あなたの胃粘膜は大丈夫?


Helicobacter pylori(以下Hp)感染による持続性胃炎は胃癌発生リスクに関与すると認知されていますが、除菌療法により胃がんリスクは30~40%低下することがWHOにより報告されています。
医学の進歩に伴いがんに至るまでの道筋が明らかになってきている今、がんにならないように原因を除くことが早期発見・早期治療といえるのではないでしょうか。
そこで、検診やドックなどで早期胃癌を見つけることに加え、Hp感染の有無や胃がんのリスク表現である萎縮性胃粘膜の程度を評価し、除菌の勧奨や経過観察を継続することも重要となっています。

内視鏡検査(胃カメラ)は胃の中をカラーで直接目視するため、凹凸が少ない粘膜の荒れや平坦な病変、色の変化を認識できHp感染有無の検査も可能です。
一方、胃X線検査はモノクロにて粘膜の凹凸を表現するため平坦な病変や粘膜の色の変化を観察することは出来ませんが、わずかな粘膜の凹凸や異常を描出することが可能です。装置やバリウム製剤の精度向上により最近ではHp感染や胃粘膜萎縮もある程度わかるようになってきました。

Hp感染胃炎に対する除菌療法は2013年2月に保険適応となり、正式な治療対象となっています。胃X線検査においてHp感染の有無を考慮した撮影と読影を行うことは、受診者に胃がんリスクに関する情報を提供できるので、胃がん予防にも貢献することができます。
ただし、Hp除菌により胃がんリスクは減少しますが、ゼロにはなりません。除菌後、除菌に成功した場合でも非感染者よりは胃がんリスクが高くなるからです。したがって、胃がん死亡者を減らすためには、Hp除菌後の人にも定期的な画像検査を行う必要があります。すべての人に内視鏡検査を行うことは不可能です。そこで胃X線検査は重要な役割を担えるのではないでしょうか。

Hp感染・萎縮粘膜の有無、背景胃粘膜を知り、自分の胃粘膜が胃がんを発生しやすいか、そうでないかを把握することはとても大切です。また、個々の胃の状態、特に胃がんに関するリスク度によって胃の検査方法や間隔などを個々で設定するのが合理的です。
ご自身の胃粘膜状態を知らないは、まずは手軽に受診できる胃X線検査(バリウム検査)を受けてみては、いかがでしょうか。

胃X線検査に携わるものとして、Hp感染の有無や胃がんのリスクの表現である萎縮性胃炎の程度を評価できるような、より精度の高い画像を提供できるように日々努力をしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

胃がん検診技術部門 B資格 小曽根容子