当院の放射線治療室が立ち上がり10月でまもなく3年が経とうとしています。最近では、複雑な方向からの照射や高精度な治療がますます増えてまいりました。
今回は放射線治療を行うにあたって高精度に照射を行うためのIGRTという技術を紹介したいと思います。
IGRT
IGRTとは画像誘導放射線治療(Image Guided Radiation Therapy)の略称で、照射の直前や照射中にX線画像やCBCT(Cone Beam CT)などの画像情報を利用して計画画像との位置のズレを数値化し、照射位置を修正しながら照射を行う高精度治療技術です。
各治療日における内臓の充満度の違いや呼吸に伴う内臓の動きなどにより、病巣位置が計画時のCT位置と比べ動く可能性があります。そこで、IGRTを行うことにより照射位置を補正し、正確に病巣に照射することができます。
位置の修正については骨を中心に合わせるのか、組織の濃淡値による臓器を中心に合わせるのかをそのときの状況で選択できます(図1,2)。
もちろん万能ではないので、最終的には位置照合結果の判断は医師によって行われる必要があります。また、IGRTを用いることによってわずかなズレを正確な位置に補正することは可能ですが、患者体位のねじれや大幅なズレを修正することは困難です。そのため、従来通りのレーザー照準器を利用した位置合わせによる患者体位の再現性が重要となってきます。
当院では、前立腺がんや肺がん、リンパ節転移や骨転移など多方向から複雑に照射を行う治療にIGRTを利用しています。さらに、IGRTを用いると定位放射線照射なども行うことができます。定位放射線照射とは、3~4cmの小さな病変に対してピンポイントで行う照射のことです。転移性肺がんや転移性脳腫瘍などに用いられる治療でIGRTが必要不可欠となります。
さらに、当院では6軸寝台を導入していますので、患者体位のねじれ補正を行うことができます。6軸寝台はIGRTでの補正時にX軸(左右方向)、Y軸(頭尾方向)、Z軸(腹背方向)の補正だけではなく、それぞれの軸における回転方向(pitch、yaw、roll)の補正を行いますので、通常の3軸寝台よりも精度の高い照射が可能になります(図3)。