胃X線検査の透視観察


日本消化器がん検診学会胃がん検診精度管理委員会によって基準撮影法ガイドラインが改正されて3年が経過しました。現在では、検診に従事する全国の技師に普及浸透し、ある一定の効果を得ていると確信されます。しかしながら、ただマニュアル通り撮影しても救命可能な早期胃がんは拾い上げることは容易ではありません。先生のやってらっしゃる内視鏡検診と肩を並べる精度を維持するためには、我々撮影する技師には熟練した透視観察が必要であると痛感しております。東京都がん検診センターの入口陽介先生のお言葉をお借りすると「ただ透視像を漫然とみる」のではなく、「自ら観に行く」事が必要だそうです。そこで、我々が普段拾い上げに使っている撮影テクニック(ってほどでもございませんが)を、ひとつご紹介させていただきます。

通常のX線検診においてはブスコパン等の鎮痙剤は使用しておりませんので、どうしても十二指腸へバリウムが流出してしまい、同時に幽門前部の蠕動も活発化します。よって前庭部~幽門前部にかけての観察がしづらくなります。しかしそんな時にもあわてずに、体位変換により椎体との重なりを避け、深い呼気によって前庭部を伸展させます。さらに幽門前部が拡がる撮影タイミングを計れば観察できる範囲も大きくなります。(図1)

前壁二重造影像においては胃型によっては描出が非常に難しく、さらに被検者様に逆傾斜がかかっている状態で透視観察をしなくてはならないので、できるだけ短時間の観察で最大の効果を求められます。我々の工夫としては圧迫ふとんの厚さを胃型に応じて可変させたり、透視観察時に吸気と呼気を使い分けたりしながら病変を拾い上げます。(図2)の左側の像では十二指腸の重なりによって陥凹病変が隠れていますが、その右側に先細りするヒダ集中像らしきものが透視上で目視できました。しかしこれだけでは要精検として拾い上げる所見としては乏しいので、深い呼気によって胃自体を押し上げて十二指腸と分離させて陥凹病変を描出しました。その陥凹周囲にはバリウムをはじいた粘膜の高まりも観察できました。これでがんを疑う所見をそろえることができたわけです。内視鏡下での拾い上げと同様、胃X線検査においても我々撮影技師自身が、胃がんのX線所見が頭に入っていないとなかなか拾い上げられません。

胃透視今後も研鑽を重ねて、地域のがん検診に微力ながらお役に立てるようにしていきたいと思っております。
(横山力也;胃がん検診専門認定技師、胃がんX線検診読影部門B資格)