1.5T MRIで検査をおこなえば良いのです。2台を使い分けすることで、スムースな検査が可能となっています。磁場強度が増すと、それだけ金属の吸引力が増加します。もし誤って金属を持ち込むと、3.0T MRIは1.5T MRIの2倍の吸引力になるため、大事故になりかねません。3.0T MRIが納入された時から、金属に関しては今まで以上に慎重に対応するようになりました。実際に磁場の吸引力を体験すると分かるのですが、3.0T MRIは桁違いの磁力です。
3.0TのMRI装置はメリット・デメリットありますが、安全に使い分けを行えば非常にメリットの多い装置であることは間違いありません。患者さんにとって、安全に安心して検査が行えるように、これからも日々精進してまいります。