放射線科には直接関係ないのですが、摂食・嚥下障害検査で嚥下造影(videofluorography:VF)に立ち会う機会が最近増えてきましたので、今回これを紹介したいと思います。
摂食・嚥下障害とは、字の如く口から食べる機能障害のことで、普段私たちは意識していませんが、食べ物を口に入れて飲み込むまでに5つのステージがあるそうです。食べ物を認知する先行期、食べ物を良く噛む準備期、食べ物を後ろ側へ送る口腔期、食べ物が咽頭を通過する咽頭期、食べ物が食道を通過する食道期の5つです。これらのうち1つまたは複数機能しない場合を摂食・嚥下障害があるとされています。摂食・嚥下障害により、ご飯がうまく食べられないことによる栄養状態の低下や気道に食べ物が入ってしまう誤嚥性肺炎へのリスクがある他、ご飯が食べられないことによる食べる楽しみの喪失があげられます。原因としては高齢による飲み込みの筋力低下は一因ではありますが、最大の原因は脳卒中です。それが嚥下障害の40%を占め、急性期には30%の患者さんに誤嚥が認められるそうです。嚥下検査にはいくつかあるようですが精密検査としては嚥下内視鏡検査(VE)と嚥下造影検査(以下、VF)があります。今回、我々放射線科に関わりのあるVFを紹介します。
VF検査とは
この検査はTV室で透視をしながら検査をします、スタッフとして言語聴覚士(ST)、主治医、看護師、放射線技師で行なっています。バリウムが混ぜられている専用の検査食が用意され、とろみ、ゼリー、ヨーグルト、お粥など硬さの違う食べ物(写真1)を飲み込んでもらいます。基本的には坐位で検査を行い、言語聴覚士が介助を行いながら食物の飲み込みをしてもらい、その様子を透視で観察します。放射線技師はX線透視の調整と被ばくのコントロール、透視画像の記録を行っております。飲み込んだ食べ物が気管に入らないか、咽頭に残留がないか、坐位の角度によって嚥下状態に変化があるか、どの様な食形態ならば安全に食べることができるのかを評価します。
30~40分程度の検査ですが誤嚥のリスクが非常に高いので常に吸引ができるよう準備をしています。透視画像は動画と音声を同時にDVDに記録保存し、スロー再生やコマ送りをして観察できるようにしています。検査の結果をふまえて、食事形態や食事時の姿勢の調節などを考察し、どのようなリハビリが必要か検討します。