造影剤なし!冠動脈MRA
当院では冠動脈疾患が疑われる患者さんにCTにて造影剤を用いた冠動脈撮影(冠動脈CTA)を実施しています。しかし、冠動脈CTAは造影剤を使う為、腎機能が悪い方や造影剤アレルギーをお持ちの方に検査することができません。そこで造影剤を用いずに冠動脈を描出する“冠動脈MRA”がMRIでは可能です。さらに冠動脈CTAで評価が難しいとされる石灰化部も、“冠動脈MRA”では石灰化を除いて血管の評価が可能なため有効とされております。
テクニックは3つ
MRIで冠動脈を撮影するために必要となるテクニックは大きく3つあります。
・心電図同期
・呼吸同期
・高速信号収集
今回は3つ目の「高速信号収集」についてご紹介させていただきます。
“フィエスタFIESTA”が血流を描出
冠動脈MRAは常に流れている血液(撮影対象が動いている状態)を高信号で描出する為に、データ収集時間を短くする必要があります。一般的なT1強調画像やT2強調画像の撮影方法では、信号収集にかかる時間が長いため、流れている血液から信号を得ることができません。そこで“FIESTA”という撮影方法を用います。“FIESTA”は信号収集時間が極端に短いため、血流を高信号で描出することができます。T1強調画像、T2強調画像とは異なるコントラスト画像となります。
MRIでは本来、データ収集時間を短くしようとすると収集できる信号が減るため、画像の劣化を招いてしまいます。しかし“FIESTA”では、画像コントラストに影響を及ぼす通常では用いられない信号も含めた多くの信号を収集するので、一般的なT1強調画像やT2強調画像のようなコントラストにならない代わりに、短時間にも関わらず広い範囲を高画質で撮影できます。この撮影方法により良好な冠動脈の撮影が可能となります。
Case Study
狭心症の除外目的で冠動脈CTAを撮影したところ、石灰化部の評価ができなかったため、冠動脈MRAを撮影することになった症例です。左冠動脈(LAD)の走行に沿って再構成した画像を以下に示します
緊急性が高くない冠動脈検査はほとんどCTで行われております。MRIの依頼があるのは腎機能等の理由で造影剤が使用できない患者さんの場合です。どの検査も一長一短なのでCTと比較して、
・解像度が劣る(分枝の評価は難しい)
・撮影時間が長い(45分ほど)
・心電図と呼吸両方の撮影タイミングが必要(同期が合わないと撮影不可の場合もあり)
以上のような短所もあります。しかし造影剤が使えない患者さんにとって唯一ともいえる冠動脈の描出法なので、依頼があった際はより一層の責任感を持って検査に望んでおります。患者さん、先生に貢献できるように今後とも研鑽を積み続け、より良い画像をお届けしていきたいと思います。