~胃X線検査「透視観察手順」の重要性~


●基準撮影法の普及
スクリーニング胃X線検査(以下、胃X線検査)については、2009年にNPO日本消化器がん検診精度管理評価機構より提案された基準撮影法が広く浸透し、早期胃がんの拾い上げに、ある一定の効果を得ています。日本消化器がん検診学会から毎年報告されている、消化器がん検診全国集計(平成26年度)によると、胃X線検診による胃癌発見率は0.120%で内視鏡検診の0.19%と、それぞれの受検対象年齢を加味すると、さほど遜色を感じることができません。また特筆すべきは早期がん率で、進達度M、SMにとどまる早期胃癌は全体の74.2%と一昔では考えられない高率で救命可能の胃癌を拾い上げることができております。その理由はDR,FPDといったデジタル画像の台頭や高濃度低粘性バリウムを使用した二重造影像主体の撮影法など、多岐にわたるのですが、やはり、撮影読影のシステムを一新し、構築浸透させたこのモダリティに携わる技師、医師たちの熱意であると個人的には思っております。

●とっても大事な検査時読影力
しかし当然のことながら、見まねで基準撮影法どおり撮影していれば、早期がんが拾い上げられるわけではなく、それには熟練した撮影技術(+話術)と、透視観察時に求められる高い読影力(検査時読影力と呼んでます)が求められます。 これらを欠かすと、基準撮影法といえども、進行がんですらも見逃す危険性もあることは、我々技師の間でも共通認識として知っておかなくてはならないと思っております。

 

●透視観察手順をマニュアル化
そこで、我々の施設では現在、胃X線検査において、全ての胃壁において病変の見逃しがないように「透視観察手順」を検討し、マニュアル化を進めております。当院の撮影ルーチンは、基準撮影法2+任意撮影の14体位にて構成されておりますが、このマニュアルには、撮影体位の基準のみならず、その体位変換の間のどこで透視をオンにして、どの壁在を流れるバリウムを観察するか、またどこで透視をオフにしてX線被ばくを低減させるかなどを、事細かく記載されております。透視の画質も、黒潰れや白とびの解消、空間分解能の向上など昔のアナログの時代とは比べ物にならなく改善されてよくなっております。あとは我々技師の観察能が検査の精度を左右するといっても過言ではありません。
透視観察が基準化されることにより、検査がさらに基準化され術者によって異なる検査精度やX線被ばくの格差が是正されることにより、被検者にとってよりよい検査をご提供できればと思っております。
今後も栄区そして近隣の皆様のがん検診の中核として、安全で精度の高い検査を行っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたしします。

 


横山力也
日本消化器がん検診学会認定 胃がん検診専門技師、
NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構 胃がん検診読影部門 B資格
神奈川県消化器がん一次検診機関連絡協議会 技術部世話人