ヘリカルスキャンは万能ではない!!:CT特集アーカイブ


ヘリカルスキャンは高速撮影が可能!

CT撮影には大きく分けて2つの方式があります。

頭部撮影の撮影モードはコンベンショナルスキャンとヘリカルスキャンの2通りあり、それぞれの特徴を模式図と共に下記に示します。

コンベンショナルスキャン(コンベンショナルとは「従来の」という意味)では、スキャンと寝台の移動が交互に行われます。一枚撮影したらベッドが移動し引き続き撮影という流れを繰り返す撮影で、CT撮影の基本撮影法です。一方、ヘリカルスキャンは寝台移動とスキャンが連続的に行われるもので、撮影しながらベッドが移動する撮影法です。スキャン軌道が螺旋を描くため、ヘリカルスキャンや螺旋スキャン、またスパイラルスキャンとも呼ばれます。原理的な詳細は割愛させて頂きますが、この二つの方式には次の表のような特徴があります。

ヘリカルスキャンは万能ではない!!

先述した撮影方式の違いにより、ヘリカルスキャンを用いるとCT撮影のスピードは圧倒的に速くなります。(頭部CTで3秒程度で撮影可)その為、救急時における頭部撮影では患者の体動を考慮し、ヘリカルスキャンを選択する場合が多いです。しかし、ヘリカルスキャンではチルト機能(装置を傾けて撮影する)が出来ない為、注意する点もあり今回はその事例をお示ししたいと思います。
図1-bは、頭部CTの画像です。CTでは同一スライス面上に金属などの高吸収体がある場合、図1-bのような放射状の偽陰影を生じてしまいます。図1-aは本スキャン前の位置決め画像で、この画像から撮影範囲の設定を行います。黄色線は、図1-bにおけるスライス面を示しています。図1-aと図1-bを見比べて頂くとわかるように、橋と義歯が同一スライスに存在してしまうためアーチファクトによって橋及び脳実質の描出がやや不良となっていることがわかります。

この影響を無くす方法は、患者の体位を変えるかスキャン方式を変えるかによって、観察したい部位が義歯と同じスライスとならないようにする必要があります。患者の体位を変えるとは、具体的には顎を引き頭を高くしスライス面内に義歯が入らないようにすることです。また、スキャン走査方向を変えるとはチルト機構を利用することです。チルトとは「傾ける」という意味で、図2のようにCT装置自体に傾斜をつけて走査を行うものです。こうすることで義歯の影響を避ける事が可能となり、図2-bに示すように、橋の横にある所見が明瞭に描出されるようになります。反面、この撮影方式ではヘリカルスキャンが行えず、冠状断や矢状断といった画像再構成ができません。

これらのことを考慮し適切な撮影体位にすること、適宜最適なスキャン方法を選択することを心掛けて撮影しています。

江上桂 X線CT認定技師

*この記事はR@H2014年9月号に掲載した内容を再編集したものになります。