脳血流SPECT:統計解析による診断のポイント その3 ~アルツハイマー病におけるZ-Scoreによる評価~


Z-socoreとは(前回の復習)

当院で使用されている脳血流統計解析ソフトeZISではZ-Scoreという数値(指標)を使用します。
Z-Score=(正常群平均Voxel値―症例Voxel値)/(正常群標準偏差)
で表されます。すなわち血流低下が大きいほどZ-Scoreは大きくなります。また一定のZ-Score以上の領域を投影することで臨床上有意な血流低下各領域を抽出することが可能になります。
ここまでは前回お話しさせていただきました内容です。

アルツハイマー病におけるZ-Scoreについて

今回は99mTc-ECDを使用した脳血流SPECTを統計解析ソフト「eZIS」で処理を行った画像につき、アルツハイマー病におけるZ-Scoreの話をさせていただきます。アルツハイマー病では、その前駆期には後(部)帯状回から楔前部に血流低下がみられ、さらに頭頂葉皮質で血流低下が顕著な例は、進行が早いとされています。1)
前回の話で取りあげた部位と機能をもう一度下記に示しますが、下線部の3ヶ所に焦点を設定します。
海馬 … 主に記憶を作るところであり、特に新しい記憶に関係があります。
後(部)帯状回 … 空間認知や記憶などに関係があります。
頭頂葉 … 言語による表現、行動、空間認知などに関係があります。
楔前部(せつぜんぶ) …感覚情報、 記憶などに関係があります。
前頭葉 … 行動をおこすこと(運動・意思など)に関係があります。

統計解析ソフト「eZIS」では脳血流SPECT画像における全ての画素(ボクセル)にZ-Scoreを算出しておりますが(図1)、後(部)帯状回、楔前部、頭頂葉を疾患特異領域として関心領域を設定し、領域内のZ-Scoreについて以下の指標や割合を算出しています。(図2.3)

Severity
疾患特異領域の血流低下程度(Severity)は疾患特異領域内のZ>0のみのZ-Score平均であり閾値を1.19としています。
Extent
血流低下領域の割合(Extent)は疾患特異領域内のZ≧2のボクセルの割合を示し、閾値は14.2%としています。
Ratio
疾患特異領域と全脳の血流低下領域の割合の比較(Ratio)は全脳の血流低下を1とした場合での比較で、閾値は2.22倍となっております。こちらは他の領域での血流低下が大きいと閾値を下回る結果を伴うことが多々あります。

参考文献:1)松田博史:SPECTにおける画像棟計解析(画像診断 2003:23:1296-1309)

次回は認知症疾患に加えて他の神経疾患も含めて「eZIS」画像をより詳しくお話しさせていただく予定です。 (核医学専門技師 荒田 光俊)

放射線治療における精度管理について


〇放射線治療における精度管理

さて今回は放射線治療における安全の取り組み(精度管理)について書かせて頂きます。
近年、放射線治療は、がん治療において重要な役割を担っています。高齢化に伴うがん患者の増加、がん治療における放射線治療適応の拡大から、対象患者が増加しています。また治療装置も以前に比べ大幅に進化し、照射技術(照射位置の正確性、線量の集中性)が格段に向上しております。これらを踏まえて放射線治療を安全に実施するために、精度管理(QA・QC)(1)が重要となっています。また、精度管理は医療事故を未然に防止する目的を含んでおり、日々治療患者へ確実な照射を行うためには欠かせないものとなっています。ICRUレポート(2)では、臨床的に患者へ投与される線量が7〜10%を越えると、腫瘍の局所制御率に大きな変化をもたらすと報告されており、最終的に投与される線量の不確かさを5%、機械的な空間的不確かさを5mm以内の精度で管理する必要があると勧告しています。

(1) 品質保証(QA:quality assurance):患者及びその家族にその治療に用いられる全ての行為および装置の十分な質を保証するために医療者側が行う体系的活動、質的保証
品質管理(QC:quality control):患者に対する診療行為及び関連する医療手段の全ての管理、質的管理
(2) ICRU:国際放射線単位測定委員会
放射線・放射性物質の量と単位および測定に関する国際的な統一と規格化を図るための国際組織

〇精度管理項目の頻度と役割について

放射線治療装置の品質を担保するためには、多くの精度管理項目を実施する必要があります。精度管理項目は日常(Daily)、週毎(Weekly)、月毎(Monthly)、年毎(Annual)の頻度に分けられます(3)。すべての項目を日常点検で行うことは現実的に不可能であるため、照射精度への影響度と業務効率を考慮して、適切な頻度で適切な精度管理項目が設定されています。
当院においても、Daily、Weekly、Monthly、Annualの項目について、計画的に精度管理を行っております(fig1〜4)。

(3) American Association of Physicists in Medicine:AAPM TG-142 Report
最新の放射線治療技術に対応した、放射線治療装置の精度管理プログラム

日常点検

患者の位置決めおよび患者への投与線量に重大な影響を及ぼす可能性のある項目で行います。
位置合わせレーザーポジション、出力線量の不変性(簡易的な検証を行う)、照射野サイズの確認、各インターロックの確認等が挙げられます。

週毎および月毎の点検

患者への影響を与えやすい項目で行います。
出力線量の不変性(標準測定法に基づいた検証)、および線量プロファイル、マルチリーフコリメータの駆動に関する確認等が挙げられます。

年毎の点検

受入れ試験やコミッショニングで実施された項目の一部で、短期間での変化が小さく、長期にわたり変化する項目になります。

放射線治療は照射技術の進化に伴い、精度管理も重要な業務の一部となっております。精度管理は、治療装置および治療計画装置、その他の放射線治療に関わる付属器具と多岐にわたり、多くの時間と労力を必要とします。しかしながら、患者さまへ安全で安心できる放射線治療を提供するためには必要不可欠なことであるため、治療スタッフ一同、日々精度管理に取り組んでおります。ご安心してお任せ頂ければと思います。
放射線治療専門技師 江川 俊幸

妊婦さんのレントゲン撮影法


当院では10年前に産婦人科が閉鎖されましたが、環境が整い昨年の6月に再開しました。新B棟の二階に産科病棟も入り病室はまるでホテルのようです。(ちょっと大げさ?)

さて、出産が始まれば放射線技術科としても準備をしなければならないことがあります。それはX線骨盤計測法です。産科が閉鎖される以前は撮影していましたが、新人技師も入り撮影経験のない技師も増えましたのでベテラン技師も含めて再度勉強しなおすことにしました。産科にかかわりのない先生にはあまり馴染みのない撮影とは思いますが今回のテーマにさせてください。

X線骨盤計測法とは…

CPD(児頭骨盤不均衡)の恐れ(児頭が母体骨盤より大きいため児頭と母体骨盤の間の大きさに不均衡が生じて、陣痛があるにもかかわらず児頭が骨盤入口部に固定せず分娩が進行しない状態)のある妊婦さんの撮影です。
難産によって起こる母児への危険・障害を回避し最も安全な分娩様式を事前に選択する目的に行われ、産科における重要な検査の一つです。一般的には38週以降とされています。
X線によって骨盤の大きさと同時に児頭の大きさを計測するものでグースマン法(骨盤側面撮影法)とマルチウス法(骨盤入口撮影法)を同時に行うのが一般的です。
次に当院での撮影方法を紹介します。

月に数件しかないこの撮影は、正確性が重要な撮影であるとともに被験者が妊婦であるため被爆をできるだけ抑え、計測可能な必要最低限の線量で撮影しなければなりません。我々技師は丁寧かつ迅速に撮影できるよう日頃からシミュレーションを実施し、安全・安心な出産ができるよう放射線技師として陰ながら協力できればと思っています。

知っているようで知らない!? レントゲンの基礎④-レントゲン-


これまでのシリーズではレントゲンの基礎として、撮影条件や距離のお話をさせて頂きましたが、今回は今まで当たり前のように発していた“レントゲン”についてお話させて頂こうと思います。
また多くの方が間違った使い方をしてしまう“放射線・放射能・放射性物質”についても併せてお話させて頂きます。

レントゲンとは何か?
1895年W.C.レントゲン博士が真空放電の実験中に偶然、いろいろな物を突き抜ける不思議な光線を見つけました。
発見時、未知の光線だった為、数学の未知の数を表す「X」の文字を使いX線と名付けられました。
当時、多くの学者は彼の発見を称えその光線のことをレントゲン線と呼びました。
その名残から、未だにX線を使った検査のことを、レントゲン検査と言っていますが、近年放射線業務の領域ではレントゲン検査と呼ばずに、正式名称のX線検査と呼んでいます。
博士はその後1901年に第1回ノーベル物理学賞を受賞したことでも有名ですね。

放射線・放射能・放射性物質
“放射線”とは、放射線物質から放出される粒子や電磁波のことです。
“放射能”とは、放射線を出す能力のことです。
“放射性物質”とは、放射能を出す物質のことです。
蛍に例えると、放射線は蛍の光、放射性物質は蛍、放射能は光を出す能力です。
また、蛍の光が虫かごから漏れると「放射線漏れ」、蛍が虫かごから逃げ出すと「放射性物質の漏れ」ということになります。
このように“放射線”と“放射能”では大きく意味が異なるのです。
しかし、特にポータブル撮影時において、「放射能が出るから逃げないと」と発言する医療従事者もいるほどで、一から説明したくもなるのですが、グッと堪えて日々業務に励んでいます。
(参照:http://www.rikuden.co.jp/housyasennokoto/kihon.html)

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特殊撮影主任:森直彦

特集CT:名機の条件


おやじも悩ます!? CTの進化が止まらない!

昨年末、北米放射線学会という学会がシカゴで行われました。この学会は放射線関連学会では世界最大のもので、ここで毎年最新の技術を搭載した新装置が発表されます。今年も様々な技術開発があったそうです。放射線関連業界では毎年技術が進み、新しい装置が販売されていきます。CT装置に関しても様々な機種が販売され、16列とか64列とか、320列、256スライスなど、また2管球搭載型、最新型検出器によるデュアルエナジー機能搭載型等どんどん新しいものが販売されています。こうなってくると、僕らのように毎日使っているような人間でもどの装置が本当に良いものなのかわかりにくくなってきます。また最新のマーケティング技術によって装置の良し悪しを決める大切な部分を隠すことも高度化されていますので、注意する必要があります。そのため正しい知識を身につけることも我々の仕事であると先代の技師長から教育されてきました。私も努力をするように勤めているつもりです。
最新機種は色々とあるものの、エックス線CTの良し悪しというのはエックス線を使用した装置である以上その原理的背景からして一貫していると思っています。今回は本当に良いCT装置という少々マニアックな話ではありますが、お付き合いいただけたら幸いです。

CT装置:ここが「キモ!」

○馬力が重要なのはヒトも車もCTも同じ

CT装置で最も重要なのは、なんと言ってもエックス線管球であると思います。エックス線管球というのはエックス線を発生させる部品です。エックス線撮影装置はエックス線を出すエックス線管球、エックス線を受ける検出器(フィルム)が基本構成でCTも同様です。その中で特にエックス線管球からのエックス線最大出力が大きいほど良い管球といえます。
それではなぜ最大出力が重要なのでしょうか?これはエックス線検査の基本的な原理と関係があります。CT装置ではエックス線を使用して画像を得るのですが、エックス線の使用量が少ないと画像が汚くなります。これは患者さんの体を透過してきたエックス線の量が少なくなり、ノイズの割合が増えるためです。ですから体の大きい人の撮影時には透過エックス線量がたらず、画像が荒くなってしまいます。ノイズの影響を少なくするためには十分なエックス線量が必要になります。

○量を出すにはどうするか?

さて、X線の量を増やすにはどのようにすればよいのでしょうか。それにはX線を出す力を増やす方法(出力を上げる)と時間をかける方法(出力している時間を延ばす)の二つがあります。
前者の方法は、エックス線管球が持つ元々のパワーによりますので限界があります。軽自動車が200キロ以上のスピードを出せないのと同じように、資質によるところで決まるわけです。そこで最大出力以上のエックス線が必要な場合には、エックス線をかける時間を長くすれば必要な量をえることができますのでそのような方法をとります。これは軽自動車でもゆっくり走ればいつかは目的地に到着するのと同じです。このように量を出す為に時間をかけるわけですが、ここにCT装置の良し悪しをきめるポイントがあります。

○止められない♪、あ~止まらない♪

何がポイントなのかというと、この「時間をかける」というのが問題となります。CT撮影は体内臓器を対象にした撮影ですから、あまりに長い時間エックス線を照射しても患者さんが息を止めていられないからです。そしてこの影響を大きく受けるのが、常に動いている臓器(冠動脈)の撮影です。最近はCT装置で冠動脈も撮影できるようになりましたが、冠動脈というのは患者さんが息を止めても動きがとまるものではありません。ですから、動きを止めるために早いシャッタースピードで画像を取得する必要があります。つまり短い時間でエックス線を大量に発生させる必要があるということです。大火事の時には、消火器ではなくポンプ車が必要なのとおなじように一気にかけるイメージに似ていますね。火を消さなければ意味がないのと同様に、冠動脈撮影も動いていては意味がないのです。
以上のようなことから、CT装置メーカー各社はこぞって管球の最大出力を上げて1秒以下でたくさんのエックス線を出力できるような大容量のエックス線管球を開発しています。あるメーカーは最大出力を大きくするためにX線管球を2つ付けた装置も販売していますが、それでもまだ十分な出力とは言いがたいと個人的には思っています。以上のことからエックス線管球は撮影できるかできないかということを決める重要な因子であるということになります。

coronary

○装置寿命も左右する!?

さて、話は変わりますが当院には設置から13年目を迎える16列CT装置が稼働しています。16列CT装置というと今では普及期というか最低スペックの装置に聞こえてきますが、当院のこの装置は購入当時、上から二番目のハイスペック装置でした。この装置は2番目とは言いながらも冠動脈を撮影することを目的とした装置だったので、当時では珍しくかなり高い出力が得られるエックス線管球が搭載された装置だったからです。ですから、今発売されている16列装置とは格段にパワーがちがい、高負荷のかかるような検査を連続で行っても大丈夫な今でも第一線で活躍している名機といえます。このようにエックス線管球は装置寿命という点で見た時にもとても重要なポイントとなるといえるのです。


良いCT装置とは?ということで、今回はエックス線出力についてお話ししました。かなりマニアな話でしたがエックス線管球の力がとても大事であるという点については知っていただけたかと思います。今回は技術的に良いCT装置ということに的をしぼってしまいましたが、経済的な側面で見ると良い装置とも一言では言い切れないのが今の時代です。それはエックス線CTの診療報酬では列数による加点はあるものの管球出力による加点はないからです。そういった点で言えば、むだに高い出力をもった装置というのはコスト的に良い装置とは言えないのです。
とは言っても出力が高い装置のメリットはとても多く、冠動脈も前投薬無しで撮影できたり、息止めすら必要なく撮影できたり、また造影剤を半分以下に減らせたりすることもできるため、患者さんにも我々にも先生にもメリットがたくさんあるからです。
以上のようなことも含めて良いCT装置とは…と考えてみると13年前冠動脈の加算もない時代にあのような先駆的な装置が当院に導入されたことは誇らしいことであったのだと改めて感じています。
X線CT専門技師・肺がんCT検診認定技師 保田英志

特集MRI:コイルは地味だが役に立つ!


MRI用コイルってご存知ですか?

MRIは強い磁場の中に身体をおき、電磁波(RFパルス)を人体に照射したり断ったりを高速に繰り返しおこなって撮影しています。この電磁波送信の繰り返しによって、人体の水素原子から信号(FID信号)が放出され、この微弱なFID信号をMRI用コイルで受信し、演算処理をすることでMRI画像が出来上がります。
つまりこのMRI用コイルは高感度な受信アンテナで、なくてはならない物なのです。自宅で地上波を見ようとする時に、電波を受信するアンテナが必要ですよね。また、電波の感度が良ければノイズものらないはずです。MRI用受信コイルも同じようなものと考えてよろしいかと思います。ということで、今回は地味ではありますが、MRI撮影にとって重要なこのMRI用コイルについてご紹介したいと思います。

FIDandImaging

MRI用コイルといっても、種類がたくさんある事をご存知でしょうか?一般的なのは、頭部用コイル・脊椎用コイル・腹部用コイルだと思います。これに加え当院では整形領域のコイルも使用しています。次にそれぞれのコイルを紹介します。

HNS

BodyandCardiac

ShouldrKnee

関節用コイル

膝関節には前十字靭帯、後十字靭帯、外側・内側側副靭帯、半月板、滑膜、などの観察すべきポイントが多くあります。
何気なく撮影しているような画像でも、きちんとしたポジショニングをすることで描出能に違いがでるため、診断に影響することがあります。例えば、前十字靭帯の描出方法です。
通常、前十字靭帯は膝関節を少し曲げることでピ-ンと張ります。靭帯が張った状態にすることで靭帯断裂などの評価がしやすくなります。また、外側にわずかに傾けることで前十字靭帯を1スライス内におさめ、靭帯を連続して描出することが出来、評価しやすくなります。
膝関節用コイルはこの様なポジショニングが簡便に出来る形をしています。

KneeCoil

今回紹介した膝用コイルだけでなく、専用コイルは非常に使いやすく画質の向上・仕事の効率化が計れる有用な道具です。また、正しく診断がおこなわれるように我々放射線技師も解剖をよく理解して検査をおこなうことを心掛けています。
専用コイルは他部位への応用も可能なので患者さんごとに最適なコイル選択をおこない安全・安心なMRI検査をおこなっております。
(救急撮影認定技師 平野 謙一)

放射線治療センターの近況


放射線技師長の高橋です。昨年の9月末より開設となった放射線治療ですが、約4か月で66名の患者さまに利用していただきました。予想を超える利用者にとても驚いています。外科の患者さまが35名、泌尿器科の患者さまが14名、内科の患者さまが12名なので、ほぼこの3科の患者さまで占められています。圧倒的に多いのは乳腺で、次に前立腺です。この利用状況は、ほぼどこの病院でも同じようなものだと考えています。
今回も当科放射線治療センターの近況をご報告させていただきたいと思ます。

Good Job賞を受賞!

今年の1月4日に院内のGood Job賞を江川放射線治療主任が受賞しました。Good Job賞は年度内の病院運営において、大きな業績を残した職員、また部署に与えられる賞です。放射線治療の開設準備は心身ともにとても大変であったと思います。私も江川主任が赴任されるまでは放射線治療センター開設の中心にいたので、感無量でした。江川主任のみでなく、看護部、事務部、そしてすべてを取りまとめていただいた渡邊外科統括部長にもお礼を述べたいと思います。

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放射線治療カンファランスを開催

放射線治療運営委員会が先日行われ、外部からの紹介患者さまが少ないことが問題になりました。また、院内の患者さまにおいても、本当は放射線治療の適応なのだけど…..という例もあるので、今月より放射線治療医師と、各診療科の先生(各科ごと)でカンファランス&勉強会を行うことになりました。まずは先日、呼吸器内科の先生方と行いました。

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Facebookページをオープン!

横浜栄共済病院放射線科でfacebook pageを立ち上げました。横浜栄共済病院は放射線治療をおこなっています。とういうことをSNSで少しでも多くの皆さまに知ってもらうためです。放射線治療関係のみでなく、ニュースレターの過去ログであるブログとも連携して、いろいろな情報を発信しようと考えています。ぜひ「いいね!!」や「フォロー」をお願いします。

FB

脳血流SPECT:統計解析による診断のポイント:その2~血流低下の大きさ・部位を可視化する~


解剖学的標準化(前回のおさらい)

前回では脳血流SPECT画像を解剖学的標準化により標準脳に変換し、血流低下部位をMRIモデルに投影するところまでを紹介させていただきました。(図1)

図1

CBFpart2ふきだし

血流低下の大きさ・部位を可視化する

Z-Scoreという指標

前回でも触れさせていただきましたが、脳血流SPECTは局所の脳血流量に応じて分布するトレーサーを用いて検査を行います。脳血流がある部位で正常よりも血流が低下していれば、その場所の脳機能が低下していると考えられます。通常はSPECT画像を視覚的に判断しますが、精神疾患や神経変性疾患の初期では脳血流量の低下は僅かなものが多く、判断に困難を極めることが多々あります。また正常の血流分布は年齢群によって変わるため、ある部位で実際に血流が低下している場合でも年齢によって正常と捉えられてしまうことがあります。1)
ポイントは脳血流SPECTで血流の分布に応じてカウントが得られることを踏まえ、

①特定の場所で
②同年齢(群)の正常の平均に比べて
③どの程度カウントが低下しているか

を評価する数値や指標が必要となります。
当院で使用されている脳血流統計解析ソフトeZISではZ-Scoreという数値(指標)を使用します。
Z-Score=(正常群平均Voxel値―症例Voxel値)/(正常群標準偏差)
で表されます。すなわち血流低下が大きいほど症例Voxel値は小さいため、分子が大きくなりZ-Scoreが大きくなります。また一定のZ-Score以上の領域を投影することで臨床上有意な血流低下各領域を抽出することが可能になります。

今回は99mTc-ECDを使用した脳血流SPECTを統計解析ソフト「eZIS」で処理を行った画像につき、代表的な3つの認知症について紹介させていただきます。Z-Score>1.0のものをMRIモデルに投影することで、その部位の血流低下の有無、低下の程度が把握しやすくなります。

まず、認知症画像診断で注目される場所と疾患を図2に示します。(この中で主な場所の働きは以下のようになります。)

CBFpart2図2

1)アルツハイマー型認知症(AD)

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞と神経細胞の間にシミのような老人斑(アミロイド斑)の出現により、脳が萎縮します。新しいことを覚える機能を障害されることが多いので、出来事自体を忘れてしまい、日常生活に支障をきたします。
アルツハイマー型認知症の脳血流SPECT画像の特徴としては①後帯状回から②楔前部および側頭頭頂葉皮質の血流低下が見られます。(図3)
またアルツハイマー型認知症の進行の程度についても、eZISによる統計処理画像にて把握することが可能となりました。(図4)

CBFpart2図3.4

2)レビー小体型認知症(DLB)

レビー小体型認知症とは脳の内部に異常なたんぱく質(レビー小体)が蓄積して神経細胞が障害されて起こる認知症です。はっきりした幻視、被害妄想、抑うつ症状がみられます。同じくレビー小体が原因となるパーキンソン病と似た症状があり、手足が震える、身体の動きが遅くなる、歩幅が小さくなるという症状も観察されることがあります。
脳血流SPECT画像の特徴として、アルツハイマー型認知症と同様に①帯状回から②楔前部および③側頭頭頂葉皮質の血流低下、に加えて④後頭葉皮質の血流低下が見られます。(図5)

CBFpart2図5

3)前頭側頭葉型認知症(FTD)

脳の前頭葉が萎縮して起こる認知症で、アルツハイマー型認知症のような記憶障害が初期には見られないのが特徴です。認知症状として社会的なルールを無視するような行動が見られ、行動的な特徴として好みの変化、同じ言葉の繰り返し、毎日同じ食べ物だけを好んで摂る、毎日まったく同じ時間に同じ行動をとる、などがあります。一緒に生活している人は、まるで別人がいるように感じるほどです。このような症状が出ていても、最近のことをきちんと記憶している人がいます。ピック病と呼ばれる場合もあります。
FTDの脳血流SPECTでは前頭葉、側頭葉の血流低下が特徴的です。(図6)

CBFpart2図6

今回は誌面の都合でここまでの紹介とさせていただきますが、詳しくは富士RIファーマ株式会社HP(http://fri.fujifilm.co.jp/index.html)内「撮って診る!!認知症」のコーナーにてとても分かり易い案内があります。御参照いただければ幸いです。
次回はアルツハイマー型認知症をZ-Scoreの数値を更に評価する方法について、より詳しく説明したいと思います。

参考文献:1)松田博史、朝田隆:ここが知りたい認知症の画像診断(2014.10 harunosora)

(核医学専門技師 荒田 光俊)

手根管撮影について


手根管とは?

今回は手根管撮影について書かせていただきます。手根管撮影は手根管症候群やその疑いに対して整形外科医が撮影依頼を出されます。手根管症候群は手根管内における正中神経の圧迫麻痺で最も頻度の多い神経障害です。(下図)屈筋腱鞘炎による手根管内圧の亢進、手の過度の使用、管内に発生したガングリオンなどの腫瘤、橈骨や手根骨骨折後の変形、妊娠などによる全身浮腫、長期血流透析に伴うアミロイド沈着などが発生の要因となります。症状は母指より環指橈側1/2の正中神経支配領域のしびれ感、知覚障害及び母指球筋の脱力、委縮が主訴となります。中年以降の女性に多く、利き手側に多く発症します。

手根管
日本整形外科学会HPより引用

撮影方法について

撮影は肘関節を伸展して手関節の下に発砲スチロールなどを置き手関節を背屈させて手掌面を垂直にします。中心エックス線を30度傾け、手根管をめがけて撮影します。 撮影されるエックス線像として第1指側より、手根管を形成する大菱形骨結節、舟状骨、有頭骨、有鈎骨の接戦像が描写し手根管の軸位像が描写されます。

手根管2

手根管3

知っているようで知らない マンモグラフィーの基礎⑥ マンモグラフィーの弱点を補うために


マンモグラフィーは「高濃度乳房に弱い」という話題を第2回、第5回で取り上げました。高濃度乳房では背景乳腺がマンモグラフィー上高濃度につまり白く描出されるため、やはり白く描出される乳がんが隠れてしまいやすいのです。アメリカのコネチカット州では健診マンモグラフィで高濃度の場合はそのことを受診者に知らせるべきあるとの法律が策定されました。日本でも患者団体からの同様の要望書が厚生労働省に提出されています。任意型の健診ではすでに乳腺濃度を結果説明の際に受診者に知らせる試みが広がっています。乳房構成が高濃度であると、マンモグラフィで乳がんが見つかりにくいことを知らせ、他のモダリティの検査の受診を勧めることが目的です。
昨年の春より当院の乳がんドックでもマンモグラフィの乳房の構成を受診者に知らせることにしています。

乳がんドック報告書(抜粋)

超音波検査について

マンモグラフィーのこの弱点を克服するための方法としては、前回取り上げたトモシンセシス撮影(断層撮影)が有用です。そのほかには超音波検査も有用です。
超音波検査で使用するプローブは生体内に「超音波」を発射します。発射された超音波は生体内の組織で一部反射し、一部透過します。反射波(エコー)はプローブに戻ってきます。エコーの強さの情報をグレースケールに振り分けて輝度変調し、エコーが戻ってくるまでの時間を距離に変換して画像表示したものが超音波検査です。超音波プローブの中には超音波を発射する圧電素子が横並びしており、横方向に順次超音波を発生させることで「Bモード画像」が出来上がります。

生体内の組織によって音響インピーダンスが異なっており、組織間の音響インピーダンスの差が大きいほど超音波の反射が大きく、差が小さければ音波はほとんど透過します。腸管内ガスや骨は超音波をほとんど反射してしまうので、検査では真っ白に見え、ガスや骨の後方は何も見えません。水は超音波をほとんど透過しますので、膀胱に溜まった尿や血管内の血液は超音波検査では真っ黒に均一に描出されるのです。

超音波の波長より十分に小さい境界の集合体(不均質な組織)では音波はあらゆる方向に散乱します。このうちプローブに帰る方向への散乱を「後方散乱」と呼びます。後方散乱は病変の「内部エコー」の違いに関与しています。病変の中に音響インピーダンスの異なる組織が混在する場合や、網目構造、乳頭状構造がある場合は、後方散乱が強く起こるため内部エコーは高く、つまり白っぽく描出されます。病変の内部に均一な腫瘍細胞がぎっしり詰まっているような場合は内部エコーは低く、つまり黒っぽくなります。

乳がんUS

乳房構成の違いと正常乳腺の超音波画像

乳がんの中でも、腫瘍細胞が均一に増殖する充実腺管がんや髄様がん、腫瘍内部に線維成分の増生が強い硬がんは超音波画像では内部エコーレベルが低エコーで黒っぽく見えます。内部に細かい隔壁構造があり粘液の中に腫瘍細胞がまばらに存在する粘液がんや、乳頭状の構造をとる乳頭腺管がんは、比較的エコーレベルが高くなります。これらのがんが、脂肪性の乳腺の中にできると、マンモグラフィでは見逃すことはまずないですが、超音波検査では腫瘍と正常乳腺のコントラストが小さいためうっかりすると見落としてしまいます。

一般に超音波は若年者に多い高濃度乳房が得意で、マンモグラフィーは高齢者になると多い脂肪性乳腺が得意と言えます。精密検査を行う乳腺外来では両方とも行います。検診はマンモグラフィーが基本です。しかし高濃度乳房が多く、乳がんの罹患率も高めの40代の健診に超音波検査をどのように取り入れることができるか、検討されつつあります。

外科乳腺甲状腺担当部長
俵矢 香苗