Z-socoreとは(前回の復習)
当院で使用されている脳血流統計解析ソフトeZISではZ-Scoreという数値(指標)を使用します。
Z-Score=(正常群平均Voxel値―症例Voxel値)/(正常群標準偏差)
で表されます。すなわち血流低下が大きいほどZ-Scoreは大きくなります。また一定のZ-Score以上の領域を投影することで臨床上有意な血流低下各領域を抽出することが可能になります。
ここまでは前回お話しさせていただきました内容です。
アルツハイマー病におけるZ-Scoreについて
今回は99mTc-ECDを使用した脳血流SPECTを統計解析ソフト「eZIS」で処理を行った画像につき、アルツハイマー病におけるZ-Scoreの話をさせていただきます。アルツハイマー病では、その前駆期には後(部)帯状回から楔前部に血流低下がみられ、さらに頭頂葉皮質で血流低下が顕著な例は、進行が早いとされています。1)
前回の話で取りあげた部位と機能をもう一度下記に示しますが、下線部の3ヶ所に焦点を設定します。
海馬 … 主に記憶を作るところであり、特に新しい記憶に関係があります。
後(部)帯状回 … 空間認知や記憶などに関係があります。
頭頂葉 … 言語による表現、行動、空間認知などに関係があります。
楔前部(せつぜんぶ) …感覚情報、 記憶などに関係があります。
前頭葉 … 行動をおこすこと(運動・意思など)に関係があります。
統計解析ソフト「eZIS」では脳血流SPECT画像における全ての画素(ボクセル)にZ-Scoreを算出しておりますが(図1)、後(部)帯状回、楔前部、頭頂葉を疾患特異領域として関心領域を設定し、領域内のZ-Scoreについて以下の指標や割合を算出しています。(図2.3)
Severity
疾患特異領域の血流低下程度(Severity)は疾患特異領域内のZ>0のみのZ-Score平均であり閾値を1.19としています。
Extent
血流低下領域の割合(Extent)は疾患特異領域内のZ≧2のボクセルの割合を示し、閾値は14.2%としています。
Ratio
疾患特異領域と全脳の血流低下領域の割合の比較(Ratio)は全脳の血流低下を1とした場合での比較で、閾値は2.22倍となっております。こちらは他の領域での血流低下が大きいと閾値を下回る結果を伴うことが多々あります。
参考文献:1)松田博史:SPECTにおける画像棟計解析(画像診断 2003:23:1296-1309)
次回は認知症疾患に加えて他の神経疾患も含めて「eZIS」画像をより詳しくお話しさせていただく予定です。 (核医学専門技師 荒田 光俊)