身体の中から狙い撃ち!? ― 内用療法(核医学治療)について ―


内用療法(核医学治療)とは?

体内に投与(静脈注射、経口)した放射性同位元素(アイソトープ:RI)やこれを組み込んだ薬剤を用いた放射線治療で、核医学治療・RI内用療法・RI治療とも言われています。
現在、日本で保険収載されている内用療法は4つほどあります。

1 骨転移のある去勢抵抗性前立腺がん治療(塩化ラジウム注射液、ゾーフィゴ®静注)
2 骨転移疼痛緩和治療(塩化ストロンチウム注射液、メタストロン®注)
3 甲状腺癌に対する術後アブレーション
4 バセドウ病に対する内用療法

これらの4つに関して紹介させて頂きます。

1.去勢抵抗性前立腺がんの骨転移治療

ゾーフィゴ®静注という放射性医薬品を静脈注射して治療を行います。

ゾーフィゴ®静注とは?
ゾーフィゴ®静注には、α線を放出する223Ra(ラジウム)という放射性物質が含まれています。この223Raには骨成分であるカルシウムと同様に骨に集積しやすい性質があり、静脈注射で体内に送られると代謝が活発になっているがんの骨転移巣に多く運ばれます。そして、そこから放出されるα線が骨転移したがん細胞の増殖を抑えます。(下図)
こうした作用により、骨転移した去勢抵抗性前立腺がんに対して治療効果が期待できる放射性医薬品です。

2.骨転移疼痛緩和治療のメタストロン®治療

メタストロン®注という放射性医薬品を静脈注射して治療を行います。

メタストロン®注とは?

メタストロン®注は、がんの骨転移による疼痛緩和を目的とした治療用の放射性医薬品です。この薬はβ線を放出する89Sr(ストロンチウム)という放射性物質が含まれています。この89Srには骨成分であるカルシウムと同様に骨に集積しやすい性質があり、骨転移部では、正常の骨より長く留まり、その部位に放射線があたることにより疼痛緩和が期待できると考えられています。

3.甲状腺癌に対する術後アブレーション

放射線ヨウ素甲状腺乳頭癌および濾胞癌が治療の対象となります。

アブレーションとは?

放射性ヨウ素(131I)という放射性物質が含まれたカプセルを内服します。ヨウ素が甲状腺に集積する性質を利用して、甲状腺に取り込ませ、放射性ヨウ素から放出されるβ線により破壊することをアブレーションと言います。
甲状腺癌により甲状腺全摘術によって病巣をすべて取り除くことができたと判断された場合でも、わずかに残存していることがあります。これにより、甲状腺癌の再発や他部位への転移を予防する目的でアブレーションを行います。

4.バセドウ病に対する内用療法

バセドウ病には薬物療法、手術療法とアイソトープ治療(内用療法)があります。

アイソトープ治療とはどのようなことをするの?

放射線ヨウ素を含んだカプセルを内服します。ヨウ素が甲状腺に集積する性質を利用して、甲状腺に取り込ませ、放射性ヨウ素から放出されるβ線により組織を破壊し、甲状腺を小さくしてホルモンを産生する力を弱くする治療法です。

これらの4つの内用療法の内、代表的なゾーフィゴ®静注とメタストロン®注の開始に向けて放射線治療科の朝比奈先生を筆頭に核医学チームで準備を進めております。今後の進捗状況や、内用療法が実際に運用を開始した際にはまた改めてお知らせします。

参考文献)
・バイエル薬品株式会社「知っておきたい治療のお話と治療中の注意点」
・日本メジフィジックス株式会社「メタストロン注(ストロンチウム-89)の治療を受けられる患者さんとご家族の方へ」
・富士フィルムRIファーマ株式会社「外来アブレーションをお受けになる患者さんへ」、「バセドウ病アイソトープ治療Q&A」