3D画像処理の実際


前回のCT特集ではCT画像の成り立ちから3D画像の作られ方、そして画像の種類について江上技師が紹介しました。今回は3D画像ができるまでの実際の流れを当院の最新型ワークステーションを例にご紹介したいと思います。

3Dワークステーション

3D画像は簡単なものですとCT装置の中に入っているソフトウェアで作成することも可能ですが、機能に制限があり専用の画像処理装置を用いるのが一般的です。
当院ではザイオステーションと呼ばれる日本製のソフトウェアを使用して画像処理を行っています。実際の流れとして腹部血管の画像処理をご紹介します。
マルチスライスCTではCT画像を撮影しますと自動的に1ミリスライス以下の画像が再構成され、装置からザイオステーションへ自動転送されます。その画像は部位にもよりますが300枚から1000枚くらいです。この画像をワークステーションで展開するとこのような画像が出来上がります。 (写真1)

CT1

実際の画像処理の流れ

これだけでも十分きれいな画像といえるのですが、実はこの程度のことは最近のCT装置であれば装置付属のソフトウェアでも作ることができます。しかし、この画像は色合いだけを変更しているにすぎません。CT画像はその濃度差で大まかな組織がわかりますので、それにあわせてこの濃度は筋肉だから赤黒黄色っぽい色、骨だから白、血管だから赤などという感じで色付けしている画像になります。ですから細かく見ると、造影剤も骨も同じような色合いで表現されており、血管と骨の違いが認識しづらくなります。

 

専用ワークステーションの威力

そこで実際にはワークステーションを利用してひと手間加えます。

その作業というのは1個のCTデータを分割し骨だけのデータ、血管だけのデータといった具合に厳密に切り分けを行う操作です。そうすることによりそれぞれに別々の色をつけて最終的に一つの3D画像に戻してあげるということができ、それぞれのコントラストが明確になります。

こちらは処理前の画像です。3D画像の濃度を変更させると実際に存在しているデータすべてが表現できます。これが本当の実データで、立方体となっています。(写真2)

CT2

この立方体を濃度変化だけで表現したのが先ほどの画像になります。(写真1)ここから専用ワークステーションで立方体のなかから、この部分は骨、この部分は造影剤だという風に切り分けを行うことで、血管だけを描出したり、骨だけを描出したり、また大動脈と門脈や肝静脈を色分けしたりということができるようになります。実際には、画像の濃度差を利用して分けていきます。

実際の切り分け手法

一番簡単な例をご紹介します。腹部大動脈の症例でこれを血管と骨に分離します。最初に濃度を変更します。CT画像上もっとも白く映る「骨」以外が消えるような濃度まで設定を変更し、この状態で骨を消すという指令をかけます。(写真3、4)そうするとここに見えている骨だけが消えます。

CT3

しかし、このままの濃度だと大動脈も見えません。ですので、血管が見えるような濃度にもどしていきます。すると、大動脈が見えてくるのと同時に消しきれなかった骨の薄い部分がみえてきます。 (写真5)そうしたら今度は血管を残すという処理をかけます。すると血管だけを残すことができます。(写真6)

CT4

この様なことを繰り返し行って大動脈と骨のそれぞれの3Dデータを作成します。ここからそれぞれに色付けを行います。骨は白で、血管は赤といった感じです。質感を持たせるためにカラーにはグラデーションをつけたりしています。するとこのように血管だけをはっきり観察できる画像をつくることができます。(写真7)

さらに血管の画像と骨の画像を組み合わせたり、骨だけをすかせて表現することも可能となります。(写真8、9)

CT5

画像処理の基本はこのような「骨はずし」と呼ばれる手法が基本となります。実際はこのほかにも冠動脈の画像処理のように、冠動脈の屈曲に合わせて画像を切り出す処理やサブトラクションといって造影剤の使用前後で画像同士を引き算して造影剤だけを画像化する頭部血管画像処理(写真10)、空気だけを表現して大腸の走行をみたりするCTC画像処理(写真11)といった骨はずし以外の画像処理も多々あります。処理には時間がかかるものとかからないものとがあり、その差は症例によるところが大きいと感じています。

CT6

先日、横浜で行われた学会と機器展示に参加し最新型のワークステーションを拝見してきました。最近のワークステーションは自動で画像処理をしてくれるようなものもあり、画像を転送しただけで自動的に骨を外してくれるそうです。しかし血管の走行や骨の変形などは症例によって変わってくるため、すべての症例で自動処理がうまくいくというレベルには至っていないようでした。しかし、これらのパターンマッチング技術に関してはビッグデータが活用され、最近話題の人工知能も用いられるようになれば今後解決されるのではないかと思っているのですが、それはそれでこちらが困ってしまうな~とも思っています。汗(^▽^)汗

保田 英志 (X線CT専門技師および肺がんCT検診認定技師)