毎年4月にパシフィコ横浜で医学放射線学会と放射線技術学会、そして医用画像総合展という画像診断関連機器の展示会が行われています。全国からたくさんの放射線科医師や技師、メーカー、物理学者などが参加する学会で私も毎年参加しています。この機器展示会ではメーカー各社が最新の装置を展示しており、大変にぎわいのある会となっています。今回私はCT装置メーカーを回ってお話を聞いてきました。最先端CT装置メーカーというと数社あり、CTマニアの間でも意見がありますが、私としては唯一2管球型という装置(従来のCT装置ですとエックス線を出力するエックス線管球という部品が1台に1つしかなかったところが2個ついているもの)を開発しているSIEMENSの装置が最も優れていると思いますので、その装置を例に最先端のCTでできることを簡単にご紹介したいと思います。
胸のCTが1秒以下で!?
2つのエックス線管球がついているので、撮影が倍速になります。最近の装置は高速化が進んでいるので1つの管球だけの装置でも十分といえるスピードを持ちますが、この方式ですとその高速CTのさらに倍なので圧倒的に速い撮影ができるというアドバンテージがあります。ここまで速いと冠動脈のCT撮影も失敗なくできるようですし、胸部の撮影でも息を止める必要もなく、心臓周囲の肺も通常ですとぶれてしまいますがここも静止した画像を得ることができるようです。
造影剤が半分以下でOK
2つの管球を持つことで、出力も倍にすることができます。CT装置の撮影ではエックス線のエネルギーを変更することができるのですが、いままで120kvという透過力が高いエネルギーのものを利用していたのですが、たくさんのエックス線を出せる為、この装置では透過力の弱い70kvが使えるようになりました。70kvでは造影剤を濃く映し出す効果があります。ですから、これを利用すると半分の造影剤でも撮影できるようになるのです。当院の装置でも同じようなことができるのですが、1管球なので、大量のエックス線を出すのに時間がかかり実用的ではありません。それでも当院の江上技師が色々と工夫して一部の検査で利用しています。
なんと!4D撮影!!
撮影時間が短いことから、連続で同じ部位を撮影し続けることもできます。要は動画撮影になります。DSA検査のように造影剤が大動脈から頸動脈、脳動脈に入ってその後静脈を経て心臓にもどるまでを連続で撮影できる機能です。造影剤の動態や脳動脈瘤の脆弱な部分(ブレブ)を観察することも出来るそうです。
後から造影剤の濃度を変えられる!?
これは2つのエックス線管から2種類のエネルギーを出力させて撮影する方式でデュアルエナジー撮影と呼ばれる方式です。造影剤の見え方を撮影後に変えることができます。これを利用することで造影剤がない画像を作ることもできます。また骨のない画像や石灰化だけを除いた画像、結石の性状をみる画像、造影剤量の定量などができます。この機能で読影が楽しくなると実際に利用している放射線科医がおっしゃっていました。
最先端装置では以上のような高度な画像を撮影することができます。あらゆる応用がきくので使いこなせるのかという気もします。しかしこの装置の特徴はパワーがあって速いというところにあり、機能が沢山あるというわけではないため自然に使いこなすことが出来る良く考えられた装置だと感じています。iphoneのようにスペックが高いものほど主婦や女子高生が使いこなせてしまうのと同じです。職人のような放射線科医と技師が組んで使わないと活きて来ないようなタイプの装置もあり、それはそれでやってる方は面白いのですが、この装置のように高度な事が誰でもできるという方が時代に合っていると思っています。
X線CT認定技師 保田英志
写真引用 https://www.healthcare.siemens.co.jp/computed-tomography/imaging-contest/award2016